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ガブリエル


初代連邦大統領 ガブリエル・ヴァン・ローラン・ド・ソレグレイユ

ソレグレイユ本土、エントロフィア大陸西部、レカンティス共和国出身の通常種男性。
旧名はラファエル・ゴドフリー・ソレグレイルで、『聖杯を守護する家』の末弟として生まれたとされている。

「聖杯」と呼ばれるものの行方は現在不明であるが、彼は大統領就任後、
大和皇国の宗教家高鸞(こうらん)に会った際に「これは伝国の玉璽か」と問われたという逸話を残している。

現在は首都であるメルシュテルも、彼が生まれた当時は彼の父親を総長とするごく小さな共同体の一部でしかなかった。
一方大陸南東部では『ソルグレイユ連邦』という旧世界遺物の多くを手にした軍事国家が勢力を伸ばしていた。
ソルグレイユはランテ民主国、ウェライア共和国、アサント独立国など周辺諸国を武力で従え、
彼の住む地域にも進出しつつあった。

彼自身は跡継ぎなどまっぴらだと考えていたものの、父が病死し、
兄達もソルグレイユとの戦闘の中で戦死してしまうと、やむを得ずレカンティスを率いることとなった。
しかし、ソルグレイユ相手に単独では勝てないことは十分承知していたため、
彼は敢えてソルグレイユに講和を申し入れ、その支配下に入っている。

彼は若いながらも持ち前の世渡り上手で、法務次官補などソルグレイユ内での重要ポストにまで上り詰め、
レカンティス出身者の社会的重要性を高めていった。

そんな中、ソルグレイユ軍部が南方テオゴニア大陸への侵攻を決定、
彼の猛反対にも関わらず当時の連邦議会もこれに賛同してしまう。
その上アスガルドの猛烈な抵抗に遭い軍は撤退、ここでソルグレイユの勢いに陰りが見え始め、
連邦内にも厭戦思想が強まっていった。

これを好機と見た彼は議会内で、軍事に偏りすぎた現ソルグレイユを一旦解体し、
改めて軍事力を背景とする平和主義を理想とした新たな国家体制の創設を提案する。

彼の提案は多くの人間の賛同を得、周囲の支持で大統領にまで出世し、自らの旧姓とソルグレイユの名を合わせ、
新たな国号を「太陽の聖杯の如く光り輝き、世界を導き得る国家」の意味を込め「ソレグレイユ連邦共和国」とした。

メルシュテル自治独立州を首都として共和国議会を設立し、憲法を作成、
旧ソルグレイユの技術力を以って大陸各地に大都市を造営し、国家としての体裁が整うまでそう時間は掛からなかった。

そしてソルグレイユが軍事力で無理やり従えてきた周辺諸国への統治方針を変更、
一転して穏健路線に舵を切り、改めて連邦共和国の構成国家として迎え入れた。

力で押さえつけても互いが疲弊し、いずれ自壊してしまうだろう。
そうであればむしろ対等に接することで、互いを発展させることが出来ればそれに越した事はないだろうと考えたのだ。
現在でも大統領府前広場には、この時共和国に加わった大小合わせて数十ヵ国もの国々の旗が翻っている。

この試みは成功した。
というのも、度重なる領土拡大のため戦争を続けるソルグレイユに最早我慢できず、
国を挙げての反乱を計画していた国が幾つもあったのである。
余談ではあるがこの報告を当時の国務長官、外務長官から聞いた時、彼はその場で卒倒してしまったという。
(ソレグレイユでは、連邦内国家を担当するのが国務省、久平など連邦外国家との交渉を担当するのが外務省である)

ソルグレイユが侵攻したきり放置していたバルディメリア大陸北部、
ボルクート民主共和国首都ニイドウにも外務省から人員を派遣して現状の把握と支援を行っている。
無理な軍政、また「I Regulars」―ソレグレイユはエラトレニア公国と呼称した―の台頭によって
治安が急激に悪化していた中にあっても、彼は幾度にも亘る大規模な暴徒・盗賊などの反乱の鎮圧を自ら軍を率い、
銃を携えて行い、その功績から現在もソレグレイユ連邦共和国連合軍大総帥の座にある。


特に伝説として語り継がれている戦いの一つが、
「I Regulars」に通常種が初めて勝利した戦いである「アイデロン要塞防衛戦」である。
当時彼はボルクート民主共和国国境に迫ったI Regularsに対し、
本国で稼働中の兵力のほぼ三分の一を率いて海峡を渡り、防御を固めた。

要塞外に出てはならないと全軍に厳命し、自らは精兵を率いてI Regularsを奇襲し一箇所に誘導、
その後所有していた遠隔兵器を全て動員し彼らを焼き払ったのだ。
彼は後に、「私の勝利ではなく、彼らの敗北だった。私は彼らの慢心を、最大限に利用しただけだ」と回想している。
この戦いに勝利したことでソレグレイユは封建国家の大陸東部への侵攻を食い止めることに成功し、
世界最強の軍事大国としての地位を確固たるものとした。

ガブリエルの数多くある著書の中でも初めての著書で、
彼の自叙伝的側面をもつ『聖杯戦記』が書き上げられたのはこの頃で、ロングセラーとなっている。
大筋はある若者が奪われた「聖杯」を取り戻すために戦うというストーリーで、
ガブリエルの生涯にとって「聖杯」が少なからず影響を及ぼしていたのだろうと推測されている。

本人は大小様々な火器を自在に操る銃の名手として知られており、
拳銃で数メートル先の蚊を撃ち落とすその腕前は「人間照準機」と渾名されるほどであった。
また事務的な話題に限っては饒舌ではあるが生来の口下手さから非常に寡黙で、
自室で一人で過ごすことを何よりも好み、神経質で人付き合いは極度に苦手であった。

幼少期は首席だった長兄フランソワ、次兄シャルル、三兄アンリと違って成績も振るわず、
また生まれながらの貧血から身体も弱く、しばしば仲間からはからかわれ恨めしい思いをしていたという。

しかしそれでも兄達と父を誰よりも尊敬しており、戦死の報を聞いた際は珍しく声を上げて慟哭し、
ソルグレイユへの復讐を誓い自ら民を率いるようになったのだった。
決断力に富み、平和主義者ではあるが自国民の安寧の為であれば戦争も全く厭わず、
軍拡も旧ソルグレイユ以上に積極的に行った。

またソレグレイユ大統領としては非常に稀な、超能力者に対して理解を示し、歩み寄った大統領でもあり、
I Regularsに愛想を尽かせた彼らが共和国への忠誠を誓いさえすれば市民権を付与し、
彼らにしか務まらないであろう職務を与えた。
そのためソレグレイユには、超能力を有する者にもようやく居場所が出来ることとなったが、
これは後に形骸化していくこととなる。

理由としては単純に後顧の憂いを断ち切るためだったという説と、
ガブリエル自身が何らかの超能力者であったという説があるが、
仮にあったとしても地味で目立たないものでしかなかったといわれている。
また彼自身、「自らの力に少しの責任すら持とうとせず、傲慢に振舞うことしか出来ない者に存在価値などない」と
I Regularsの通常種への圧政を批判していた。

趣味は銃器の手入れと読書で、彼の蔵書は政治学・法学からギャグ漫画まで幅広く、
友人のジェラルド・エイブラムス法務長官兼副大統領は「彼の書棚は虹色だった」と形容している。
また画像::左はアイデロン要塞防衛戦時、右は防衛戦後首都に帰還し、郊外での散歩時のものである。

現在彼はソレグレイユ建国者として、稀代の戦略家として、あるいは百発百中の銃兵として
様々な人々から尊崇の念を集め、反ソレグレイユ組織の中にすら個人として彼を尊敬する者は多い。

それは彼が命を賭けて目指した、真に強く、真に平和な国家の姿が、いつしか失われてしまったからなのかもしれない。


『最後に、少しばかり意味のない虚言を申し上げ、後書きを締めくくらせて頂きたい。
 思うに、我々が神より与えられしものは、ただこの上なき苦痛であり、絶望であり、欺瞞である。
 それを受け入れようとしないものは単なる害悪に過ぎず、例外なく淘汰されるべきであり選択の余地などない。
 常に、全ての事象において注意を払うことを、何があろうとも、誰であろうとも決して怠ってはならない。
 完全に淘汰されてしまうまでは、我々は淘汰されたことに気づくことなど、到底出来る筈がないからだ。
 そして今、ようやく気づいた。私も危うく、淘汰されてしまうところであったのだ』

―――『聖杯戦記』後書き、最終行より

最終更新:2014年06月20日 09:20