放課後になって俺は剣道の本を授業中ずっと読んでいた。
本分がおろそかになるが構ってられない。
遊佐「晶子、剣道の練習の後に犬を引き取りに行くことになるけどいいかな?」
晶子「はい。私も何か手伝えることありますか?」
遊佐「あー、そうだな。んじゃ何かマネみたいなの頼むよ。晶子はさ、剣道やったことないの?」
晶子「うーん。剣道してるのは見たことあるけど実際にやったことはないんです」
遊佐「だよなー。うん、まあ応援してくれるのが一番うれしいな」
晶子「もちろん応援します!」
遊佐「ありがとうな」
晶子「えっと、練習行く前に電話してもいいですか?」
遊佐「あ、病院?」
晶子「はい、遅れるって電話しなきゃ」
遊佐「そっか、んじゃ」
俺は携帯を取り出して渡した。
晶子「え、でも」
遊佐「気にするなよ。俺だってリヴァ君を気にかけてる一人だからな」
晶子「あ、そうですよね。わかりました」
電話で病院に用件を伝えてさて、剣道部へ。

剣道部の道場の横で。
早乙女「む、遊佐か。今は顧問はいない、本来は礼儀から入るのだが、とりあえず素振りをしているといい」
早乙女さんが俺を見つけて指導してくれる。
遊佐「あ、素振りの仕方も教えてくれる?」
早乙女「そうだったな。よし」
早乙女さんは木刀を持ってきた。
早乙女「木刀は竹刀より少し短いので意識するようにな。まず面の素振りだが」
早乙女さんが構える
早乙女「面ッ!」
っと一閃。
早乙女「相手の面の位置を意識してまっすぐ振り下ろすことだ。振りかぶるのは……」
早乙女「次は小手だ。小手ももちろん相手の小手の位置を意識することだ。そして……」
早乙女「胴。胴はこちらから見て左を打つことは昼休憩に教えたな。よって胴は左上方から斜めに打ち出す。横から打ち出すのではない」
遊佐「ふむふむ」
早乙女「まずはこの3つが基本だ。とにかく素振りしてみることだ」
遊佐「あともうひとつ頼みたいんだけど」
早乙女「ん、何だ?」
遊佐「木刀、一本借りれないかな?」
早乙女「む、それは顧問に聞いてみないことにはな」
遊佐「それもそうか」
晶子「あ、それならうちにある道場の借りても大丈夫だと思うよ?」
遊佐「それなら頼んでもいいかな?」
晶子「はい」
早乙女「よし、それじゃあ取り合えず今日はこれを使っておけ」
遊佐「ありがと。んじゃやりますか!」
晶子「あ、あの洲彬君」
遊佐「ん?」
晶子「授業中に見てたのって剣道の本だよね?」
遊佐「ああ、そうだよ」
晶子「私も少しは役に立つように読んでもいいかな?」
遊佐「うう、まじでうれしいよ。それじゃあ頼んでもいいかな?」
晶子「はい!」
晶子って子はなんていい子なんだろう。感謝しまくりだ。
遊佐「んじゃ俺は素振りしてるから」
晶子「がんばってください!」
遊佐「おう!」
とにかく今は基礎だ、やれることをやろう。
10本ずつのセットで、
ぶんっ!ぶんっ!ぶんっ!
ぬおっ!何気にこれきつい。結構木刀って重いぞ。
ぶんっ!ぶんっ!ぶんっ!
ぶんっ!ぶんっ!ぶん…
早乙女「おい、遊佐。遠くから見ていたが面がだんだん斜めになっている。もっと意識してまっすぐ打つんだ」
時々早乙女さんが指導してくれる。
遊佐「はい!」
何故か敬語になってしまった。
ぶんっ!ぶんっ!ぶんっ!
遊佐「はぁはぁ…5セット目終了。おもったより結構くるなこれ」
晶子「だ、大丈夫ですか?」
心配そうになって声をかけてくれる。
遊佐「あ、ああ。でもこれくらいでへばってたら駄目だ。まだまだ!」
とにかく今は素振り!
遊佐「面ッ!面ッ!」
声を出してみるとこっちのほうが気合が入った。
遊佐「小手ッ!小手ッ!」
遊佐「胴ッ!胴ッ!胴ッッ!!」
ぐはぁあぁ、きつい。
晶子「あ、あの遊佐君。これ飲んで?」
晶子が飲み物を買ってきてくれていた。
遊佐「サンキュー晶子」
俺は受け取って飲ませてもらう。
遊佐「あー、こんなに飲み物がおいしいと思ったのは初めてだ」
晶子「お、大げさだよ」
遊佐「いや、それくらいうれしかったんだ」
晶子「……」
赤くなってる晶子。
遊佐「素振りだけで一時間くらいが立ったな……。もういっちょやるか」
俺は立ち上がって素振りを始めた。
最終更新:2007年01月15日 23:49