『黄帝内経』から気候と病気、風土に関連する部分を抜粋しておきます。
 調査の際、これを頭に入れておくと、情報の取捨選択に役立ちます。





  陰気は水穀の五つの味から生成する。五味は臓器を養うが、またその取りすぎに臓器は損傷されます。
 酸味をとりすぎると、肝気過剰で脾気が損傷されます。
 苦味をとりすぎると、脾気が詰まり、消化不良や腹部膨満がおこります。
 甘味をとりすぎると、胸焼けがします。顔色が悪くなり、腎の働きがわるくなります。
 辛味をとりすぎると、熱証が生じ、精気が消耗されます。
 塩味をとりすぎると、腎気過剰で腰骨が痛みます。
 しかし五味をバランスよく摂取すれば、骨格が堅固になり、筋肉が柔軟で、気血が流通し、皮膚のキメが細かくなります。





 自然の外気が体に及ぼす影響はこのようなものです。
 風は、筋肉痛や痙攣をおこします。
 暑・火は血の流れを悪くし、オデキを生じさせる。
 湿は、消化不良や下痢をおこします。
 燥は、毛穴の開閉を悪くし、発汗と悪寒を交代に生じさせる。
 寒は、代謝を悪くして体に浮腫をおこします。




 東の国は、天地陽気の発生するところである。気候が温暖で、海に近い。人々は産物の魚や塩を多食します。
 ところが魚は体に熱を生じ、塩は血を凝血させます。そのため人々は皮膚があれ、顔色が黒く、化膿性の皮膚病にかかりやすい。
 膿瘍を切開するため、メスのかわりに石の薄片を使いました。
 だから、へん石療法――外科手術は東で発達して、そこから伝わってきたのです。

 西の国は天地陽気の収斂するところです。宝石が多いです。
 人々は風の強い丘陵に住み、厳しい風土の中で暮らしています。彼らは獣肉をよく食べるので、体が肥えます。そのため外邪は体内に侵入できないが、肉の食べ過ぎによる内臓の病気が多いのです。治療には薬物をよく使います。だから、薬物療法は西で発達してそこから伝わってきたのです。

 北の国は、天地陽気の閉蔵するところです。そこは地勢が高く、風が冷たいです。人々は乳製品を食べて遊牧生活をしています。彼らはよく寒気に襲われるので、膨満の病を生じます。治療にはお灸をよくつかいました。だから、灸は北で発達してそこから伝わってきたのです。南の国は、天地の陽気の成長するところです。高温多湿のため、人々は酸味や漬けた食品を好みます。
 そのため、筋肉の痲痺やひきつる病気が多発します。治療には針をよくつかいました。

 中央の国は平地で、気候が寒暖適宜で、物産も豊富です。食物は何でも手にはいるので人々はあまり労働もしません。そのため、筋肉の無力と足の冷え、頭ののぼせにかかりやすいのです。
 治療には導引と按摩がよく使われました。
 だから導引按摩法は中央で発達して、そこから広がっていったのです。





 五臓を悪くする自然の刺激は、風、暑、湿、寒、燥の五気です。
 肝は風を嫌います。風のため、筋肉が硬直、痲痺し、肝は風病になりやすいです。
 心は暑を嫌います。暑熱のため、陰気が減少し、心は熱のため病みます。
 脾は湿を嫌います。水分がたまると筋肉が浮腫して、脾は湿のため病みます。
 肺は燥を嫌います。燥は肺気の宣発を引き留めて、肺の病を起こします。
 腎は寒を嫌います。寒は陰精を渇かして、腎を悪くします。






 肝が病むと涙が出ます。肝は目に穴をあけ、目から涙が分泌されるのです。
 心が病むと汗が出ます。心は血を司り、血から汗が分泌されるのです。
 脾が病むと涎が出ます。脾は口に穴をあけ、口から涎が分泌されるのです。
 肺が病むと鼻水がでます。肺は鼻に穴をあけ、鼻からは鼻水が分泌されるのです。
 腎が病むとつばがでます。腎は舌に通じていて、舌からは唾を分泌するのです。

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最終更新:2007年03月02日 22:10