結局、銃弾の調達はできなかった。
これはアリスにとって由々しき事態である。
エンジニア部が仕上げてくれた"光の剣"も弾がなくては只の鈍器だ。
キヴォトスではコンビニでも買える弾丸がこの冥界では何処にも売っていない。
それどころか得体の知れない物を見るような目で見られる始末だった。
実際ライダーが居ればアリス本人が戦う必要は然程ない。
彼にそれだけの力があることはアリスも知っていた。
だがキヴォトスの住人として、また光の剣を携えた勇者として、自分は戦いもせずおんぶに抱っこというのはどうにも気が収まらなかった。
それにライダーの力を借りられない状況が来ないとも限らないのだ。
やはり弾の確保は急務だったの、だが…。
「むむむ…。最悪、アリスがこれを振り回して戦う事も視野に入れなければなりませんね」
光の剣と謳うなら寧ろそれが正道だろう…
等とすかさず突っ込みを入れる程彼女のライダーは口数の多い人物ではない。
そして恐ろしい事にその正しいような間違っているような使い方でも、この少女が振るう時点で一定の強さは保証される。
彼女の見てくれは何処からどう見ても十代半ばの少女だが、その実態は遥か古来のオーパーツなのだ。
正しくはアンドロイド。
世界を滅ぼす為に眠っていた、然しその運命を否として勇者に成った勇敢なAL-1S。
それが彼女。
二十四の生き残りの一人、
天童アリスという葬者であった。
アリスの日常は何も変わっていない。
ついでに言うなら彼女に日常ロールの類は用意されていなかった。
事実上のホームレス状態である。
だがそこはゲーム経験が活きた。
現地でひったくりを捕まえ、サーヴァントに魂喰いの糧にされかけている一般人を助け。
そうやって少しばかりのお礼を受け取ったり家に泊めて貰ったりしながら今日の日まで生き抜いて来た。
熾烈な聖杯戦争もこの小さな勇者にしてみれば宛ら新手の体験型ゲームのようなもの。
持ち前の愛嬌もあってあちこちで親切にして貰い、此処まで雨風を凌ぐのに不自由した日はほぼなかった。
手に持っている携帯端末にもこの世界で出会った色々な人の連絡先が登録されている。
右も左も分からない世界で絆を結び、その絆を形として記録し積み上げる。
ゲーマーの端くれしてなかなか心躍るシチュエーションであった。
とはいえそんな日々を送るのもそろそろ潮時だ。
アリスの耳にも東京中を震撼させた件の"異変"は届いていた。
竜と騎士と、そして漆黒の怪物による空の激戦。
これまで曲がりなりにも世を忍ぶ形で進んで来た戦火が遂に塞ぎ切れず表層へ流出を果たした日。
RPGで言うならプロローグが終わったような物だと、アリスはこのニュースをそう受け取った。
勇者アリスの冒険は此処から始まる。
先生やゲーム開発部の皆の手を借りず一人でその日暮らしをする、謂わばチュートリアルはもう十分にプレイした。
此処からは本格的にトゥルーエンドを目指して駆ける時間だ。
そう思っていたからこそ弾薬の不足は息巻くアリスの背にずんと重く伸し掛かった。
まさに出鼻を挫かれた形である。
「うわーん…。こんな事ならエンジニア部の皆さんに頼んで、本当に剣に変形するようにアプデして貰っておくべきでした……」
鈍器は扱いが難しい。
上手く頭を殴ってスタンさせないと暴言チャットが飛んで来てしまう。
こうなればいっそ本当にメイン武器をハンマーにしてしまうべきかと唸るアリス。
そんな彼女の傍らを霊体化して付き添っていた鋼の英雄が、不意にその足を止めた。
「…? ライダー?」
「――――」
鉄面皮。
この男はその単語が誰より似合う戦士である。
表情を変える事は愚か、言葉を発する事すら稀。
アリスは今まで彼が声を荒げたり笑ったりした瞬間を見た事がない。
故に一瞬、気の所為かと思った。
勇者の仲間である鋼の彼が、何事かに驚いているように感じたのは。
“どうしました? お腹でも痛いのですか?”
“この近辺で待っていろ。一つ野暮用を済ませて来る”
“えっ。あ! まさか敵とのエンカウントでしょうか! でしたらアリスも行きます! 勇者を置き去りなんてずるいです!”
“来るな”
脳裏に響いたライダーの声。
それにアリスも思わず動きを止める。
同時に実体化する鋼化英雄。
鈍色の鋼に人の形を与えたように無骨な、壮年の男の姿が出現する。
纏う軍服の意味を天童アリスは理解出来ない。
何故なら彼女の住まうキヴォトスに、"この歴史"は存在しないからだ。
近代人類史に於ける明確な負の歴史。
差別、弾圧、熱狂――そして虐殺。
熱病のように、若しくは空を駆けて燃え尽きる流星のように短い栄華を極めた第三の帝国。
悪名高きナチスドイツの軍人を意味する隊服。
この黒騎士が纏う軍服の正体は詰まる所それだった。
ではこの鋼の如き男はナチスの軍人であるのか?
合っている。
たかだか近代の戦場で幾らかの成果を挙げただけで、人はこの領域まで辿り着けるのか?
不可能である。
故に違う。
彼こそは人類史の暗部、その更に深淵にて鍛え上げられた鋼の英雄。
“この先で待つ男は、勇者(おまえ)に何も齎す事はない”
――ハインリヒ・ヒムラーという男が居た。
肩書は親衛隊長官。
優秀ではあったが非凡ではなかった。
決して俗の域を出る事のない、第三帝国のビッグネームである。
その男が高級将官を連れ立って始めた粗末な遊び。
オカルト、超人研究、そしてナチスの悪行の主たる所であるホロコーストを統括する酔狂な裏部隊に過ぎなかった。
とある一人の超人が、宇宙の深奥で蜷局を巻く水銀の蛇と共に実権を握るまでは。
“俺と同じ、只の醜悪な人殺しだ”
そうして生まれたのは真の魔人の集団。
一人が一軍に匹敵し、息吐くように道理を捻じ伏せる十三人の怪物。
聖槍十三騎士団黒円卓。
恐るべき黄金の獣と、彼に仕える人智を超えた魔の軍勢である。
天童アリスが喚んでしまったのはその一員。
序列第七位(ズィーベン)。ドライツェーンの天秤。
戦奴の城にて産声を上げた醜悪なる鋼の戦車。
黒騎士マキナ。真名、
ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン。
彼は血の香りを嗅ぎ取っていた。
数多の魂を喰らい、命を貪って来た血薔薇の香を。
如何な英霊が喚ばれているにせよ、この香り、この気配に類似する者はない。
即ち同類。
黒円卓の魔徒、その中でも一際殺戮に精通した呪わしき吸血鬼。
明ける事のない夜を望んだある男の気配を、マキナは嗅ぎ取っていた。
◆ ◆ ◆
東京都の一角。
聳え立つ廃ビル。
放火事件が原因で大勢の犠牲者を出し、以降取り壊される事もなく捨て置かれている残骸の塔。
その屋上にて、二体の魔徒が対峙していた。
彼らは共に出自を同じくする同胞。
然し皮肉な事にその色彩は正反対だ。
片や漆黒。
錆びた鋼を思わす沈鬱な佇まいで立つ壮年の男。
片や純白。
日光を拒絶する夜闇の不死鳥を思わす、剣山のような殺気を撒く美丈夫。
黒と白の騎士が其処には居た。
だがもしも感の強い者が居合わせたならあまりの悍ましさに嘔吐さえしただろう。
彼らは雄々しく、また同時に美しかったが。
その美点を帳消しにしてしまう程に色濃い、噎せ返るような血と死の臭いを放っていたから。
「よう、久し振りじゃねえのマキナ。相変わらず辛気臭ぇ面してんなァ」
「…よもやお前まで招かれているとはな、ベイ」
聖槍十三騎士団黒円卓第七位、ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン。
聖槍十三騎士団黒円卓第四位、
ヴィルヘルム・エーレンブルグ=カズィクル・ベイ。
死を死で塗り潰しこの時を迎えた黄金の戦奴が此処に相対していた。
但し今は獣の爪牙としてではなく。
願望器を巡り殺し合う、不倶戴天の敵同士としてだったが。
「こっちこそよ、手前の辛気臭ぇツラを城の外で見る日が来るとは思わなかったぜ」
「因果の一言で片付けるには…空寒い物を覚えるが……」
「あぁ、其処に関しちゃ心配要らねぇよ。此処を仕切ってる…こういう表現が正しいのかも解んねえが。
胡散臭ぇ店を知ってるか? 夜の僅かな時間にしか開かねぇ上に、葬者以外は入れねぇって舐めた店だ。
彼処の店主をウチの猿に探らせたが、どうも"あの野郎"じゃねぇらしい。現状、あのカスが絡んでる気配は無ぇな」
「…その男ならば俺も知っている。その上でおまえと認識は同じだ、ベイ」
あの水銀は、この戦争に関与していない。
小心だと笑う者も居よう。
どれ程嫌われているのだと手を叩く者も居よう。
だが彼らにしてみればこのやり取りは大真面目な情報の共有と確認だった。
何を隠そうこの黒騎士(マキナ)もまた、血染めの吸血鬼と同じくその可能性を危惧し続けていたのだ。
即ち水銀の介入。
黒円卓の王たる黄金の獣が唯一対等と…友と認めた影法師。
彼を除く団員の全員から唾棄されているあの厭味な蛇の介在は、黒円卓の全員にとって常に警戒すべき事柄に他ならない。
それは英霊の座を経て辿り着いたこの冥界でも同じ事であった。
「この冥界にクラフトの影は無い。ハイドリヒと似て非なる戦神が在るのみだ」
「だよなァ、意見が一致して安心したわ。あの方を差し置いて戦の神気取ってる野郎には腹が立つがよ」
故に水銀の不在。
其処で意見が一致する事は彼らにとって肩の荷が一つ下りるのを意味する。
これで少なくとも要らぬ横槍と奸計に目を光らせる必要はない。
黄金と似て非なる神の存在は目の上の瘤だが、其処への対処は奴が動き出してからでも遅くはなかろう。
少なくとも水銀のように影で蠢き気付けば絡め取ってくる手合いではない。
それがマキナとヴィルヘルム、旧知の同胞達の共通認識だった。
「して、どうする。此処で戦(や)るのか」
「それも悪くねぇが…流石にテメェと揉めるとなりゃ俺も腹ァ括らなきゃならねぇからな。まだ牙は剥かねぇでやるよ」
「おまえが誘ったのだろう。俺も俺で、戦奴の気配があるとは常々感じていたが」
「仕方ねぇだろ。テメェらと来たら"城"に引き籠もりで現世になんざとんと降りて来ねぇだろうが。
そんな野郎が何の因果か昼間の街を彷徨いてんだ、声を掛けたくもなるわ。槍でも降るのかと思ったぜ」
「相変わらず俗な男だ」
ヴィルヘルム・エーレンブルグという男を単なる暴力の化身としてしか知らない彼のマスターが聞けば驚くだろうが。
この男はこれで意外と社会性という物がある。
誓った忠義には一途で、且つ粗暴を気取ってはいても野放図な暴走は滅多にない。
黄金の獣を真に敬愛するが故、ヴィルヘルムは騎士の自覚が人一倍に強い。
その為件の水銀と腐れ縁の宿敵、そして気に入らない新参を除けば彼は黒円卓の面々の殆どと良好な関係を築けていた。
それはこのマキナも例外ではない。
城では度々ストレス発散代わりに殺し合った仲だ。
そんな相手を見付けたものだから、ついつい興が乗って誘いを掛けてしまった。
白昼堂々の対峙へと至った理由は意外にもそんな穏便な物であった。
無論、聖杯を狙うならばいずれは団員同士で殺し合う日も必ず訪れるのだが――
今此処で黒円卓の大隊長たる黒騎士と事を構えれば余力という物を全て使い果たしてしまうのは避けられない。
勝とうが負けようが割に合わないという事だ。
ヴィルヘルムは決して認めないだろうが――マキナは彼よりも数段は格上の魔人である。
その判断は誰が聞いても間違いのない正解だったと言えるだろう。
「で? 聞きたかったんだけどよ、テメェの要石。ありゃ何だ、人間じゃねえよな?」
「答える義理はない」
「何だよテメェの方こそ相変わらずじゃねぇか。手の内を隠すなんてみみっちい事すんなや、興が削げるだろうがよ」
「迂遠な真似をするな。既に察しは付いているのだろう」
黒円卓の魔徒を侮ってはならない。
百年に渡り魂を喰らい続けて来た彼らの審美眼は天下一品だ。
一瞥しただけでもある程度はその本質を覗く事が出来る。
況してや肉体の構造という分かりやすい箇所に異常があるなら尚更だ。
マキナに見透かされたヴィルヘルムは鼻で笑った。
バレてんのかよ、とでも言いたげな一笑であった。
「同類だろ? 黒円卓の天秤、蠱毒生まれの黒騎士(ニグレド)様とよ」
マキナは答えない。
だがその沈黙が何より雄弁に肯定を物語る。
黒円卓の大隊長を呼び出した小娘…天童アリス。
その小さい体が有機ではなく無機、即ち鋼で駆動している事をヴィルヘルムは看破していた。
「理屈は全く解んねえけどよ、随分見事な細工じゃねぇの。
メルクリウスの野郎もお株を奪われて草葉の陰で雑巾噛んでるかもな」
「さぁな。只一つ言える事は、鋼の戦車など有難がるほど非凡な物ではないという事だ」
「ま、お似合いだぜ。見た所それなりに出来んだろアレ。ガキのお守りは御免だが、俺ン所のよりはマシだわ」
「…だからそんな似合わぬ物を持ち歩いているのか?」
「言うな触れるな見るんじゃねぇ。何よりムカつくのはよ、最近これがある暮らしに慣れ始めてる事なんだよ」
ヴィルヘルムが片手で弄ぶ端末。
それはこの現代でスマートフォンと呼ばれる代物だった。
言わずもがな、黒円卓の魔徒には不必要な物である。
そんな物をこの白貌鬼が握っている様は団員目線で見ると大変に滑稽だ。
堅物のマキナだからこの程度の指摘で済んだが、マレウスやブレンナーであれば笑っているだろう。
白騎士等想像するまでもない。腹を抱えて死ぬ程笑う筈だ。
『ぶははははッ! ひ、ひーッ、腹痛い! お腹痛い! なんだよベイ、戦いで僕に勝てないからって笑い死にさせるつもりなのかい!?』という無神経な声が優に想像出来る。
「要石がどうだろうが関係あるかよ。黄金の騎士の足は誰にも引かせねぇ」
「精々足を掬われぬように努める事だ。水銀の手を離れたならば、即ち俺達にとっての未知。
奴にしてみれば皮肉だろうが、奴の不在こそが何よりも未知を保証している」
「ハ。小心だなテメェは。テメェもハイドリヒ卿の爪牙ならちょっとはドンと構えてろってんだ」
ヴィルヘルムは牙を剥いてそう言う。
マキナの言葉はまさしく正しい。
水銀の不在という未知の中では魔徒さえ只の駒の一つに過ぎない。
彼もそれには同意見だったが、その上で噛み砕くのがヴィルヘルムという男だった。
我こそは黄金の一番槍。
獣の皇を真に慕う者なれば、未知なぞ全て踏み躙ってこそ正道。
冥界だろうが何だろうが関係はない。
黒円卓の串刺し公が降り立った時点で結末は決まっているのだ。
その妄信を現実にする為に暴力の限りを尽くす。
方針はそれだけで、それ以外には一切不要。
ヴィルヘルム・エーレンブルグは常に不変だ。
白騎士と並んで主に絶対の忠誠を捧げる騎士に、恐れや脅えの色は微塵も無い。
「俺は必ずあの人に聖杯を持ち帰り、手前の価値って奴を証明してみせる。
皆殺しだぜ、一人も残さねぇ。おまえも例外じゃねえぞ? マキナ」
そんな彼の言葉を聞き終えて。
終焉の黒騎士が口を開き吐いたのは、事もあろうに愚問だった。
「…ベイ。おまえに一つ問うが」
「あぁ? 何だよ。勿体ぶんなや」
ヴィルヘルムの忠義は知っている。
何せあの赤騎士、ザミエルでさえ認める敬虔さだ。
彼がその願いを抱く事に疑義の余地はない。
黄金の爪牙として、彼の為に願望器を持ち帰る。
実にらしい。
この期に及んで微塵もブレる事なく、ヴィルヘルムはヴィルヘルムであった。
だが。
いや、だからこそ。
マキナは彼に問いを投げるのだ。
「――水銀は本当に不在なのだな?」
この世界は。
冥界は。
本当に、水銀の掌を離れているのかと。
問い掛けるマキナにヴィルヘルムは顔を顰める。
無理もない事だ。
水銀の不在に関しては先刻見解を付き合わせて合意したばかりだ。
にも関わらず何故急に掘り返すような言葉を投げ始めるのか。
「ボケてんのか? おまえが言ったんだろうがよ、野郎の影は無ぇって」
「ベイ。おまえは何処からこの冥界を訪れている」
「決まってんだろ。あの方の城…戦奴の楽園(グラズヘイム)からに決まってんだろうが」
やはりか。
マキナは小さく、然し哀れむように呟いた。
何に置いても無感情で無感動なこの黒騎士が示すには余りにらしくない。
無論ヴィルヘルムも目前の男が発した憐憫という名の侮辱を敏感に察知する。
旧知の同胞同士で語らうある種和やかな雰囲気は一瞬にして霧散。
ヴィルヘルムの貫くような殺気がマキナへと襲い掛かっていた。
「何だよその目は。さてはテメェ何か知ってやがんのか?」
「俺に言わせれば逆に問いたい所だ」
「…何がだよ。言ってみろや」
「ベイ。おまえは、憶えていないのか」
いや、そもそも知らないのか。
マキナの言葉の意味をヴィルヘルムは理解出来ない。
それもその筈だ。
この点に関して彼に罪はない。
本当に知らないのであれば――理解出来る筈もないのだから。
「ラインハルト・ハイドリヒは死んだ。クラフトの傀儡という役目を超克した俺の戦友が滅ぼした」
「…おい」
瞬間、威嚇ではない殺気が炸裂した。
形成の合図なぞ口にする理由もない。
茨の杭を具現化させた右腕を顔面へ振り翳す。
その一撃にマキナは鉄の拳で応じる。
白と黒の激突。
大気が悲鳴をあげ、衝撃波だけで屋上の粗野な地面に亀裂が走って粉塵が巻き上がる。
空の雲さえ独りでに裂けて消える程の衝撃。
生じた現象だけで言うならば先日の、竜共の小競り合いにすら劣らない魔徒同士の本気の衝突。
現世でなど罷り間違っても出すべきでない戦奴の常識が顔を覗かせたが、論点は其処ではない。
「誰が滅んだって? それ以上騙るなら前言撤回だ、テメェだろうが本気で殺すぜ」
「ハイドリヒは既に亡い。水銀さえ消え、グラズヘイムは泡と消えた」
「テメェッ――!」
この男はトチ狂いやがったのか。
ヴィルヘルムには、マキナの言っている内容が本当に理解出来なかったのだ。
クラフトの傀儡…ツァラトゥストラと呼ばれたあの劣等がラインハルトを討ち倒したのだとマキナは言う。
だがヴィルヘルムの知る限りそんな事があった記憶はない。
それもその筈であろう。
もしそうだと言うのなら彼の願いは破綻している。
既に亡い主君に聖杯を捧げると豪語し、剰え勝ち方の質にさえ固執するほど懸想する等奇妙な話ではないか。
第一、あの至高の黄金があんな餓鬼に敗れ去る訳がない。
だからこそヴィルヘルムは困惑と、その何百倍もの怒りでマキナへ杭の暴風を降らせていた。
団員同士は同胞。
されど、仲良しこよしという訳ではない。
少しでも歯車が狂えばこの通り容赦なく殺し合いが勃発する。
これもまた黒円卓の常であり、破滅の遠因にもなる欠陥だった。
要するに彼らは自我が強すぎるのだ。
ドイツ中から集めた選りすぐりの精神破綻者共に一騎当千の力を与えて切磋琢磨させた結果、一度でも崩壊が起きれば果てなくそれが広がる。
そういう欠陥を、彼らロンギヌス・サーティーンは常に抱えていた。
例えばまさにこの通り。
黄金への冒涜はヴィルヘルムにとって同胞殺しを犯す理由として十分過ぎる。
今は敵同士だという事実を抜きにしても、敬愛するラインハルトを敗残者呼ばわりした黒騎士を処断するのに幾許の躊躇もない。
「ベイ。おまえは何処からこの冥界へ来た」
だが彼の前に立つのは大隊長。
黒円卓の三騎士と呼ばれる正真正銘の傑物である。
此処まで何体もの英霊を槍衾に変えて屠って来たカズィクル・ベイの白木の杭(ホワイト・パイル)を、マキナは一発の拳で全弾粉砕した。
ヴィルヘルムの肌に久しく覚えていなかった緊張が走る。
如何に恐れを知らない闇の不死鳥であろうとも、この男を前にしては死の気配という物を濃密に感じ取ってしまうのは不可避だった。
幕引きの鉄拳。
絶やす事しか知らない癖して、本人は絶える事も出来ずに回り続ける死のゴンドラ。
デウス・エクス・マキナの脅威を知らぬ者など黒円卓には一人として存在しない。
マキナが地を蹴る。
その速度はアリスに指摘を受ける程度には鈍重だ。
然しこと戦闘に於いて言えば、それで問題が生じる事はまずない。
彼の挙動には一切の無駄という物が存在しないからだ。
膨大な経験により培われた戦闘論理の結晶。
魂にまで染み付いた戦兵法が彼の完全性を担保している。
振るわれる拳は音を置き去りにし、風圧だけで敵の肌を切り裂く程の勢いを以ってヴィルヘルムを襲った。
ヴィルヘルムはこれを猛獣を彷彿とさせる身のこなしで回避する。
一撃躱せるだけでも見事だったが、安堵をするには早すぎる。
城では何度となく殺し合った仲だ。
当然知っている――白騎士程の速度がなければ、この黒騎士を相手に回避戦を挑む等まったく益がないと。
躱したのも束の間、ヴィルヘルムは一瞬の間も置かずにその全身から杭をバラ撒いた。
バルカン砲を思わす速度と密度で襲うそれを二つの拳のみで打ち払う神業は一体如何なる道理か。
然し驚きには値しない。くどいようだが"知っている"からだ。
自分で放った杭の隙間を縫うように身を屈めて接近し、烈帛の気合を込めて突きの一撃を繰り出す。
これに対しマキナも拳で応じた。
正面から激突する拳と杭。
黒騎士と吸血鬼。
だがその結末はやはりと言うべきか、予想通りの物であった。
「ちッ」
ヴィルヘルムの右腕が衝撃と圧力に耐え切れずひしゃげた。
これが平団員と大隊長の差。
彼らは絶対的に保有する魂の総量に差があり、故に身体性能でも前者は後者に大きく水を空けられているのが現実だ。
恐れるという事を知らない彼だからこうして勇猛果敢に挑めるだけで、実際の所彼のしている事は自殺行為に等しい。
潰された腕を意にも介さずヴィルヘルムは考える。
戦闘経験については彼もかなりの物だ。
格上だろうが喉笛を食い千切って血を啜る、そのメンタリティを基に戦いへ没入していく。
時間にして凡そ一秒余り。
ヴィルヘルムが地を蹴って跳躍する軌道を目線で追いながら、マキナは戦闘中であるにも関わらず話の続きを始めた。
「やはりおまえはハイドリヒの膝元から呼ばれているのだな」
「だからそう言ってんだろ…それに、ンだよ。テメェは違うってのか? あ?」
天から地へと降り頻るは杭の雨。
マキナの手数を凌駕するべく用立てられたそれは数百余り、その一本一本に英霊の霊核さえ打ち砕く威力と魔力が込められている。
杭と言えば吸血鬼の弱点の代名詞だが、ヴィルヘルムはこれを用いて数多の命を啜り上げて来た。
吸血鬼を名乗る怪人が薔薇の杭を振り翳して襲い掛かって来る矛盾。
言うなればこれは彼というヴァンパイアにとっての牙なのだ。
貫かれれば血も精も軒並み吸い尽くされる――枯れ落ちるまで。
が、此処でもマキナは異常だった。
杭が掠めようが意にも介さない。
その上で三桁を優に超える死薔薇の雨を悉く打ち落とすのだ。
文字通り、空から降る雨粒の一つ一つを目視した上で殴り砕く行い。
極限の経験値から繰り出される無窮の武錬。
不死鳥と豪語する魔人でさえ辟易を覚える武勇が此処にある。
「違う。先の通りだ。
俺の知る黒円卓は戦友――ツァラトゥストラの手によって壊滅している」
「…………」
だがヴィルヘルムは臆さない。
強ければ強い程喰らう価値も一入という物だ。
故に次は右腕の礼をすると決め地を踏み砕いた。
そのまま自らも暴風雨の一員と成るべく駆けようとした所でマキナの声がそれを止める。
戯言と一蹴し、更なる赫怒の起爆剤にしてもいい侮辱であったが…然し狂人の妄言も極めれば胸を打つ。
この黒騎士がその手の冗句とは無縁のつまらない男であると長い付き合いでよく知っていた事も其処に拍車を掛けていた。
「…じゃあ何だよ。テメェはあの方の城とは無関係に、マジで英霊の座から此処までやって来たって事か?」
「然り。既にこの身は奴等の呪いから解き放たれている。唯一無二の終焉は見窄らしく穢されてしまったが」
「信じられねぇな。まだテメェが億兆分の一の可能性を通してあの方を斃したって言われた方が信憑性あるぜ」
「奴如きに挑んだ所で俺の聖戦には程遠い。俺が唯一無二と看做す相手は、あの日血(たましい)を分けた戦友だけだ」
黄金の獣――ラインハルト・ハイドリヒが斃された。
水銀に繕われた粗末な器が、死者の楽園に落日を齎したと言う。
やはり俄には信じられない話だった。
だが皮肉な事に、ヴィルヘルムの生物としての本能の部分が目前の男の語る内容を真実だと認識してしまっている。
黒円卓が壊滅し黄金も水銀も滅び去った遠未来。
そんな有り得るとは思えない人類史を通じ、この黒騎士は冥界へ漂着したというのだ。
「その上で問う」
「らしくねぇな。あんたそんなにお喋りが好きだったか?」
「…近頃は不本意ながら、発声を求められる機会が多かったのでな」
「傑作だわ。ザミエルでも笑うんじゃねぇか? …まぁいい。問いとやらを投げてみろや、下らなかったら今度こそ鉄クズに戻してやるよ」
不動たる機神・鋼化英雄の口から出るとは全く思えない言葉だ。
その事もまた彼が何やら満足の行く結末に巡り会えたらしい事実に説得力を与えていた。
そしてマキナは問い掛ける。
それは生憎、ヴィルヘルムにとってはまさしく"下らない"問答に過ぎなかった。
「おまえはそれでも黄金への報恩を続けるのか、ベイ」
答えは考えるまでもなく思い浮かぶ。
"当然だろうが"。
その一言で事は足りていた。
マキナの辿った世界線がどんな物であろうが、身も蓋もない事を言えば己には関係がない。
たまさかあらゆる歯車が噛み合った世界で起こった番狂わせなぞ念頭に置くにも値しない。
ヴィルヘルムの知るラインハルトは未だ完全無欠にして最強無敵の獣皇である。
ならばその彼に心血、そして魂までも捧げて忠誠を貫くのは黄金の騎士たらんと誓ったヴィルヘルムに言わせれば当然の事。
だからそう答えようとしたのだったが、それに先んじる形でマキナが更なる戯言を吐いた。
「闇の不死鳥(ヴァンパイア)を名乗るおまえが焦がれた男さえ真の永遠ではなかった。
おまえの時空で奴が健在だろうが、此処に一つの真実が示された。
ハイドリヒでさえ敗れ去るのだ。クラフトでさえ滅び得るのだ。
おまえが信じた不滅とは結局、虚空に映し出された虚像の一端でしかなかったとおまえは知った」
「…何が言いてえんだよ」
「おまえに啓蒙する程老い耄れたつもりはない。これは単に、俺が疑問に思っているだけだ」
マキナは求道者である。
求道の究極と呼んでもいい。
唯一無二の終焉という結末の為、それだけを追い求めて彷徨った鋼鉄の亡霊。
その彼が神父のように他者へ啓蒙をする等これ程らしくない話もなく。
当然として彼は答えを求めているのみだった。
永遠に明けない夜を求めた一羽の鳥に、或いは付き合いの長い同胞に。
只、おまえはどうするのだと問うているだけ。
何しろ今は黒騎士もまた見届ける側だ。
戦う以外の事を知らない己があの勇者に寄り添うならば、信じた結末を穢された者の言葉にとて価値がある。
予定調和とは無縁の奇跡(トゥルーエンド)を希求する者の道に、困難と挫折が待ち受けていない道理は無いのだから。
「おまえはこれから何処へ翔ぶ。闇の不死鳥、死森の薔薇騎士よ」
ヴィルヘルムは今度こそ完全に沈黙した。
決まり切った答えを返しながら一撃でも打ち込んでやればいいだけの話であるにも関わらず。
宛ら全身の血が石にでも置き換わったように彼は停止していた。
停止の理由は解っている。
脳裏にノイズのように走る、此処ではない何時か、何処かの記憶が在ったからだ。
既視感(デジャヴ)。
されど回帰による蓄積ではない、確かにヴィルヘルム・エーレンブルグという男がその足で歩いた道筋の記憶。
“ではあくまで、求めるものは不滅だと?”
再生される陰鬱な声。
思い出すだけで胸糞の悪くなるいけ好かない男。
今はもうこの世の何処にも居ない負け犬だ。
かつて己の前に立ち塞がったあの"闇(メトシェラ)"が記憶の中から語り掛けて来る。
あの時己はどう答えたのだったか。
決まっている。
魂を半分持ち逃げされようが、この生真面目な男がそれを忘れる事はない。
その台詞は紛れもない黄金への不忠。
ヴィルヘルム・エーレンブルグらしくもない、有り得もしない未来について論じた物であったのだから。
“ああ、俺は信じている”
“ハイドリヒ卿がいなくなっても、俺は生きる”
“宇宙がぶっ壊れようが……生きるんだよ!”
今になって考えれば自分でも正気ではないと思う言葉だ。
億が一だとしても主君の絶対を疑う等ヴィルヘルムに言わせれば有り得ない冒涜だった。
では何故あの時己は、恥ずかしげもなくそんな妄言を吐き散らす事が出来たのか。
次いで脳裏に過ぎるのはこれまた思い出すだけで苛立ちの募る女の顔。
とぼけたようにヘラヘラ笑って、カスにもならない雑魚の命にさえ心を痛める貧弱の間抜け。
嗚呼――そうだ。
あの女が持っていってしまったから、今の俺にはこの言葉の意味が理解出来ないのだ。
「…まァたテメェか、クソ女」
吐き捨てる悪態にさえ何処か力がない。
突き止めようにも其処へ至るパーツが決定的に欠けている。
善き処に持ち去られた魂の欠落。
戦奴として生きるには凡そ全く不要であろう欠片の不在がヴィルヘルムに苛立ちを齎す。
もしその欠片さえあれば。
この陰気な求道者の鼻を明かす気の利いた言葉の一つも引き出せたかも知れないというのに。
「――俺はテメェの話なんざ信じちゃいねぇよ。ハイドリヒ卿は不滅だ。あの人が敗れるなんて有り得やしねぇ絵空事だ」
「…おまえは――」
「最後まで聞けクソ。テメェが質問して来たんだろうが」
だからヴィルヘルムは辿り着けない。
過去の己のように翼の行く先を定められない。
闇の不死鳥。
夜に無敵である吸血鬼。
体中の血を常に新生させながら永久に君臨する薔薇の騎士。
彼に在るのはその鍍金だけだ。
言うなれば空洞。
魂の輝き等決して見せる事のない、片手落ちの魂。
何処へ行く、とマキナは問うた。
答えに至れない伽藍の不死鳥はこう応える。
「あの方が負けるなんざ天地が引っ繰り返っても有り得ねぇ。
だが何がどうなるにしろ、俺は何処にも行かねぇよ。
テメェみたいに中途半端に善悪の彼岸をフラフラするなんざ断じて御免だ。
俺は俺のまま、何処までだって俺で生き続ける。俺が目指したのはそういう神話だ」
欠落した魂に真の答えは出せないが。
然しそれでも根幹は同じヴィルヘルム・エーレンブルグ。
過去の彼と現在の彼がどれ程違った存在だろうと、その信じた創造(カタチ)は常に重なっている。
故にヴィルヘルムの回答は過去と同じ。
不忠の色を極限まで削ぎ落とし、"生きる"のだと黒騎士へ突き付けた。
生き続ける事。
只強く在り続ける事。
明けぬ夜、枯れ落ちぬ花――闇の不死鳥。
それこそが彼。
黄金に仕える薔薇の騎士であるのと同時に、ヴィルヘルムという男は常にその願望だけで完結している。
「テメェが何を見たのかは知らねぇし興味もねぇが、腑抜けた負け犬なんざに勝ちは譲らねぇよ。
おまえもそれ以外も、邪魔するってンなら此処の神も鏖殺だ。
一人残らず吸い殺してあの方に聖杯を献上する。疑問は尽きたかよポンコツ野郎が」
これ以上の問答に意味はない。
続けるのならば本気を返す。
黒円卓の串刺し公は常に不退転だ。
敵として立ち塞がるのならば、格の上下は彼にとって問題にはならない。
そんなヴィルヘルムの姿はマキナに言わせれば全くの不変だ。
彼の経験した戦いで見た物と全く同じ。
マキナは小さく瞑目した。
その仕草の意味は彼以外の誰にも解りはすまい。
葬者の影響で多少喋る機会が増えたとはいえ、基本的に彼は寡黙な男なのだ。
鋼の戦車の心を知る者は彼一人。
ましてや聖戦を越え、今一度結末(おわり)を穢されたイレギュラーの彼ともなれば尚の事だった。
「つくづくおまえは変わらないな」
「他人の言でコロコロ手前の魂を変えるかよ」
「違いない」
マキナが拳を握る。
来るならば来いと無言で告げる。
ヴィルヘルムが構える。
此処で黒騎士と雌雄を決するつもりはなかった。
だが今、その判断は揺らぎ始めている。
理由など知る由も無かったが、この男は明らかにあの幽鬼めいた死者とは違った挙動を見せていた。
またも死を取り逃してヤケになっているのだと侮るのは容易い。
然しヴィルヘルムの戦士としての直感が、実の所先刻からずっと警鐘を鳴らしているのだ。
「…死ぬ程業腹だが"何かあった"って事だけは信じてやるよ。
何もかもブッ壊されでもしねぇ限り、不能のテメェが様変わりするなんざ有り得ねえもんな」
この男を捨て置いていいのか判断が付かない。
仮に勝てたとして、大隊長の一角と殺し合えば極大な損害を受ける事は間違いない。
利口なのは間違いなく後に回す事だ。
ましてや相手は幕引きの黒騎士。
触れた凡てを一撃で破壊するその拳には、吸血鬼の再生力が意味を成さないのだ。
つまり根本的に相性が悪い。
…それでも、今のこの男を野放しにする事は回り回って取り返しの付かない結果を招く予感がしてならなかった。
得体の知れない何かに目覚めた機神英雄がこの冥界で何を見、何を得るのか――その結果何が起こるのか。
似合わない逡巡にヴィルヘルムの視線が歪む。
一秒、二秒。
膠着が続いて…そして。
「――ふむふむ、なるほどなるほど! 確かに凄く角の立ちそうな人のようです! アリス、ライダーの言ってた意味を理解しました!」
「…あ゛?」
魔人達の再会。
しめやかとはとても呼べない殺気乱れ飛ぶそれを締め括ったのは、屋上の縁からひょいと顔を出した黒髪の少女の声だった。
◆ ◆ ◆
「…来るなと言った筈だが」
「はい、言われました。
でも何だか危ない気配がしたので、アリスも居ても立っても居られなくなってしまったのです。
なのでビルを登って此処までやって来てしまいました…」
地面に付く程長い黒髪。
そして頭の上に輝く、天使を彷彿とさせる光輪。
赤騎士(ザミエル)が好みそうな無骨で巨大な銃を背負った少女だった。
マキナの寡黙さとは対照的によく喋る、声も大きい。
さしものヴィルヘルムも怪訝な顔をせざるを得ない突然の乱入である。
こうなると場の緊張感なんて物は忽ちの内に完全崩壊。
何とも言えない、気まずさにも似た空気が代わって立ち込める事になった。
「…おいマキナ。おまえ何処まで引き悪いんだよ」
改めて見ても印象は同じだ。
見た目こそ愛らしい小娘のそれだが中身はそうではない。
それこそこの黒騎士に近いモノだ。
鋼の機人――アンドロイド。
恐らく全ての葬者の中でも性能だけで言うなら指折りだろう。
だがそれも、言動がコレでは台無しも甚だしい。
ウチの猿とどっちがマシか。
まだ話が通じる分アレの方がマシかも知れない。
少なくともこれと一緒に戦争を戦えと言われたら、自分は間違いなくその場で激怒している。
先刻まで不気味さを感じていた黒騎士に打って変わって同情するヴィルヘルム。
その顔を、少女…天童アリスはじっと見つめていた。
「何だよ鉄クズ。見てんじゃねえ殺すぞ」
「む。やはり見た目通りのアウトローのようです。
見かけで判断するのは良くないと先生が教えてくれましたが、序盤からなかなか強そうなキャラとエンカウントしてしまいました」
黒円卓の魔人をアウトロー呼ばわりである。
神をも恐れぬ所業とはまさにこの事だ。
この胆の据わりようはそれこそ、ヴィルヘルムの半分を持ち逃げして行ったあの修道女によく似ていた。
ヒリつく場面に水を差されるどころか蜂蜜をぶっ掛けられた気分のヴィルヘルムは殺意を剥き出しにしていたがアリスは何処吹く風だ。
「ともあれまずはご挨拶です。初めまして! アリスはアリスと言います。勇者をやっています」
「なぁオイ。此奴アホなのか?」
「昨日の敵は今日の友。アリス、手を取り合う相手は選びません。と言うわけでこれからよろしくお願いします、ベイ!」
「よろしくしねぇし呼び捨てにしてんじゃねぇ殺すぞクソガキ!」
マキナの無言が途方に暮れているように見えるのはヴィルヘルムも初めての経験だった。
黄色人種を象った造り物の命というのは先刻聞いたマキナの話、ラインハルトを討ったという水銀の傀儡を思い出しどうにも癪に障る。
元々筋金入りのアーリア人至上主義者であるヴィルヘルムにとってアジア人とはまさしく嫌悪の対象だったが、これはそういう次元でもない。
今ばかりはヴィルヘルムはマキナに心底同情していた。
だが同時に疑問も湧く。
黒騎士マキナの妙な言動。
終焉だけを追い求める求道者の心理に波を立たせたのは、まさか。
「ったく…。おまえも自壊衝動ってヤツが出てんじゃねえのか?」
「やもしれんな」
「正気かよ。おまえそういう趣味だったか?」
だとすればいよいよ以ってヤキが回ったとしか言い様がない。
何にせよ、此処でのゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲンは自分が知るのとは似て非なる存在と思っていいだろう。
ヴィルヘルムはそう結論付けた。
その間もアリスは興味津々と言った様子でヴィルヘルムの事をジロジロ遠慮なく観察している。
「格好良いコスチュームですね。アリスもこれ欲しいです。最近のゲームは衣装チェンジも充実している筈ですし…」
「うるせえ黙れ消えろ。手が滑って殺しそうになんだよ」
「成程、見た目通りとても凶暴です…。でもアリスは勇者なので対話を惜しみません。
ベイはゲームは好きですか? アリスは大好きです! 好きなジャンルですか? そうですね、それはとても迷う質問ですがやはりRPGが」
「誰も聞いてねぇってんだよクソが! テメェの回路は腐り散らかしてんのか!」
いっそやっぱり此処で捻り潰してしまおうか。
本気で悩むヴィルヘルムだったが、其処で口を開いたのはマキナだった。
既に黒騎士は踵を返しており、その行動だけでも彼の意図する所は窺える。
「戻るぞアリス。用は済んだ」
「え。待って下さいライダー! アリス、トゥルーエンド達成の為にもこの人とコミュを…」
「言っただろう。その男がおまえに何か齎す事はない」
黒円卓の魔人達にも人格という物はある。
更に言うなら仲間意識も然りだ。
有事でさえ無ければそれなりに気安いし、牧歌的な瞬間が見られる事も珍しくはない。
「おう、其奴の言う通りだからとっとと消えろやガキ。何考えてんのか知らねぇし興味もねぇが、勧誘でも出来ると思ってんなら大間違いだ」
だが勘違いしてはならない。
魔人にさえ人の顔はある。
それでも魔人は魔人なのだ。
息吐くように人を殺し、それを糧とする。
必要ならば同胞を蹴落とす事さえ頓着しない。
それこそが聖槍十三騎士団。
獣と蛇が集めたるおぞましき黒の円卓。
ヴィルヘルムが勇者の勇気に同調し絆されるような生易しい男ならば、そもそも彼は黄金と出会ってすら居ないのだ。
「むぅ…。解りました……。でも次に会ったらその時こそアリスの話を聞いて貰いますよ、ベイ!」
「絶対聞かねえから安心しろ。次は即殺す。テメェんとこのボケたデカブツ諸共な」
自分から誘いを掛けたのはいいが思いがけず疲弊させられた。
ヴィルヘルムはうんざりしたように溜息を吐く。
アリスもそうだがマキナもそうだ。
単なる顔合わせと世間話でも出来ればそれでいいと思っていたが、場合によってはある意味これも収穫かもしれない。
この冥界は自分が想像していたよりも複雑に怪奇しているらしいと解った。
過酷な戦場は望む所だが、しち面倒臭いのは性に合わない。
どうかこれ以上事が拗れるのは勘弁してくれよと心底思うヴィルヘルム。
そんな彼の目前で今まさに去ろうとするアリス達へ…新たな声が突如掛かった。
「待てよ。勝手にお開きにしてんじゃねえ」
いつの間に駆け付けていたのか。
屋上には新たな顔が姿を見せていた。
ヴィルヘルムの顔がまたもや歪む。
アリス程ではないにしろ、彼もまた己の頭を痛ませてくれる存在だったからだ。
「猿。テメェ何勝手な事しようとしてやがる?」
「俺は俺で話があんだよ。そういう訳だ、時間は取らせねえから足止めてくれ」
男の名前は伏黒甚爾。
天童アリスと同じく極めて異常な性質を保有した葬者であり。
吸血鬼ヴィルヘルム・エーレンブルグをこの冥界に呼び出した非才の猿であった。
◆ ◆ ◆
「アリスって言ったな。お前の欲しがってる物を融通出来る場所に心当たりがある」
「…アリスの欲しい物。はっ、ベイの軍服ですか?」
「違えよ。あんなモン欲しがるな、何処に出しても恥ずかしい人類史の恥部だ恥部」
殺すぞクソ猿、とヴィルヘルムが凄むも甚爾は素知らぬ顔である。
彼も彼でこのキレやすい老人との付き合い方を弁え始めているようだった。
それはさておき、軍服(コスチューム)でないとすれば心当たりは一つだ。
天童アリスは今とある物を探している。
然しとなると同時に一つ疑問も浮かぶのだったが。
「銃弾だよ。欲しいんだろ?」
「はい、確かにアリスは弾を探しています。ですが…どうして解ったのですか?」
「其処かしこの店で銃弾売ってないか聞き回ってるガキが居るって噂になってるよ。バカみたいに髪の長いガキだって情報も含めて」
「なんと…。いつの間にかアリスは街のお騒がせ者になってしまっていたのですね……」
耳を疑いたくなる何ともバカな話だったがそれは良いとして。
葬者がその手の道具を調達する手段は全員に与えられている。
深夜、僅かな時間にのみ開く例の店だ。
実際甚爾は大枚を叩いて其処で武装を整えたし、先立つ物は必要だが彼処なら容易に望みを叶えられるだろう。
だというのにそうしていないという事はつまり、この少女らはあの店を…恐らくはあの店主を警戒しているという事だと考えられた。
甚爾としても気持ちは解らないでもない。
素性は全く不明だが、あの金髪の男は間違いなく良からぬ存在だ。
言うなれば悪魔との取引に自ら進んで出向くような物であり、それに抵抗がある者が居てもおかしな話ではなかった。
「ではあなたがアリスに弾を売ってくれるのでしょうか。アリス、武器商人の登場にワクワクしています」
「自腹切って揃えた物資を競合相手に流してやる程俺は善人じゃねえ」
「あうぅ…」
「それにその銃…って言っていいサイズか怪しいが、大方物好きに造らせた特注品だろ? どうせなら専用の弾を拵えさせた方が都合がいい筈だ」
手段を選んで何かを手に入れるのは難しい。
故に其処に取引の余地が生まれる。
甚爾はそういう機会を逃さない。
術師殺しと呼ばれ恐れられた仕事人は、何も後ろから刺すだけが能の凶手ではないのだ。
「妙な移動販売車があちこちを彷徨いてると聞いてる。何でも日用品から本格的な戦闘用具まで幅広く取り扱ってるらしい」
「! ランダムエンカウントのレアアイテムショップですね!」
「ああもうそれでいいよ。兎に角だ、其処に行ってオーダーメイドでも頼めば弾の補充は簡単に叶うだろ。
俺は先に金髪男の道具屋で買い揃えたから用がないが、それはそうと連中の動向は気になっててな。
お前が向かって俺に報告を入れてくれればこっちも有り難い。勿論お前は弾が手に入って思う存分ドンパチやれる。悪い話じゃねえだろ?」
甚爾は言うとメモ用紙を取り出した。
其処には彼の携帯番号と、最後に移動販売車の目撃があった座標が記されている。
「アリスも是非そのショップに行ってみたいです。
でも…困りました。アリスがあなたとの約束を確実に守る保証ができません」
アリスは難しい顔をする。
そう。場所を教えられて向かうはいいが、目的を達成してしまったらもう約束を守る義理が無くなってしまうのだ。
無論勇者を名乗るアリスがそんな卑怯に走る等有り得ない話だが、かと言って相手に一方的に自分を信じろと言うのも気が引けた。
何とも律儀な話だが、それが天童アリスという少女なのである。
然し甚爾もその点はアリスとは別な理由で織り込み済みだ。
取引はしても慈善事業はしない、伏黒甚爾はそういう男だ。
「別に約束を破ってくれてもいい。その時はお前等が少し損をするだけだ」
「…と言うと?」
「お前みたいに頭の上に輪が付いてる奴を何人か捕捉してる。お前がちゃんと連絡を寄越したらこっちは其奴らの情報を渡してやる」
「…!」
嘘ではない。
何しろアリスもそうだが彼女達は兎に角この町では目立つのだ。
此処までに甚爾は一方的にその数人を捕捉している。
アリスのように明らかに聖杯獲得以外の目標を掲げている身からすれば、同胞の存在は下手な物資より余程有り難いだろうと踏んだ。
そして甚爾の目論見通り、アリスはゴクリと息を呑む反応を見せてくれた。
「…解りました。元々約束を破るつもりなんてありませんでしたが、アリス絶対約束を守ります。これは勇者の名に懸けた誓いです!」
「信用しとくよ。ほら、番号と最後の目撃場所だ。
此処までの目撃証言を総括して次に現れそうな場所にも当たりを付けてある」
アリスにメモ用紙を手渡す。
商人達は隠れ潜んでいる訳ではなく、寧ろその動向を明け透けにしている方だ。
であれば大きく予想が外れる事はないだろう。
余程イレギュラーな事態でもない限り、アリスは例の移動販売車に辿り着ける筈…と甚爾は踏んでいた。
「ありがとうございます、ベイのマスター! アリス、早速ショップ探しのクエストに出発したいと思います。
パンパカパーン! 新しいクエストが出現しました!」
「おう。気を付けて行けよ」
「はい、ではまた。ベイも次は一緒にゲームしましょうね! ライダーも、マスターさんも一緒にですよ!」
上機嫌に屋上からぴょんと飛んで消えていく姿は最後まで冗談じみている。
取引を終えた甚爾が振り返ると、其処には苦虫を噛み潰したような顔のヴィルヘルムが居た。
マキナへの苛立ちとアリスへの苛立ち、そして自分のマスターへの苛立ち。
三種の苛立ちが三位一体となってこの粗暴な吸血鬼の顔を歪めていた。
「クソ猿。何処から見てやがった」
「最初からだ。元はと言えば断りなく誘い掛けたのはお前の方だからな、謝る義理はねえ」
「この俺をダシにしやがって。挙句あんなクソガキと取引だと? 何考えてやがる」
「バカとハサミは何とやら…って言ってもドイツのナチ公には通じねぇか。使えるモンは積極的に使って行こうぜって事さ」
とはいえ甚爾としては都合が良かった。
聖杯戦争の加速を見越し、これまでとは違った形の暗躍も始めたい所だったからだ。
此処からは今までのように排除だけ考える戦い方では出遅れる可能性が高い。
何より今しがたの少女。
彼女が連れていたあの黒騎士のような強者を見てしまってはその考えも益々強まるという物だった。
「にしてもありゃ何だ。クソバケモンじゃねぇか」
「黒円卓の大隊長だ。第七位、ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン。
黒騎士(ニグレド)、幕引き(マキナ)。俺らはマキナって呼んでる」
「昨日の竜といい、流石に此処まで生き残ってきた奴等は上澄みも上澄みだな。
普通に殴り合ってたら命が幾つあっても足りそうにねえ」
甚爾は天与呪縛の完成形である。
その身体能力は、先刻のアリスさえ優に超える。
半端なサーヴァントであれば返り討ちにして余りある戦力だ。
その彼も、あの黒騎士には全く勝てるビジョンが浮かばなかった。
あれに比べればこれまでに斃して来たサーヴァント等塵芥にも等しい。
奴が本気で殺しに来たならば、恐らく自分でも防戦すら困難だろう。
付き合い方を間違えれば容赦なく破滅を叩き込まれる。
そういう相手と出会した事が、甚爾の現状への認識をまたしても更新していた。
「だったら道具屋にはテメェが向かえば良かったんじゃねえのかよ。
話は聞いてたがどう考えてもこっちの分が悪い取引だったぜ。
テメェからその辺の勘抜いたらいよいよ只の山猿じゃねぇか」
「俺の体質を抜かれたくなかったんだよ。噂程優秀な連中なら一目見て気付きかねない。
かと言ってお前みたいな全身殺気で出来たような野郎を送り込むのは論外。
と来たら都合よく道具屋に用のある他人を使って偵察掛けた方が利口だろ」
「チッ、小心者が。手の内がバレたら何だってんだよ。本当に強ぇ奴は隠れ潜む事なんてしねえ」
「そういうガキみたいな価値観で生きてねぇんだ俺は。お前と違って大人だからな」
殺すぞ!と殺気全開で睨み付けてくるヴィルヘルムに甚爾は口笛を鳴らす。
彼にとって自身の肉体というカードは最大の切り札だ。
無闇に知られたくはないし、明かすとしてもそれは必殺の機会にするのが望ましい。
そういう意味では天童アリスは実に都合のいいタイミングでやって来てくれたカモだった。
マキナの強さは想定外だったが、あれも兜の緒を締め直すいい機会になったと言えなくもない。
ヴィルヘルムはこの通りお冠だが、詰まる所甚爾としては大変有益な邂逅になった訳だ。
「じゃあ俺はまた潜って来る。お前もあんまり目立ち過ぎんなよ」
「五月蝿え。さっさと消えろ」
マキナとの交戦はヴィルヘルムにとって予想外だった。
だが彼はエイヴィヒカイトをその身に宿す魔人。
腕が拉げた程度の傷ならばそう時間も掛けずに癒す事が出来る。
つまり肉体的には実質の損害はゼロに等しい。
寧ろ彼にとって厄介な楔となったのは、そう。
“…チッ。マキナの野郎、似合わねえ無駄口を叩きやがって”
マキナとの問答の方であった。
あの死にたがりの願望など今更聞く気にもならなかったが、一方的にあれこれ問い質されたのは実に不快な時間だった。
黄金の失墜。
絶対であるべき象徴が斃された時空の話。
そして問われた不死鳥の行方。
どれもこれもが魚の小骨のように喉に支えて気分を荒立たせる。
これまでは特段気に留める事もなかった魂の欠落が事此処に来て存在感を増して感じられるのも腹立たしかった。
何もかも面白くない。
舌打ちを残して霊体化したヴィルヘルムの結論は…然し先の通りだ。
“俺は俺だ。他の何にも染まりなどしねえ”
遠くへ去ってしまった祈りはもう聞こえない。
空から降り注ぐ陽光が。
自分にとって不快の象徴であるその光が。
何処か懐かしいその煩わしさに――いつかのような恩着せがましさを感じてしまうヴィルヘルムなのだった。
【文京区・廃ビル屋上/一日目・午前】
【伏黒甚爾@呪術廻戦】
[運命力]通常
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]拳銃
[道具]複数保有(詳細不明)
[所持金]潤沢
[思考・状況]
基本行動方針:当分は臨機応変にやっていく
1.アリスの連絡を待ちつつ情報収集、場合に応じ交戦
[備考]
※ヘイローのある葬者(ブルアカ出典)を数名捕捉しています。詳細はお任せします
【ランサー(ヴィルヘルム・エーレンブルグ)@Dies irae】
[状態]苛立ち、右腕損傷(再生中)
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]潤沢
[思考・状況]
基本行動方針:皆殺し
1.俺は俺だ。
2.猿にもガキ(アリス)にもマキナにも苛つくので、何処かで適当にストレス発散したい
[備考]
※ヴィルヘルムとライダー(ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン)の参戦時間軸は違います。
ヴィルヘルムは死者の城を経由して召喚されています。よってDies本編時空の事は知りません。
◆ ◆ ◆
“俺は来るなと言ったろう”
“ごめんなさい、居ても立っても居られなくて…”
“おまえは要石だ。そのおまえが自ら矢面に立ってどうする”
“うぅ…。アリス、蛮勇を咎められてしまいました……”
マキナの言葉は正論である。
よってアリスも項垂れるしかなかった。
葬者とは謂わば弱点であり、アキレス腱のような物なのだ。
ゲームの世界の勇者と己では訳が違う。
アリスは今回の事でそれをひしひしと感じていた。
アリスは天真爛漫で自由奔放だが莫迦ではない。
この反省はきっと次に活かされる事だろう。
“それはそうとライダー。早速あの人が言っていたアイテムショップに行ってみようと思うのですが…”
“好きにしろ。だが”
“だが?”
“あの黒髪の男をあまり信用するな。あれは狡知に長けた男の目だ”
今回は此方にも利のある話だったとはいえ、結果だけ見れば体良く丸め込まれた形なのは否めない。
度が過ぎれば直接手を下しても構わなかったが、そうすればあの男は迷わず逃走を選択していただろう。
厄介な男だ。
自分の強さを過信せず、また無駄なプライドも抱かない。
だからこそ損切りに迷いがなく手段に拘る事もない。
可能なら都市戦で相手にしたい手合いではなかった。
少なくともマキナにとっては手の内も人となりも知れているヴィルヘルムよりもあの男…伏黒甚爾の方が数段厄介に映っていた。
“そうですか…解りました。アリスも気を付けておきます。怪しい人の言う事は信じちゃ駄目って先生も言ってましたし”
只例の道具屋の話に関しては確かに前進だった。
マキナとしてはアリスを前線に出すつもりはなかったが、自衛の手段を持ってくれれば多少仕事も楽になる。
それに聖杯獲得に留まらない奇跡(トゥルーエンド)を求めるのなら、甚爾の言った道具屋とアリスが交流を持つ意義はより大きいだろう。
問題は首尾良く会えるかという点だが此処ばかりは運を天に任せるしかない。
斯くして勇者アリスの冒険は新たな門出を迎える。
目指すは謎の道具屋。
危険な男達との邂逅を経て、黒騎士をお供に勇者は歩く。
「反省もありますが…しっかり前向いて進みましょう。アリスの冒険はまだまだ始まったばかりです!」
【文京区/一日目・午前】
【天童アリス@ブルーアーカイブ】
[運命力]通常
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]光の剣:スーパーノヴァ@ブルーアーカイブ
[道具]木の棒や石(アリスのコレクション)
[所持金]少なめ
[思考・状況]
基本行動方針:トゥルーエンドへいざ行かん!
1.謎のアイテムショップを探す
2.ちょっとだけ反省です。これからはもう少しよく考えて行動しましょう、アリス覚えました。
[備考]
※伏黒甚爾から謎の移動販売車(
グラン・カヴァッロ組)について聞きました。大体の移動経路に当たりが付いています
【ライダー(ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン)@Dies irae】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:奇跡という名の終焉へ
1.アリスを守る
2.ベイの葬者(伏黒甚爾)には警戒
[備考]
※ヴィルヘルムとライダー(ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン)の参戦時間軸は違います。
マキナはマリィルートで死亡後、英霊の座を通じて召喚されています。
最終更新:2024年07月13日 01:02