.
もしも、貴方に優れた能力と劣った能力、二つがあったとして、どちらを伸ばそうと考える?
ヴルトゥームは前者だった。
彼は優れた知力があり、あらゆる種族を凌駕する科学技術を産み出す事ができた。
故に彼は科学技術で他種族を圧倒することに注力した。
だが、彼は神だった。
神であるのに、神としては劣っていた。
科学技術という神秘とは正反対の能力に優れている為、他の神々からは軽視された。
彼はどうということはなかった。
プライドなど威厳に固執しておらず、支配や権力に関心がない、彼が一心に赴くのは研究行為である。
しかしどうしてか、根本は神であった。
奇妙な事に神としての本能だったのかもしれない。
知識を与え、救済を与え、罰を与え……それは研究を行う過程に必要だっただけ、なのがヴルトゥームの言い分。
世間体、世界的にみれば結局のところ、彼は神だった。
慈悲がなくとも
愛がなくとも
善意がなくとも
単なる自己満足で、自分勝手で、自分都合で尽くしたとしても――……
そして、宇宙が滅んだ。
何故、滅んだのか?
そんなのは簡単だ。ヴルトゥームは科学の力で全てを圧倒してしまった。
神秘を根絶やしに、文明を陳腐に、技術を過去のものにした。
最早、手の施しようがなくなったのである。
宇宙で誰も成す術なかったからこそ、外宇宙より来る白き騎士が全てを灼き滅ぼし、宇宙を終焉へと導いた。
厄介な事だと、ヴルトゥームは頭を抱えている。
あの白き騎士は厳密には『化身』で大本となる神格がおり、それに目を付けられた訳だ。
別に大したことはしていないのに。
支配などには関心がないのに、とんだ傍迷惑な話だ、と。
彼は彼の事をした罪を自覚どころか、罪すらないとさえ思っていた。
◇
輝村極道は、己のサーヴァント・ヴルトゥームの最大で重要な欠点に気づいていた。
即ち、執念がない――それに値する感情が無い。
共感ができない欠点は極道も同じなのだが、ヴルトゥームはそれ以上に問題である。
決して、ヴルトゥームに聖杯を獲得する意思がないのではない。
彼が言うに、ある神格に目をつけられたので、その因縁を解消したいというのが彼の望みだった。
悪意がなかったが、目の敵にされて困っているらしい。
奇跡であろうが、叶うのならば叶えて欲しいと。
無理なら聖杯の持つ膨大なエネルギーを研究に活用すると、彼らしい願いである。
……だが、裏を返せば、別に最悪聖杯が獲得できず、望みが叶わなくとも、まあ別に。……そういう意味だ。
駄目だ。
それでは駄目だ。
ヴルトゥームは膨大な資料を即座に処理できてしまうから、何事も計算式を相手するような態度を取ってしまう。
暗算ができるから、方程式は書かなくていいと回答だけ記入するタイプだ。
彼は火星での戦争で勝ちの目が見えた途端、億劫になり放棄した。
それで己の信仰が衰えようが、まあ別に、と神にあるまじき態度を取って、研究に没頭した。
これではきっと、聖杯戦争をやっていけないだろうと極道は確信している。
彼には『フラッシュ☆プリンセス!』の敵幹部・オトコングのような執念や、
ヤンキラーのような美しさや、
ガキミーラのような狂気すら備えていない。
彼には――本当に何もないのだ。悪い意味で彼は空っぽなのだ。故に、孤独であっても嘆く負の感情すらない。
ならばこそ――極道が自宅にしている場所へ戻れば、ヴルトゥームは参考資料を映像で早送りで流している。
彼が視聴しているのは、どうやら体術などの基本講座。
他にも戦艦や兵器の実際の動きを確認する為に、そういった映像を流していた。
「ちょうど良かった! キャスター。君の為に資料を用意したんだ」
「そうですか。そこに置いて下さい」
極道に顔も向けずにヴルトゥームが答える。
すると、極道はリモコンを操作し、映像を完全に停止させた。極道は饒舌に語る。
「私も一緒に見るからね。『フラッシュ☆プリンセス!』全話視聴会だ!
この為に、有給休暇(ユウキュウ)も取った。心行くまで楽しもうじゃないか!!」
それを聞いたら流石にヴルトゥームも顔を向けて、呆れた風だった。
「アナタ、馬鹿なんですか?」
「いいや? 私は真面目だよ。これは君にとって必要な事だ。聖杯戦争が本格化する前に、君も理解を深めなければならない」
「アナタの好きなヒース様という方についてですか?」
「……それは君自身が見つけるんだ」
聖杯という奇跡に極道(ごくどう)の未来を託すべきか。
否、それ以前に、孤独な者の力になるという極道(きわみ)は、がらんどうの神に救いを与えようとしていた。
【真名】
ヴルトゥーム@クトゥルフ神話
【クラス】
キャスター
【属性】
混沌・中庸
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A+ 幸運:B 宝具:C
【クラススキル】
道具作成:E+++
魔力を帯びた器具を作成可能。
ヴルトゥームは近未来の兵器を造作なく量産、展開する事ができる。
領域外の生命:EX
かつて猛威を振るっていた宇宙から外宇宙へと渡り、火星に座した。
【保有スキル】
科学の神核:EX
神にして科学を以て神秘と信仰を淘汰したもの。
あらゆる精神系の干渉を弾き、神秘性の高い宝具や英霊ほど攻撃にプラス補正。
宝具と組み合わせれば、広範囲の固有結界や陣地を崩壊させる事も可能。
高速演算:A++
彼自身が有する演算処理能力。陣地内の情報処理を円滑に行える。
殺戮動植:C
『殺戮技巧』の亜種。
ヴルトゥームは化石状の花を繁殖させ、その芳香で生命を奴隷化させる。
芳香による支配はあくまで精神的なもの為、精神系のスキルで防ぐことが可能。
強力な幻獣。サーヴァントの支配は不可能。
また花の成分に接触した生命は、細胞レベルでヴルトゥームと同質化。
これらを吸収するとヴルトゥームは一時的なパラメーター上昇が望める。
【宝具】
『非幾何学火星演算網(ノン・ユークリッド・マースネットワーク)』
ランク:C 種別:対陣(対神秘)宝具 レンジ:100
知覚能力を利用し、広範囲の時空間を陣地とする。
陣地内のあらゆるものを把握。『殺戮動植』『道具作成』を即座に展開。
また念話とは異なるテレパシーを使い精神会話が可能。
【人物背景】
かつてヴルトゥームは、ある全宇宙を支配し、文明と神秘を淘汰し、彼の趣味趣向を満たす為の実験場とした。
別宇宙で『獣』に匹敵する存在であったが、その宇宙には『獣』の定義はなく、彼に対抗する『冠位』もいなかった。
しかし、異なる宇宙より来る『白き騎士』の襲来によりヴルトゥームは、外宇宙へ逃走を余儀なくされる。
火星に飛来したヴルトゥームは、当時の原住民と交戦、圧倒したのだが、勝ちの目が見えた途端。
当時の火星文明の技術力の底が知れ、億劫になり、戦争を放棄。
信者たちと共に地下へ引きこもり、火星の資源で研究を愉しんでいた。
だが、火星も資源がなくなり、次の目標として『地球』への居住を目論む。
やがて宇宙進出した人類が火星と交流を始めた時代。
ヴルトゥームはある人間に地球の居住に協力を要請するが、人間はこれを拒否。
彼の地球侵略を阻止するのだった。
ヴルトゥームの家系は父にヨグ=ソトース。兄弟に
クトゥルフとハスターがいる。
趣味の研究成果を他生命に与える。不死の恩寵を信者に与える。裏切りなどには相当の罰を与える。
神らしく振る舞い、理性的に見えるが、前述にもある通り、かなりの自分勝手。
研究以外の事には向上意識が欠如し、億劫になると途中で投げ出す無責任が極まって、かつて支配した宇宙も無残な在り様になった。
また、億劫になる悪癖で足元が疎かになりがち。地球侵略を阻止された要因もコレである。
クトゥルフとは違い、人類への理解も共感もできない。
故に人類への理解を試みている。
だが、これはあくまで種族単体の研究に過ぎず、人類と分かり合う為ではない。
【外見】
ウェーブのかかった白のロングヘアにビジネススーツを着た中性的な容姿。
【サーヴァントとしての願い】
『白き騎士』を送った神格との因縁を無くす
【マスター】
輝村極道@忍者と極道
【聖杯にかける願い】
極道(ごくどう)の未来を願う
その前に、ヴルトゥームの為に力となる
【能力・技能】
中国拳法の心得と短刀と銃の扱いがあり、部下の極道技巧を使用する事も出来る。
また話術で相手の警戒を解く技術を持つ。
『地獄への回数券』
複数の麻薬と増強剤・漢方などが奇跡的な比率でブレンドされたペーパードラッグ。
服用する事で身体強化・再生能力を会得する。
【人物背景】
表は玩具会社『ダイバン』の企画部長。
裏は音羽組傘下二代目竹本組『裏組長』。すなわち極道。
女児アニメ『プリンセスシリーズ』の熱狂的ファン。中でもフラッシュ☆プリンセス!の『ヒース』が大好き。
過去の影響で感情を感じる事がなく、他者との共感ができない。
ただ、最近友達となった忍者(しのは)といる時は、人間らしい情緒がある。
【捕捉】
ヴルトゥームによって複製された『地獄への回数券』または劣化版の『天国への回数券』が裏で流布されています。
同じく、ヴルトゥーム『殺戮動植』の効力がある香水が流行しています。
これによる奴隷化された人間がいるようです。
最終更新:2022年04月17日 00:05