遊佐「あの、流石にご飯は迷惑なんで帰ります」
父「そう遠慮するな」
爺「何を言っとるか大地! こんな小童に食わせる飯はねぇ!」
父「親父ィ。晶子の友達をそんなに邪険に扱っちゃ晶子が悲しむぞ」
ちなみにじいさんの名前は雷太で父の名前は大地らしい。
遊佐「あ、あの本当に帰りますから……」
雷太「ほら見てみ。本人もそう言っとるんじゃから」
大地「ふむ、それなら仕方が無いな。まあいつでも来なさい!」
背中をバンバン叩かれてよろめいてしまう。
おれは神契さんについていって玄関まで行く。
神契「ごめんね、お父さんがむちゃくちゃ言って」
遊佐「いや、誘われただけでもうれしいよ。初対面でここまでされるとは流石に思わないしね」
神契「あう、やっぱりうちの家族は変なのかなぁ」
遊佐「まぁ、変わって無いとは言えないけど、俺は素敵な家族だと思うよ」
全員が神契さんのことを本気で思ってるのは俺にもわかる。
遊佐「何よりみんな暖かいしね」
そんな気持ちが少しでも伝わればいいと思ってそういう言い方をする。
神契「……そんな風に言われたの初めて」
遊佐「あ、ごめん」
神契「ううん、うれしかったの」
本当にうれしそうな顔を俺に向けてくれる。
遊佐「あ、そ、そっか。それはよかった」
俺はいそいそと靴を履く。
遊佐「それじゃ、また」
神契「うん。また明日ね」
遊佐「明日は休みだぞ」
神契「あ、あう……。それじゃあ月曜日……」
遊佐「おう」
俺は玄関を出て神契さんに見送られながら家路についた。
遊佐「しかし、あの家族は本当に変わってる……」
いや、いい意味で。
遊佐「うーん。今日は疲れたな。さっさと寝るか」
そしてベットへ。おやすみなさい。
7/8(日)
遊佐「む……」
目が覚めてしまった。
無意識で時間を調べる。
遊佐「……」
時間は俺にとってはありえない時刻を指していた。
遊佐「……日曜日、だし」
もう一回寝……よ。
…………。
暑い。すでに布団は投げ出している。
唯一汗を吸った服の首回りが冷たい。
遊佐「……眠れん」
クーラー……つけるのもったいないし。
眠れないなら、起きるかなぁ。
シャワーあびよっと。
いつもより冷たい水を浴びる。
遊佐「くー……」
一撃で目が覚める。
遊佐「はぁー」
そしてあったかい水に変える。
シャワーから出て、冷蔵庫へ。
遊佐「しまった」
買い置きを切らしてしまった。
ご飯も炊いてないし。
遊佐「あるのは牛乳のみか」
買いに行く……のか?
朝飯抜きくらい大丈夫だけど。
どうやら俺の腹は許してくれないらしい。
近くのパン屋へ行こう。
こんな時はやっぱりパンだ。
徒歩でもそんなにかからない。
…………。
いい匂いを感じながらの
帰り道。
遊佐「~♪」
??「わわわ、止まってぇ」
遊佐「ん?」
右から聞こえてくる声は、どこか聞き覚えが。
神契「わわわー」
遊佐「……」
ひょい。
フェンリル君の突撃をかわす。
遊佐「これは俺のだ」
パンの袋を持ち上げる。
神契「び、びっくりしました」
ようやく止まれたらしい。
遊佐「大丈夫か?」
犬を引っ張り、もとい犬に引っ張られてきた神契さんは肩で息をしていた。
遊佐「どれだけ引っ張られたんだ」
神契「それが、フェンリル君が急に……」
遊佐「だろうな」
俺に体を持ち上げくっついてくるフェンリル君でわかる。
遊佐「あー、わかった。やるから。半分だぞ」
観念してパンを半分ちぎる。
神契「あ、あの。ごめんなさい」
遊佐「いいのいいの。ほらよ」
フェンリル君にパンをやる。
神契「
ありがとうございます」
突然の出会い。ここは一つ人としての礼儀を忘れてはいけない。
遊佐「おはよう、神契さん」
神契「あ、あの、おはようございます」
そこまで緊張することじゃないだろう。
遊佐「今日も散歩?」
神契「はい」
遊佐「カー君はおやすみ?」
神契「今日は来てますよー」
遊佐「……どこだ?」
神契「ここですよー」
神契さんがぐるっと回れ右。
遊佐「なるほど」
肩にしがみついて寝ていた。
いや、結局寝てるじゃん。
遊佐「寝てるようだけど?」
神契「あ、あはは」
振り落とされなくてよかったな……。
神契「また会いましたね」
遊佐「偶然だな」
神契「はいー」
遊佐「にしても、休日も朝から散歩か。昼からでもいいだろう?」
神契「いえ、癖でこの時間には目が覚めちゃうんです」
遊佐「あー、わかるわかる。いつもの時間には目が覚める」
二人で歩きだして、何気ない会話。
いつのまにか勝手に散歩について行ってる自分。
こっちに行くと帰るのには遠ざかるんだけど。
ま、いいか。
遊佐「ところで」
神契「どうしました?」
遊佐「首疲れない? カー君乗せっぱなしで。」
髪の毛に半分隠れたカー君が気になってしょうがない。
神契「ちょっとだけ。でも首がふわふわするのもいいんですよー」
遊佐「マフラー?」
神契「近いかも……」
遊佐「暑くない?」
神契「平気ですよ」
遊佐「そっか」
……話題が尽きた。
何かしゃべること……。
神契「あのー?」
遊佐「ん? あ、どうした?」
神契「このまま行くと私の家に着いちゃいますけど……」
遊佐「おっと、ついつい話してて忘れてた」
ことにしてくれ。
遊佐「んじゃ俺は帰るわ。また明日なー」
神契「はいー。また明日」
【昼~夜までカット】
7/9(月)
遊佐「うーん」
またもや早く目が覚めてしまった。
1気合を入れておきる
2再び睡眠へ
遊佐「うぉぉおおおおりゃぁあぁあ!」
俺はなんとか気合を入れて起きた。
昨日みたいに神契さんに会えるかななんて思う。
遊佐「は! 俺は何を!」
おもいっきり冷たい水で顔を洗った。
遊佐「あー、やっぱりこの落ち着いた雰囲気と空気いいな」
俺は冷めきった空気を肌で感じながら歩いた。そして遠回りをしてみる。
遊佐「お?」
あっちからぽえぽえ歩いてくる姿と黒い犬が見えてきた。
遊佐「よ、神契さん」
神契「あ、遊佐君。おはようございます」
遊佐「うん、おはよう。フェンリル君も相変わらず一緒に散歩か」
神契「あはは、フェンリル君の散歩だから当たり前ですよー」
遊佐「そりゃそうだった」
フェンリル君を撫でてやる。
遊佐「カー君はまだ寝てるのかな?」
神契「カー君は多分まだ寝てますよー」
遊佐「俺も今日は気合を入れて起きてきた。んー」
背伸びをする。
遊佐「早く起きたら会えるかななんてちょっと思ったりして」
神契「え、え、ええぇ?」
びっくりして真っ赤になる神契さん。
遊佐「フェンリル君にね」
神契「あ、そうですよね」
遊佐「うそだよ。俺が会いたかったのは神契さんだよ」
神契「…………!」
何も言葉が出ない神契さん。ぼん! って音が聞こえそうなほど真っ赤になってる。
いや、俺もきっと真っ赤になってる。
遊佐「ほら、散歩行こうぜ」
照れ隠しに言う。
神契「は、はい」
そして2人の間にフェンリル君を挟んで言葉少なげに歩く。
なんとなく気まずい。
遊佐「そういえばさ、昨日ボロ君には会わなかったな」
神契「あ、ボロ君は暗い部屋によくいるんで、昨日の部屋にはあんまりこないんです」
遊佐「目は見えないのにな……。やっぱりそういう部屋が好きなんだな」
神契「そうみたいです」
そして神契さんの家に着く。
神契「それじゃあフェンリル君、行ってくるからね。家に入ってるんだよー?」
そうやってフェンリル君を送り出す。
遊佐「じゃ、学校行こうか」
よく考えたら、自動的に一緒に学校いくことになるんだよな。
神契「はい、行きましょう」
やはり朝が早いため学校にはほとんど人が居なかった。
遊佐「相変わらず、誰も居ないね」
神契「そうですね、朝部活に来てる人くらいでほとんどいませんね」
遊佐「そういえば、神契さんって何か部活入ってるの?」
神契「いえ、私は何も。遊佐君も何も入ってませんよね」
遊佐「あぁ、流石に転入してきてからこの間に部活に入るのもね」
神契「そうですよね」
そうして時間が過ぎていった。
遊佐「それじゃ、今日は校門でな」
神契「あ、はい。お願いします」
遊佐「いやいや」
俺は自分の席に戻った。
今日もやっぱり一日中目が覚めていた。
昼休憩になって中島がごはんを食べている時。
中島「どうなってるんだ?」
中島が尋ねる。
遊佐「あん? 何が?」
中島「お前が寝ないないなんてありえないね!」
遊佐「俺だって時々はマジメにやるさ。お前もがんばれよ」
中島「俺はいつもがんばってますけどねぇ」
遊佐「俺もよくわからんが、朝早く目を覚ますと不思議と眠くならないんだ」
まぁ、朝からな……。
そうした昼休みも過ぎて放課後になる。
遊佐「よし、ここは先に校門へ行って待ってよう」
俺はホームルームが終わるとすぐにカバンを持って出る。
遊佐「じゃあな中島」
中島「今日は帰るの早いな?」
遊佐「まあな」
俺は教室を出た。
遊佐「うーん。来ない。早く来すぎたかな」
校門を通っていく生徒たちの視線が気になる。あんまり教室と変わんないなこれ……。
神契「ごめんなさーい」
神契さんが走ってやってきた。
遊佐「お、来た来た」
神契「す、すいません。お掃除の当番になってたので····。教室で言おうとしたらもう遊佐君居なくって。本当にごめんなさい」
遊佐「む、そうだったか。そりゃ俺も悪かったな。よし、そんじゃ犬に会いに行こうか」
神契「はい、行きましょう」
最終更新:2007年04月25日 19:31