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メイジの、魔法使いの弱点はなんだ? そんなもの決まっているじゃないか。杖だ。杖が無ければ魔法使いは魔法を使うことは出来ない。 今まで見てきた魔法使いは残らず杖を持って魔法を使っていたし、ルイズに魔法使いのことを聞いたときに杖が無ければ魔法は使えないと明言していた。 あと、喋らせないという手もある。魔法は基本的に呪文が必要らしいからこれも結構有効な手段だ。 ただ、トライアングルやスクウェアになると、呪文を唱えなくても魔法が使える輩がいるだろうと考える。 もちろん確証はない。しかしドットやラインとは違って経験豊富なのは間違いないのだ。唱えなくても使えるということを前提に考えておいてもいいだろう。 他に弱点は? 戦いの最中でないのなら、真っ先に思いつくのが毒殺という手段だ。寝込みを襲うって手段もある。 とにかく、魔法使いを真正面から襲うというのはバカがやることだ。やるにしても相手が思いもしない行動をとるか弱点を突かなければ魔法使いは倒せないだろう。 魔法なんてまともな人間が使うもんじゃないんだからこの考えでも甘いかもしれない。 これから先魔法使いと戦うことがあれば、デルフとスタンドが無かったら銃がいくらあったって勝てる気がしないね。 今まで戦った魔法使いたちは全員が全員油断していた、もしくは弱かっただけだ。 ギーシュは拍子抜けするほどの雑魚で油断していたし、フーケはロケットランチャーを手に入れたと油断していた。 ラ・ロシェールで襲ってきたメイジも油断していた。 ワルドは正直言って倒せる要因が無かった。死に掛けていたのだからむしろ負ける要因しかなかったと言っていい。だが、奇跡の生還を果した。 つまり、これまでの戦いは全て運がよかったという事に他ならない。 デルフやスタンドがあっても絶対に勝てるとは言い切れない。普通の人間に比べたら圧倒的にすごい力を持っているのにだ。 前はそこまで危険視していなかったのだが、やはり虚無なんていう異常な魔法を見てしまうと考えが変わってしまう。 特に虚無を使う化物がそばにいてビクビクして暮らしているのならばなおさらだ。 ファンタジーの世界は本の中のように素敵な世界などではなく、実に危険な世界だ。 そんな危険な世界は本の中だけで十分だって言うのに、そんな世界に連れて来られてしまうんだから私も運が無い。 だが、戻れる手段が無いのだ。この世界で暮らしていくしかない。幸福になれさえすればそこがどんな場所でも構わないのだから。 体の疲れをとるのには眠るのが一番だと私は考えている。 しかし、ただ寝ればいいというものではない。それは自分にとって心地よい睡眠でなければダメだ。 心地よい睡眠を得るためには最低限として敷布団は欲しい。前に床や椅子に座って寝ていたときはつくづくそう思ったものだ。 だが、今はあの頃とは違う。何の気兼ねも無く、堂々と貴族が寝るのと同じベッドで眠っている。 ふかふかで暖かい毛布に包まれながら気だるい眠気に身を任せている。これがなんとも言えないほど心地よい気分にさせてくれる。 問題があるとすれば、このベッドは私だけが寝ているというわけではないのだ。 「くー……」 誰かの寝息が吐息と共に耳に入り込んでくる。吐息まで感じられるということは、よほど近い位置に顔があるのだろう。 それを証明するかのように、右半身に毛布とは違った人肌の暖かみを感じることが出来る。 この人物が誰なのか、という答えは考えるのも馬鹿らしい。 眠気に身を任せたいという衝動に鞭を打ち、こじ開けるように目を開ける。そして現実を見るために首を右に捻る。 「くー……くー……」 そこにあったのは桃色がかった髪を持ち肌理細やかな白い肌をした少女の寝顔だった。 あと数cmも接近すればお互いの顔が接触するであろうという程の近距離である。普通なら慌てるだろうが、私には何一つ慌てる要素は無い。 何故なら普段から見慣れている光景だからだ。 この少女こそ私の今一番の悩みの種であり、私と一緒にこのベッドで寝ているものであり、このベッドの所有者であり、この部屋の主であり…… 私の『ご主人様』であるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールだ。 長ったらしい名前だし、『ご主人様』と言っても敬意など小指の爪の間に溜まる垢ほども持ち合わせていないので、私はルイズと呼んでいる。 そもそも『ご主人様』と言っても、私が強制的に使い魔にされたので敬意など持てるわけがない。 しかも最近じゃあどうやって殺すか、なんてことを考えているくらいだからな。まあ、近いうち本当に殺してしまうかもしれないが。 そんな『ご主人様』を起こさないように注意を払いながら、ベッドから下り靴を履く。 ルイズは寝たらなかなか起きないので、そこまで注意を払わなくてもいいのだが念には念を入れたほうがいい。 名残惜しくベッドから離れ、窓を見る。 外はまだ薄暗く、日もまだ昇っていない。しかしあと十数分もすれば日も昇り始めるだろうという、そんな時間。 この時間帯、貴族連中はルイズのように殆んどが眠りこけているし、メイドなどもそれほどの数は起きていない。 何らかの行動を開始するのには丁度いい時間帯だ。と言っても大抵この時間に起きる習慣がついているだけなのだが。 とりあえず机の上に置いてあるデルフを手に持ち、いつものように外へ出て行く。恒例の筋トレだ。 デルフを振りましたり、デルフと喋ったりするだけのことなのだが、さすがに人に見られるのは恥ずかしい。こんな早い時間に筋トレをするのも人に見られたくないためだ。 いつもの場所に着き辺りを確認する。 この前一回だけ他のメイドに見られたからな。貴族じゃなかったからあまり気にはしていないが、それでもいい気はしない。 よし。辺りには誰もいないようだ。 それを確認してデルフを鞘から抜き出す。体はルーンが反応し、羽の様に軽く感じる。 「おはよ相棒」 「ああ」 「相棒。俺はおはようって言ったんだぜ」 「だから?」 「普通あいさつを返すもんじゃねえか?」 デルフが言っていることは正論だ。そして私もデルフにおはようと挨拶を返したい。しかし、しかしだ。それはなんとなく気恥ずかしい。 そしてその気持ちをデルフに悟られたくはない。言葉に出そうとするとどうしても気恥ずかしさも一緒に出てしまう。 「剣に挨拶をすることが普通なのか?」 「なんてひでえ相棒だ。日頃よくしゃべってんのに」 「まったく、五月蠅い奴だ。わかったよ。おはよう」 「それでこそ相棒だぜ」 だが、しぶしぶ言いましたという態度をとればこちらの気持ちに気づかれることもあるまい。 ……やれやれ。この調子だと、普通に会話を出来るときが来るのはいつになるだろうか。 「それじゃあ始めるか」 そしていつものようにデルフを振り始めた。 デルフを振りはじめていくら経っただろうか。日が昇っているところから見ると30分位かもしれない。 このようにデルフを振っている時間は楽しくはない。が、ルーンのおかげでデルフと一体になっているかのようなこの感覚は心満たされるものがある。 そんな時間ももう終わりだ。日が昇ったということはこれからどんどん人が起きだす頃だろう。つまり今日の朝はこれで終わりだ。 というわけで、デルフを振るのをやめる。 「お、終わりか相棒」 「ああ、一応な」 そういえば、このデルフと一体になっているかのような感覚はガンダールヴのルーンの効果なんだよな。 そしてデルフが私を相棒と認めてくれているのはこのガンダールヴのルーンがあるからだ。少なくとも出会った当初はそうだった。 このルーンはルイズが私を使い魔にした事によって出来たんだよな?ということは、もしルイズを殺してしまったらこのルーンはどうなるんだ? そのまま残るのか?それとも消えるのか? …………どう考えても消える可能性の方が高い。 もしルーンが消えてしまったら、私とデルフを繋ぐたった一つの目に見える証が消える事になる。さらにガンダールヴとしての力も発揮できなくなってしまう。 なんてことだ。ルイズを殺せば、デルフという相棒とガンダールヴの力を失いかねないとは。 ルイズめ。どこまでも厄介な奴だ。まさかここまで私の足を引っ張るとは。絶対にただじゃ死なないつもりか。 「相棒」 「……ん?」 デルフの声により自分の世界から帰ってくる。随分と考えに没頭していたようだ。さっさと部屋に戻らないとな。 デルフを鞘に収めようとする。 「ちょっと待った。相棒に聞きたいことがあんだけど」 「聞きたいこと?」 デルフが私に?最近何かあったか?デルフにはタルブにいたときに色々と話したと思うんだが…… 「昨日のことなんだけどよ。なんだって相棒はあの貴族の娘っ子のことをバケモノ扱いしてたんだ?たしか虚無を使うからとか言ってたよな」 ああ。なんだそんなことか。 「ルイズが一人であの艦隊を墜としたからだ。あんな真似人間じゃできないね。そして、そんな化け物じみたことが出来るのが虚無だ。 ルイズが虚無を使えなかったら人間扱いはしてやるよ」 「おいおい相棒。心配しなくてもよ、この前みてえにでっかいのは一年に一度撃てるか撃てねえかだって、そういったじゃねえか」 「確かにそうかもしれないが、小さいのは使えるんだろ?それだけでも脅威だ」 「あの貴族の娘っ子が相棒に向かって虚無を使うって、そう思ってんのかね?」 「可能性がないわけじゃない」 「ふーん」 これでデルフの聞きたいことはなくなっただろう。そう判断しデルフを鞘に収める。デルフは何も言わなかった。 656 名前: 使い魔は静かに暮らしたい [sage] 投稿日: 2008/02/27(水) 23:42:24 ID:hX8+iVgM そしてルイズの部屋に戻りながら、考える。殺した後にルーンは残るか否か。とりあえずそれがわかるまでルイズを殺すのは後回しだな。 ほんと、最近は物騒なことを考えるようになったものだ。穏やかだった昔の自分が懐かしい。 そんなことを考えているうちにルイズの部屋に着き、デルフを机の上に置く。 「さて」 ルイズは当分殺せない。これは大きな痛手だ。ルイズを殺すことは私の幸福には必要なことだからな。大きな脅威があっては幸福にはなれない。 ルイズを殺す以外で脅威を取り除く方法は? 祈祷書を消すか?そしたらルイズはこれ以上虚無について知ることは出来ない。少なくとも今以上の脅威にはなるまい。 問題は、祈祷書が消えた場合のルイズの行動だ。祈祷書が消えたらルイズがどうするのか、なんとなくだが想像はつく。 きっと脅されるな。無くなったのはお前のせいだとか言って。そして地べたを這いずり回りながら探させられるのだ。その光景が目に浮かぶようだ。 最低限の想像でこれなのだから実際はさらに激しいに違いない。最悪虚無を使われるかもしれない。そんなのは真っ平ごめんだ。 というわけで祈祷書はだめだ。 だったら杖は?杖が無ければ魔法は使えない、つまり虚無は使えない。我ながらいい考えじゃないか! そうだ。いくら虚無が使えようが虚無が使えなきゃただの小娘だ。 ベッドで寝ているルイズへと近づき、その近くに置いてある杖を手に取る。そしてルイズに向かって放り投げる。 杖はルイズの上に落ちることはなく、落ちる前に小さな音と共に消滅した。 これでよし。とりあえずの脅威は無くなった。 あとは起きたときの反応が楽しみだ。 ----
メイジの、魔法使いの弱点はなんだ? そんなもの決まっているじゃないか。杖だ。杖が無ければ魔法使いは魔法を使うことは出来ない。 今まで見てきた魔法使いは残らず杖を持って魔法を使っていたし、ルイズに魔法使いのことを聞いたときに杖が無ければ魔法は使えないと明言していた。 あと、喋らせないという手もある。魔法は基本的に呪文が必要らしいからこれも結構有効な手段だ。 ただ、トライアングルやスクウェアになると、呪文を唱えなくても魔法が使える輩がいるだろうと考える。 もちろん確証はない。しかしドットやラインとは違って経験豊富なのは間違いないのだ。唱えなくても使えるということを前提に考えておいてもいいだろう。 他に弱点は? 戦いの最中でないのなら、真っ先に思いつくのが毒殺という手段だ。寝込みを襲うって手段もある。 とにかく、魔法使いを真正面から襲うというのはバカがやることだ。やるにしても相手が思いもしない行動をとるか弱点を突かなければ魔法使いは倒せないだろう。 魔法なんてまともな人間が使うもんじゃないんだからこの考えでも甘いかもしれない。 これから先魔法使いと戦うことがあれば、デルフとスタンドが無かったら銃がいくらあったって勝てる気がしないね。 今まで戦った魔法使いたちは全員が全員油断していた、もしくは弱かっただけだ。 ギーシュは拍子抜けするほどの雑魚で油断していたし、フーケはロケットランチャーを手に入れたと油断していた。 ラ・ロシェールで襲ってきたメイジも油断していた。 ワルドは正直言って倒せる要因が無かった。死に掛けていたのだからむしろ負ける要因しかなかったと言っていい。だが、奇跡の生還を果した。 つまり、これまでの戦いは全て運がよかったという事に他ならない。 デルフやスタンドがあっても絶対に勝てるとは言い切れない。普通の人間に比べたら圧倒的にすごい力を持っているのにだ。 前はそこまで危険視していなかったのだが、やはり虚無なんていう異常な魔法を見てしまうと考えが変わってしまう。 特に虚無を使う化物がそばにいてビクビクして暮らしているのならばなおさらだ。 ファンタジーの世界は本の中のように素敵な世界などではなく、実に危険な世界だ。 そんな危険な世界は本の中だけで十分だって言うのに、そんな世界に連れて来られてしまうんだから私も運が無い。 だが、戻れる手段が無いのだ。この世界で暮らしていくしかない。幸福になれさえすればそこがどんな場所でも構わないのだから。 体の疲れをとるのには眠るのが一番だと私は考えている。 しかし、ただ寝ればいいというものではない。それは自分にとって心地よい睡眠でなければダメだ。 心地よい睡眠を得るためには最低限として敷布団は欲しい。前に床や椅子に座って寝ていたときはつくづくそう思ったものだ。 だが、今はあの頃とは違う。何の気兼ねも無く、堂々と貴族が寝るのと同じベッドで眠っている。 ふかふかで暖かい毛布に包まれながら気だるい眠気に身を任せている。これがなんとも言えないほど心地よい気分にさせてくれる。 問題があるとすれば、このベッドは私だけが寝ているというわけではないのだ。 「くー……」 誰かの寝息が吐息と共に耳に入り込んでくる。吐息まで感じられるということは、よほど近い位置に顔があるのだろう。 それを証明するかのように、右半身に毛布とは違った人肌の暖かみを感じることが出来る。 この人物が誰なのか、という答えは考えるのも馬鹿らしい。 眠気に身を任せたいという衝動に鞭を打ち、こじ開けるように目を開ける。そして現実を見るために首を右に捻る。 「くー……くー……」 そこにあったのは桃色がかったブロンドの髪を持ち肌理細やかな白い肌をした少女の寝顔だった。 あと数cmも接近すればお互いの顔が接触するであろうという程の近距離である。普通なら慌てるだろうが、私には何一つ慌てる要素は無い。 何故なら普段から見慣れている光景だからだ。 この少女こそ私の今一番の悩みの種であり、私と一緒にこのベッドで寝ているものであり、このベッドの所有者であり、この部屋の主であり…… 私の『ご主人様』であるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールだ。 長ったらしい名前だし、『ご主人様』と言っても敬意など小指の爪の間に溜まる垢ほども持ち合わせていないので、私はルイズと呼んでいる。 そもそも『ご主人様』と言っても、私が強制的に使い魔にされたので敬意など持てるわけがない。 しかも最近じゃあどうやって殺すか、なんてことを考えているくらいだからな。まあ、近いうち本当に殺してしまうかもしれないが。 そんな『ご主人様』を起こさないように注意を払いながら、ベッドから下り靴を履く。 ルイズは寝たらなかなか起きないので、そこまで注意を払わなくてもいいのだが念には念を入れたほうがいい。 名残惜しくベッドから離れ、窓を見る。 外はまだ薄暗く、日もまだ昇っていない。しかしあと十数分もすれば日も昇り始めるだろうという、そんな時間。 この時間帯、貴族連中はルイズのように殆んどが眠りこけているし、メイドなどもそれほどの数は起きていない。 何らかの行動を開始するのには丁度いい時間帯だ。と言っても大抵この時間に起きる習慣がついているだけなのだが。 とりあえず机の上に置いてあるデルフを手に持ち、いつものように外へ出て行く。恒例の筋トレだ。 デルフを振りましたり、デルフと喋ったりするだけのことなのだが、さすがに人に見られるのは恥ずかしい。こんな早い時間に筋トレをするのも人に見られたくないためだ。 いつもの場所に着き辺りを確認する。 この前一回だけ他のメイドに見られたからな。貴族じゃなかったからあまり気にはしていないが、それでもいい気はしない。 よし。辺りには誰もいないようだ。 それを確認してデルフを鞘から抜き出す。体はルーンが反応し、羽の様に軽く感じる。 「おはよ相棒」 「ああ」 「相棒。俺はおはようって言ったんだぜ」 「だから?」 「普通あいさつを返すもんじゃねえか?」 デルフが言っていることは正論だ。そして私もデルフにおはようと挨拶を返したい。しかし、しかしだ。それはなんとなく気恥ずかしい。 そしてその気持ちをデルフに悟られたくはない。言葉に出そうとするとどうしても気恥ずかしさも一緒に出てしまう。 「剣に挨拶をすることが普通なのか?」 「なんてひでえ相棒だ。日頃よくしゃべってんのに」 「まったく、五月蠅い奴だ。わかったよ。おはよう」 「それでこそ相棒だぜ」 だが、しぶしぶ言いましたという態度をとればこちらの気持ちに気づかれることもあるまい。 ……やれやれ。この調子だと、普通に会話を出来るときが来るのはいつになるだろうか。 「それじゃあ始めるか」 そしていつものようにデルフを振り始めた。 デルフを振りはじめていくら経っただろうか。日が昇っているところから見ると30分位かもしれない。 このようにデルフを振っている時間は楽しくはない。が、ルーンのおかげでデルフと一体になっているかのようなこの感覚は心満たされるものがある。 そんな時間ももう終わりだ。日が昇ったということはこれからどんどん人が起きだす頃だろう。つまり今日の朝はこれで終わりだ。 というわけで、デルフを振るのをやめる。 「お、終わりか相棒」 「ああ、一応な」 そういえば、このデルフと一体になっているかのような感覚はガンダールヴのルーンの効果なんだよな。 そしてデルフが私を相棒と認めてくれているのはこのガンダールヴのルーンがあるからだ。少なくとも出会った当初はそうだった。 このルーンはルイズが私を使い魔にした事によって出来たんだよな?ということは、もしルイズを殺してしまったらこのルーンはどうなるんだ? そのまま残るのか?それとも消えるのか? …………どう考えても消える可能性の方が高い。 もしルーンが消えてしまったら、私とデルフを繋ぐたった一つの目に見える証が消える事になる。さらにガンダールヴとしての力も発揮できなくなってしまう。 なんてことだ。ルイズを殺せば、デルフという相棒とガンダールヴの力を失いかねないとは。 ルイズめ。どこまでも厄介な奴だ。まさかここまで私の足を引っ張るとは。絶対にただじゃ死なないつもりか。 「相棒」 「……ん?」 デルフの声により自分の世界から帰ってくる。随分と考えに没頭していたようだ。さっさと部屋に戻らないとな。 デルフを鞘に収めようとする。 「ちょっと待った。相棒に聞きたいことがあんだけど」 「聞きたいこと?」 デルフが私に?最近何かあったか?デルフにはタルブにいたときに色々と話したと思うんだが…… 「昨日のことなんだけどよ。なんだって相棒はあの貴族の娘っ子のことをバケモノ扱いしてたんだ?たしか虚無を使うからとか言ってたよな」 ああ。なんだそんなことか。 「ルイズが一人であの艦隊を墜としたからだ。あんな真似人間じゃできないね。そして、そんな化け物じみたことが出来るのが虚無だ。 ルイズが虚無を使えなかったら人間扱いはしてやるよ」 「おいおい相棒。心配しなくてもよ、この前みてえにでっかいのは一年に一度撃てるか撃てねえかだって、そういったじゃねえか」 「確かにそうかもしれないが、小さいのは使えるんだろ?それだけでも脅威だ」 「あの貴族の娘っ子が相棒に向かって虚無を使うって、そう思ってんのかね?」 「可能性がないわけじゃない」 「ふーん」 これでデルフの聞きたいことはなくなっただろう。そう判断しデルフを鞘に収める。デルフは何も言わなかった。 656 名前: 使い魔は静かに暮らしたい [sage] 投稿日: 2008/02/27(水) 23:42:24 ID:hX8+iVgM そしてルイズの部屋に戻りながら、考える。殺した後にルーンは残るか否か。とりあえずそれがわかるまでルイズを殺すのは後回しだな。 ほんと、最近は物騒なことを考えるようになったものだ。穏やかだった昔の自分が懐かしい。 そんなことを考えているうちにルイズの部屋に着き、デルフを机の上に置く。 「さて」 ルイズは当分殺せない。これは大きな痛手だ。ルイズを殺すことは私の幸福には必要なことだからな。大きな脅威があっては幸福にはなれない。 ルイズを殺す以外で脅威を取り除く方法は? 祈祷書を消すか?そしたらルイズはこれ以上虚無について知ることは出来ない。少なくとも今以上の脅威にはなるまい。 問題は、祈祷書が消えた場合のルイズの行動だ。祈祷書が消えたらルイズがどうするのか、なんとなくだが想像はつく。 きっと脅されるな。無くなったのはお前のせいだとか言って。そして地べたを這いずり回りながら探させられるのだ。その光景が目に浮かぶようだ。 最低限の想像でこれなのだから実際はさらに激しいに違いない。最悪虚無を使われるかもしれない。そんなのは真っ平ごめんだ。 というわけで祈祷書はだめだ。 だったら杖は?杖が無ければ魔法は使えない、つまり虚無は使えない。我ながらいい考えじゃないか! そうだ。いくら虚無が使えようが虚無が使えなきゃただの小娘だ。 ベッドで寝ているルイズへと近づき、その近くに置いてある杖を手に取る。そしてルイズに向かって放り投げる。 杖はルイズの上に落ちることはなく、落ちる前に小さな音と共に消滅した。 これでよし。とりあえずの脅威は無くなった。 あとは起きたときの反応が楽しみだ。 ----

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