■モーションを使いこなす。
ビューアのウィンドウに「モーション」と言うタブがある。
このモーション機能によってFCEは「モーショングラフィックス」ツールでもあると言っても過言では無い。
工夫次第で色々な表現が可能になるので、是非アイデアを持って実現して欲しい。
FCEはPhotoshopとの親和性が非常に高いので、Photoshopを所有していて尚かつ使いこなせる方は様々な作製バリエーションが広がるだろう。
Photoshopファイルの扱いに関しては後述するとして、先ずはモーションの解説を進めたいと思う。
・キーフレームの概念説明
キーフレームとは「タイムラインの任意の時点でモーション(及びエフェクト)の数値を指定」するための物と思っていただくのが良いだろう。
基本的に、キーフレームからキーフレームの間は自動で補完されるので、イージーに色々なアニメーションを作製可能だ。
使い方は、モーションを開始したいフレームまで再生ヘッドを持って行き、数値指定をしたいモーション項目の中の「ナビ」にある「◇」のボタンを押してキーフレームを打つ。
更に終点としたいポイントに再生ヘッドを持って行き、キーフレームを打ってから数値変更という形で作っていく。
独特の癖というか、扱いに慣れないと混乱をきたす可能性もあるので、訓練して使いこなしを研究して欲しい。
なお、このキーフレームは様々なエフェクト項目内にもある場合が多いので、細かい設定を詰める際には確実に使用することになる。
・基本モーション
◎拡大/縮小
読んで字の如くではあるが、実際に最も使う機会の多いモーションだろう。
320×240の素材をフィットさせるとか、逆にトラックとして重ねた動画をピクチャ・イン・ピクチャとして使う際に上の動画を縮小すると言った使い方が多くなるだろう。
アニメーションさせる際には、タイトルロゴ関係等に使うと言った形から、他のモーションとの合わせ技を使ってスネークイン・アウトであるとか、自由自在に扱えるワイプイン・アウトとしての効果も期待できる.
◎回転
クリップを360度自由自在に回転させることが出来る。
調整での使い道としては、撮影者の技量に拠って傾いてしまった画像を修正する、であるとか、タイトル等のレイアウトを変更すると言う形だろう。
アニメーション的には、腕や足を振るようなアニメーションや回転しながら登場するロゴ等、後に言及する「アンカーポイント」の変更と合わせて表現の幅が広がる。
つまり「ネギを振る初音ミク」のようなアニメーションはこれで簡単にできるわけだ。
ちなみに、手前から奧への回転等はエフェクトの「基本3D」にて対処が可能なので、理論上はどの様な回転でも可能だ。
◎中心
シーケンスのキャンバスに対する中心点の位置情報、つまり移動の為のモーションである。
中心点を「0,0」(横軸情報,縦軸情報)として右と下を「+」左と上を「-」として扱う。
これによって自由自在にクリップを動かす事が可能になる。
移動の場合は、キーフレーム間の補完方法に「直線」と「イーズイン/アウト」という2種類が設定されている。
「直線」の場合は読んで字の如くキーフレーム間を一定の速度で直線上を辿って動く形で、「イーズイン/アウト」の場合はベジエ曲線(イラストレーター等のドローに使用される)に拠って移動軌跡を曲線に変更できる、扱いに慣れが必要だが覚えてしまえば強力な効果を期待できる。
「直線」「イーズイン/アウト」の設定はマウスカーソルをキーフレーム点に持って行き、右クリックで設定可能だ。
◎アンカーポイント
クリップに対する中心点の位置情報である。
これ単体の調整使用では効果は無い。
アニメーションの際には色々な場面で重要となる。
「拡大縮小」の場合はその中心に成るポイント、「回転」では回転軸の中心といった形となる。
例えば、テキストの拡大縮小をする際に「テキストの頭から拡大されるようにしたい」とした時には、テキストの頭にアンカーポイントを持ってくると言う形になる。
細かく作り込む際には、このアンカーポイントも重要になってくると言うことも念頭に置いて貰いたい。
・クロップ
古い素材(Betacam素材やVHS素材)の場合、VHSならばトラッキングの乱れが上下に入ってしまったり、その他の素材では左右に黒い線が入ってしまっている素材が多々ある。
そう言う素材をピクチャ・イン・ピクチャでシーケンスに乗せたりする際に、ノイズ的な物が乗ってると不格好になる。
そう言った際にクリップの上下左右を削る為にあるのがこの「クロップ」である。
数値は%表示で考えて欲しい、なお、これをアニメーションさせるとワイプアクションとして使用が可能である。
ワイプ半分で2画面表示等の使い道も色々あるので、色々とアイデアを捻って欲しい。
クロップには「エッジのぼかし」という項目がある。
クロップする4辺をぼかす効果があり、例えば、静止画で写真を載せたりする際に使うと、雰囲気が出て画がリッチになる。
・歪み
クリップの変形、アスペクト比の変更等に使う。
基本的には4角のポイントで変形させる、なお、左右反転等もこの「歪み」で行う。
左右反転は各数値のプラスマイナスを全て反転させると可能だ。
変形モーションはアイデアと努力次第であっと驚くような効果も期待が出来るので、色々試して欲しい。
アスペクト比に関しては、良くあるのがDV以外で撮影した動画をタイムラインに乗せる際に、ワイドで撮影した物が4:3で表示されたり、またその逆になったりする事がある。
そう言う際にこの「アスペクト比」で調整、フィットさせたら良い、数値は+側が横幅可変で-側が縦幅可変である。
SD→ワイドの際は-側調整で、逆は+側調整としておいたら良い。
因みにアニメーションさせると横に潰されながら消える、縦に潰されながら消える、と言った形の演出が可能だ。
・不透明度
クリップ毎単位の透過率の設定に使う。
例えば多数のトラックの合成や、テキストの半透明化等を行う。
アニメーションを使うと徐々に現れる、徐々に消える、と言った形の演出が可能になる。
トランジションの途中で止める、等の効果が欲しい場合もこちらで手動設定するのが早い場合もある。
拡大縮小等と合わせて、多用する事になるモーションなので、是非特性を掴んで欲しい。
・ドロップシャドウ
Photoshopユーザの方ならご存じかと思うが、上のトラックの影を下にあるトラックに投影する、と言う効果である。
主にテキストで使うことが多いと思われる。
テキスト色にも拠るが、下の画像の色合いに拠って見えにくくなる事がある。
そう言った際に影を少し付けて見えやすくしてやる効果がある。
適用する場合は「□ドロップシャドウ」の□にチェックしたら適用になる。
「オフセット」はクリップからの影の距離。
「角度」は影を落とす向き。
「色」は影の色。
「柔らかさ」は影のエッジをボカして、距離感を出すため。
「不透明度」は影の濃さ。
と言う具合に細かく設定可能だ。
アニメーションの効果としては、オフセットをアニメーションさせて「浮かび上がる」「沈み込む」と言った演出や、角度を変えて光の向きが変わる演出、と言った形が考えられる。
・ブラー
これは動かすクリップに対して「残像」を付けると言う、ある意味エフェクトのような物である。
実際に、例えばテキスト等をアニメーションさせた際に、「今一歩動き感が無い」という際に適用してやれば、動きの強調効果が出る。
適用は「□ブラー」の□にチェック。
「% ブラー」はブラーの強さ、「サンプリング数」は残像の個数、及び精度となる。
ブラー強度及びサンプリング数、特にサンプリング数を増すと、確実にレンダリングが重く遅くなる。
RT無制限の場合はまず間違いなくここで止まる、と言う具合なので、特に強調した効果を狙わない場合は極端なかけ方をしない方が良いだろう。
以上、駆け足でモーションを紹介してみた。
ここまで読んで、「あれ?これトランジションにあるぞ?」と思ったりしたかと思うが、トランジションの多数はこの「モーション」をベースにテンプレート化した物が多い。
つまり、ディゾルブ系などは「透明度アニメーション」のみで作製が可能だ(筆者はディゾルブでエフェクトから持ってくるのは嫌いだ、いつも透明度を使って手動設定する)。
このように考えると、エフェクトの類がどういう物であるか、と言うのが理解しやすくなるだろう。
■Photoshop書類(.psd)の扱い。
FCEはAdobe Photoshopと親和性が非常に高く、Photoshop書類(以下、psd)のレイヤー構造をほぼ完全に保持したままで読み込む事が可能だ。
FCEでpsdを読み込むとクリップとしてではなく、シーケンスとして読み込まれる。
psd読み込みのシーケンスを開くと、各レイヤーが個々にトラックとして配置された状態になっている。
各レイヤーの透明情報等も完全に保持されるので、例えばphotoshopで作製したタイトルや、アニメーション用のキャラクタ等をダイレクトに既存のシーケンスにインポーズが可能になる。
アニメーション用のキャラクタ等をパーツ毎にトラックで分けて、個々にモーションを使ってアニメーションさせると言った形の使い方が可能になる。
要するに、ニコニコ等で「才能の無駄遣い」等の賛辞を受ける事も努力と工夫次第で可能になるという訳だ。
psdベースのシーケンスをネストする事も当然に可能だ、マニュアルの「ネスト」の項目をしっかり読んでおいて貰いたい。
最終更新:2008年06月03日 21:03