世界観補足


ギルドメンバーたちが生活している国は「ミレーヌ王国」です。周辺の地形はヨーロッパと同じ形になっており、ミレーヌ王国の位置は現フランスに当たります。ただし、似ているのは地図上のことであって、地名や文化、気候風土などまで全く同じわけではありません。北に宿敵のブリタニア帝国、西に盟友であるイベリア王国、東にいつ侵攻してくるか予断を許さない神聖ゲルマニア帝国、地中海を挟んだ南には野蛮極まりない蛮族と古代の巨大生物が生息する”暗黒大陸”が存在しています。ブリタニアとはこれまでの歴史の経緯から犬猿の仲で少し前まで「百年戦争」を行っていました。現在進行形で行われている戦争は、ミレーヌ王国からはるか離れた東方で異教徒討伐のために国をまたいでヨーロッパの騎士有志を集め編成された多国籍十字軍と回教徒たちのイスラーム帝国による、双方にとっての聖地エルサレム奪還戦争があります。戦況は一進一退で各国の注目の的となっています。

ミレーヌ王国の政治形態は、国王を頂点とする貴族諸侯がその武力と伝統を背景に国内を統治しており、それぞれが政治的な利権を得るために身内の騎士たちを派遣して編成された「王国騎士団」が、国内の警察的な機構として治安維持を行っています。しかしながら、国境では列強勢力と対峙していることもあって、つねに国内の各地で起こる問題すべてを解決するには人手が足りないこともあり、そこで民間武装団体である”公的ギルド”に依頼をすることになります。

ギルドメンバーたちが所属しているギルド「ラヴィアンローズ」は王国から許可を得て活動している公的ギルトで行政側から貰う仕事を主な生業としています。公的ギルドに所属している人々の多くは戦争になれば傭兵となって王国軍と共に戦うことも多く、ギルド長のヴァイスも「百年戦争」でそうしたコネを王国騎士団との間に作り、ギルドを立ち上げました。公的なギルドは内容によっては多額な報酬を得ることもあり、知名度の高いギルドは人々に羨望の眼差しで見られることもあるため、そうした野望のもとにギルドは乱立し、危険な仕事にも関わらず、志願する人が後を絶ちません。

「ラヴィアンローズ」は、エルミタージュの町に拠点を構えており、二階はいつもヴァイスが皆に任務を通達する「大広間」とギルドメンバーの居室(いわゆる寮)があります。一階にはバー食堂、トイレや浴場があり、メンバーはいつでもそれらを利用できます。バー食堂にはニーナという女性がいて頼めば料理や飲み物を振舞ってくれます。

闇ギルドと呼ばれるものは非合法の犯罪組織で、金さえ貰えれば何でも稼業とします。法に拠らない殺人、脅迫、誘拐、詐欺、強盗、暗殺、破壊行為、麻薬売買などを行うことが多く、同じギルドという呼ばれ方をされていても闇ギルドは重犯罪者の集団で公的なギルドとは性質が全く異なります。彼らは金のあるところにのさばり、その非合法な立場を利用して人々を恫喝し、苦しめ、暗躍しています。

他にも反社会的な勢力として、悪魔主義的、カルト教団的な色彩を持つ、黒魔術師、屍術師、魔女などがいます。彼らは習得も行使も禁じられている闇の魔法の使い手であり、騎士団の捜索から逃れながら、各地でさまざまな破壊活動を行い、民を苦しめています。騎士団やギルドの手がすぐには及ばないところで悪逆の限りを尽くしているため、民には魔物と同様たいへん恐れられています。また彼らは同じ非合法な存在である山賊や盗賊団、闇ギルドなどと行動を共にすることもあります。

精霊魔術師は王立魔法アカデミーで魔導を習ったエリートたちです。悪用されれば危険極まりない威力を持つ精霊魔法は国によって厳しく管理されており、王立魔法アカデミーを卒業した者しか魔術師を公的に名乗ることはできず、破れば厳しく罰せられます。アカデミーの卒業生の特に優れた者は一部は、アカデミー関係者あるいは宮廷魔術師として王国騎士団などの公的な組織で働くようになります。ギルドに雇われる多くの魔術師はそうした選択肢からこぼれてしまった人々ですが、ギルドで得られる報酬や名声に無限の可能性を夢見て、あえてそちらに行く人もいます。

僧侶と聖女は各地にある大きな教会あるいは神学校で教義や白魔法を習い、僧侶は武芸の修業も修めた者たちでその白魔法の有用性から戦争やギルド業に従事するケースもありますが、その多くは教会や神学校で教義を教えたり、人々の治療を主な活動としています。ただし、異教徒の弾圧や異端審問などに従事する者や、騎士階級が異教徒との戦いに備えてこの手の修業をして聖騎士(パラディン)になることもあります。異教徒である「回教徒」勢力との敵対が列強各国の間で深刻化する中で騎士にとっては教会での修業は大きなステータスになります。このような背景があるため、教会は政治的にも大きな力を持っており、民衆の駆け込み寺的な存在でありつつ、貴族諸侯階級とも深いつながりを持っています。

異教徒と呼ばれる人々はさまざまで黒魔術師や屍術師などの悪魔主義者や、あるいは本家から分派した正教会派の人々、国外の遠い東方で権勢を誇るイスラーム帝国の回教徒勢力、あるいは後進国に多く見られるシャーマニズムなど、王国教会の教義から外れた人はすべて異教徒と呼んでいます。これらは原則として国内ではすべて排除の対象となります。

公的ギルドにおけるシーフは法的にグレーゾーンである人が多く、体ひとつ、ナイフ一本で身を立てる器用な渡世人です。前科がある人はもちろん、闇ギルドや盗賊団、アサシンギルド(暗殺組織)にいたことがある人も少なくありません。その傾向は極めて身軽で専門技能を武器にギルドを渡り歩く人が多く、この職業については行政側もあまり触れないようにしているようです。(あまり厳しく規制すると闇ギルドなどに流れてしまうため)

さまざまな種類が各地に生息しているモンスターたちへの対応は各国が頭を悩ませている問題です。根絶するにはあまりに数が多く、その対策はいつも後手に回っているのが現状です。本来は王国騎士団がこれを解決すべきですが、現状では公的なギルドの人々が対応するケースが多いです。人が住むには自然環境が厳しい辺境地においてはモンスターたちが生態系の頂点となっており、たまに訪れる”場違いな”冒険者たちを排除します。直接モンスターの被害を被ることの少ない都会的な人々の中には、傲慢な人間たちに対峙する大自然の象徴と見なすこともあり、畏れと共に憧憬を持たれる存在でもあります。また一部の闇ギルドや反社会主義者の中にはモンスターと手を組んで活動している人々もいます。

アンデッド(不死者)と呼ばれる者たちはかなり特殊な存在で、スケルトンやゾンビなどの下級アンデッドは肉体的には死んでいるにも関わらず、死してもなお恨み憎む「邪念」という力を動力源として動きます。この邪念は黒魔術師やその上位者である屍術師が闇魔法でさらに負の想念を増幅し支配することで奴隷のように使うことができます。また、”鮮度の高い肉体”のほうが下級アンデッドとして強いため、殺してから操る術者もいます。彼らが人々からとくに忌み嫌われるのはそうした非道さ、残酷さ故です。

上級アンデッドは吸血鬼やリッチなどがそれに当たります。彼らは闇魔法で操られるようなこともないしっかりした自我と精神力を持っています。吸血鬼は生前を凌駕する高い身体能力と再生能力と魔力を持っています。リッチは肉体は喪失していますが、生前は黒魔術師であり、あえて不死者となることで悠久の時をさらなる魔術の研鑽に費やしているため、人間の魔術師よりはるかに高い能力を持っています。
最終更新:2020年10月17日 21:01