ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの番鳥-14

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
そこは薄汚い店だった。
壁や棚の至る所に武具が乱雑に並べられていて埃臭い。
ドアの音に気付いたのか、店の奥から出てきた主人は胡散臭げにルイズとギーシュとペットショップを見つめる。
何も言わずにパイプをプカプカと吸っていたオヤジだが。
ルイズとギーシュの紐タイに描かれた貴族の印に気づくと、途端に笑顔になった
「これはこれは、貴族の旦那様方がこんな所まで一体何の御用で?」
「ナイフを買いに来たんだけど」
顔を見ずに告げるルイズに少しムッとする親父。
だがすぐに気を取り直すと、営業用スマイルを浮かべながら店の奥に引っ込む。
何で貴族が武器なんて買いに来るんだ?誰が使うんだ?と言う疑問は親父の頭には無い
今、考えている事はどうやって金貨一枚でも多く分捕ってやるか。それだけである。商売人の鏡だ。

(絶~っ対にボッタくってやんぜ~!)

と、親父が意気込んで数十秒が経った後、立派なナイフを店の奥から持ってきた。
柄や鞘には眩い宝石がちりばめられ、刀身の艶やかさ、柄拵えの流麗さは、芸術的な作品と呼べるだろう。
それはそれは見事なナイフであったそうな。

「店一番の業「これで良いわ」

喜色満面で口上を述べようとしている親父を手で制し、ルイズがその手に持ってきたのは店の棚にダース単位で置いてある二束三文の安物ナイフであった。
親父は焦った。何処にでもある大量生産品のナイフでは、幾ら世間知らずの貴族が相手だと言えども値段を誤魔化す事ができない。
しかし、折角の上客を逃すわけにはいかない、長年の商売で鍛えた舌を全力で回しながら口上を述べる。


「貴族の旦那様!これは、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師ナンチャラカンチャラ卿の「おいくら?」

親父の言葉を半分も聞いていないルイズが途中で遮る。
だが、親父は諦めない。少しでも可能性がある限り、男は度胸!何でも試してみるものさであった。

「魔法がかかってるから鉄だって一刀「おいくら?」

取り付く島も無いルイズ。
半分諦めながらも微かな希望に掛けて親父は喋り続ける。

「今なら大特価!エキュー金貨で千七「おいくら?」
親父は机の上に沈んだ。完全な敗北である。

それに関わらず、ルイズは手元のナイフを弄繰り回していた。
夢で出て来た男が投げたナイフに最も近い形であり、持ってるだけで夢の中の男を思い出してルイズは何故か安心した。
味も確かめようとして、レロレロと舐めてみている。
「プッ・・・・ハハハハ!ザマーねーな親父ィ!」
突然、男のダミ声が店内に響き渡った。
少し驚いた二人と一羽が声の元を見てみるが、乱雑に剣が積み上げられているだけだ。
「うるせーぞデル公!」
半ギレした親父の負けず劣らずなダミ声がそれに応える。
親父の視線の先を見てみると、そこには一本の剣があった。錆びだらけでやたらとボロイ。
「世間知らずの貴族に売り込めないようじゃ守銭奴の名が泣くぜ!ガハハハハハ!」
どういうメルヘンやファンタジーなのだろうか、剣が喋っている。
「インテリジェンスソード?」
呆れたようなルイズの声に気付いたのか、剣がこっちを向く前に――――――親父の目がキュピーンと光った。


「そうですとも!貴族のお嬢様!
 こいつは確かに意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ!
 所々に錆びが浮いてますが、切れ味はそんじょそこらの安物には負けませんぜ!
 声が煩いなら、そこの鞘に突っ込んどけば静かにさせられます!
 今なら特別価格!新金貨百枚程でこのデルフリンガーをお譲りいたしますぜ」
厄介払いも兼ねる事ができるので割と必死であった、が。
それにしても、この親父ノリノリである。
「哀れな平民を助けると思って、デル公を買ってやってくれませんでしょうか!」
しかし、くだんのルイズは既に興味を無くしておりナイフの清算をすませると出入り口に向かおうとしている。
ルイズに縋り付こうとする親父、かなり喜劇である。

そんなルイズと親父が笑えない漫才をかましている一方で。
「こいつはオ・デレータ!まさか、『使い手』がこんな鳥公だとは!」
ペットショップを見たデルフリンガーが驚きの声をあげた。
剣はペットショップの左翼に刻まれたルーンを注視している。
「君の知り合い?」
ペットショップに乗っかられているギーシュが疑問の声を挙げるが。
話題の鳥公はガン無視!ルイズの動向を覗っているだけだ。
そんなペットショップを見ながら、云々と唸っているデルフリンガーだが。
「よっしゃ!このデルフリンガー様をいますぐ買え鳥公!損はさせねーぜッ!」
何やら一人(一本?)で自己完結した。
しかし、どう見たとしてもペットショップが金を持っているようには見えない。
瞬時の判断で、ペットショップの主人であるルイズに矛先を代えると、俺を買え!オーラを出しながら自分の売り込みを始める
「貴族のネーチャンよ~!俺を買ってくれねーか!?」
買え!買え!と猛攻を続ける親父とデルフリンガーに負けたのか。
やれやれ、と溜息を突いて財布を取り出すルイズ。
その姿に喜ぶ親父。だが、彼の災難はこれからが始まりだった。


「十枚」
ルイズの冷淡な声。その手には金貨が十枚乗っている。
「へ?冗談がキツ「十枚」
「・・・・・・分かりましたあっしも勉強させてもらいまして九十「十枚」
「そ、それじゃ。デル公の厄介払い込みで八十「十枚」
「七十・・・それ以上は負ける事が出ゲッッ!?

ガツン!
珍妙な声を出しながら、頭を机にぶつける親父。
何時の間にか近寄っていたルイズが親父の頭を掴んで机に叩きつけたのが原因だ。
フガフガ言いながらも、親父は何とかルイズの手を振り払おうとしたが。

ドン!
「ヒィ!」
顔の直ぐ脇にナイフを突き立てられて強引に活動を停止させられた
「金貨十枚で売るか売らないか・・・・・・私が聞いてるのはそれだけなんだけど?」
豚を見る目付きで哀れな親父を見つめるルイズ。
「ルイズ様。僕が用立てておきましょうか?」
我関せずな態度だったギーシュが状況にそぐわぬニコヤカな声をかける。
が、
「あんたは黙ってなさい!さあ!売るの売らないの!?どっち!?」
ギーシュを見もせずに脅迫を続けるルイズ
駄目押しとばかりに親父の鼻先で杖を揺らしている。殆ど強盗である。
「わ、わ、わかりやした!金貨10枚でお譲りいたします!!!!」
貴族が杖を掲げた。その事実に親父は戦慄し、恐喝に屈した。
机に置かれた金貨十枚を半泣きで集める。
ルイズはナイフと財布を懐にしまうと、鞘に収めたデルフリンガーをギーシュに放り投げて渡し店を出る。
2人と1羽が店を出た後、親父は唾を吐き捨てて忌々しげに叫んだ。

「今日は厄日だクソ!」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー