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アヌビス神・妖刀流舞-15」(2007/09/07 (金) 18:04:03) の最新版変更点

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 タバサはアヌビス神の事がとても気になる。  インテリジェンス・ソードやマジックアイテムの類についても、色々調べ勉強し経験してきたのだけれど、間違いなく規格外なのだから。  人の心、つまり精神に作用する物については特に細やかに調べた、その知識は下手なその道の研究員よりも詳しいかも知れない。  しかしあれ程強力な物の話しは聞いた事が無い、それは先住魔法の類を含めてだ。  最近関った“地下水”という名のインテリジェンス・ナイフが有った。あれも人の意識を乗っ取り操る恐るべき存在であった。  だが意識を乗っ取り操ると言っても、それはあくまでも、対象の意識に己の意識を任意の範囲で一時的に上書きし、身体の主導権を奪う文字通りの乗っ取り。つまり深層心理の底まで全てを乗っ取り操ってしまう様な事がなされていない。  アヌビス神のそれは全てが乗っ取られる、その対象の記憶に至るまで全てが乗っ取られ自由に操られてしまう。まさしく問答無用。  操られた者が、決して口にしたく無い、心の底に追いやり隠していたものすら引き出して見せた。  だから『もしかしたら』と思う。壊された心の奥底から一時的に何か拾い上げられないか。  もし、それが駄目だとしても『手段』を容易く知る力となるかもしれない……。  タバサがぼーっとしながら、最近起こった事から、己に必要となる事を色々考えていたら、何時の間にか授業が始まり、ミスタ・ギトーが講壇に立っていた。  このミスタ・ギトー、長い黒髪に、漆黒のマントをまとったその姿が、なんか無気味。そしてどこか冷たい雰囲気を持っていて生徒たちに人気が無い。  いや無かった。と言うべきだ。  最近なにか、一部の者達と共通して感銘を受ける事柄が有ったらしく、同士とも呼べる者達からはリーダー的に扱われている。  先日の一件の際、一方的にその失敗を責め立てたミセス・シュヴルーズとも、見事なまでの和解をしている。むしろ仲良くなって、オスマン氏も交えて一緒に酒を酌み交わしていたという目撃談すらある。  普段の雰囲気はあいもかわらず、ではあるが。 「では授業を始める。知ってのとおり、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ。  さて、諸君らは最強の系統は知っているね?  ん、ではミス・ツェルプストー」 「『虚無』ですわ」 「そう、その通り。『虚無』だ。  最近私はあれに一つの仮説を立てたのだ」  ついほんの前までと違い、えらく普通に肯定されて、少し気張っていたキュルケは拍子抜けた。  大抵こう言う時は、相手の意見を否定して、力技でやり込め、『風』が最強であると語る。一つ上の学年の者達にもそう聞いていた。 「何故『虚無』が最強として、長らくその使い手が現れぬにも関わらず、伝えられているか。そして何故最強と謳われ続ける事となったのか。  それは何故か!  それは『愛』だ。『愛』ゆえに『虚無』は力を得。最強たるのだ!  私は『ギーシュさん』のお陰で目が覚め真理へと至った!」  一気に言うだけ言うと、ミスタ・ギトーは満足げに、不気味に少しニヤリと笑う。  そして片手をばっと掲げる。 「ギーシュさん!」  そのかけ声に併せて一部の生徒が呼応し声を上げる。 「「「ギーシュさん!ギーシュさん!ギーシュさん!」」」  居眠りをしていたギーシュは、己を呼ぶ声に驚いて慌てて飛び起きた。  後年歴史書の“『虚無』の魔法”の項目にミスタ・ギトーの名が記されている。 『虚無』の力の源を解き明かした者達。その先駆者の一人として。  そして、彼が真理へ到達するのを導いた存在として『ギーシュさん』なる偉大な者の存在があったとも記されている。  授業が程よく脱線する事が有るので、最近ミスタ・ギトーの授業は妙に人気がある。  さてさて、『ギーシュさん』コールが程よく教室に鳴り響き、『え?』『え?』と寝起きのギーシュが寝惚けてキョロキョロしている時、教室の扉がガラッと開き、緊張した顔のミスタ・コルベールが現れた。  彼は珍妙ななりをしていた。頭にどこかで見た事有るような髪型の金髪カツラをのっけている。見ると、ローブの胸にはレースの飾りやら、刺繍やらが踊っている。  何をそんなにめかしているのだろう? 「ミスタ?」  ギトーがニヤリと嬉しそうに笑った。 「参加されますかな?」  コルベールはギトーのその言葉に、いやいやと首を振る。 「おっほん。今日の授業はすべて中止であります!」  コルベールは重々しい調子で告げた。教室中から歓声があがる。その歓声を抑えるように両手を振りながら、ミスタ・コルベールは言葉を続けた。 「えー、皆さんにお知らせですぞ」  もったいぶった調子で、コルベールはのけぞった。その拍子に頭にのっけたカツラがとれて、床に落っこちた。  ゲェーと言った声が彼方此方で小さく上がる。  一番前に座ったタバサが、コルベールを指差して呟いた。 「『ギーシュさん』の真似をするのは身の程知らず」  その声に便乗するようにして次々と声が上がる。 「このコッ禿げがァっ!『ギーシュさん』の真似をするなら半端すんな!」 「今のカツラぽとりは『ギーシュさん』への挑戦状かァ?」 「禿げ如きが『ギーシュさん』の真似をするとか侮辱的過ぎる」  ミスタ・ギトーがまあまあとその場を嗜める。 「諸君、『ギーシュさん』ならば、その様な低俗な責めをすると思うのかね?」  何処ぞで誰かに言われた事を、そのままに口にするミスタ・ギトー。  なお名前を連呼されているギーシュ・ド・グラモン本人は、『調子に乗るなよォォォォー!』とかドスの利いた声でマリコルヌに絡まれ、『よ、寄らないでくれたまえ、吐息がっ吐息が凶悪だよ』とか泣き言を繰り返している。  キュルケは状況にドン引きで、タバサの肩を抑えて、がっくんがっくん揺さ振りながら『タバサあなた正気?』『熱、熱は無い?悪い風邪貰ってきてないわよね?』とか繰り返して聞いている。  この教室の混乱の自分が原因なのを棚に上げ、コルベールが顔を真っ赤にして大きな声で怒鳴った。 「黙りなさい!ええい!黙りなさいこわっぱどもが!ミスタ・ギトーもですぞ!そのセリフまんまオールド・オスマンに叱れた時の真似ではないですか!  私は別に『ギーシュさん』にあやかって『もててぇー!』とか思った訳ではないんですぞ!」  禿げ中年の哀愁に教室中が静まり返った。 「そ、そもそも貴族たるもの、もっと気品ある振舞いをするものですぞ。  これでは王室に教育の成果が疑われる」  睨み付けるように教室を見渡した後、コルベールはわざとらしく咳払いをして、やたら恭しくしゃべり始めた。 「えーおぼん。皆さん、本日はトリステイン魔法学院にとって、よき日であります。始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日であります。  恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸されます」  教室がざわめいた。  ちなみに、ルイズとアヌビス神はこの場には居ない。  何をしているかというと……。  ここはトリステインの城下町。その通りを歩いている。背にはデルフリンガー、腰にはアヌビス神。そしてその隣を、フーケちゃんもといミス・ロングビルが歩いている。 「なんてわたしが、あんたなんかが街に出るのに付き合わないといけないのよ」  ぶちぶち愚痴を繰り返すルイズ。学院を出発した時からずっとこんな調子だ。 「わたくしが、学院から外出する折りは、極力事情を知っている人が一人は必ず見張りとして付いてくると、決めてたのではないですか?  そして、誰にするか決める為にキュルケ、タバサとサイコロ勝負して負けたのでしょう」 「わざとでしょ?今わざと丁寧に喋ったでしょ?」 「だって今はミス・ロングビルですから」 「キィーッ。その態度よ、その態度!それが、ム・カ・ツ・ク!のよっ!」  最終的に猿の様な声を出してルイズが地団駄を踏む。これもずっと繰り返されている。ちなみに道中の馬上でもやらかしていて、馬が暴走する事数回。 「ゲラゲラゲラゲラ、これで何度目だ。おめーは口じゃあ勝てねえよ」 「そんな事よりだな、ご主人さま。おれミス・ロングビルの尻にも、ぶら下ってみたい。あの尻肉は一度肉厚を確めて置くべきだ」 「なーに笑ってんのよ、デルフっ!  アヌビスは空気読みなさいよ!  あ、ちょっと帰りに用が出来たわ。  むしろ今から先にこなそうかしら。ええそうね。そうすべきね」 「約束の時間が迫っているのだけど?」 「いいえ、それでもわたしは行くわ。細工屋でコイツ等のドレスアップして、武器屋に売りとばして目玉商品として陳列して貰うわ」  きりが無いので、フーケもといミス・ロングビルは騒ぐルイズの首根っこを掴んで其の侭引っ張っていく事にした。 「正直監視されてるってより、保護してる気分だわ」  路地の屋根の隙間に見える青空を仰ぎながら、土くれのフーケはぼやいた。  さてさて、何故城下町に着ているかの事情の説明といこう。  何でもミス・ロングビルいわく、送金と手紙を送りたいけれど、学院から送ったという足がつくのは嫌なのだそうで。  本当なら手渡ししたい所ながら、現状ではそれも適わず。なので信用できる仲介人に頼む為に城下町まで行きたい。との事。 「で、どこに行くのよ。着いてから教えるって事だったわよね」 「芝居小屋の中で落ち合う事になってるわ」 「何でそんな面倒な場所に」 「秘密の話しをするには、もってこいなのよ。覚えておきなさい」  話したり『ふーん、そんなものなんだ』とか考えながら歩いている内に目的地の場末のうらぶれた芝居小屋へと到着した。  本日の演目の垂れ幕が風にたなびいている。  それを見たフーケが、ぶっといきなり噴出した。  たなびくそれを良く見ると“土くれのフーケ”の文字が見える。 「あんた有名じゃないの。こんなののお題目になるなんて人気あるわねー」  ルイズはけらけら笑いながら、フーケの背中をぽんぽんと叩く。 「じょ、冗談じゃないわよ!仲介人はわたしの正体知ってるのよ」 「良かったじゃない。今頃中でお腹抱えて笑いながら待ってるわよ」  その時ルイズに、垂れ幕の影になって見えてなかった部分が、たなびいた事により目に入った。 『快傑覆面貴族 対 土くれのフーケ』  ルイズ、盛大に噴出した。あまりに不意打ちだった為、激しく咽て咳き込む。  正直忘れかけていた。街に出る事も無かったし、最近慌しかったし。  何より暇がある時には、この厄介で重たい連中をせめて普通に、よろめかずに歩けるように、走れるようにと少し走りこんでみたりもしてた訳で。  完全に気が回っていなかった。  突然挙動が妖しくなったルイズを見て、フーケがにやぁっと笑う。 「へぇ~、あんたも中々派手な事してるじゃない」 「ち、違うわ。ちょっとそこらを飛んでたクワガタが口に――――――――」 「ハッハッハッハ、照れるじゃないか。そうだぜ、あれはおれとご主人さまだ」 「何だと?おめーら俺に内緒で、そんな面白そうな事してたのかよ」 「いきなり勝手にばらすなあああああああああっ!!  あと面白くなあああああああああああああいっ!!」  涙目で地面にアヌビス神を叩きつけ、続けてぶつける様にデルフリンガーを叩き付ける。 「何度空気読めって言ったら判るのよ!判るのよ!判るのよ!  この屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!」  ルイズは人目も気にせず涙目で、アヌビス神とデルフリンガーを踏みつけるように、凄まじい勢いで蹴りはじめた。 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「ばれちゃったじゃないの!よりによってのよりによってな相手にばれちゃったじゃないの!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「自分で、ばれたとか言ってたら肯定じゃねーか」 「口答えするなーっ!屑鉄二号ッ!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「ば、馬鹿。余計な事言ったら延長され―――――」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ  きりが無いのでフーケは勝手に芝居小屋の中へと入っていった。  中では、普段は生真面目で殆ど笑わない仲介人が、腹を抱えて涙を流しながら笑いを堪えていた。 『ではこの手紙はプッちゃんとププッ届けプッ』『でプッ手数プッ料はプククククッ』『次プッ何時プッのププッ』  話しにならない。話しが進まない。  最近身の回りがおかしい。絶対におかしいわとフーケは考え嘆いた。  疲れ果てて芝居小屋から出てくると、ルイズがデルフリンガーでアヌビス神を殴打している所であった。  終わらないのが終わり。  紆余曲折し過ぎた(主にルイズが)所為で。学院に帰り着いたのは予定を大幅に遅れ、日も暮れかけた頃となった。  紆余曲折の中には、突然建物が大きくなっていた武器屋や、裏通りの方の秘薬屋の傍を通った時に、アヌビス神がやたらと緊張し、マジモードのスイッチが入って、 『クソッ、出やがったか!そこの道の影だァー!』『まさかそこのドブネズミかッ!?』『ちィッ避けろ!』『一匹だけじゃないだと!?』 とか何も見えないのに、ひとり幻覚を見て騒いだりで一悶着等、色々有った事が含まれるが今回は割愛、省略する。  さてさて、辛うじて学院へと帰り付けたルイズとミス・ロングビル。何時もの倍疲れた気がする。長い1日だったと二人とも正直思う。 「早朝に出立して昼過ぎには帰り着く予定だったのに、なんでこうなるのよ!」  事務処理がまるまる1日分溜まって、フーケもといミス・ロングビルは嘆いた。 「ところでフーケじゃなくて、ミス・ロングビル。何か学院の雰囲気がおかしくないかしら?」 「ん?……あら、おかしいわね。早朝出立する時には何かあるって話しは聞かなかったわよ」  使用人たちが慌しく働いている。馬小屋に繋がれている馬の数が多い。  少し見知った顔のメイドの姿が見えたので、声をかけてみる。 「ちょっと、えっとーシエスタ、でよかったかしら」 「お呼びでしょうか、ミス・ヴァリエール」 「この騒ぎはな―――――――――――」 「相変わらず(刃を)埋めたい胸で、(ぶった斬りたい)興奮を刺激するな、シエスタちゃんは」  空気を読まないアヌビス神が割り込んできた。  お約束の様に『うがー』とか叫ぶルイズがアヌビス神を地面に叩きつけて、騒ぎ始めたので、ミス・ロングビルが変わって話しを聞き始める。 「学院内が大変慌しい様ですけど、何かあったのでしょうか?」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「ご存知無かったのですね。  アンリエッタ姫殿下が、ゲルマニアご訪問からのお帰りにご滞在中なのです。  それでは私も晩餐の為の仕事がありますので」  ペコリと頭を下げるとシエスタは、ぱたぱたと急いで駆けていった。 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「あら、これは大変だわ。多分わたしの仕事も更に増えてるわね。それじゃルイ……  ルイズ?」 「何度自重しろって言ったらわかんのよ。ええっ?この犬!犬!犬!あんたなんか剣じゃなくて犬よ!」  アヌビス神の折檻に夢中のルイズの耳には、今のシエスタの言葉は届いていなかったらしく……。 「ルイズ~?ミス・ヴァリエール?」 「わんはどうしたの?犬だからわんでしょ、わん!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「ミス・まな板。ミス・洗濯板。ミス・覆面貴族」  気を引く為に、とても気にしていそうな言葉を羅列してみた。 「ご主人さま。ほ、ほら、ロングビルが呼んでるぜ?」 「話し逸らそうたってそうはいかないわよ。はい、わんでしょ、わん!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ  そして今も話しが通じず。『だめだこりゃ』と思いついに諦める。  ミス・ロングビルは仕方が無いので『姫殿下がいらしてますよ』と書いたメモを背中のデルフリンガーに貼りつけて、急いで理事長室に向った。 「わたしって結構生真面目よね?」  道中何度何度も、己に問いながら。  [[To Be Continued>アヌビス神・妖刀流舞-16]] ---- #center(){[[24<>アヌビス神・妖刀流舞-14]]         [[戻る>アヌビス神・妖刀流舞]]}
 タバサはアヌビス神の事がとても気になる。  インテリジェンス・ソードやマジックアイテムの類についても、色々調べ勉強し経験してきたのだけれど、間違いなく規格外なのだから。  人の心、つまり精神に作用する物については特に細やかに調べた、その知識は下手なその道の研究員よりも詳しいかも知れない。  しかしあれ程強力な物の話しは聞いた事が無い、それは先住魔法の類を含めてだ。  最近関った“地下水”という名のインテリジェンス・ナイフが有った。あれも人の意識を乗っ取り操る恐るべき存在であった。  だが意識を乗っ取り操ると言っても、それはあくまでも、対象の意識に己の意識を任意の範囲で一時的に上書きし、身体の主導権を奪う文字通りの乗っ取り。つまり深層心理の底まで全てを乗っ取り操ってしまう様な事がなされていない。  アヌビス神のそれは全てが乗っ取られる、その対象の記憶に至るまで全てが乗っ取られ自由に操られてしまう。まさしく問答無用。  操られた者が、決して口にしたく無い、心の底に追いやり隠していたものすら引き出して見せた。  だから『もしかしたら』と思う。壊された心の奥底から一時的に何か拾い上げられないか。  もし、それが駄目だとしても『手段』を容易く知る力となるかもしれない……。  タバサがぼーっとしながら、最近起こった事から、己に必要となる事を色々考えていたら、何時の間にか授業が始まり、ミスタ・ギトーが講壇に立っていた。  このミスタ・ギトー、長い黒髪に、漆黒のマントをまとったその姿が、なんか無気味。そしてどこか冷たい雰囲気を持っていて生徒たちに人気が無い。  いや無かった。と言うべきだ。  最近なにか、一部の者達と共通して感銘を受ける事柄が有ったらしく、同士とも呼べる者達からはリーダー的に扱われている。  先日の一件の際、一方的にその失敗を責め立てたミセス・シュヴルーズとも、見事なまでの和解をしている。むしろ仲良くなって、オスマン氏も交えて一緒に酒を酌み交わしていたという目撃談すらある。  普段の雰囲気はあいもかわらず、ではあるが。 「では授業を始める。知ってのとおり、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ。  さて、諸君らは最強の系統は知っているね?  ん、ではミス・ツェルプストー」 「『虚無』ですわ」 「そう、その通り。『虚無』だ。  最近私はあれに一つの仮説を立てたのだ」  ついほんの前までと違い、えらく普通に肯定されて、少し気張っていたキュルケは拍子抜けた。  大抵こう言う時は、相手の意見を否定して、力技でやり込め、『風』が最強であると語る。一つ上の学年の者達にもそう聞いていた。 「何故『虚無』が最強として、長らくその使い手が現れぬにも関わらず、伝えられているか。そして何故最強と謳われ続ける事となったのか。  それは何故か!  それは『愛』だ。『愛』ゆえに『虚無』は力を得。最強たるのだ!  私は『ギーシュさん』のお陰で目が覚め真理へと至った!」  一気に言うだけ言うと、ミスタ・ギトーは満足げに、不気味に少しニヤリと笑う。  そして片手をばっと掲げる。 「ギーシュさん!」  そのかけ声に併せて一部の生徒が呼応し声を上げる。 「「「ギーシュさん!ギーシュさん!ギーシュさん!」」」  居眠りをしていたギーシュは、己を呼ぶ声に驚いて慌てて飛び起きた。  後年歴史書の“『虚無』の魔法”の項目にミスタ・ギトーの名が記されている。 『虚無』の力の源を解き明かした者達。その先駆者の一人として。  そして、彼が真理へ到達するのを導いた存在として『ギーシュさん』なる偉大な者の存在があったとも記されている。  授業が程よく脱線する事が有るので、最近ミスタ・ギトーの授業は妙に人気がある。  さてさて、『ギーシュさん』コールが程よく教室に鳴り響き、『え?』『え?』と寝起きのギーシュが寝惚けてキョロキョロしている時、教室の扉がガラッと開き、緊張した顔のミスタ・コルベールが現れた。  彼は珍妙ななりをしていた。頭にどこかで見た事有るような髪型の金髪カツラをのっけている。見ると、ローブの胸にはレースの飾りやら、刺繍やらが踊っている。  何をそんなにめかしているのだろう? 「ミスタ?」  ギトーがニヤリと嬉しそうに笑った。 「参加されますかな?」  コルベールはギトーのその言葉に、いやいやと首を振る。 「おっほん。今日の授業はすべて中止であります!」  コルベールは重々しい調子で告げた。教室中から歓声があがる。その歓声を抑えるように両手を振りながら、ミスタ・コルベールは言葉を続けた。 「えー、皆さんにお知らせですぞ」  もったいぶった調子で、コルベールはのけぞった。その拍子に頭にのっけたカツラがとれて、床に落っこちた。  ゲェーと言った声が彼方此方で小さく上がる。  一番前に座ったタバサが、コルベールを指差して呟いた。 「『ギーシュさん』の真似をするのは身の程知らず」  その声に便乗するようにして次々と声が上がる。 「このコッ禿げがァっ!『ギーシュさん』の真似をするなら半端すんな!」 「今のカツラぽとりは『ギーシュさん』への挑戦状かァ?」 「禿げ如きが『ギーシュさん』の真似をするとか侮辱的過ぎる」  ミスタ・ギトーがまあまあとその場を嗜める。 「諸君、『ギーシュさん』ならば、その様な低俗な責めをすると思うのかね?」  何処ぞで誰かに言われた事を、そのままに口にするミスタ・ギトー。  なお名前を連呼されているギーシュ・ド・グラモン本人は、『調子に乗るなよォォォォー!』とかドスの利いた声でマリコルヌに絡まれ、『よ、寄らないでくれたまえ、吐息がっ吐息が凶悪だよ』とか泣き言を繰り返している。  キュルケは状況にドン引きで、タバサの肩を抑えて、がっくんがっくん揺さ振りながら『タバサあなた正気?』『熱、熱は無い?悪い風邪貰ってきてないわよね?』とか繰り返して聞いている。  この教室の混乱の自分が原因なのを棚に上げ、コルベールが顔を真っ赤にして大きな声で怒鳴った。 「黙りなさい!ええい!黙りなさいこわっぱどもが!ミスタ・ギトーもですぞ!そのセリフまんまオールド・オスマンに叱れた時の真似ではないですか!  私は別に『ギーシュさん』にあやかって『もててぇー!』とか思った訳ではないんですぞ!」  禿げ中年の哀愁に教室中が静まり返った。 「そ、そもそも貴族たるもの、もっと気品ある振舞いをするものですぞ。  これでは王室に教育の成果が疑われる」  睨み付けるように教室を見渡した後、コルベールはわざとらしく咳払いをして、やたら恭しくしゃべり始めた。 「えーおぼん。皆さん、本日はトリステイン魔法学院にとって、よき日であります。始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日であります。  恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸されます」  教室がざわめいた。  ちなみに、ルイズとアヌビス神はこの場には居ない。  何をしているかというと……。  ここはトリステインの城下町。その通りを歩いている。背にはデルフリンガー、腰にはアヌビス神。そしてその隣を、フーケちゃんもといミス・ロングビルが歩いている。 「なんてわたしが、あんたなんかが街に出るのに付き合わないといけないのよ」  ぶちぶち愚痴を繰り返すルイズ。学院を出発した時からずっとこんな調子だ。 「わたくしが、学院から外出する折りは、極力事情を知っている人が一人は必ず見張りとして付いてくると、決めてたのではないですか?  そして、誰にするか決める為にキュルケ、タバサとサイコロ勝負して負けたのでしょう」 「わざとでしょ?今わざと丁寧に喋ったでしょ?」 「だって今はミス・ロングビルですから」 「キィーッ。その態度よ、その態度!それが、ム・カ・ツ・ク!のよっ!」  最終的に猿の様な声を出してルイズが地団駄を踏む。これもずっと繰り返されている。ちなみに道中の馬上でもやらかしていて、馬が暴走する事数回。 「ゲラゲラゲラゲラ、これで何度目だ。おめーは口じゃあ勝てねえよ」 「そんな事よりだな、ご主人さま。おれミス・ロングビルの尻にも、ぶら下ってみたい。あの尻肉は一度肉厚を確めて置くべきだ」 「なーに笑ってんのよ、デルフっ!  アヌビスは空気読みなさいよ!  あ、ちょっと帰りに用が出来たわ。  むしろ今から先にこなそうかしら。ええそうね。そうすべきね」 「約束の時間が迫っているのだけど?」 「いいえ、それでもわたしは行くわ。細工屋でコイツ等のドレスアップして、武器屋に売りとばして目玉商品として陳列して貰うわ」  きりが無いので、フーケもといミス・ロングビルは騒ぐルイズの首根っこを掴んで其の侭引っ張っていく事にした。 「正直監視されてるってより、保護してる気分だわ」  路地の屋根の隙間に見える青空を仰ぎながら、土くれのフーケはぼやいた。  さてさて、何故城下町に着ているかの事情の説明といこう。  何でもミス・ロングビルいわく、送金と手紙を送りたいけれど、学院から送ったという足がつくのは嫌なのだそうで。  本当なら手渡ししたい所ながら、現状ではそれも適わず。なので信用できる仲介人に頼む為に城下町まで行きたい。との事。 「で、どこに行くのよ。着いてから教えるって事だったわよね」 「芝居小屋の中で落ち合う事になってるわ」 「何でそんな面倒な場所に」 「秘密の話しをするには、もってこいなのよ。覚えておきなさい」  話したり『ふーん、そんなものなんだ』とか考えながら歩いている内に目的地の場末のうらぶれた芝居小屋へと到着した。  本日の演目の垂れ幕が風にたなびいている。  それを見たフーケが、ぶっといきなり噴出した。  たなびくそれを良く見ると“土くれのフーケ”の文字が見える。 「あんた有名じゃないの。こんなののお題目になるなんて人気あるわねー」  ルイズはけらけら笑いながら、フーケの背中をぽんぽんと叩く。 「じょ、冗談じゃないわよ!仲介人はわたしの正体知ってるのよ」 「良かったじゃない。今頃中でお腹抱えて笑いながら待ってるわよ」  その時ルイズに、垂れ幕の影になって見えてなかった部分が、たなびいた事により目に入った。 『快傑覆面貴族 対 土くれのフーケ』  ルイズ、盛大に噴出した。あまりに不意打ちだった為、激しく咽て咳き込む。  正直忘れかけていた。街に出る事も無かったし、最近慌しかったし。  何より暇がある時には、この厄介で重たい連中をせめて普通に、よろめかずに歩けるように、走れるようにと少し走りこんでみたりもしてた訳で。  完全に気が回っていなかった。  突然挙動が妖しくなったルイズを見て、フーケがにやぁっと笑う。 「へぇ~、あんたも中々派手な事してるじゃない」 「ち、違うわ。ちょっとそこらを飛んでたクワガタが口に――――――――」 「ハッハッハッハ、照れるじゃないか。そうだぜ、あれはおれとご主人さまだ」 「何だと?おめーら俺に内緒で、そんな面白そうな事してたのかよ」 「いきなり勝手にばらすなあああああああああっ!!  あと面白くなあああああああああああああいっ!!」  涙目で地面にアヌビス神を叩きつけ、続けてぶつける様にデルフリンガーを叩き付ける。 「何度空気読めって言ったら判るのよ!判るのよ!判るのよ!  この屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!屑鉄!」  ルイズは人目も気にせず涙目で、アヌビス神とデルフリンガーを踏みつけるように、凄まじい勢いで蹴りはじめた。 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「ばれちゃったじゃないの!よりによってのよりによってな相手にばれちゃったじゃないの!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「自分で、ばれたとか言ってたら肯定じゃねーか」 「口答えするなーっ!屑鉄二号ッ!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「ば、馬鹿。余計な事言ったら延長され―――――」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ  きりが無いのでフーケは勝手に芝居小屋の中へと入っていった。  中では、普段は生真面目で殆ど笑わない仲介人が、腹を抱えて涙を流しながら笑いを堪えていた。 『ではこの手紙はプッちゃんとププッ届けプッ』『でプッ手数プッ料はプククククッ』『次プッ何時プッのププッ』  話しにならない。話しが進まない。  最近身の回りがおかしい。絶対におかしいわとフーケは考え嘆いた。  疲れ果てて芝居小屋から出てくると、ルイズがデルフリンガーでアヌビス神を殴打している所であった。  終わらないのが終わり。  紆余曲折し過ぎた(主にルイズが)所為で。学院に帰り着いたのは予定を大幅に遅れ、日も暮れかけた頃となった。  紆余曲折の中には、突然建物が大きくなっていた武器屋や、裏通りの方の秘薬屋の傍を通った時に、アヌビス神がやたらと緊張し、マジモードのスイッチが入って、 『クソッ、出やがったか!そこの道の影だァー!』『まさかそこのドブネズミかッ!?』『ちィッ避けろ!』『一匹だけじゃないだと!?』 とか何も見えないのに、ひとり幻覚を見て騒いだりで一悶着等、色々有った事が含まれるが今回は割愛、省略する。  さてさて、辛うじて学院へと帰り付けたルイズとミス・ロングビル。何時もの倍疲れた気がする。長い1日だったと二人とも正直思う。 「早朝に出立して昼過ぎには帰り着く予定だったのに、なんでこうなるのよ!」  事務処理がまるまる1日分溜まって、フーケもといミス・ロングビルは嘆いた。 「ところでフーケじゃなくて、ミス・ロングビル。何か学院の雰囲気がおかしくないかしら?」 「ん?……あら、おかしいわね。早朝出立する時には何かあるって話しは聞かなかったわよ」  使用人たちが慌しく働いている。馬小屋に繋がれている馬の数が多い。  少し見知った顔のメイドの姿が見えたので、声をかけてみる。 「ちょっと、えっとーシエスタ、でよかったかしら」 「お呼びでしょうか、ミス・ヴァリエール」 「この騒ぎはな―――――――――――」 「相変わらず(刃を)埋めたい胸で、(ぶった斬りたい)興奮を刺激するな、シエスタちゃんは」  空気を読まないアヌビス神が割り込んできた。  お約束の様に『うがー』とか叫ぶルイズがアヌビス神を地面に叩きつけて、騒ぎ始めたので、ミス・ロングビルが変わって話しを聞き始める。 「学院内が大変慌しい様ですけど、何かあったのでしょうか?」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「ご存知無かったのですね。  アンリエッタ姫殿下が、ゲルマニアご訪問からのお帰りにご滞在中なのです。  それでは私も晩餐の為の仕事がありますので」  ペコリと頭を下げるとシエスタは、ぱたぱたと急いで駆けていった。 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「あら、これは大変だわ。多分わたしの仕事も更に増えてるわね。それじゃルイ……  ルイズ?」 「何度自重しろって言ったらわかんのよ。ええっ?この犬!犬!犬!あんたなんか剣じゃなくて犬よ!」  アヌビス神の折檻に夢中のルイズの耳には、今のシエスタの言葉は届いていなかったらしく……。 「ルイズ~?ミス・ヴァリエール?」 「わんはどうしたの?犬だからわんでしょ、わん!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「ミス・まな板。ミス・洗濯板。ミス・覆面貴族」  気を引く為に、とても気にしていそうな言葉を羅列してみた。 「ご主人さま。ほ、ほら、ロングビルが呼んでるぜ?」 「話し逸らそうたってそうはいかないわよ。はい、わんでしょ、わん!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ  そして今も話しが通じず。『だめだこりゃ』と思いついに諦める。  ミス・ロングビルは仕方が無いので『姫殿下がいらしてますよ』と書いたメモを背中のデルフリンガーに貼りつけて、急いで理事長室に向った。 「わたしって結構生真面目よね?」  道中何度何度も、己に問いながら。  [[To Be Continued>アヌビス神・妖刀流舞-16]] ---- #center(){[[14<>アヌビス神・妖刀流舞-14]]         [[戻る>アヌビス神・妖刀流舞]]}

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