●バリスタ決勝戦


校庭という名の戦場に両軍が対峙した。
西軍は赤の襷を付けたバリスタ五蛇将が率いる3年生軍団。
東軍は青の襷をつけた柊ましろ大魔元帥閣下の元に集まりし2年生軍団。
両軍共に敵を見据え、静かにボルテージを上げ、
嵐の前の静けさというべきか、緊迫感に包まれた重苦しい沈黙が満たしていた。

審判が片手を上げた。
両軍が息を呑んだ。

【審判】「Laisser aller!」
審判が開始の掛け声と共に片手を勢いよく振り下ろした。

「「「おおおおおおおおお!!!!!!!」」」
両軍から雄叫びが上がり、地を揺るがす轟音を吐き散らしながら
全速力で敵へ向かって猛進しはじめる。

バリスタ決勝戦が始まった。


【中島】「キタキタキタキタキタキタキタキタアアアアアア!!」
中島のボルテージが最高潮に達して、何がキタのか分からないが
非常に興奮しているようだ。
中島はそのテンションのまま突っ走り、あっという間に戦場に埋もれてしまった。
もはやどこに居るのかわからない。

【俺】「1年生と戦った時とはまるで別物だな……。
    戦闘が激しすぎる」
目の前に広がる光景は、1年生と戦った時のようなお行儀の良い戦いとは違い、
遠慮無しのバトルロイヤル、大混戦の総力戦だった。
土煙がいたるところで上がっているため、相手側陣地が見えない程激しい戦いのようだ。
俺は茜さんの指令通り、戦場を駆け回りつつ敵から逃げ回り、
情報把握に勤しんでいた。

数分後、リンクシェルから戦況報告が流れてきた。
【操】「戦場の遊牧民、毛森操が戦況報告するよぉー!
    見ての通りの大混戦!五蛇将の位置も、味方将軍の位置も把握できなーい!
    土ぼこりが凄くて視界も最悪ぅ~!
    徐々に敵の陣形が決まってきてるみたいだけど、状況は最悪ぅ~!
    我が軍の半分が飛竜に対峙しちゃってるかもー!
    どうみても、バリスタという名のビシージだよぉー!」

つまり敵は混戦状態でも自分の位置を把握し、
それぞれの持ち場に徐々に移行しているということだろう。
それに比べて我が軍は混戦に呑まれ、状況把握すら難しいとは……。

【聖】「ええい!何をしている!一箇所に集中するな!
    鶴翼の陣で敵を押さえ込めと言っただろう!」

……言ってません。初めて聞きました。
その後も、陣形をファランクスにして突撃だ!とか、
車掛の陣で少しずつ削れ!やら、よく分からない単語が沢山出てきた。
司令部も相当混乱しているようだ。


リンクシェルから聞こえてくる罵声を適当に流しつつ、
自分なりに状況整理をしていると、茜さんの声が聞こえてきた。

【茜】「遊佐君、聞こえる?」
【俺】「あ、はい。聞こえます」
【茜】「見ての通り状況は最悪。司令部もパニックになっているわ」

ましろ閣下の絶叫がリンクシェルを通して聞こえている。
我が軍の士気も絶賛急落中だろう。

【俺】「ええ、そのようですね」
【茜】「そこで、ひとまず冷静な貴方に指令を与えるわね」
【俺】「逃げるので精一杯で、あまり冷静でも無いですが、
    俺に出来る事ですか?」
【茜】「……やってもらうしかないわ。
    まず、武僧先輩の事は頭から取り払って」
【俺】「え?」
【茜】「今の状況を打破するには、村崎先輩を如何にかする必要があるの。
    村崎先輩を倒してほしい」
【俺】「えっ、ちょ……、俺にそんなこと!?」
【茜】「武僧先輩を倒すという目標を持っている貴方には申し訳ないけど、
    今の状況では武僧先輩と戦う事すら難しいわ。
    だから、武僧先輩と戦える状況を作るためにも協力してほしいの」

麗しき女性に頼まれちゃあしょうがねぇ!と自信満々に返答したいところだったが、
全く持って自信がない俺は「……善処する」と力なく言うのが精一杯だった。
茜さんは「お願いね」という言葉を最後に通信を終えた。

村崎先輩か。
彼女は敵を正面で迎え撃つ役割を持っていたはず。
混乱に乗じて戦場のど真ん中に来てしまっていたが、
ここからなら後ろを取れるか?

いや、引き返して後ろを取るしか、方法は無い!
急げ、俺!


【???】「リューコの後ろを取る気かい?遊佐洲彬ぃいい!」
引き返そうと踵を返した直後、目の前には甲賀しのぶ先輩が
俺の進路を塞ぐかのように仁王立ちしていた。

【俺】「うっ、甲賀先輩……!いつの間に!」
甲賀先輩は鋭い目線を向けながら笑っていた。

【しのぶ】「くっくっく。気が付かなかったのかい?
      バリスタ開始からずっと張り付いてたよ?」
【俺】「……っ!?」
【しのぶ】「あたしが本気なら、あんたはもう100回はゲームオーバーだねぇ。
      でも良かったね。あんたの相手は都だよ、あたしじゃない」
【俺】「何が目的だ……」
【しのぶ】「何も。ただ、あたしは面白い物が見れればそれでいい」
甲賀先輩はそういうと、蔑むような目を向け「くっくっく」と俺を笑った。

【しのぶ】「そうだ。あたしが出したヒントは解けたかい?
      簡単だよねぇ~、至極明確な答えさ」
武僧先輩を倒すためのヒントであろうということしかわからない俺は沈黙していると、
甲賀先輩はやれやれというジェスチャーをした後に、答えを出した。

【しのぶ】「個々の能力も、連携も、何もかもがあたしらが勝る!
      つまり、あたしらには絶対に勝てないということさ!
      あたしらはさながら草食獣を狩る肉食獣!
      草食獣は草食獣らしく弱肉強食、自然の掟に従い喰われろ!」
甲賀先輩はふんぞり返りながら「あっはっはっはっは!」と高笑いをしている。

【俺】「……」
相手にしても仕様が無い気がした俺は、
気が付かれないようにそっと移動することにした。


【しのぶ】「くっくっく!だが、草食獣もただ喰われているだけじゃない……。
      足掻いて見せろ、もがいて見せろよ遊佐ぁあ?……あれ?
      遊佐くーん、どこー?」




【俺】「くそ、余計な時間使ったっ……!」

急いで村崎先輩の元へ向かっている途中、
毛森操中尉の戦況報告が流れてきた。

【操】「お耳の恋人、毛森操の戦況報告の時間だよぉー!
    とりあえず敵の陣形は整っちゃったみたいだよぉー!
    我が軍損壊率30%程ぉ~、敵軍損壊率15%で劣勢だよぉー!
    井草中尉、開始直後の混乱に呑まれ御討ち死にぃ~!
    神契少佐、虎の牙にかかり御討ち死にぃ~!
    各交戦中の部隊を報告するよぉー!
    飛竜には、中島中尉部隊が交戦中だよぉー!
    虎の姿は見えずぅ~、飛竜は孤立中ぅー!チャンスだよぉー!
    無手は定位置に付いてから動きは無いよぉー!
    交戦中の部隊はにぃ~!」

お耳の恋人さんの報告が続いている。
ひとまず俺が欲しい情報は仕入れた。
中島が村崎先輩と戦っているその隙を付ければ!

中島がやられてしまわないうちに辿りつけるよう祈りながら、
全速力でひたすら突っ走る!
見えた!てか、こんな前まで押されてるのか!?
村崎先輩の軍勢は、我が軍のルーク目前まで迫っていた。

中島は村崎先輩の武器をギリギリかわしているが、それで一杯一杯のようだった。
だが、村崎先輩は中島を倒すことに躍起になっている。
その隙を狙う!今だ!

俺は村崎先輩が中島を攻撃した瞬間を狙い、飛び込んだ。
村崎先輩は左足を大きく踏み出し体重を乗せると、
左手で武器突き出し、中島の頭に付いている風船を勢い良く貫いた。
俺は少し屈み、下からがら空きになった村崎先輩の右胸に付いている風船目掛けて
手を出した。

良し!貰った!ついでに事故で胸も触れ……!?

村崎先輩はこちらを向いて笑っていた。

読まれている!?馬鹿なっ!一度もこちらを見なかったのに!?

村崎先輩は、中島を貫いた棒状の武器を引き戻し、その力を利用し身を翻す。
俺の手は空を切り、ギリギリのところで避けられてしまった。
村崎先輩は武器を引き戻した力を利用して、そのまま回転攻撃に移ると、
俺の頭上を重いものが空気を切り裂く音と共に通過した。

あぶな!
よっ、良かった!風船胸につけておいて!

だが俺は安心している場合じゃなかった。
尻餅をついてしまっていたため、追撃を避ける手段を取らなければならない。
咄嗟に村崎先輩の武器がある方を背面に向け、立ち上がり構えた。

すると村崎先輩は武器を中心で持ち、間合いを短くすると、
その両端切り上げるように振り回した。
俺が近接の間合いに入ったために戦闘スタイルを変更したのだろう。


何とか助かったが、これからどうすれば!?
中島は泡を吹いて倒れ、担架に乗せられ退場したから囮はもういない!
肝心な時に役に立たんな!

【俺】「くっ、もう少しだったのに……!」
【村崎】「なかなかやるじゃないか。少々侮っていた事を詫びよう。
     しかし、君の相手は都ではなかったのかい?」
【俺】「武僧先輩を倒す約束は忘れていません。
    でも、それだけじゃダメなんです!
    バリスタに参加している以上、優勝を目指さなければさあ!?」
【村崎】「なるほど。確かにその通りだ……。
     優勝を目指すために私を倒すつもりならば、
     その勇気に答え、私も本気でお相手しよう!!
     都には悪いが、ここで果ててもらうぞ!!」
村崎先輩は勢いよく武器を体の回りで振り回し、
ブンブンと風を切る棒型の盾を操るかのように隙をなくした。
触れれば間違いなく痛い!

雰囲気に呑まれて勢いで強がって見せたものの、どうすればいいんだ!?
村崎先輩、目が怖いです!
獲物を狩る竜の目ですっ!!

【村崎】「どうした、遊佐君。
     来ないならこちらから行くぞ!」
村崎先輩の盾が武器に変わる。
クルクルと回している棒を時々突き出し、
或いは自身ごと回転し勢いを付けた棒でなぎ払う。

運が良いのか遊ばれているのか、ギリギリのところでかわし続ける。
村崎先輩はかなり激しい動きをしているのに疲れが見られないが、
俺はもうダウン寸前だ……。

足がふらついた俺を村崎先輩は見逃さなかった。
せめてもの情けだ。痛くしないで楽にしてやると最後の言葉を俺にかけた。
俺の胸に付いた風船に吸い込まれるように棒が迫ってくる……。
なんてことだ……、こんな所で終わるなんて。


【都】「にゃは!遊佐君の風船頂きや~!」
【俺】「!?」
【村崎】「あっ!馬鹿!都!」
武僧先輩の拳が村崎先輩の棒に接触すると、棒が弾かれ地面に叩きつけられ、
武僧先輩と村崎先輩はその反動を受けバランスを崩した。

助かった……?
けど、体が酷く重い。このまま倒れてしまいそうだ……。
折角難を逃れたというのに……。

疲れの所為なのか、俺には世界がゆっくり動いて見えていた。
バランスを崩した村崎先輩は膝を付き、体勢を整えようとしている。
そして武僧先輩は転びそうになりながらも、
しっかりと俺を見据え、追撃の体勢に入っていた。
その目はまるで獲物を執拗に追いかける猛獣のようだ。

武僧先輩の拳が俺の脇腹をかすめた。

外した……!?
いや、バランスを崩した無理な体勢からだったから、
僅かに的を捉えられなかっただけか。

しかし、武僧先輩は動じる事も無く次の攻撃動作に入っていた。
体勢を立て直し、下から拳を振り上げてきている。
今度こそ正確に的を捉えている。
これは避けられない。


逃げても、逃げても、逃げ切れない草食獣は
こういう気持ちなんだろうか……

諦めにも似たこの気持ち、やはり俺には無謀だったか……。


『草食獣は草食獣らしく肉食獣に喰われてしまえ』
ふと、甲賀先輩の言葉が頭をよぎった。
草食獣は所詮、肉食獣の餌にしか過ぎない。
俺達は喰われるだけの存在……か。

ふわりと体が軽くなる感覚がした。
体に力が入らなくなり、俺の体は自然の力に身を委ねることしか出来なかった。

自分の体が膝から崩れ、倒れている途中に武僧先輩の顔が見えた。
なぜかとても悲しそうな顔をしていた。

なんでだろう?

……そうか、俺はここで負けたら空手部に入れないんだ。
もしかして、俺が入るのを楽しみにしてたのかな。
思い上がりか……な。


…………。
……いや、思い上がりでも良いじゃないか。
俺が戦っていたのは村崎先輩だ。
武僧先輩じゃないっ!
もし、武僧先輩が俺と戦うのを楽しみにしていたのなら、
ここで諦めたら彼女を裏切る事になる!

諦めんな……。
諦めんなよ、俺!!

草食獣だって、ただ喰われてるだけじゃない!
諦めたらそれこそ草食獣にも及ばない!
草食獣に食べられる植物以下だ!

諦めかけていた俺に、武僧先輩の拳が容赦なく迫ってくる。
武僧先輩の気持ちと自身の不甲斐無さに己を奮い立たし、
僅かな力がまだ残っている事に気が付いた俺は、その力を使い体を反らせて追撃を避けた。

そして、その隙に残り僅かな力を振り絞って体を翻し、
一目散に村崎先輩目掛けて走り出した。

【俺】「うおおおおおおおお!!!!!!!!!」
【村崎】「ひっ!」
村崎先輩は怯んでいる。
このままその胸に飛び込めば村崎先輩の風船を頂く事は出来るだろう。
事故という免罪符を片手に、あの胸を味わう事も出来るだろう!
しかし、俺の風船も犠牲になる確率は高い。
だから俺は、村崎先輩の胸は諦める!!
本丸に飛び込むために諦める!!!!


それに、村崎先輩を倒すのは俺じゃない。


【都】「逃げるな~!」
予定通り!
俺は武僧先輩から逃れるために全速力で走る!
村崎先輩も構えなおすが、もう遅い。
虎は牙を剥いている。

俺は村崎先輩に接触する瞬間に横へ逃げた。
見開いた村崎先輩の目に映るのは俺ではなく、
牙を獲物の喉元に、いざ突き立てようと謂わんばかりの虎の姿だった。

虎は竜に飛び掛り、風船が割れる音と共に倒れこんだ。


【俺】「うっしゃああああ!!!!!両・成・敗!!!!!!!」
俺は両拳を天に掲げた!

【村崎】「うぅ……、まさかこんな……」
【都】「にゃあぁぁ~……」

武僧先輩の左手は間違いなく村崎先輩の右胸に押し当てられ、
風船は破裂し萎んでいた。
そして、武僧先輩の風船は村崎先輩に激突した時に割られ……て、
無かった……!

考えが甘かった!そんなに上手くいけば、きっと常勝なんてさせてない!
武僧先輩は立ち上がり、倒れた時に付いた土を払うと、
こちらを向き構えなおした。
物凄く楽しそうな顔を向けて笑っている!

【俺】「あ、あ、あああああ、あか、あか、茜さん!
    村崎先輩は言うとおり倒しましたよ!
    けど、武僧先輩ががが!至急援軍、援軍をおお!!!!」
俺は必死に助けを求めた。

【茜】「落ち着きなさい!
    貴方の当初の目的は、武僧先輩を倒す事でしょ!?
    ここで慌ててどうするつもり!?」

そうだった、慌てるな俺。
当初の目的が目の前にあるだけだ。

俺は構えなおし、武僧先輩と応戦する準備を整えた。


【村崎】「くっ……。ふふっ……、あっはっはっは!
     まさか都を使って私を撃退するとは、なかなか恐れ入った」
村崎先輩は俺の方を見てにこやかに笑い、親指を立てた拳を突き出した。
グッジョブという事だろうか。

【都】「にゃあぁ、ごめんねリューちゃん」
武僧先輩は立ち上がろうとしている村崎先輩に付いた土を払っている。
村崎先輩は武僧先輩の頭に手をあて撫でてやると、
「問題ない。これは遊佐の作戦勝ちだ」と声をかけてやり、武僧先輩を慰めた。

【村崎】「さあ、都。お前にはまだやる事があるだろう。
     学園生活最後のバリスタだ。
     思う存分暴れるが良い。
     遊佐君なら、それに相応しい相手だ」
【都】「うん!」


感動的なシーンだが、非常にまずい。
武僧先輩のやる気ゲージがMAXになってる!
ぴょんぴょんと飛び跳ね体をほぐし、立ち止まるとゆっくりと息を吐いた。
武僧先輩の目の色が変わり、今までの猛獣のような目ではなく、
とても落ち着き、それでいて敵を真直ぐ射抜くような目をしていた。

武僧先輩の目は、もう目の前にいる敵、つまり俺しか見えてない。
俺しか見えないなんて、それだけなら聞こえは良いが、
この状況ではご遠慮願いたいものだった。

なぜなら、俺はこの目をしている武僧先輩を知っている。
あの技を使っている時にしていた目だ。
つまり、本気の本気。100%中の100%おおおおお!!!って事だった。


【村崎】「皆、良く聞け!
     私はこの男に倒された!
     だが、他の者はこの男に手を出す事は許さぬ!
     これは都とこの男、遊佐洲彬の一騎打ちだ!」

村崎先輩が自軍敵軍問わず呼びかけると、
両軍から地を揺るがす歓声が起こった。

皆、両腕を高く上げて声を張り上げていた。

【しのぶ】「みんな、あんたらの試合が見たいってさ。
      良かったじゃない、誰も手を出す者はいない。
      正真正銘の一騎打ちさ」
【俺】「甲賀先輩、いつの間に!?」
【しのぶ】「言ったでしょ?ずっと張り付いてるって。
      ……まあ、一瞬見失ったけど」

【村崎】「遊佐君!都の準備は整っている!
     君のタイミングで始めてくれ!」

村崎先輩がそういうと、観客から「こ・ろ・せ!こ・ろ・せ!」と大合唱が始まった。
冗談抜きで殺されそうだから、この歓声は止めてほしいよ!
そんな不安の中辺りを見回すと、村崎先輩が眉を吊り上げ、かるく舌打ちをしたのが見えた。

【俺】「村崎先輩……?」
【しのぶ】「ったく、こいつらは。まあ、聞こえてないようだから良いか。
      ……静まれぇ!!戦いは一瞬で終わる!
      バリスタ史上、最高の戦いだ!目に焼きつけよ!」
【俺】「ちょ!!余計な事言わないでください!注目を集めちゃうよ!」

甲賀先輩は威圧するような目で俺を見て、にやりと笑った。

【しのぶ】「逃げさせないよ?この場で決着をつけてもらう」
【俺】「うっ……」

ええい、儘よ!
異常に殺気立った観客を裏切るのは自殺行為だ。やるしかない。
俺は覚悟を決め、改めて武僧先輩と向き合った。
視線は外れていない。
まっすぐに俺を見ていた。
俺は武僧先輩に答えるように、構えなおした。


辺りが静けさに包まれる。
観客が息を呑む音が聞こえてきた。
武僧先輩は微動だにせず、ただひたすら俺を凝視し、出方を伺っているようだ。
いや、そんなはずはない。
彼女ほどの実力なら、こちらの出方を見る前に潰したほうが早い。
誘っているのか?

お互い動かず、何かを待つかのように、ただ時間だけが経過していた。
3……
2……
1……

学校の校庭にチャイムの音が鳴り響いた。
俺と武僧先輩はそれを合図に、互いに向かって走り出した。


【俺】「うおおおおおおおお!!!!!!」
俺は武僧先輩に向かって全力で走る。
策は何も無いが、立ち止まるわけには行かない!



※以下、武僧との一騎打ち
攻撃を避ける時の選択肢は時間制限を設ける。
通常時は2~3秒、格闘スキル持ちの時は4~5秒。






武僧先輩は両足に全体重をかけ屈んだ。
来る!

彼女は足に溜めた力で俺に向かって跳躍する。
跳躍しながら、右ひじをぐっと後ろに持っていった。

●選択肢
1:後ろに下がる-バリスタ後ろにさがる
2:右に避ける-バリスタ右に避ける
最終更新:2009年02月12日 01:26