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サーヴァント・スミス-22」(2007/08/13 (月) 23:19:20) の最新版変更点

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「ナランチャは……あそこね」 怪我をした村民達を庇いつつ、襲い掛かってくる兵士を爆発で弾き飛ばしていくルイズ。そして、トドメはキュルケ。 余計な精神力は使えないので、タバサ、ギーシュは力を温存していた。 突如として上空に現れた『竜の羽衣』のおかげで地上にも影響が出ており、散り散りになって混乱している兵士も少なくはない。 だが、旗艦『レキシントン』号には全く傷を与えられていないのが現状であった。 「ワルドが火竜を使ってるってことは……風竜とかは温存してるって事?」 その疑問は、後々分かる事になるが、今はこの兵士達を止めるべきだ。 トリステインの兵士達も加勢してくれているが、数では差がある。 しかし、段々と敵も落ち着きを取り戻す。 統制の取れた動きを乱すためにあちらこちらに爆発を起こし、散開させたところを堅実にキュルケが叩いていった。 「そろそろいいわね?タバサ、飛ぶわよ」 シルフィードの翼が開かれる。 大きな風を巻き起こして、一旦敵を吹き飛ばした跡に、ルイズたち全員が乗り込んで飛翔した。 「主人を差し置いて……勝手に死ぬんじゃないわよ……ナランチャ」 今まさに、一瞬でも隙を生み出せば死に直結する戦場へ、蒼い巨体が突っ込んでいった。 「死んでもらわねばならん!貴様が邪魔なのだ、ガンダールヴッ!」 「俺にとっちゃお前が一番邪魔だよッ!」 機銃の弾数を、あの旗艦用にも取っておかなければならないのに、ワルドは火竜さえも使いこなす。 焦りと疲れを感じて来たナランチャは、デルフリンガーを抜いた。握るわけではないが。 「久し振りに俺を抜いたな、相棒」 「なんとなくな。気分転換でもしないとやってらんないつーのよッ!」 エアロスミスの機銃を撃ち出す。 極限まで接近して爆弾を放ったが、それを回避され、弾丸はまたしてもエア・ニードルで弾かれた。 ウィンド・ブレイクで巻き起こった風が機体を大きく揺さぶるが、体勢を立て直し様に操縦桿に力を込め、何とかして後ろへ回り込もうと画策する。 結果的には、確かに回りこめた。 それに対応すべく、ワルドがウィンド・ブレイクを放ってくる。そのために、容易な反撃が出来ない。 下手をすれば墜落死しかねない強風だ。 次に、連続でライトニング・クラウドが放たれた。それも『前後』から。 「前後から電撃が来るッ!?『遍在』……しまった!火竜に乗ってんのは……!」 火竜が他の者より大型であり、二酸化炭素を多く排出していた為、排出量の差に気づけなかった。 本体のワルドは、きちんと風竜に乗っていたのだ。 今まさに本体のワルドがトドメを刺そうと出てきた為、接近に気づけなかったとは言え、ゼロ戦のスピードに任せて避ける。 「チッ、外した?なら、これで!」 火竜を無理やり突進させ、ゼロ戦にぶつける遍在。 そして、火竜の喉にあった、ブレスを吐く為の油に火を撃ち、引火。 ウィンド・ブレイクでゼロ戦へ叩き付け、自身はフライを唱えて、ゆっくりと地面に着地した。 ゼロ戦の装甲が燃え、剥がれ落ちる。 この攻撃だけで、甚大とは行かないまでも、結構な損害を受けてしまった。 「て……テメェ、あの竜……『味方』……」 「味方だとッ!?違うねッ、こいつは生まれついての『道具』だッ!ガンダールヴさん、早えとこ成仏しちまいなぁーッ!」 またぶっ壊れたワルドが、挟み撃ちの形でエア・ニードルを構えて突っ込む。 上空からは竜に乗った本体、下からはフライで浮き上がった遍在。 こういう時はかわすと勝手に相打ちしてくれるものだが、現実はそう甘くなかった。 抜け出したにもかかわらず、追ってくる。 ワルドの風竜には、遍在と本体が同時に乗ることとなり、二つのライトニング・クラウドが手負いのゼロ戦を襲う。 逃げ惑うナランチャに高笑いするワルドだが、後ろに気配を感じたため、上昇。 ついさっきまでワルドが居た地点を、氷柱が撃ち抜いた。 「外した」 タバサの呟きを受けて、ルイズがシルフィードの上で立ち上がった。 「ワルド……遍在を下に下ろしなさい。私が倒すわ」 「ちょ、ちょっとルイズ?相手はスクウェア……」 「……ルイズ、僕も行こう」 ギーシュが、応じたワルドが遍在を下ろすのを見て、ルイズと自分にレビテーションをかけて着地する。 「あ、あんたもドットじゃないのよ!」 「大丈夫」 キュルケが頭をかきむしるが、タバサがシルフィードにレキシントン号へ向かうよう指示した為、程なくその姿は掻き消えて言った。 (2人の力が、レキシントン号を落とすために必要なはず……ワルドの遍在を一体でもいいから倒せば、少しでも有利になる。やるしかないのよ、ルイズ) ギーシュが着いてきたのは予想外だったが、ここまで来たらもう何も言うまい。 本当はワルド本体を倒したかったが、耐久力が下がっている遍在の方が勝てる確率が高い。 感情でただ闇雲に突っ込むのではなく、役に立つ為に今、ここに居る。 ナランチャの一番の障害であるワルドの魔力を少しでも削ぐのが、自分自身の役目だと、ルイズは思う。 ギーシュも同じ思いであった。 「残念ながらおまけがついてきちゃったわ。本当は一人でやりたかったけど……」 「お……おまけ……」 「寧ろ2人でかかってきてくれたほうが好都合だ、まとめて倒せる」 ワルドの挑発にギーシュがちょっと引っかかっている。 「そう。こっちもそんなに時間かける気ないから」 我慢。こんな軽い挑発にかかってはいけないのだ。 その代わり、その怒りは杖に込める。 前触れもなしに、爆発が起きた。 当たり前のようにワルドは避けるが、着地地点にワルキューレを作り出し、槍で待ち伏せをする。 ウィンド・ブレイクで吹っ飛ばされ、軽々と退けられるも、ワルドの背後にワルキューレを2体。 剣を振うが、それすらエア・ニードルで両断され、2体のワルキューレはあっという間に袈裟切りにされる。 爆発が二度起こるも、回避されて逆にエア・カッターで反撃され、ギーシュの右肩をいっそ気持ちいいほど綺麗に切込みを入れた。 血が噴出すが、まだ始まったばかりである、倒れるわけには行かない。 長い青銅の槍を、ワルキューレが振り回す。 歯が立たないと分かっていても、足止めぐらいにはなるはずだ。 エア・ニードルがワルキューレの両腕を切り落とす、その隙にルイズが接近。 遍在の頭を杖で殴った拍子に、爆発を起こす。 吹っ飛ぶワルドの遍在の体に、ワルキューレの剣が投げ込まれた。 それを杖で防ぎ、ウィンド・ブレイクで未だに宙を浮いていたルイズを吹き飛ばし、地面へとたたきつける。 ギーシュの視線がそれた隙に、エア・カッターを放つも、気づいたルイズが瞬時に爆発を起こして拮抗させ、消滅させた。 立て続けに地面へと爆発を起こす。土煙が巻き起こり、破片が宙に舞う。 その宙に舞った土の破片を青銅へと錬金、上空から落ちてくる青銅。 だが、いとも簡単に払いのけられる。 ワルキューレをワルドの目の前へと配置するが、限りのあるワルキューレがなんともない様に裂かれ、ギーシュの魔力の半分ぐらいは無駄になっていた。 頼みの綱のルイズの攻撃も、僅かな風の変化を読み取って、全て避けられる。 「う……勝てるのか?」 「さあ、分からないわね」 懐から落とした祈祷書を拾い上げながら言う。 その際、何かが見えた。 「……文字?」 いや、白紙だ。 早くも疲労が積もってきているのか、と不安がりつつ、まだ諦めないとばかりに土を蹴り上げる。 杖で払いのけるワルド。 その一瞬にギーシュが花びらを飛ばし、油へ錬金。 足元に出来た油が、ワルドの足を取った。 「むッ!?」 「ええいッ!」 ついでにギーシュが発火させ、そこにルイズの攻撃が飛んだ。 爆発で吹っ飛ばされたワルド。足には、燃え盛る炎が移っていた。 風で炎を吹き飛ばす。 ギーシュは火についてはあまり得意ではない。使えるのは発火ぐらい。 勢いはそれほどよくなかったので、すぐ消えてしまうが、十分。 ワルドにルイズが飛び掛って、顔面へ杖を押し込んだ状態で、レビテーションを唱えた。 もちろん、失敗。そして―― 次の瞬間には、脇腹に突き刺さったワルドの杖が見えていた。 杖を滴る血。激痛に顔をゆがめつつ、爆発を制御しようとするが、見当違いの方向へ爆発の衝撃が走った。 力づくで引き抜いて離れようとするが、少しだけ離れた所でライトニング・クラウドが飛んだ。 回避は不可能。その電撃の奔流は、爆発でも押しとめる事は出来ない。 「ル、イズッ!これでぇぇッ!」 ワルキューレの残骸から咄嗟に見つけた剣を投げつける。 その動きはあくまで素早い。 電光が出る直前のことだった。 「そっか!ギーシュ、ありがとッ!」 思いついたようにその剣を握り、すぐそこにせまるライトニング・クラウド目掛けて投げつけた。 正確に命中、青銅が電気を通し、宙で勢いを相殺されて静止する。 そこへ、ここぞとばかりに狙い済ました一撃を叩き込んだ。 爆風がその剣をワルドに突き刺す。 バチィッ、と弾ける様な音が鳴った。声を出す間もない。 たった一瞬の出来事。 その遍在は凄まじい勢いで感電し、消えた。 自らが放ったライトニング・クラウドを撃ち返されて、その電撃を含んだ剣が突き刺さった為、内部から強烈な電気を流し込まれたのだ。 消える直前に放たれた置き土産のエア・カッターがルイズの腹部を浅く切り裂いたが、まだ生きている。 案外パパッと片付けることが出来たが、ルイズの出血が尋常じゃなかった。 「うぅ……ギ、ギーシュ。歩くの手伝って……」 「あ、ちょっと待って!肩はダメ!肩は怪我してるってアッー!」 その後、村民に応急処置をしてもらい、出血が収まってきたが、完全には止まらず、激痛の中、祈祷書をぼんやりと見つめる。 コレで役目は終わったのだろうか、と。 「でも……ギーシュ、案外やるじゃない」 「う、なんで?」 「だってさっき……ライトニング・クラウドの対処、偉く早かったじゃない?動きを読んでるみたいな」 ルイズからの予想外な褒め言葉に、目を丸くするギーシュ。 しかし、いつものように笑うと、ルイズから変な視線を送られることとなった。 複雑な表情を取らざるを得ないギーシュを、今度はルイズが笑う。 そして、また祈祷書に目を通し―― 「……え?ギーシュ!これ見える!?」 さっきまで白紙だった祈祷書に、じわりじわりと字が浮かんでくる。 頬をつねる。痛い。 腹をつねる。死ぬかと思った。 現実である。 「見えるって……何が?」 「……見えない、の?」 とにかく、変な使命感に駆られて読み進める。 傍から見ていたギーシュは、どんどん変化するルイズの表情に笑いを堪えている。 「……虚無……って、そんなことが……私が……使い手?だとしたら!」 今、眼前に浮かぶ光景には、苦戦しているナランチャたちの姿が映る。 それを、打開できるかもしれない力が、自分にあるとしたら? こんな所で寝ているわけには行かない。 起き上がる。激痛にも耐え、顔を気丈なまま保って、走った。 助けるのだ、今度は、自分が。 ゼロ戦の機銃の弾丸が、底を突いた。 エアロスミスで応戦するが、ワルドは素早く回避して、ブレスを叩きこんでくる。 ゼロ戦は装甲が所々剥がれ、無残な姿を晒していた。 さらにレキシントン号の砲撃もある。 シルフィードに乗った2人は、全力で防御して、全力で反撃しているが、それでも火力不足だ。 押し切られるのも時間の問題。 誰もがそう思っていた。 そう思わざるを得ない。前までの勢いをなくしたゼロ戦に、村民達も不安を抱く。 「あ、ちょっと!」 「被弾」 「きゅいッ!?」 くるくる回って一旦着地する。シルフィードの体から血が流れ始めていた。 流石に全ては防ぎきれるわけではない。 体勢を立て直し、もう一度飛び立とうとした刹那。 「待ってッ!私も行く!」 「ルイズ!?あんたじゃ……」 「あんたはそうやって、他人を見下すことしか出来ないの!?さっさと行って!ナランチャを助けるのよ!いいんでしょ。タバサ!」 「肯定」 今までで一番、シルフィードは力を振り絞った。 凄まじい加速で、ワルドの風竜に体当たりを敢行、吹き飛ばす。 が、同時にシルフィードの体勢が崩れる。その時に、ルイズが飛んだ。 「バッ……ルイズッ!」 ダンッ、とゼロ戦に取り付き、強引に操縦席に入り込んだ。 わたわたしていると、またブレスが飛んでくる。ナランチャは懸命に回避した。 「おま、お前何してんだよ!死ぬ気か!?つーか怪我……」 「いい、聞いて?私、今から虚無の初歩の初歩の初歩、エクスプロージョンって言う呪文をあの旗艦とワルドにブチ込むの。その詠唱の時間を稼いで!出来るだけターゲットには接近してよ!」 「……はぁ、なんと細かい注文してきますか。やってやろうじゃねぇのさぁ!」 不思議と、その言葉をすんなりと信じる事が出来る。 まるでこうなることが分かっていたかのように。 既に日食は始まっているのだ。早くしなければ間に合わない。 高揚感を得て、ルイズは詠唱をはじめる。 出来るだけ素早くやるようにしているが、ガンダールヴとは言え、もちろん不慣れなゼロ戦の操縦をするナランチャは、左右へ揺らし放題の操縦をしていた。 舌を噛みそうになりながら、詠唱を進めていった。 「何をするつもりだ?ルイズが乗っている?まさかとは思うが、注意しておくに越したことはない」 とことん回避されまくったワルドも、既に遍在を作り出すほどの余裕はない。 竜のブレスで追撃する。 エアロスミスの弾丸が牽制として飛んでくるが、ひらり避けて、エア・カッターとエア・ハンマーを時間差で撃った。 「ぐ、ド畜生が!右翼がヤベーぞォッ!」 (ま、まだ終わんないのよ!) 必死に詠唱を進めていく間に、ナランチャがルイズの詠唱を邪魔しないように気遣いながら操縦するので機動力が落ち、かすりつつも確実に装甲へダメージが与えられる。 元々、ゼロ戦の装甲はそれほど厚くない。 空を裂く風の刃を耐えしのぐように、エアロスミスの機銃で迎え撃つ。 そのうちの一発が、ワルドの胸に命中。 鋭く肉を抉り、激痛を走らせた。 「ガンダールヴッ!どこまで邪魔をォォォッ!虚無だろう、虚無なのだな?ならば私が止める!」 「他人の詠唱邪魔するヤツはッ!」 エアロスミスが機尾を振り、加速していたワルドに凄まじい衝撃を与えた。 宛ら蹴りである。 首を狙ったので、詠唱が止まる。 「スミスに蹴られて地獄に落ちろ、だ」 クイッ、と親指を下に向ける。 「いや……寧ろ、『撃たれて』かなァ?」 エアロスミスの銃口が、光った。 スピードを得て、弾丸の威力を倍増させたエアロスミスが迫る。 苦しむワルドを狙い、加減も何もない、零距離での射撃。 次々と体に開く穴を見て、ワルドはあの光景を思い出す。 『ガンダールヴ』の腕から飛び立ったエアロスミスの射撃を受けたときの、光景が。 「ルイズッ!撃て!」 レキシントン号と、目と鼻の先。目の前にはワルドが立ちはだかるように、倒れかけながら踏ん張っている。 「ワルド……」 昔の記憶を一通り思い出し、今までのことを噛み締めて。 虚無の魔法の性質。 破壊するか破壊しないかは使い手次第。そして、強大すぎる力。 自分が使い手だとは、夢にも思わなかった。 前はキュルケにからかわれ、ギーシュに鼻で笑われ、タバサには関心を示してさえもらえなかった。 その自分が。そのルイズが、伝説の呪文の詠唱を終えた。 「私が……虚無(ゼロ)のルイズ……」 膨大な光、まさに魔力の塊が、アルビオン艦隊の中心で炸裂した。 弾幕を潜り抜けるのにさえ苦労した、あのレキシントン号が。 アルビオン艦隊が次々と沈む、だが、ワルドは殺さなかった。 殺す気になれなかった――といえば、そうなのだろうが。 ただ感傷かもしれない、思い出。その全てが浮かんだ今、ワルドを自分の手で殺す気にはなれなかった。 そんなルイズを、ナランチャは絶対に責めない。 トリステインの兵士達が、咆哮する。その様子を見ていたアンリエッタさえも、閉口して、唾を飲み込んだ。 その後の展開は明らかだ。竜騎兵、艦隊。 二つの要素を失くし、スクウェアであるワルドももう戦えない。 気を失ったレコン・キスタの兵も多く、総崩れとなった。 「あ……行っちゃうんだ」 キュルケは、何か拍子抜けな声を出した。 「もっとロマンチックに決められないのかしら、ルイズ」 ゼロ戦が日食へと飛ぶ。 シルフィードがまた飛んだ。見送りに行くのだ。ギーシュも乗せて。 思えば、このレコン・キスタとの戦いがナランチャと一緒に居られる最後の時だった。 過ぎるのは早かった。 そして、日食がそろそろ終わろうとしている。 「おいルイズ、降りろ。お前まで行く事はねーよ」 「嫌よ!使い魔が主人を置いて勝手にどっか行くなんて、許さないわ!」 頑固に操縦席にしがみつく。 もうすぐ日食へと突入できる距離まで近づいていた。 スピードが落ちている分、シルフィードが後ろから追いついてきている。 今なら落としてもレビテーションが間に合うだろう。 ルイズの瞳に涙が浮かんでいるのを見て、ナランチャは溜まらずため息をつく。 こういうのは自分のキャラじゃない。 とりあえず、不意を突く。 「……ルイズ」 「な……何よ」 「……世話かけさせんな、ボケ」 「うぇッ!?」 ぐわしっ、と引き寄せられ、一瞬のうちにナランチャに抱きつかれた。 それはもう驚きまくるルイズ。 キュルケとタバサ、ギーシュは口を開けていた。 (うわーッ、やっちまったよ……でもいいよな、もうここに来る事はないし……) すっかり力の抜けたルイズを、ゼロ戦から放り投げた。 ルイズの体に、タバサの唱えたレビテーションがかかり、減速する。 異次元への帰り道へは、もう殆ど距離はない。 ゼロ戦が、日食に溶けていく様子が、やけにぼやけた視界からでも、見えた。 景色がスローモーションになり、自分が何を言っているのか、周りが何を言っているのかがよく理解できない。 絶望にも似た感情が体を駆け巡る。 手を伸ばす。日食に。 「私も……行くのよッ!」 「ちったぁ考えろよ、こっち来たらもうキュルケたちと会えねーかも知れねーんだぞッ!お前は元々『ここ』の人間だッ!」 「それでも……主人を置いていく使い魔なんて!」 「やめろ、来るなルイ……」 暫くの静寂が、訪れる。 キュルケはため息を吐いて、タバサは、なんともない様に本を読んでいる。誤魔化しているだけかも知れないが。 デルフリンガーまで落ちてくる。シルフィードは華麗に回避した。 「ホント、ルイズ、あんたは友達思いじゃないわね。あんな事言うなんて」 返事は、返ってこない。 このタルブに居る全員の人々が、終わる日食を見つめていた。 「……頑張んなさいよ?」 それだけ、呟いた。 第3章『イタリアまでは何メイル?』 完 To Be continued...『?』 ----

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