遊佐「よし、向かおう」
HRが終わったあとすぐ保健室へ。
遊佐「失礼します」
ベットのある所へ。
遊佐「……まだ寝てるな」
起きるまで待つか。バイトまでまだ時間あるし。
遊佐「……」
かわいい顔だよな……。
遊佐「……今はゆっくりしような」
…………………………
霞「……ぅん」
遊佐「起きたかな?」
思わず覗き込んでドキッとしてしまう。
遊佐「……まだ起きてないか」
霞「……く……よ」
霞が苦しそうにする。
遊佐「霞?」
霞「……ぁ、遊佐君」
今度は目を覚ましたようだ。
遊佐「大丈夫か?」
霞「……うん、おはよう」
霞がベットに寝たまま挨拶をする。
遊佐「おはよう。起きれるか?」
霞「起きれる。時間いいの?」
起き上がろうとする霞。
遊佐「そんな心配はしなくていいの。余裕で間に合うよ」
霞「そっか」
遊佐「帰れそう?」
俺は尋ねる。
霞「うん。よいしょ」
霞がベットから降りる。
遊佐「それじゃあ、ゆっくり帰ろうか」

帰り道
霞「ごめんね」
途中で霞が謝る。
遊佐「ん。何が?」
俺はわからなくて聞いてみる。
霞「わざわざ送ってもらって」
遊佐「このくらいなんてことないって。病人はそういうの気にしないの」
本当にそこまで気にすることでもないんだけどな。
霞「うん……」
遊佐「どっち?」
俺は来たことも無いような道でさっぱりわからない。帰れるかどうか不安になる。
霞「右だよ」
遊佐「はいよ」
とにかく今は霞を家まで送り届けるのが大事だからな。
遊佐「それにしても、結構遠いな」
日差しが暑い。こんな日くらい弱めてやって欲しいもんだ。
霞「そうかな」
遊佐「少なくとも俺よりは遠い」
2倍くらいは歩いたんじゃないか……?
霞「そうなんだ。いつか遊びに行きたいな」
遊佐「そうだな。まず病気から治そうな」
霞「ん……」
そこで会話が途切れた。
少し歩いていくと。
霞「ここ」
霞が指差した家を見る。
遊佐「ここか」
霞「ありがとう遊佐君」
遊佐「ああ。今度はゆっくり休んでくれよ。本当に心配だからさ」
俺は霞のカバンを渡す。重いだろうと思って俺が半ば強引に取り上げた。
霞「うん。わかった」
遊佐「あ、そういえば今日は松下さんには霞は休むって言っておかないと」
よく考えるとバイトのことすっかり忘れてた。
霞「あはは、電話しておけばよかったね」
遊佐「すっかり忘れてた……。ま、大丈夫さ」
遊佐「それじゃあ、行くわ」
俺はその場を離れようとする。
??「あれ、姉ちゃん?」
ふと後ろから声がする。
姉ちゃん?
俺は振り向く。そこには中学生だと思われる男の子がいた。
遊佐「姉ちゃん?」
霞「うん、弟の拓也」
俺が聞くと弟の名前を教えてくれた。弟がいたのか。
拓也「姉ちゃん、今日学校休んだんじゃないの?」
霞「あはは……」
拓也「あんまり無茶すると良くないよ」
霞「二人とも同じこと言うね」
霞が少し笑う。
遊佐「そりゃ誰だって病人には言うだろ」
拓也「そうだよ姉ちゃん」
二人で意見が合う。
霞「それじゃあ先に家入るね」
遊佐「ああ、また元気になったら学校でな」
霞が家の中に鍵を開けて入っていった。
拓也「ふぅ……。あの」
拓也ため息を一つ。そして俺に声をかけてくる。
拓也「姉ちゃんの友達でしょうか?」
遊佐「ああ、そんなところだ」
拓也「そうですか……。わざわざありがとうございます」
頭を下げる。
拓也「僕、椎府拓也といいます」
遊佐「俺は二年の遊佐洲彬。一応霞の先輩だな。んでバイト先では後輩」
自分でも変な構成だと思う。
拓也「あー、姉ちゃんが時々話してくれる人ですね」
俺のこと家で話してたのか……。少し恥ずかしい。
拓也「家まで結構遠かったですよね」
遊佐「そんなことはないさ。ふらふらしてる病人を一人で帰らせるのは心もとないからな」
でもそれは霞だからであって。
中島なら勝手に帰れってなもんだ。
遊佐「しかし、お前の姉ちゃん。無茶するな」
拓也「そうなんです……」
俺は霞がなぜここまでするのかわからない。
遊佐「……んじゃ俺はバイトあるから。任せるな」
拓也「わかりました。がんばってください」
遊佐「ああ。それじゃあな」
俺は来た道をわかる道に出るまで引き返す。
それにしても良い弟がいることがわかり少し安心した。

遊佐「いらっしゃいませ」
…………。
遊佐「お待たせしました」
遊佐「はい、ありがとうございました!」
……………………。
遊佐「注文です!」
………………………………。
遊佐「ぜーはぜーは」
……………………………………。
遊佐「つ、疲れた……」
イスにどっと座り込む。
店長「お疲れ様」
遊佐「結構大変ですね」
これをいつもやっている霞のことを思うと。
遊佐「もっと、役に立てるようにならないとなぁ」
つい口から言葉が漏れる。
店長「そんなことはないよ。覚えたての割りにはしっかりできいたよ」
遊佐「いやー、思ってたよりは大変でした」
店長はどうやら少し勘違いしていたようだったが、ほめてくれたのは正直うれしい。
店長「もし遊佐君がいなかったら今日はもう無理だったね」
遊佐「一人じゃ、無理ですね……」
それにしても霞目当ての客は残念そうにしていたな。もう何人にも霞はどうしたのかと聞かれた。
本当、人気あるよな。まぁ確かにあの格好は……呼びそうだな。
遊佐「うーん」
複雑だ。
店長「どうしたんだい?」
遊佐「霞はどうしたのかと聞く客があまりに多くてびっくりしました」
店長「確かに多いようだね」
うーん。松下さんはこういうことを狙ってこの服にしたんじゃないのか?
遊佐「ところで、あの霞の服って店長の趣味ですか?」
俺は思い切って聞いてみた。
店長「ははは、大体そんな所かな」
遊佐「……あ、あはは」
いや、まさかその通りになるとは思わなかったこともないけど。流石にびびった。
松下さんはコーヒカップを片付けながらそう言う。
遊佐「さ、さーて俺も掃除しないと」
俺は立ち上がる。

店長「それじゃあ、また明日もよろしくね」
遊佐「はい。お疲れ様でした」
今日は一人でいつもの道を帰る。
遊佐「……走るか」
帰ったらお風呂にはいって寝よう。
遊佐「は……は……」
夜空を見上げた。
遊佐「よく、毎日走って帰ってたな……」
俺より遠いんだからな。
遊佐「実は、俺より……体力ありそう」
あんな華奢な体なのに。
遊佐「俺も、負けないように……鍛えないとな」
最終更新:2007年03月07日 00:32