四季の詩



彼女は秋みたいだった。
色付く笑顔や振り撒く元気が紅葉のよう。
舞い踊る落ち葉のように動き回り、移り変わる秋空のように姿を変える。
自由が味方であり、気儘な正義を持っていた。


彼女は冬みたいだった。
凍てついた吹雪で人を遠ざけ、触れても氷のように拒絶する。
深い闇夜に輝く白い月が相応しい。
雪の心と月の夢、花の恋慕を抱く少女。


彼女は春みたいだった。
なにも知らない生まれたばかりの生命が謳う。
暖かな調べを振り撒いて幼子の持つ優しい光は煌めく。
色は匂えど散りぬるを、君よ誰ぞ覚ゆものなし。


彼女は夏みたいだった。
活発で明るく天高くに立つ。
自信家であり発明家、楽天家でなお好事家だった。
太陽に照らし出される二重の影。どちらが先に走り出したのだろうか。光と闇が織り成す遁走曲(フーガ)のごとし。



空に手を伸ばした日。それはいつのことだっただろう。天に恵まれた僕はその贈り物が望む通りに足を動かした。生き物の欲とは存外単純なもので一つ体を投げ出せば叶えることが出来る。
しかし彼女達は違った。耳を貸して話を聞けば、何も持たない僕の脳に問い掛けてくる。口を開いて話をすれば、僕という存在を認めていることに目を見開いた。
姿など僕らにとっては宛てにならない。いくらだって変えられるし、いくらだって偽れる。だからこそ名前が手掛かりだった。













最終更新:2013年12月30日 22:29