世界観用語集



メイガス

魔術を専門的に学んだ魔術士を指す言葉。
最低限の心得と、メイガスを名乗れるだけの知識があればそう呼ばれる。
実践的である必要はなく、言ってしまえば魔術に関わる全ての人の初歩がメイガスだ。



バスタード

魔術を武器に、都市のトラブルを解決したり、人類の未踏領域に挑むメイガスの総称。
本来、「バスタード」は良い意味の言葉ではなかった。
かつて未踏領域に挑む者を「運の悪い野郎だ」と蔑み、そうした人々を「バスタード」と呼んだ。
しかし道半ばで倒れながらも、彼らは確かに人類の生存圏を広げて来た。
やがて「バスタード」は「運の悪い野郎」という蔑称ではなくなる。
「勇気ある者」、「困難に挑む者」として、人々は尊敬と憧れを「バスタード」に込めるようになった。
あくまで総称や通称だが、バスタードはそうしたメイガスを表す言葉になったのだ。

現在ではバスタードは資格制になっており、武器の携帯などの特権が与えられる。
最低限の実力や知識があることを審査され、合格すればバスタードを名乗れるようになる。
審査はバスタード協会が行うもので、審査自体に年齢制限などはない。



伝承兵器

バスタードのように、魔物とも戦うメイガスが用いる武器。
神話や伝説、民話などに登場する武器をベースとして、魔術を補助する機構が組み込まれている。
科学の力を借りた兵器が存在しない現状、これが人類の有する最強の兵器である。
なお、伝承兵器にはベースに由来する特殊能力が付与されている。
名を喚び、燃料となる魔石を消費することで、その特殊能力が発動する。

伝承兵器はその強さに応じて分類される。
以下はその一覧である。

[神話級]:オリジナルと遜色ないと認定された物。
[伝説級]:オリジナルには一段落ちるが、それでも強力な物。
[幻想級]:滅多に存在しない強力な物。
[空想級]:ある程度の数は存在するが、入手の難しい物。
[民話級]:金を積めば手に入る程度だが、能力は優秀な物。
[伝承級]:ごくありふれた、一般的な物。

また、伝承兵器は使い続けることで強化される。
伝承兵器そのものが歴史と物語を積み重ねることで、オリジナルに近付いていくのだ。



伝承技能

神話に代表される様々な伝承に登場する、英雄達の技を再現した技能。
技を魔術にして、己にかけることで、半自動的に英雄達の技をその身で再現する。
これによってある程度の物理法則を無視することができ、伝承兵器と並ぶバスタードの代表的な武器となっている。
一般的に習得は魔術よりも難しいとされている。
というのも、技を再現する土台としての肉体も必要になるからだ。
肉体が技を可能とするほど鍛えられていない場合、どう足掻いても使うことはできないのだ。



魔力

魔術を行使するのに必要となるエネルギー。
メイガスは自身の魂を精製して、この魔力を生産している。
過剰生産した場合は脱力や頭痛、意識の混濁が発生する。
限界を超えて生産した場合、よくて廃人であり、多くは死に至る。



魔術

魔力によって行使される様々な神秘現象。
外的干渉を防ぐため、体内で術式を構築し、完成したものを魔法陣として体外に展開。
その魔術の名を喚ぶことで起動し、発動するという手順を踏む。
術式構築の補助として、干渉されにくい詠唱や結印を用いることもある。
様々な体系が存在し、体系ごとに「○○術式」と呼称される。

メカニズムとしては、大前提として石や風といったものにも、命は宿っている。
しかし命はあっても意思はなく、こちらの意思を伝えることもできない。
魔術の術式は、そうした意思なき命にも届く言葉であり、逆らえない命令文なのである。
これによって魔術は自然を操り、時に自身の肉体を構成する命を操作するのだ。
なお規模の大きさや、命令の複雑さに応じて魔力の消費量は変化する。



魔法

魔術が自然や肉体に働きかけるものであるのに対し、魔法は世界に働きかけるものだ。
世界を構成する各種法則を改竄し、現実と空想の境界を破壊する。
しかし魔法に至るということは、同時に自己と他者の境界の破壊をも意味する。
「魔法使い」とは即ち「魔法」そのものであり、一個の生命ではなく現象である。
魔法に至ろうとした願望だけが残り、魔法使いは現象として荒れ狂う。



地脈

魔術の項で述べたように、全てのものには命が宿る。
それは地球自体も例外ではない。
地球を巨大な一個の生命体として見た場合、有する魔力にも流れがある。
それは血管のように広がり、世界中を駆け巡っている。
その巨大な魔力の流れを地脈と呼び、これを利用する術式も存在する。
ただし地脈は基本的に人類に扱えるようなものではない。
力のスケールが違い過ぎ、ほんの僅かな魔力を汲み上げるのが精々なのだ。



異族

基本的には人族以外の、知能を持つ人類を指す。
彼ら異族に共通する特長として、地脈や伝承の影響を受けることが挙げられる。
地脈や伝承が一種の魔術的効果として働き、人族を変異させたものが異族の発祥である。
そのため彼らは魔力に親しく、死後、その肉体は地脈へ還ることになる。
遺体を保存するには地脈との繋がりを断つ、特別な処置が必要になる。



加護

伝承や出自に由来する、常駐型の魔術効果。
魔術と違って魔力を消費せず、魂が帯びている性質として定義される。



魔石

魔力を蓄える性質を持った鉱石のこと。
電池のような感覚で、伝承兵器などに使用されている。
ただしこれから取り出した魔力を、人に還元することはできない。



魔物

知性がなくとも魔術を操る生物、または人類に敵対的な異族のこと。
特に後者は、実質的には人類と同じ力を持った大きな脅威である。
一般的には魔物と言えば、前者のみを指すことが多い。


精霊

地脈から自然発生するモノで、希薄な自我を持った自然そのもの。
肉体は魔力で構築されており、非実体の霊体であることが多いが、受肉している場合もある。
個や生死の概念が曖昧で、生命ではなく現象に近い。
会話や交渉も可能だが、本当に対話が成り立っているのか、常に確認する必要がある。


人工精霊

精霊の性質を解析し、魔術によって人工的に作り出された精霊のこと。
物質に憑依させ、単純労働を代行させることが主な製造目的。
総じて力が弱く、戦闘に駆り出すことはまず不可能である。


巨人族

退化時代から勢力を強めている、人類に敵対的な異族。
個人主義が強く、一人の巨人が多数の魔物を従えていることが多い。
神話時代から衰えを知らない屈強な肉体と、強大な魔力を併せ持つ、人類の天敵。


不死族

通称アンデッド。何らかの理由で、死から蘇った生物を指す。
概念的には生を失っており、死にながら動き続けている。
殺すことは不可能で、動けないほどバラバラにするか、浄化することでしか倒せない。
知能は個体差が大きく、大半は獣以下に成り下がっている。


吸血鬼

魔術を究めて死を超越し、自ら不死族になったメイガスのこと。
吸血によって他者の魂を取り込み、自らの魂を補填することで生き長らえる。
他者を犠牲にしなければ存在できない彼らは、社会から倒すべき脅威として認識されている。


貴種

絶滅寸前の稀少異族を指す言葉。
正確には絶滅寸前で、かつ強い力を持つ異族のことを指す。
この分類には、種族としては絶滅の危機になくとも、純血が絶滅寸前の種族が含まれることもある。
彼らは総じて地脈の影響を強く受けており、通常の人類とは一線を画す力を持つ。
基本的には保護対象だが、それを嫌って社会から身を隠す者もいる。


斡旋所

個人やチームで行動するバスタードに、依頼を斡旋する施設。
公的なものではなく、自然発生的に生まれた民間業者が運営している。
都市を股にかけるバスタードも想定して、大半が宿を併設している。
依頼の仲介料と、宿としての収益で成り立っている。
斡旋所の店主は元バスタードであることが多く、駆け出しの頼れる先輩でもある。



未踏領域

人類の生存圏が確立されていない地域のこと。
大半の国家では、生存圏よりも未踏領域の方が広い。
都市を結ぶ主要街道はまだしも安全だが、それを外れた場合、命の保障はない。



エアロブルーム

通称、箒バス。超大型の空飛ぶ箒のこと。
主に都市で、公共交通機関として利用されている。
巨大な箒の側面に座席が取り付けられており、20~30人ほどが乗れる。
街路に簡易な階段付きの停留所が設けられており、料金は停留所に設置された料金箱へ入れる。
大型なのと、乗客の安全を考慮して、時速はおおよそ30キロ前後。
都市内で電車を運用することがまずありえない転換時代では、市民の重要な足となっている。


加護メール

宗教の祝詞や聖句が記された電子メールのこと。
言葉が持つ宗教的な加護の力によって、悪質な迷惑メールを自動的にゴミ箱へ放り込む。
迷惑メールに宿る悪意や穢れに反応するため、迷惑メールを指定する必要がない。
基本的には加護メールの存在する受信フォルダー内でのみ有効で、別フォルダーを受信指定する場合は注意。
神道日本では携帯電話の新規契約時に、地域の神社から加護メールが届く。
それはそれで個人情報流出ではないかという意見もあるが、隠しても何故か届くと評判である。


聖者スパム

携帯電話の再普及に伴って増加している新手の布教活動。
十字教系聖者のありがたいお言葉を、片っ端からメール送信する行為。
たまにありがたいお言葉と思わせて、冷静に考えると神をディスってたりするのはご愛嬌。
特に害はなく、加護メールでもあるため問題にはなっていない。


魔法金属

魔術ではなく魔法。魔法の影響によって生成された、本来存在しない鉱物のこと。
魔力を帯びており、種類ごとに特有の性質を持つ。
伝承兵器の素材としては一級品だが、産出量が少なく値上がり傾向にある。
そのため流通している伝承兵器の多くは、引退者が処分したものを再利用するのが一般的。


鉄騎

各国の騎士が用いる戦闘用の大型甲冑のこと。
パワーアシストの人工筋肉による高速駆動が可能で、生身と変わらぬ速度で行動できる。
兵器ではなく甲冑であると定義することで、退化概念の影響を免れている。
あくまで兵器ではないという主張のため、パワーアシストは最低限。
そのため純粋な膂力は生身と変わらないが、鉄騎の質量が乗るため攻撃の威力は桁違いになる。
べらぼうにコストが高いため、大量生産はほぼ不可能。
騎士がどうにかこうにか作った後は、補修と改良を繰り返して何代も使い続ける。
血による生体認証が搭載されていることが多く、他人の鉄騎を奪ったところで乗りこなすことはできない。


緑砂平原

作中で最も有名な、現在進行形の魔法。
無機物を有機物に変換する魔法であり、変換後の組成はデタラメ。
かつて存在したサハラ砂漠に在る魔法で、有機変換によってサハラ砂漠は緑砂の大平原となっている。
砂から変換された有機物が延々と腐敗を繰り返した大地を苗床として、苔類を中心とした植物が繁茂している。
人類が踏み入っても肉体は有機物なので影響はないが、身に着けている無機物は例外なく有機物に変換される。
また大気組成は有毒で、緑砂平原はあらゆる生物の生存を拒む苛烈な大地である。
緑化は砂漠化を上回っており、サハラ砂漠の表層部はほぼ完全に緑化している。
ただし地下にはまだまだ大量の砂があり、その緑化を終えるまで外部に広がることはないと結論されている。
焼き払うことで対処は可能だが、まだ対処を必要とする段階にはない。
サハラ砂漠の緑化を完全に終えるまで、どんなに早くとも千年単位の時間を要すると推測されている。


ワールド・ネバーランド

都市伝説のように存在を噂されている魔法。
現実逃避の現象化であり、呑み込まれた者が神隠しのように消えると噂される。
この魔法の内部には先端時代の世界が残っているというが、真相は闇の中である。


概念爆弾

先端時代に製造され、世界を退化させた兵器。
それがどのようなものであったかは、歴史から抹消されている。
実のところ、どの陣営が製造して使用したのかも明らかではない。
歴史を繰り返さぬよう、全ての記録が消されたということになっているが……?


悪魔

2つの意味を持つ言葉。一般的には十字教が異端認定した異族を指す。
人権意識の低かった大昔ならともかく、現在では悪魔呼ばわりは禁止されている。
もう1つが地脈から発生する、手段や結果はともかく、人の願望を叶えようとするモノ。
強烈な願望によって、歪んだ形で精霊が生まれてしまったモノだと推測されている。
迂遠で不毛な手段によって、結果的に人の願望を実現させる。
知能は高いことが多く、人に対しては不気味なほどに甘く優しい。
精霊であるため原則としては霊体。これに憑依された者を悪魔憑きと呼ぶ。
発生率は低く、1つの都市で年間に数件の発生報告がされる程度である。
もっともこれは表面化した事例の数であり、実際にはこの数倍はあると見られている。
なお、受肉して生まれる悪魔は、1つの文明を傾かせるほどの力があると云う。


二重属性

全ての生物は何らかの属性に分類されるが、それを2つ持つ稀有な存在のこと。
2つの属性の調和によって、何かに弱い、という欠点が存在しない。
二重属性のメイガスは、それだけでスカウトの対象になるほど。
理論上は存在すると言われているものの、三重以上の属性を持つ者は確認されていない。


セプタプル

六大属性を統合した1つの属性として保有する存在。
何かに弱いという欠点がないのではなく、全てに強いという万能性を持つ。
二重属性などとは違い、あくまで統合された1つの属性である。
この持ち主は世界に数えるほどしか存在せず、血によって継承されている。
魔術を究めた結果、後天的にセプタプルを得る場合もあるが、それは真性のセプタプルではないとされる。


地脈通信

インターネットなどで活用されている通信方法。
情報を魔術的に分割し、地脈の流れに乗せることで送受信を行う。
通信速度はADSL以上、光回線以下といったところ。
転換時代でもやろうと思えば光回線による通信網の整備は可能である。
しかし都市外での管理が現実的ではないため、実体のない地脈を用いるこの方式が主流。
地脈の汚染を防ぐため、地脈通信のプロバイダは寺社教会が担当する。
悪意や穢れの情報を、宗教的ファイヤーウォールで遮断している。
特に結界に秀でる仏教のファイヤーウォールは強固で知られ、グレートブッダウォールの異名を持つ。
神道プロバイダはわりと甘めで、非ストイックな生活を楽しむ者は神道派が中心。


打撃的討論

言霊を利用した、言葉がそのまま相手への打撃になる特殊討論。
言い逃れを断じて許さない究極の討論であり、政治家の必修技能。
言葉に含まれる真実の多さや、意思の強さに応じて言霊の威力が増す。
各国の国会やそれに準ずる議会では、魔術によって全ての発言が言霊となる結界が敷かれている。
これによって政治家は、比喩抜きに血を流しながら国家を運営することになる。
ちなみに体育会系知的遊戯として、一般人の中にはスポーツとして楽しむ者も多くいる。


魔術決闘

通称フェーデ。主にメイガス同士で行われる、ルールのある決闘を指す。
双方の合意と、第三者の立会いがあれば、古来からの伝統として法的にも許可される。
というのも、フェーデを違法行為として取り締るのは、どう考えても割に合わないからだ。
強硬手段に出るメイガスを追うには、それなりの力量を持ったメイガスが必要になってしまう。
また、追われることを恐れて、魔術を駆使して犯行を隠蔽されてしまうと、発見も困難になる。
そのためフェーデを伝統として許可することで、荒事を管理下に置いてしまおう、となっている。
ちなみにフェーデを挑まれた側は、原則としてこれを拒否しても構わない。
ただし元々が名誉を懸けた決闘であるため、理由なく拒否することは批難の対象になる。
例外として明らかな力量差がある場合や、フェーデを挑む正当性がない場合は、拒否しても批難されない。
フェーデのルールは双方の協議で決定するが、一般的には人数の確認と、事前準備・制約の有無の3つを協議する。
最終更新:2013年05月23日 16:21