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『剪定事象』というのがある。

平行世界は無数に存在する夢物語は多くの人々が思うとおりにある。
しかし、無数に枝別れたした平行世界を全て、宇宙が掌握し続ける訳がなく。
正規とは完全なる別世界となる世界は、いずれ滅びる事が確定されていた。

『無駄な』世界は廃棄される。
木を育てる際、養分を余計に分散させないよう、不要な枝を切り落とす『剪定』が行われる。
例え、基本よりも優れ、基本よりも理想郷で、素晴らしいものだったとしても。
世界が未来に続く為には、宇宙の膨張を抑えるべく。幾千の『剪定事象』は行われた。
剪定というもので切り捨てられた世界。


ある男も『剪定事象』によって世界が滅び、帰る場所も全てがなくなり、漆黒を彷徨い続ける事になった。
最も。それもかなり『ありえない話』ではある。
その男は『時の力』を持っていた。『そのせい』で『助かってしまった』。
ひょっとすれば、時の力を持たずに世界と共に滅び消えてしまった方がマシなのだろうか。

グルグルグル
グルグルグル

神からも人々からも存在を忘れられ、漆黒を彷徨い続け、誰も彼を知る者はいなくなって………
『世界でひとりきり』になった彼を導いたのは『歌』だった。



☆



現代には相応しくない魔女っ子スタイルの少女が、見滝原の僅かにある森林地帯で唸っていた。


「キノコ狩りとは」


やるとは言ったがマジでやるとは思わなかった。
アーチャー・魔理沙の呟きである。
しかし、外灯が僅かにあるとは言え、深夜の時間帯でキノコを探すのは難しい。当然の話だが。
第一、都会にキノコが生えていなくはないが、魔理沙の住む幻想郷と比べれば圧倒的少なさだ。
大食いのマスターの腹を満たすには、あまりに心細い。

一方。
弥子は、魔理沙がキノコを回収した地帯からさほど離れた位置にある『池』でひっそり釣りをしていた。
念の為に、携帯端末で時間を確認すると、もう間もなく深夜0時。
魚も夜は眠ってしまう、と聞くが。外灯の明かりのせいか、時折餌に食いついてくれる。
漸く、三匹目に到達した弥子の元に魔理沙が戻った。


「マスター、聖杯戦争が始まっちまうぜ? もうちっと緊張感ある筈だけどな」

「う、うん。なんかごめん……池で釣りはしちゃいけないから。こっそりするしかないんだよね」

「何でだ? 公共の場って奴だろ」

「生態系が崩れるとか……? 池の魚は水鳥が食べるのが基本だし」

「納得いかないなぁ」


幻想郷の在り方に慣れてる魔理沙は、現代社会の窮屈さをうっとおしく感じる節が幾度かあった。
住めば都と言うし。弥子のような『こちら側』で生まれ育った人間は、何ら不思議にも、不満すら無いのだろう。
水鳥だって一匹もいない。池以外の場所で釣りをする人間すら奇妙にも居ない。
だったら、釣り禁止令ですら無意味に聞こえてしまう。逆に、魚が増え過ぎて池の生態系が無茶苦茶になるのでは?


「……ん」


魔理沙は視線を感じたので、周囲を警戒した。
まだ、魔力感知は疎外されている状態で、目で判断するしかない。
釣りをしている弥子と魔理沙から少し離れた箇所。コンクリートで舗装された道に少年が一人。
年齢は弥子に近い雰囲気。フードのついたノースリーブの白いシャツを着ている。
時間帯から、彼がどうして徘徊しているのかが問題だが……


「マスター。誰かに見られてるぞ」


それは魔理沙側も同じだ。
聖杯戦争と無関係な一般人なら、尚更弥子の行いを心良く思わない筈だろう。
現に、池の周辺には『釣り禁止』の立て看板だってある。
弥子も飛び上がる様に急いで撤収しようと、釣り道具を回収し始めたが。魔理沙は眉を潜めた。


サーヴァントの魔力が感知出来ずとも、少年の前にゆらーりと鋭利な刃物を持った少女が現れたのだから。



★



夕方に満足な睡眠を取れなかったアイルの容体は、非常に悪い。
しかも、聖杯戦争が始まる。
通りかかった池の近く、確か廃墟があった筈……ブラブラとアテなく歩き回っている訳じゃない。
休めそうな場所はアイルも記憶していた。
セイヴァーの討伐を目標に定めたが、こんな状態じゃサーヴァント相手に満足な戦闘も不可能。

チラリと池で釣りをしている『誰か』を遠目で見たが。
こんな時間に何してんだ、と思う程度で、アイルは通報しようだとか些細なものに興味も関心も湧かない。
アイルは、それどころじゃなかった。
安全で、誰も居ない場所を探し、少しでも体を休めなければならない。


「ゆらーりー……」


と、気配なく。一人の少女が現れるまでは、そう考えてた。
見滝原では見覚えない制服を着た、されど服はズダズダ状態で、少女の様子もゆらゆら虚ろで覚束ない。
華奢な細腕には似合わない猟奇的な刃を両手それぞれに握る。
アイルも、ゆらゆらと同じフラフラ状態ながら、戦闘態勢を整えようとした。
教会で目撃した修道女のように、ステータスが見えないから……マスターだろうか。
少女は言う。


「ええとぉ、おはようございました。通りすがりの仮面ライダーです」


「……は?」


意味不明な内容にアイルは素っ頓狂な声を漏らす。
彼の世界に『仮面ライダー』が存在しない為、ひょっとしてサーヴァントのクラスを示しているのでは。
アイルが勘違いしてしまっていた。
否、彼女はサーヴァントなのだろうか。ステータスは、やはり確認できない。

瞬間。


既に少女は駆けだしていた。
アイルに飛びかかる風に虚空で身を捻って、逆手持ちしているナイフの刃で回転斬りを仕掛ける。
ゾッとする速度と反射神経に、満身創痍状態のアイルも目が冴えた。
反応し、目で追える。
だけど――体は動けない。動かないのではなく――動けない、である。


闘争本能を意識的に発揮させるのは、完全なる内なる自分を牢獄から解き放ったも同然だった。



☆



「な、ぁっ―――!?」


叫んだのは魔理沙だった。
彼女が弾幕を展開させ、ズタズタ制服の少女に攻撃を仕掛ける前に、弥子共々驚愕する展開が待ち受けていた。

通常、マスターはサーヴァントに敵わない。
テンプレで基本じみた情報の理由は、一般的な話。
神秘と幻想、逸話により圧倒的な身体能力と宝具やスキルを兼ね備えた英霊と、渡り合うのは無帽。
常識を簡潔に説明した文面なのだ。


つまり―――………

英霊に匹敵する能力を持ち合わせたマスターなら、サーヴァントに敵う。


弾丸並のスピードで差し迫った『病み付き』の少女の頭部に、アイルの豪快な拳がクリーンヒットした。


「………!!!!」


弥子は遠目ながら絶句する。紛れもなく、あの少女はサーヴァントだと感じた。
あの猟奇性や人外じみた速度と攻撃……魔人を彷彿させる規格外の象徴を体現した猟奇の化身。
だが。
アイルは、そのサーヴァントを返り打ちにした。

ゆらゆら少女は、吹き飛ばされた先の地面に叩きつけられるとボールのように体が跳ねる。
跳ねた、刹那。
身をゆらりと捻って地面に着地してみせた。
相変わらず、ゆらーりと関わり難い雰囲気で体を揺らす少女に、アイルは笑っていた。
悪魔の高笑いである。


「すっげぇな! 割と本気で殴ったぜ? 頭蓋がぐちゃぐちゃになってもおかしくねえよ」


攻撃が通用しない危機感どころか。
スリリングに変化した事で高揚感が上昇しているアイル。
いや。この少年は、既にアイル『ではない』。
挑発的なファイティングスタイルを崩さずに戦闘狂が、ゆらりと揺らめく狂戦士に呼びかけた。


「第二ラウンドと行こうぜ! イカれ野郎。ほら来いって」

「―――ゆぅ、らぁ、り!」


再び少女が猟奇の刃を構えて獣の如く飛び込む。
瞬間。彼女の細腕が6本、いや8本増えたように錯覚するほど残像を産み出し、斬撃の嵐を発生させた。
対し少年は拳で立ち向かうのだ。
正確には――土の魔力を付与した拳。刃と拳が衝突するとガラス片のような魔力の断片が飛び散る。


「ま……まじか」


魔理沙は弾幕の展開を完全に躊躇した。
恐らく、弥子とは違って戦闘を糧とするのが常識の世界に居た人間なのだろうか。
逆に、サーヴァントとマスターなる規格外な戦闘を邪魔しようがない。両者の間をどう割って入ればいいのやら。
………が。
魔理沙は気付いた。敵がもう一人居る!


「動くと撃つ!」


彼女が、叫んだ先―――森林地帯から明確な殺気があった。
気配を探ってみると、しっかりと『サーヴァントの魔力』を感知したのである。何故?
もう深夜0時を回っている! 聖杯戦争は開幕したのだ!!
星の弾幕を無数に展開させ、魔理沙は呆然としている弥子に呼びかける。


「さがれ、マスター! この感じ……攻撃をしかけられた! 敵サーヴァントの攻撃が来る!!」

「ア………」


弥子がアーチャーの名を叫びかけてしまった。
最早、遅いほどに。
魔理沙が睨んだ森林から無数のナイフが『突如』現れ、襲いかかって来たのである。



★



予想外とはまさにこの状況を示すのだろう。
当初、ゆらゆら少女・西条玉藻とホル・ホースは、池で呑気に釣りをしている弥子と魔理沙に攻撃を仕掛ける算段だった。
信頼して送りだしたサーヴァントが、まさか見当違いの通行人へ攻撃をしかけるのは『予想外』であり。
その通行人もまた、マスターだったのも『予想外』。

ゴチャゴチャな状況だが、ホル・ホースはスタンド『皇帝』を独特な効果音を鳴らし、手元に出現させた。
ギリギリ『射程距離圏内』。
遠過ぎては銃弾の威力も低下してしまう。
謂わばラッシュによる応酬。突きの比べ合いを現実にしている玉藻とアイルの戦闘に驚きがない訳ないが。
ホル・ホースはアイルに銃口を定めた瞬間、酷く冷静で震えで手元が狂う事も無い。
引き金に指をかける。


「……ハッ!?」


だが、止めた。
ぶわっとホル・ホースの全身に悪寒が巡って、大量の汗がどっと溢れる。
彼自身本能的なもので、されど、一瞬感じたソレはDIOのスタンド能力を垣間見た、あの恐怖の間を彷彿させた。
周囲に銃口を向けて警戒したところで。漸くホル・ホースは理解した。


「さ、サーヴァント……そうかッ! 『アイツ』のサーヴァントだ! 不味い、既に捕捉されてやがる!!」


気配もない。何も感じない。姿すらも……!!
しかし『そこに』居るッ! サーヴァントが確かに存在するのだ!! 玉藻と交戦しているアイルのサーヴァントが!
ホル・ホースも薄々『アサシン』……暗殺者のクラスの手ではないかと想像した。
迷いは捨てる。ホル・ホースは恥もなく玉藻を頼ろうと駆けだした。
玉藻だけじゃあない。弥子のサーヴァントにもだ。

二騎のサーヴァント!
アサシンクラスだろうが気配を消そうが、何を仕掛けようが。
サーヴァントの前では姿を露わさなければならない。あえて混戦に紛れこみ、敵の攻撃から逃れる作戦。
即席だが、我ながら奇策じゃあないか。ホル・ホースが冷や汗浮かべ笑う。


虚しくもその笑いは消えてしまった。


「確か『チャンスの神』の例えで『好機は直ぐに捉えろ』。
 そういう諺があるだろ? その神は皮肉にも『時の神』で……名前はなんだったかな」

「あ、あああ………あああッ!!? ま、さかっ! ディッ…………!!」


ホル・ホースは足を挫く。
滑らせたのでなく、恐怖で膝が震えて、体勢を、足を完全に崩してしまった。
大人が情けなく大胆な転倒を起こし、だけどもホル・ホースは完全な屈服を再び味わう。
先ほどの悪寒! 殺気! 途方もない邪悪の気配はまさかッ!! ホル・ホースの耳に残る『声』は完全に『同じ』ものなのだ!
地に伏せたホル・ホースの前に、何者かの足が見えた。



☆



『ボーマン! 貴様あああぁあぁぁ―――――!!』


怒声を上げたのはアイルではなく――彼あるいは『彼ら』のサーヴァント、ディアボロだった。


ディアボロ。
かつてはパッショーネと呼ばれたギャング組織のボス。イタリアの裏社会にて帝王に君臨していた男。
吐き気を催す邪悪とは、即ち『悪魔』の名を冠すディアボロを示している。
当然、彼は絶頂の為、麻薬の売買、ワイロ、裏社会のあらゆる悪に手をかけ。
最終的に、それらが仇となって。組織に反逆者が現れた……

彼は誰も信用しない。
絶頂を害する存在は全て消した。自らの娘すら消そうとした。
だが……彼のもう一人の人格・ドッピオは『別』だ。彼は紛れもなくディアボロの『光』である。
いつぞやの占い師が告げた。
二人の『光』と『影』が保たれ続ければ『絶頂と幸福』が約束される。

実際、そうだった。そうであったに違いない。ディアボロは確信があった。
再びドッピオの声を聞き、確信が『真実』に変わった。
やはり、ドッピオがいなければ帝王に――絶頂へ有り続けられない、と。


だからだった。
故にディアボロは、マスターのアイル……を害する別人格・ボーマンに憤慨した!
散々、ボーマンがアイルの精神を害し続けた以上に。
勝手に体を乗っ取って、よりにもよってサーヴァント相手に戦闘をしかけるなど!!
当のボーマンは西条玉藻の猛攻を受け流し、上機嫌である。


『ちったぁ信用してくれるよな? 教会にいたサーヴァントの情報だって前払いでくれてやったんだぜ』

『いいから即刻、戦闘を中止しろッ! 今すぐにだ!!』

『んなの、出来たら世話いらねぇって』


確かに玉藻は一向に退く気配がない。
アイル、ではなく『ボーマン』が引き出す瞬間威力は圧倒的だ。普段は『枷』で縛っている人間が引き出せる最大を発揮する。
心底信用出来ない奴だ。
ディアボロがボーマンに抱く感情は、絶頂から地獄に叩き落とした忌まわしいジョルノ・ジョバーナ以上の嫌悪だ。
便所に吐き捨てられたタンカス以下の、洗面所にこびりつく毛埃に近い。
毛埃が調子づいて、自分の位置をディアボロに伝えなければ一大事だ。救いようもない。

だったら―――……

ディアボロは、傍らで呆然とする弥子と魔理沙を遠目にやる。
特異な『気配遮断』により完全にディアボロに気づいてはいないだろう。

問題は、玉藻のマスター。
狙いは明確だ。元々は玉藻の猛攻を利用し、遠距離から的確に射撃する作戦。射程距離を考えれば―――


――――『墓碑銘』。


前髪の裏側に映し出される未来予知の映像。
草影に身を潜めていたマスターらしきカウボーイが血相変えて、玉藻達の方へ駆けだす光景。
成程。相手は勘が良いらしい。今回ばかりは、良過ぎたせいで仇となった。
ディアボロが冷酷に行動を取ろうと一歩踏み出す、が。予知には続きがあったのだ。


「………な」


カウボーイが盛大に転倒する。その先に―――あの男! そう!! ディアボロが警戒し続けていた『セイヴァー』


――――に『良く似た別のサーヴァント』が登場したのだ!!!


しかもスタンド使い!
男の背後からは人型のスタンド像が浮かび上がり、スーツ姿から英霊としての騎手の恰好へ変貌していき。
ディアボロ因縁の相手たるジョルノを彷彿させる雰囲気を醸す風貌。
ズラッと手元にナイフを構えた『奴』は、不敵な笑みを浮かべている。

一つ理解した。
『奴』は……『奴ら』は『ジョバーナ』の血族はッ!『奪う者』であると!!
組織のボスの座を、ジョルノ・ジョバーナが奪った様に。『奴ら』はディアボロから聖杯を奪う為に現れたのだと!!


「『THE WORLD』 オレだけの時間だぜ」



★



『5秒』。全く理屈に合わないが、たった『5秒』だけ『時を止められる』。
それがディエゴ・ブランドーの宝具……『THE WORLD』なるスタンドの能力であった。
血相変え、今にでもゲロ吐きそうな男がディエゴの眼前で転倒している。残された僅かな秒数で判断を下す。

マスターを殺害しても意味は無い。仮にマスターを殺害し、サーヴァントが消失すれば……
この位置……恐らく『ソウルジェム』を所持している可能性の高い、弥子たちの方にバーサーカー・玉藻の魂が入ってしまう。
『近い』方だ。
ディエゴは、向こうで殺気を感じ取った魔法使いの少女を横目にやった。

手元に出現させたナイフを全て少女に対し投擲する。
ナイフのスピードが一定より減速し、少女の手前で停止した。
後……ついでだが、やはりナイフを一本。ホル・ホースの『皇帝』を持つ手首に投げつけておいた。
出血死しても、直ぐに死にはしないだろう。安直でちっぽけな小さな悪意で攻撃した。


「―――そして、動き出す」


真っ先に反応したのは、普通の魔法使い・魔理沙だ。
ディエゴの視界に移らないうちに、彼女は手元に『ミニ八卦炉』なるマジックアイテムを出現させており。
『突如』現れたナイフに怯むこと無く『ミニ八卦炉』に魔力を送り込み、風圧で向かってくるナイフをはねのけた。
一瞬の判断が間違えば串刺しだ。
魔理沙はもう一つのアイテム、箒を出現させ、華麗に柄で立ち乗りすると魔力放出で速度を上昇させ。
潜んでいる敵サーヴァントに接近する。

魔理沙は、チラと先ほどのナイフの『形状』を確認した。
余裕を露わしているのでなく。『似たような攻撃』を知っているから確かめたのだ。でも―――『違った』。
『アイツ』じゃあない。魔理沙はどこかで少し安堵したのかもしれない。
故に、躊躇が消えた。

向こうより男の悲鳴が聞こえる。
その主はホル・ホースだ。手首にグッサリと深くナイフがめり込んでいるのを見て、叫ばずに居る人間がどれほどか。
ホル・ホースは完全に地伏せたまま、恐怖に支配されている。
顔を上げずに、現実を受け入れられなかった。
自分の前に居るのはッ……紛れもなく『あの男』だ! 自分を始末しに姿を現した……!!


「さっきのセリフは間違えた」


成人とっくに過ぎている男性が情けなく動けず仕舞いに居る中。
普通の少女が、箒に立ち乗りして颯爽とディエゴの前へ登場を果たした。


「『撃つと動く』だ。今すぐ動く、私がな。おい、なんだお前。セイヴァーに『似過ぎ』じゃねぇか?」


少女の言葉に正気を取り戻したホル・ホースが顔をあげれば、そこにいたのはセイヴァーではなかったのだ。
困惑する彼を差し置いて、ディエゴは面倒そうに答えた。


「他人の空似、赤の他人だ。一々無駄話で時間を稼ぐなよ」

「分かった。お前は嘘つきだ。しかも、とびきり嘘が下手くそだ」


魔理沙の手元より、瞬く星の小宇宙が広範囲に展開された。


――魔符「スターダストレヴァリエ」――


威力を求めていない。弾幕ごっこにおいても重要な、小さく繊細な回避の困難を極める種類。
『時を止める程度』の者は幻想郷にだっている。
ならば彼女を打破する為に求められる解答は――『時を静止しても回避困難な高密度の弾幕』で攻撃する事!

ただし弾幕ごっこだったらの話。
聖杯戦争じゃ訳が違う。
ディエゴの背後に立つスタンド像が拳を構えていた。怒涛のラッシュが繰り




                   『深紅の帝王の宮殿(キング・クリムゾン)』





「―――ハッ!」     「あ?」


ディエゴが何かに驚き、魔理沙も違和感を覚えた。
何故か『ディエゴの立ち位置が違う』。そして『弾幕を無数に喰らっていた』。
弾幕は光と熱の威力を帯びており、小さいながらディエゴの肉体に的確な魔力攻撃を与える。
漆黒の復讐心を糧に、ディエゴは怯むこと無く『THE WORLD』のラッシュを繰り出す。


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!」


忌々しく感じる星の弾幕を『THE WORLD』の拳で打ち消しながら、ディエゴは必死に思考を巡らせていた。
『先ほど何かがあった』! 確かに『何かが起きた筈』なのだ!!
だからこそ、魔理沙の弾幕を受けてしまい。
どういう訳か『その間の記憶』も抜け落ちている。ポッカリ。盗まれたように――……


(理解した! 『時間泥棒』かッ!!)


ディエゴが弾幕を討ち終えたのは、魔理沙の宝具・スペルカードの発動時間が終えてしまったから。
そう。『時間』だ。
魔理沙も違和感の正体に気づく。


(スペルカードの発動時間が短くなった? 違うな、時間が『盗まれた』!!)


『スターダストレヴァリエ』の発動時間で理解した。体感的にも、本来ならもっと長かった筈なのに、と。
いる! もう一騎、サーヴァントがどこかに存在している!!



☆



桂木弥子は催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてない。
頭がどうにかなりそうな展開に圧倒されていた。
果たして、これがサーヴァント同士の戦闘と呼べるのだろうか。
剣士と魔術師が幻想的に攻撃を応酬するならまだしも……

弥子は、危険ながら玉藻と応戦し続けていた少年の方に接近しようとしていた。純粋にマスターである筈の彼が心配だったから。
………だが。
最初、ほんの少し違和感を感じた。
違和感の正体が明らかになる前に異常が発生した。


再び玉藻の体が吹き飛ばされた。それも紅の像による強靱な拳一つで。
独特な模様のあるピンク髪のサーヴァントが、何の前触れもなく出現したのだ。
否、サーヴァントなのに。弥子には彼のステータスもまた見えない。


時間泥棒・ディアボロは憤慨を来しながらも、結局のところボーマンと玉藻の攻防を妨害しなければならなかった。
無論、ジョルノを彷彿させるアヴェンジャーも無視は出来ないが。
一番の問題は、コチラだったに過ぎない。
唐突な妨害を起こしたディアボロの登場に、ボーマンは邪魔された点より。
『一体どうやって』気配なく現れたのかが驚きであった。


「そいつがアンタの能力? 宝具か? 面白いじゃねぇか」

「アイルに体を戻せ」


ディアボロの静かな怒声の最初がそれだった。流石のボーマンも失望した様子をする。


「おいおい、んだよ……同情でもしてんのか? らしくねぇだろ。俺でも分かるって、アンタ『そういう』奴じゃあない」

「そうだ。他人の同情など私はしない。だが――貴様のような例外は別だ!」


威圧を放つ『キング・クリムゾン』を背後に、嘲笑うボーマンに対しディアボロは告げた。


「いいか! 貴様が余裕こいて現れた精神世界で、貴様を消すなど容易かった!! 
 アイルの精神に支障を齎す可能性がある以上、貴様を消しておかなかっただけだ!」

「………」

「二度も言わせるなッ! とっとと消え失せろ!!」



★



「…………あ、あれ? 今ッ……??」


我に返った弥子は強烈な混乱を覚えていた。
先ほどまで生き生きと戦闘を繰り広げていた少年は、地面に倒れ込んでおり。慌てて彼の元に駆け寄る弥子。
様子を確かめれば、寝息を立てている。

え?寝てる??
満更でもなく、むしろ願ってましたと言わんばかりの熟睡っぷりに弥子が戸惑う。
一体どうしようと考えてた矢先。
向こうへ飛んで向かった魔理沙が、箒を片手に徒歩で普通に帰ってきたのだ。
色々、ついて行けない状況だったが弥子は一つ一つ処理していこうと考える。


「アーチャー、おかえり。どうだった?」

「攻撃してきた敵サーヴァントは、どうやら逃げられた。『時を止められて』な」

「と、時!?」

「しかもセイヴァーと顔が似ててな。ありゃ兄弟とか親子って奴か?」


セイヴァーと? 逆に混乱するような情報を与えられ、弥子は頭を抱えたくなる。
魔理沙は周囲を見回して眉を潜めた。


「あのバーサーカーはどうなったんだ?」

「……あっ! 何か忘れているかと思ったら!」


実際、弥子が忘却していた違和感は――ディアボロに関する記憶の欠如だった。
情報抹消のスキル。
ディアボロが堂々と姿を現そうが、宝具や外見などは目撃者の記憶から抹消されてしまう。
英霊としての能力。生前の逸話で会得した特異の一つだ。
弥子だけでなく、魔理沙も『キング・クリムゾン』の時間の吹き飛ばしに関する違和感を忘却してしまっている。

誰も知らない。誰も覚えてない。
弥子は、その欠如と玉藻の消失を一致させ『誤認』してしまう。

しかし……実際、玉藻の姿はどこにもなかった。
何故? それはよく覚えてない。弥子は腑に落ちないまま、唸って答える。


「逃げたんだと思う。えっと……それからこの人が倒れて、寝ちゃってるみたいなんだけど。アーチャー、運べる?」

「しゃーないな」


だが、魔理沙は『キング・クリムゾン』の記憶がなくとも、アイルがマスターである事は分かっていた。
故に――……


「おーい。どっかに隠れてるんだろ。お前のマスターを運ぶが、いいのか?」

「アーチャー?」

「コイツのサーヴァントに言ってんだ。気配がねぇし。アサシンだろ?」


弥子も周囲を見回すが、何も起きない。魔理沙に対する返事もなかった。
魔力や気配の察知なんて無理な弥子でも、恐らく存在だろうサーヴァントに対し言う。


「あ、あの! 私達、聖杯が欲しいって訳でも。乗り気じゃないっていうか……こ、この人は私の家まで運んでおきます!」


反応が無い。弥子は唸ってぼやく。


「もしかして、近くにはいないんじゃ?」

「居ないのもあると思うぜ。マスターが戦ってたのに姿を見せなかったからな」

「う、うん。そっか……それもそれで心配だけど」

「あー……まぁな」


マスターを放置するのもサーヴァントとしての印象は悪い。
サーヴァントの魂を回収する為のソウルジェムシステム。これによりマスターが狙われる確立は下がっている。
確実に、聖杯を産み出すには。
マスターじゃあなく、サーヴァントを倒すのを優先させるべきだ。
だからと言って。マスターの安全を放置、どっかに徘徊し好き勝手するのはマスターの管理が悪いよりも
サーヴァントの性格の悪さが露出している。


(……この人の顔色。そんなに良くない)


弥子は医学に精通してないものの、少年の目の下にある隈や血色から、満足な安息が得られてないと感じた。
聖杯戦争に巻き込まれた事の精神的な問題だろうか?
とにかく、今は彼を運ぶのを優先させた。



☆



―――私の能力を見て逃げたのか!! 忌々しい『ジョバーナ』の一族め!


善意でアイルを助ける弥子たちを遠目に、ディアボロは影ながら未来予知の『墓碑銘』を幾度か発動させている。
彼女たちは、どうやら本当に聖杯戦争を蔑ろにするようだ。
一方で、いくら予知をしてもセイヴァーに酷似したサーヴァントは現れない。

ディアボロは魂に関して敏感だ。
ボーマンの件も、洗面所の毛誇り程度のクズであれ、奴と言う魂が欠如した瞬間。
アイルに何ら影響や後遺症が残らないとは限らないと判断できたほどに。

故に分かった。
あのサーヴァント。『魂がセイヴァーそのものだ』と。姿や肉体などに微細な違いはあれど『魂は同じ』……
時を止める。だがセイヴァーとは異なる。

ディアボロはセイヴァーが、聖杯戦争開始前に数度『時を止めた』サーヴァントと予測していた。
であれば……例のサーヴァントが『時を止める』スタンドを保持するのも納得し、すんなり受け入れ。
むしろ自らの予感が的中した満足感を得ていた。

されど、例のサーヴァントは『時を5秒ほど』しか止められなかった。
セイヴァーは恐らく『5秒以上』停止させられる。入門が容易い方ではない時の静止は7、8………いいやもっとだ。
10秒近く停止させていた。


―――まるでゴキブリのような一族だ。似たような魂と奪う精神が、このディアボロを脅かす!


平和ボケしている魔法使いどころじゃあない。
ディアボロは、再びアヴェンジャーが襲撃すると酷く警戒し続けていた。
完全に、最初の襲撃者たるバーサーカーのことは眼中になかった。



【B-2 池周辺/月曜日 未明】

【桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]魔力消費(小)ちょっと空腹
[令呪]残り3画
[ソウルジェム]有
[装備]
[道具]釣り道具、釣った魚三匹
[所持金]かなり貧困
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争の『謎』を解く
1.アイルを運んで、ここから移動する
2.セイヴァーに似ているサーヴァント…?
3.食料の確保を少し優先
[備考]
※バーサーカー(玉藻)を確認しました。
※セイヴァーに酷似したサーヴァントが時間停止能力を保持していると把握しました。
※アサシン(ディアボロ)に関する記憶は完全に忘却してます。


【アーチャー(霧雨魔理沙)@東方project】
[状態]魔力消費(小)
[ソウルジェム]無
[装備]魔法の箒
[道具]
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:弥子の指示に従う
1.アイルが目覚めるを待つ
2.時を止める奴は信用しない。
[備考]
※バーサーカー(玉藻)を確認しました。
※アヴェンジャー(ディエゴ)を確認しました。時間停止能力を保持していると判断してます。
※アサシン(ディアボロ)に関する記憶は完全に忘却してます。
※アイルのサーヴァントがアサシンではないかと推測してます。


【アイル@グランブルーファンタジー】
[状態]魔力消費(中)精神疲労(大)熟睡
[令呪]残り3画
[ソウルジェム]無
[装備]
[道具]
[所持金]親(ロールの設定)からの仕送り分
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界に戻る
1.セイヴァーの討伐報酬を狙う
[備考]
※ライダー(マルタ)のステータスを把握してます。
※バーサーカー(玉藻)を確認しました。
※ボーマンに乗っ取られている間の記憶はありません。


【アサシン(ディアボロ)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(小)ボーマンに対する苛立ち
[ソウルジェム]有
[装備]
[道具]
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得
1.アヴェンジャー(ディエゴ)に対する警戒
2.ボーマンの件もあり、現時点ではアイルの周囲に留まっておく
3.セイヴァー(DIO)の討伐を優先にする
[備考]
※アヴェンジャー(ディエゴ)の時間停止スタンドを把握しました。
※セイヴァー(DIO)はジョルノと『親子』の関係であると理解しています。
※アヴェンジャー(ディエゴ)はセイヴァーと魂の関係があると感じました。
※ホル・ホース&バーサーカー(玉藻)の主従を確認しました。
※弥子&アーチャー(魔理沙)の主従を確認しました。



★



「おい、おいっ! 大丈夫か、しっかりしな! キャスター!!」


荒い呼吸を続けながらホル・ホースは駆け続ける。
禁煙してれば、肺呼吸はちっとはマシだったか。あぁくそ、覚悟してても後悔はでかい! と彼は思う。
手首の痛みを抑え、どうにか魔理沙の弾幕に紛れて逃げおおせた。
彼が助かったのは惨めに転倒し、地面に伏してたお陰もある。

ホル・ホースもキャスター(仮)の身に何が起きたのか、曖昧な記憶・断片的過ぎて分からない。
ただ、敵にやられて体はボロボロだ。
彼女を抱え、必死に戦場から逃れるだけで一杯一杯である。

呼吸と体力に限界を覚え、ホル・ホースは一旦立ち止まった。
ディアボロの『情報抹消』スキルや、DIOと酷似した英霊の出現に彼自身パニック状態で、悪夢の間違いじゃないかと思う。
前世でとんだ大罪でもしたのか。どういう天罰でDIOに似た英霊がもう一騎現れる?
でも、確かにアレはDIOじゃあなかった。


「さっきのは何だ………『何を』されたんだッ………」


DIOと似た……クラスは『アヴェンジャー』とステータスが表記されていた奴。
スタンドを出現させ、気付いた時にはホル・ホースの手首にナイフが突き刺さっていた。
説明にもなってないが、全て事実だ。
だけど『似ている』。かつて体験したDIOのスタンドと同じ感覚。スタンド能力まで同じ……なのだろうか?

ふと。
のろーりとキャスター(仮)が覚醒する。
肉体はボロボロ、制服は元からズタズタ。体の軸はユラユラな西条玉藻が、ホル・ホースと視線を合わせ。


「初めまして。あなたが、あたしのマスターですか?」

「嘘だろ!?」


もう数日間は一緒にいるだろうが! と突っ込まざる負えない。
しかし、逆を返せば玉藻は相変わらずの通常運転だ。一先ずホル・ホースは安心する。
戦闘に敗北した事によるメンタルは心配ない、という事。
脱力感と共に、手首の傷が痛む。


「まずは傷をどうにかしねえとな……キャスターのお嬢ちゃんは立てるか?」

「起立……してみたんですけど。あれ、ゆらゆらしちゃってる。地震が発生してるみたいです」

「よし。問題ないな」


流石のホル・ホースも慣れてしまった。これは逆に問題なし、通常通り。
しかし、玉藻が負傷しているには変わりないので、迂闊に他サーヴァントと鉢合わせしてはならない。危険だ。
あのDIOに似たサーヴァントと巡り合わない事を祈り、ホル・ホースは歩み出す。





【B-2 池周辺/月曜日 未明】

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(中)手首負傷、DIOに対する恐怖(小)
[令呪]残り3画
[ソウルジェム]無
[装備]
[道具]
[所持金]貧困
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得、DIOとは接触したくない
1.傷の治療をする。
2.DIOと似たサーヴァントは何なんだ…?
[備考]
※玉藻を『キャスター』クラスだと誤認しています。
※弥子&アーチャー(魔理沙)の主従を確認しました。
※アイルがマスターであること把握しました。
※アヴェンジャー(ディエゴ)を確認しました。


【バーサーカー(西条玉藻)@クビツリハイスクール】
[状態]肉体負傷(中)魔力消費(中)
[ソウルジェム]有
[装備]
[道具]
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯って……えーと、なんでしたっけ?
1.ズタズタにしますー……あたしがズタズタになってますー?
2.DHCでお得なキャンペーンが行われるらしいですよぉ、急ぎましょう
3.間違えました。DNA検査場でイベントがあるみたいです
4.DHAでしたっけ?
5.まあいいか。全部記号です。
[備考]
※ホル・ホースの影響でなんとなーく『DIO』に関する覚えが残っているようです。
※戦闘しましたが、あまり記憶は残ってません。(平常運転)



☆



これが幸いなのだろうか。
怪盗Xの『予告状』が公になっている最中、アヤは偶然にも外出中だった為、マスコミ関係者の目から逃れられた。
事務所も、自宅マンションも、今じゃすっかり報道陣が待ち伏せ状態。
一応、マネージャーと連絡を取り合って……明日のテレビ局出演に関して、緊急会議が行われているようだ。

現時点じゃ何とも言えないらしいが。
世間の注目度を利用して視聴率を狙うべきか。
警察からは出演を中止するよう求められていると聞くが、最終的な決定は下されてない。

連絡を終えたアヤは、ホテルに宿泊した。
歌手としての地位もあり、資金が困る事は一切ないだろう。
ただ、怪盗Xに関してどうするべきか……正体不明の彼をまだよく知っている部類にアヤは含まれていた。
故に……恐らく、サーヴァントではなくマスターだとも分かった。

怪盗X。
アヤの元居た世界で猟奇と残虐性に満ち溢れた、廃退的なカリスマを持ち合わせる謎の存在。
一応、現場の命を盗み、物もついでに盗むことからそう呼ばれるようになった。


時計の時刻は――既に0時を回っている………


「アヴェンジャーさん」


アヤは携帯端末の時計から目を離し、霊体から現界した己のサーヴァントに気づく。
なんでもないように振舞うが、アヴェンジャーの様子は何かあった風だ。
彼は平静に尋ねる。


「結局、イカレたコンサートは開演する気らしいな」

「私が自分から降りれば、嫌でも中止になるけれども。アヴェンジャーさんはその方がいいかしら」

「……お前。この状況を楽しんでいるだろ」

「結構、怖いわよ?」


だって狙われているのは自分の命だ。
ファンやアンチから執拗な嫌がらせ染みた経験は、今まで食べてきたパンの数ほど数えてない。
慣れてはいるが、今回の相手は怪盗Xである。
不安を表情に浮かべているが。不安そうな表情を『顔に張り付けている』だけで、内心なんとも思っちゃいない。
この女は『そういう奴』だとアヴェンジャーは鼻先で笑った。


―――先ほどの戦闘。何故かアヴェンジャー・ディエゴは一度離脱した。そう、何故か。
理由を思い出せないのだ。
原因はディアボロの『情報抹消』スキルによる忘却。
ディエゴは少なくとも『時間停止』を脅かす能力がそこにはあった。そのように結論している。
お陰で、魔法使いの少女を完全に仕留め損なった。

元々。ディエゴ本来の目的は、アヤのいるホテル周辺の警戒。
件のサーヴァントらは偶然、巡り合っただけ。様子見だったのも否めない。
本命はアヤを狙う怪盗Xの主従。


「ならお前はこんな状況でも歌を歌えるのか?」


ディエゴの皮肉籠った問いかけに、彼女は何ら躊躇なく答えた。


「勿論、歌えるわ。今この瞬間でも歌える」


なんだったら、本当に歌おうか。アヤの言葉は裏の意味を含んでいる。
アヴェンジャーは不自然な間を置いて「ここで歌うな」と微細な苛立ちと共に言い放った。



【B-2 ホテル/月曜日 未明】

【アヤ・エイジア@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[ソウルジェム]無
[装備]
[道具]
[所持金]歌手の収入。全然困らない。
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界への帰還
1.怪盗Xに対する警戒
2.セイヴァー(DIO)の存在が気になる
[備考]
※テレビ局の出演は現時点では不明です。


【アヴェンジャー(ディエゴ・ブランドー)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(小)肉体負傷(小)
[ソウルジェム]有
[装備]
[道具]
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得
1.怪盗Xに対する警戒
[備考]
※ホル・ホース&バーサーカー(玉藻)の主従を確認しました。
※弥子&アーチャー(魔理沙)の主従を確認しました。
※アイルがマスターであること把握しました。
※アサシン(ディアボロ)に関する記憶は喪失してますが、時間停止の能力に匹敵する宝具があったと推測してます。


<捕捉>
※今回の戦闘で時間停止と時間の吹き飛ばしが発生しました。
 時に関与できるサーヴァントなどには異常を感知した可能性があります。
最終更新:2018年06月24日 23:01