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かまいたちの夜

【かまいたちのよる】
ジャンル サウンドノベル
~
対応機種 スーパーファミコン
メディア 24MbitROMカートリッジ
発売元 チュンソフト
開発元 チュンソフト
アクアマリン
発売日 1994年11月25日
定価 10,800円(税別)
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2007年2月13日/800Wiiポイント
【WiiU】2013年8月7日/800円(各税5%込)
レーティング CERO:D(17才以上対象)*1
書換 ニンテンドウパワー
1997年9月30日/1,000円(税別)/F×6・B×4
コンテンツアイコン セクシャル
判定 良作
ポイント 革新的な推理ゲーム
選択によって展開が大きく変わる
サウンドノベルの代名詞と言える傑作
チュンソフトサウンドノベルシリーズ


こんや、12じ、だれかがしぬ


概要

チュンソフトが『弟切草』(以下「前作」)に続いて世に出した、サウンドノベルの第2弾。~
雪に閉ざされたスキー場のペンションを舞台に連続殺人が巻き起こる、という設定のミステリー作品。シナリオは人気ミステリー作家の我孫子武丸(あびこ たけまる)氏が担当している。

特徴・評価点

  • 弟切草の系譜を継ぐテキスト主軸のアドベンチャーシステム
    • 本作は画面いっぱいに表示される文章を読み進めながら、要所で提示される選択肢によって物語の展開を自ら決定していく、サウンドノベルの開拓者である弟切草の基本システムを忠実に継承している。
    • しかし、基本的に小説を読む感覚に近く、どのような選択を重ねても必ず何らかの物語の結末に到達して終わる仕様だった前作と比較すると、今作はプレイヤー自身の思考や能動的な謎解きを強く要求する構造へと大胆なシフトチェンジを果たしている。
    • 劇中において無数に用意された悲劇的なバッドエンドを自らの知略でいかに回避し、誰もが救われる最高峰のグッドエンドを手繰り寄せるかという、従来のアドベンチャーゲームの持つ本来の楽しさを融合させた設計が本作の大きな目標であり、最大の魅力となっている。
  • シルエット演出
    • 画面に映し出されるビジュアルは、緻密に実写加工された背景画像の上に、登場人物たちをあえて具体的な顔や服装を描かない青い影のシルエットとして重ね合わせるという、極めて大胆な表現技法が採用されている。
    • 当時のスーパーファミコンが持っていたグラフィック描画スペックの限界の中で、数多くの多種多様なキャラクターを違和感なく画面上に共存させるための画期的なアイデアであり、作中の緻密なテキストからプレイヤー自身が頭の中で自由に想像した理想のキャラクター像を一切崩すことなく、物語の世界観へ限界まで感情移入させるという劇的な効果を生み出した。
    • この手法は本作の圧倒的な成功以降、ノベルゲームにおける極めて有効な表現技法の一つとして業界内で完全に定着し、ハードウェアの容量が爆発的に増加してより精細な実写や3Dグラフィックの描写が可能となった現代においても、あえてプレイヤーの想像力を刺激する恐怖演出の手段として度々オマージュされ、使われ続けている。
    • 後に同系統のサウンドノベル作品としてリリースされ、背景だけでなく登場人物までも完全に写実的な実写撮影で表現した街という作品において、視覚的な情報が固定化されたことで多くのプレイヤーから激しい拒否反応が示された歴史を鑑みても、この青い影という記号化の選択がいかに天才的で先見の明に満ちていたかが証明されている。
    • 劇中に登場するキャラクターの顔ぶれは、平凡なOLから女子大生、快活なスポーツマン、恰幅の良い社長夫妻に至るまで非常に多種多様であり、それぞれに強烈かつ特徴的なキャラ付けが徹底されている。そのため、視覚的には単なる青いシルエットでしかないにもかかわらず、その佇まいやセリフ回しだけで性別や年齢、社会的な立場が克明に表現されており、プレイヤーの記憶に強烈な印象を焼き付ける見事な造形となっている。
  • 2周目以降のプレイで世界線が激変するバラエティ豊かなシナリオ分岐
    • 初回プレイ時におけるメインシナリオは、外界から隔離されたペンションを舞台に巻き起こる陰惨な殺人事件の謎を追う正統派のミステリーとして進行するが、一度ゲームをクリアした後の2周目以降のプレイにおいては、選択肢の選び方によってゲーム全体のジャンルそのものが文字通り激変する。
    • プレイヤーの行動次第で、息を呑むようなスパイアクション、背筋の凍るオカルトホラー、さらには理屈抜きの抱腹絶倒のギャグシナリオに至るまで、同一の舞台とキャラクターを使い回しているとは思えないほど、バラエティに富んだ破天荒なパラレルワールドの世界へとシナリオがダイナミックに分岐していく。
    • この構造は、一つの事件や限られた舞台設定を何度も異なる角度から再利用できるという、ゲームというインタラクティブな媒体の強みを極めて高度に活かした設計であり、小説や映画といった既存のメディアでは絶対に真似のできない、周回プレイそのものを最大の娯楽へと昇華させる原動力となった。
  • プレイヤーの思考が物語の構造自体をドラマに塗り替えるミステリーの革新性
    • 本作においてプレイヤーは、ただテキストを受動的に消費するだけでなく、自らが探偵役となって事件の真相を推理し、真犯人の正体や犯行に用いられたトリックを正確に指摘することでゲームの解決を目指すこととなる。
    • 単に犯人を当てるだけの推理アドベンチャーであれば当時の市場にも数多く存在していたが、本作が歴史的な傑作として今なお頂点に君臨し続けている理由は、プレイヤーが導き出した推理の結果が、単にエンディングのテキストを変化させるだけに留まらず、物語が進行していく劇中の状況やシナリオの形態そのものをダイナミックに変貌させていく驚異的な構成力にある。
    • 物語のシチュエーションは、大雪によって外部への連絡手段や交通網が完全に断絶され、救助も逃げ場も存在しない孤立無援の空間と化した、ミステリーの王道であるクローズド・サークルものである。
    • 最初の凄惨な殺人事件が発生して以降、物語が進むごとにペンション内の宿泊客たちが一人、また一人と容赦なく殺害されていく連続殺人の恐怖が描かれる。この惨劇が連鎖していく物語の中盤において、プレイヤーは自らの責任で真犯人を特定するための重大な推理を組み立てなければならず、ここで犯人の看破に失敗した場合は、残虐なバッドエンドしか残されていない地獄の終盤戦へと強制的に進まなければならない。
    • もし見事に犯人の正体を見抜くことができれば、その時点でひとまずの事件解決を告げるエンディングへと到達することができるが、通常のミステリーゲームであればそこで大団円を迎えるはずのその局面すら、本作においては決して真のグッドエンドではなく、数ある結末の中の一つのバッドエンドの変形にすぎないという冷徹な構造がプレイヤーを驚愕させた。

  • 事件を未然に防ぎ惨劇を回避するシステム
    • 実は、最初の殺人事件が白日の下に晒された直後のごく限られた短い場面において、提示される3回の選択肢をすべて完璧に正解していくことで、通常よりも遥かに早い段階で犯人を名指しで指摘する特殊なルートが解禁される。
    • そこで的確に真犯人を当てることができて初めて、誰も命を落とすことなく平和な夜を迎える真のグッドエンドの扉が開かれる。
    • 一般的な推理小説や従来の推理ゲームというものは、そのジャンルの性質上、すでに凄惨な事件が起こってしまったという悲劇的な前提を受け入れた上で、その後に残された手がかりを追って解決に向かうのが鉄則であった。しかし本作は、プレイヤーが極限の推理力を発揮することによって、これから起こるはずだった凄惨な惨劇を事前に完全に防ぎ、運命を白紙に戻して回避することができるという、極めて斬新なゲームデザインを実現している。
    • この「自らの選択によってキャラクターたちの命を救い、物語の運命を直接ねじ曲げることができる」という強烈な介入感こそが、ゲームという媒体だからこそ成し得た究極の面白さであり、既存の文学やエンターテインメントの枠組みを飛び越えた要素として各方面から拍手喝采を浴びた。
    • 小説などの媒体であれば、探偵役が最終的に事件を解決してハッピーエンドに辿り着くのが基本のフォーマットであるが、本作には推理の失敗や判断ミスがそのまま凄惨な死へと直結するバッドエンドが膨大に用意されている。推理物において探偵側が完全な大敗北を喫し、生存者が全滅していくような絶望的な失敗エンドの過程をまざまざと見せつけられるという、これまでにない異色でオリジナリティ溢れる描写の数々は、プレイヤーにとって唯一無二の鮮烈な体験となった。
  • 失敗が招く極限の焦燥感とサバイバルホラーへの変貌
    • メインとなるシナリオは連続殺人事件の謎を紐解く本格的な本格ミステリーがテーマとなっているものの、プレイヤーが推理に失敗したり選択を誤ったりするたびに、ペンション内の状況は加速度的に最悪の方向へと悪化していき、物語は徐々に血生臭いサバイバルホラーとしての様相を色濃くしていく。
    • 猛烈な吹雪によって外界から完全に遮断され、電話線も切られて救助を呼ぶこともできない閉鎖空間の中、目に見えない殺人鬼と一つ屋根の下でいつ襲われるかもわからない夜を過ごさなければならないという極限のシチュエーションは、プレイヤーの心理的な恐怖や不気味さをこれ以上ないほど強烈に煽り立てる。そのため、本作をミステリーとしてではなく、一級品のホラーゲームとして記憶しているプレイヤーも決して少なくない。
    • 館の中の人間たちが疑心暗鬼に陥りながら次々と惨殺されていく、通称サバイバルゲームルートへと突入してしまった場合、プレイヤーは自分自身と最愛のヒロインの命を守り抜くために、一歩一歩を極めて慎重に行動していかなければならない。
    • 分岐の先には、無惨に命を落とすことになる悲劇的な死亡バッドエンドが地雷のように大量に埋め込まれているが、この破滅的な状況に追い込まれてからであっても、残されたわずかな手がかりを繋ぎ合わせることで、誰がすべての糸を引いていた犯人なのかを土壇場で突き止めるルートは残されている。
    • もちろん、大勢の犠牲者を出してしまった時点で状況としては最悪の結末を迎えていることに変わりはないのだが、その絶望の淵でなんとか真犯人の正体にたどり着くことができれば、主人公とヒロイン、そして生き残ったわずかな生存者だけは一応の生還を果たすことができる。
    • 前作の弟切草と同様に、ドット絵の解像度や当時のハードによる限られたビジュアル表現力でありながら、緻密な音響効果と卓越したテキストの力によってプレイヤー側の脳内の想像力を極限まで掻き立てる演出技法は見事というほかなく、視覚的なグロテスクさに頼ることなく本能的な恐怖と緊張感を植え付ける傑作として今なお燦然と輝いている。
  • 暗鬱な恐怖を中和する絶妙なギャグ描写と多面的なサブシナリオの構造
    • 凄惨な連続殺人という非常に重苦しいテーマを扱いながらも、作中には思わず吹き出してしまうようなコミカルでユーモラスなギャグ文章が数多く散りばめられており、単なる暗さ一辺倒には陥らない多面的な作風が作品のエンターテインメントとしての幅を大きく広げている。
    • 一見すると物語の緊張感を削ぎかねないふざけた描写や突拍子もないテキストを、プレイヤー自身が能動的に選ぶ「選択肢の選択結果」としてシステム的に内包させることにより、メインシナリオの持つおどろおどろしい空気感を壊すことなく、大人の鑑賞に堪えうる適度なブレンドバランスを生み出すことに成功している。
    • 本編クリア後に解禁される膨大なサブシナリオの数々の中には、徹頭徹尾ユーザーを笑わせることに特化した純粋なギャグや他作品のオマージュを盛り込んだパロディシナリオが存在する。
    • その一方で、単なるおふざけのB級ギャグ展開かと思わせて油断させておきながら、読み進めるうちに徐々に様子がおかしくなり、最終的には背筋が凍りつくような本気のホラー要素や狂気が牙を剥くといった、サウンドノベルの特性を悪魔的に活かした予測不能な構造のギミックも仕込まれており、プレイヤーを飽きさせない。
  • 聴覚と五感に訴えかけるホラー演出の極致とプレイヤーへの当事者意識の付与
    • 本作における恐怖や緊張感を極限まで高めるための演出技法は、当時のゲームの常識を遥かに凌駕するほど秀逸に作り込まれている。
    • 視覚的な情報を制限する代わりに、静まり返った雪山のペンションを震わせる猛吹雪の風の音、静寂を破って暗闇に響き渡る階段のきしむ音、誰もいないはずの部屋から漂う異様な静けさなど、細部にわたる環境音のリアルな描写がプレイヤーの五感を刺激する。これらの一連の緻密な演出により、プレイヤーはまるで自分自身が冷徹な推理小説の紙面の世界へとそのまま強制的に引きずり込まれ、拉致されたかのような錯覚に陥ることになる。
    • さらに、テレビドラマや映画といった既存の映像メディアと決定的に一線を画しているのは、モニターの前にいるプレイヤー自身が「物語の結末を左右する生身の登場人物」としてその場に立たされているという圧倒的な当事者意識である。
    • 画面に表示される何気ない一言の選択ミスや一瞬の判断の狂いが、そのまま自分自身や大切なパートナーの命取りとなる絶対的な危機感が常に付きまとっており、このインタラクティブな恐怖体験は、当時としては全く新しい斬新なデジタルエンターテインメントの形として社会現象を巻き起こした。
  • 音楽
    • 本作はBGMだけでなく、物語の臨場感を左右する効果音(SE)の使い方とタイミングが極めて的確に計算されている。
    • 鼓膜を突き刺すような女性の突発的な悲鳴、深夜に不気味に鳴り響くインターホンの音、窓を打ち付ける吹雪の轟音、そして誰が叩いているのかわからない重々しいドアへのノック音など、音の強弱によってプレイヤーの心理的な不安を自在にコントロールしている。
    • 劇中を彩るBGMの構成も非常に劇的であり、物語の序盤においては楽しい冬のスキーリゾートや若者たちの穏やかなバカンスを連想させる軽快で優しいメロディが流れるが、ひとたび最初の殺人事件が発生して以降は、一転して人間の猜疑心、恐怖、焦燥感を極限まで煽り立てる重厚で不気味なサウンドへと切り替わり、プレイヤーを底なしの泥沼へと引き込んでいく。
    • 特に事件発生以降に流れるいくつかの象徴的な恐怖曲は、その汎用性の高さと圧倒的な緊迫感ゆえに、後年の実際のテレビ番組の報道ドキュメンタリーやワイドショーの事件再現VTRなどのBGMとしてしばしばサンプリングされて使用されており、ゲーム自体を直接プレイしたことがないライト層であっても、人生で一度は必ず耳にしたことがあると言われるほどの絶大な知名度と影響力を誇っている。
    • もちろんおどろおどろしい楽曲だけでなく、劇中の音楽のバリエーションは非常に豊かに用意されており、コテコテの演歌調でコミカルにキャラクター性を表現した香山社長の専用テーマ曲を筆頭に、前述した多種多様な隠しシナリオのそれぞれに対しても、その世界観や突飛な雰囲気に完璧にマッチした専用の音楽が贅沢に用意されており、作品の芸術的な完成度を底上げしている。


論争点

  • サブシナリオとミステリー編の完成度
    • 本編をクリアした後に解放される多彩なサブシナリオの数々は、メインであるミステリー編の重厚なシナリオ構成や圧倒的なボリュームと比較すると総じてコンパクトに抑えられており、位置付けとしてはバラエティ要素やオマケの側面に留まっている。
    • 推理の面白さが残る暗号編や、振り切ったコミカルさを楽しめる各種ギャグシナリオは独自の存在感を放っているものの、ストーリー主導のスパイ編や悪霊編などに関しては選択肢によるルート分岐の幅もかなり狭く設計されており、ミステリー編ほどの純粋なゲーム的な奥深さや緊迫感という点ではどうしても見劣りしてしまう。
    • ただし、これはオマケ要素としての限界というよりも、本編であるミステリー編が精緻な伏線回収を含めてそれだけ圧倒的な魅力と完成度を誇っていたことの裏返しであり、本編のクオリティが突出していたからこその格差であると言える。
    • また、これらの派生シナリオは本編を一度最後まで遊び尽くしたプレイヤー向けに提供されているという構造上、それまでの物語を通じて深く感情移入し、性格や特徴を見知ったはずの馴染み深い登場人物たちが、全く異なる世界線の突飛な設定や役割で登場するという一種のメタ的なギャップをエンターテインメントとして贅沢に楽しめる仕組みになっている。
  • 隠しシナリオ出現条件の難易度
    • 物語の終盤に隠されている特定の隠しシナリオを出現させるための条件は、ゲーム内に提示されるヒントが極めて限定的かつ抽象的な手がかりのみに絞られているため、攻略難易度としては非常に高いハードルを誇っている。
    • 一応、作中には直接的な答えではないものの気づきを与えるための細かな伏線が仕込まれており、その隠しシナリオ内で登場した暗号の解法パターンが、実はゲーム内の遥か手前のテキストにも全く同じルールで存在していることを匂わせるような、プレイヤーの観察眼と記憶力を極限まで試すストイックな構成になっている。
    • さらに、ゲームの発売から翌月という絶妙なタイミングでリリースされたメディアミックス展開であるドラマCDの劇中のセリフや演出の中にも、ゲーム内の仕掛けを解き明かすためのさりげない隠しヒントが仕込まれているなど、外部メディアと連動した非常に手の込んだ謎解きが展開されていた。
  • 既成概念を覆す出現ギミックの斬新さと現実を侵食する恐怖
    • この隠しシナリオへ突入するためのシステム的なアプローチは、当時のアドベンチャーゲームや他のデジタル作品の常識には一切類を見ない、極めて独創的かつ大胆なギミックが採用されている。
    • 開発陣の遊び心と技術的なアイディアが存分に詰まった面白い要素であることは間違いないものの、当時のプレイヤーの既成概念をあまりにも超越した斬新すぎる発想であったため、正解の挙動に直面した瞬間にバグやシステムの異常ではないかと本気で戸惑い、驚愕してしまうユーザーが続出した。
    • 苦労の末に辿り着くそのシナリオ自体の内容に関しても、それまでのフィクションの枠組みに収まっていた他の物語とは全く毛色の異なる、プレイヤーが生きている現実の日常と地続きになっているかのようなリアルな怪異・恐怖をテーマに据えた構成が徹底されている。
    • インターネットによる情報共有や攻略サイトの普及がまだ黎明期であった当時の社会環境も手伝って、画面の向こうで起きている出来事がまるで現実の世界でも本当に地の底で起きている怪奇現象であるかのような、プレイヤーの心に本物のトラウマを植え付ける圧倒的な臨場感と純度の高い恐怖を生み出していた。


問題点

ミステリー面のツッコミどころ
+ 犯人の行動についての指摘、ネタバレ要注意
  • 犯人の行動について
    • 冷静に分析してみると、第2の殺人以降における真犯人の一連の行動には論理的な矛盾や不自然な点が目立つ。シナリオのサスペンスとしての勢いやゲーム的な破綻にまで直結しているわけではないものの、ミステリーとしての合理性を突き詰めると多くの疑問符が残る。
    • 特定のエンディングにおいてのみ明かされる犯人の真の動機は、極めて生々しい金銭絡みの物欲である。その大元の計画は、莫大な分け前を欲張って脅迫してきたかつての犯罪の共犯者(第1の被害者)をあらかじめ始末した上で、警察の検問や職務質問による発覚を免れるために宅配便でペンション宛てに発送しておいた大金の到着を現地で何食わぬ顔で待ち、自身はアリバイを完璧に偽装して逃げ切るというものであった。
    • 2人目の犠牲者となったペンションのアルバイトに関しては、最初の犯行現場や証拠を偶然目撃してしまったがゆえに口封じとして殺害されており、ここまでは利害関係として理解できる範疇にある。劇中である人物が指摘する通り、この時点までは「殺す必要性」の生じた人間だけを冷徹に排除しているのであり、それ以上の凶行に及ぶメリットは犯人側には一切存在しないはずであった。
    • しかし、物語が中盤に進み、宿泊客たちによって最有力容疑者の1人が地下室に隔離・監禁される展開を迎えると、真犯人の行動は突如として不可解さを増す。犯人はわざわざ侵入リスクの高い地下室へ密かに忍び込み、その容疑者をわざわざ殺害しているのである。客観的に見れば、そのままその容疑者にすべての罪をなすりつけて沈黙を保っていれば自身への疑いは完全に逸れたはずであり、わざわざ最有力容疑者を殺害して「真犯人は別に存在しますよ」と周囲にアピールするような暴挙に出る合理的な意味が全く存在しない。
    • さらに、その地下室への侵入に必要な鍵を厳重に管理していた人物2人や、もう1人の有力な容疑者までもが当然のように次々と手をかけられていく。その犯行の手口に至っては、自身の脇の下に異物を挟んで圧迫することで一時的に脈拍を消失させるという奇妙な小細工を用い、一度は死んだふりをして主人公たちの目を欺きながら、その監視の隙を突いて器用に3人もの人間を的確に暗殺していくという、あまりにも回りくどく過剰なリスクを背負ったものとなっている。
    • 犯人はペンションの宿泊客たちに対して個人的な怨恨や憎悪を抱いているわけでもなく、犯行が露見しそうになって精神的に錯乱している様子もないにもかかわらず、最終的にはペンション内の人間を全員根絶やしにしようという狂気的な皆殺しの思考に突き進んでいく。
    • 事実、自らの犯行が完全に見破られない限りは、最後まで温厚で理知的な善人の演技を完璧に貫き通しており、正体を暴かれた後ですら取り乱すことなく「大量殺人は自分の趣味ではない」と平然と言い放つ。そのような冷徹なキャラクターが、なぜ未解決ルートにおいて敢えて自らリスクを冒してまで趣味ではないはずの大量虐殺を淡々と遂行したのか、その精神構造の整合性は極めて不透明である。
    • ただし、この「趣味じゃない」という発言の直後には、別の生存者から「それすらも自分の罪を軽く見せるための大嘘ではないか」と看破されており、実際には最初から大量殺人に対して一切の倫理的抵抗を持たない本物のサイコパスであった可能性も十分に考えられる。
    • 犠牲者が次々と増えていく凄惨な未解決ルートの終盤では、犯人は真相を暴かれてもどこか達観したように開き直るだけで、具体的な行動の動機を自ら詳しく語ることはない。さらにその直後、窮地に陥った主人公を救うためにヒロインが背後からやむなく犯人を突き殺してしまうため、未解決ルートにおける彼の一連の異常行動の真意は完全に闇へと葬られてしまう。
    • その一方で、すべてを序盤で完全に見破られた真の解決ルートにおいては「自分は必要のある人間しか手にかけていない」と理路整然と主張し、最終的にも全員をお互いに縛り合わせて身動きを封じ、宅配便が届くまで静かに待つという極めて合理的な軟禁手段を選択しようとするため、ルートの違いによって犯人の人間性と行動原理に極端な乖離が生じている。
    • この一連の矛盾に満ちた暴走劇については、「第2の殺人を犯して口封じをした時点で、すでに当初のスマートな犯罪計画は完全に瓦解していたため、その後の破れかぶれの行動は仕方がなかった」という擁護的な解釈もなされている。しかし、その時点のペンション内には他にも十分に怪しい容疑者が何人も存在していたため、余計な手出しをせずだんまりを決め込んで状況を静観している方が遥かに安全であったことは疑いようがない。
    • あるいは、計画破綻の絶望から精神的に自暴自棄になっていたという仮説も成り立つが、それにしては作中での犯人は恐ろしく冷静沈着であり、機械的な手際の良さで淡々と暗殺を継続しているため、感情的な暴走とも捉えがたい。仮に百歩譲って殺人を継続せざるを得ない何らかの秘密の必要性があったのだとしても、なぜ周囲から一番に疑われていた身代わりの容疑者を真っ先に始末して自ら容疑の目を広げたのかという謎は、どうしても解消されない。
    • そもそも根本的なトリックの前提として、凄惨な連続殺人事件の現場となったペンションに対して、犯行の目的物である莫大な現金が入った宅配便などを本当に予定通り送りつけてしまったら、事件発生によって駆けつけた警察官や捜索差押えの手続きによって真っ先に中身を厳重に検閲・没収されてしまうのではないかという、身も蓋もない現実的な問題点も残る。
    • また、ゲームという媒体の性質上、凄惨な死体が次々と劇的に発見されなければミステリーとしての物語が成立しないというメタ的な都合はあるものの、現実の犯罪心理として考えた場合、わざわざ精緻な時間差トリックを駆使してアリバイを証明しつつ、第1の被害者の遺体を宿泊客たちにわざわざ発見させる必要性自体が薄い。ペンション「シュプール」へ至るまでの雪深い山道や、ルートから完全に外れた広大な原生林、あるいは深い沢の底にでも遺体をあらかじめ遺棄しておけば、吹雪に閉ざされた環境も相まって、警察の本格的な捜索が入るまでの数日間、最悪の場合は春の雪解けの季節を迎えるまで死体が発見されるリスクを極限まで低く抑えられたはずだからである。
    • これについて作中の犯人は「死体を完全に隠蔽して消し去るには多大な労力と時間がかかるし、自分は現在進行形で警察の手から逃亡している身であるため、屋外で自由に不審な動きを取る余裕はなかった」と言い訳の弁を述べているが、なぜ殺害直後の道中の段階で速やかに遺体を処理しなかったのかという根本的な疑問への説明としては極めて苦しい。
    • 動機が暴かれるエンディングにおいて、犯人自身が「相棒には前科があったが、自分自身には警察にマークされるような前科が一切ないため、警察が自分と相棒の隠された接点に自力で気付く可能性は極めて低い」と豪語している点を見ても、死体をわざわざ発見させて自ら騒ぎを大きくするメリットは見当たらない。
    • ちなみに、作中で2人目の犠牲者が発生した直後に提示される特定の選択肢において、あまりにも軽率な行動を選んだ際に突入するギャグ交じりのバッドエンドがあるが、その内容たるや「そんなあからさまな暴挙を皆の前で犯したら、他の一切の推理を挟むまでもなく誰が犯人なのかが一発で全員に露見してしまう」という、犯人の高い知性と冷徹なキャラクター性を完全に無視した極端な描写となっている。
    • 合わせて、ゲーム側がプレイヤーに対して「実は隣にいるヒロインこそがすべての事件の真犯人、あるいは協力者なのではないか」という疑心暗鬼を意図的に植え付けるための演出の都合なのだろうが、作中におけるヒロインの行動もまた、客観的に見ると支離滅裂で不可解な挙動が非常に多い。
    • 深夜、階下の暗闇から不審な物音が聞こえてきた際、同じ部屋のすぐ隣のベッドで就寝しているはずの頼れる主人公をなぜか一切起こそうともせず、か弱い女性の身でありながらたった1人で危険な夜の調査に向かうという無謀な行動を起こす。
    • これが「大好きな主人公を不測の危険やトラブルに巻き込みたくないという彼女なりの健気な配慮だったのか」と思いきや、物語が進行して別の宿泊客が無残に殺害される本物の非常事態が発生すると、今度は一転して「早く下に行って様子を調べて来てよ!」と、恐怖に震えながら主人公を1人きりで危険極まりない殺人現場へと平然と向かわせるなど、その場限りの都合に満ちた矛盾した態度を見せる。
    • さらに、緊迫した連続殺人の真っ只中であり、全員が一箇所に集まって警戒を強めるべき極限の状況下において、客観的には全く今すぐ必要とも思えない私物や荷物を回収するためだけに、周囲の制止を振り切ってわざわざ1人きりで2階の自室へと不用意に戻ろうとするなど、怪しさを演出するためとはいえ、ミステリーの登場人物としてはあまりにも危機感に欠けた不可解なスタンドプレーが目立つ。
+ 犯人の行動についての指摘、ネタバレ要注意
    • 冷静に分析してみると、第2の殺人以降における真犯人の一連の行動には論理的な矛盾や不自然な点が目立つ。シナリオのサスペンスとしての勢いやゲーム的な破綻にまで直結しているわけではないものの、ミステリーとしての合理性を突き詰めると多くの疑問符が残る。
    • 特定のエンディングにおいてのみ明かされる犯人の真の動機は、極めて生々しい金銭絡みの物欲である。その大元の計画は、莫大な分け前を欲張って脅迫してきたかつての犯罪の共犯者である最初の被害者をあらかじめ始末した上で、警察の検問や職務質問による発覚を免れるために宅配便でペンション宛てに発送しておいた大金の到着を現地で何食わぬ顔で待ち、自身はアリバイを完璧に偽装して逃げ切るというものであった。
    • 2人目の犠牲者となったペンションのアルバイトに関しては、最初の犯行現場や証拠を偶然目撃してしまったがゆえに口封じとして殺害されており、ここまでは利害関係として理解できる範疇にある。劇中である人物が指摘する通り、この時点までは殺す必要性の生じた人間だけを冷徹に排除しているのであり、それ以上の凶行に及ぶメリットは犯人側には一切存在しないはずであった。
    • しかし、物語が中盤に進み、宿泊客たちによって最有力容疑者の1人が地下室に隔離・監禁される展開を迎えると、真犯人の行動は突故として不可解さを増す。犯人はわざわざ侵入リスクの高い地下室へ密かに忍び込み、その容疑者をわざわざ殺害しているのである。客観的に見れば、そのままその容疑者にすべての罪をなすりつけて沈黙を保っていれば自身への疑いは完全に逸れたはずであり、わざわざ最有力容疑者を殺害して犯人は別に存在しますよと周囲にアピールするような暴挙に出る合理的な意味が全く存在しない。
    • さらに、その地下室への侵入に必要な鍵を厳重に管理していた人物2人や、もう1人の有力な容疑者までもが当然のように次々と手をかけられていく。その犯行の手口に至っては、自身の脇の下に異物を挟んで圧迫することで一時的に脈拍を消失させるという奇妙な小細工を用い、一度は死んだふりをして主人公たちの目を欺きながら、その監視の隙を突いて器用に3人もの人間を的確に暗殺していくという、あまりにも回りくどく過剰なリスクを背負ったものとなっている。そこまでして死体を演じて周囲を欺き、隙を見て3人を殺害していくプロセスは、あまりにもまわりくどく不自然と言ざるを得ない。
    • 犯人はペンションの宿泊客たちに対して個人的な怨恨や憎悪を抱いているわけでもなく、犯行が露見しそうになって精神的に錯乱している様子もないにもかかわらず、最終的にはペンション内の人間を全員根絶やしにしようという狂気的な皆殺しの思考に突き進んでいく。
    • 事実、自らの犯行が完全に見破られない限りは、最後まで温厚で理知的な善人の演技を完璧に貫き通しており、正体を暴かれた後ですら取り乱すことなく大量殺人は自分の趣味ではないと平然と言い放つ。そのような冷徹なキャラクターが、なぜ未解決ルートにおいて敢えて自らリスクを冒してまで趣味ではないはずの大量虐殺を淡々と遂行したのか、その精神構造の整合性は極めて不透明である。
    • ただし、この趣味じゃないという発言の直後には、別の生存者からそれすらも自分の罪を軽く見せるための大嘘ではないかと看破されており、実際には最初から大量殺人に対して一切の倫理的抵抗を持たない本物のサイコパスであった可能性も十分に考えられる。
    • 犠牲者が次々と増えていく凄惨な未解決ルートの終盤では、犯人は真相を暴かれてもどこか達観したように開き直るだけで、具体的な行動の動機を自ら詳しく語ることはない。さらにその直後、窮地に陥った主人公を救うためにヒロインが背後からやむなく犯人を突き殺してしまうため、未解決ルートにおける彼の一連の異常行動の真意は完全に闇へと葬られてしまう。
    • その一方で、すべてを序盤で完全に見破られた真の解決ルートにおいては自分は必要のある人間しか手にかけていないと理路整然と主張し、最終的にも全員をお互いに縛り合わせて身動きを封じ、宅配便が届くまで静かに待つという極めて合理的な軟禁手段を選択しようとするため、ルートの違いによって犯人の人間性と行動原理に極端な乖離が生じている。
    • この一連の矛盾に満ちた暴走劇については、第2の殺人を犯して口封じをした時点で、すでに当初のスマートな犯罪計画は完全に瓦解していたため、その後の破れかぶれの行動は仕方がなかったという擁護的な解釈もなされている。しかし、その時点のペンション内には他にも十分に怪しい容疑者が何人も存在していたため、余計な手出しをせずだんまりを決め込んで状況を静観している方が遥かに安全であったことは疑いようがない。
    • あるいは、計画破綻の絶望から精神的に自暴自棄になっていたという仮説も成り立つが、それにしては作中での犯人は恐ろしく冷静沈着であり、機械的な手際の良さで淡々と暗殺を継続しているため、感情的な暴走とも捉えがたい。仮に百歩譲って殺人を継続せざるを得ない何らかの秘密の必要性があったのだとしても、なぜ周囲から一番に疑われていた身代わりの容疑者を真っ先に始末して自ら容疑の目を広げたのかという謎は、どうしても解消されない。
    • そもそも根本的なトリックの前提として、凄惨な連続殺人事件の現場となったペンションに対して、犯行の目的物である莫大な現金が入った宅配便などを本当に予定通り送りつけてしまったら、事件発生によって駆けつけた警察官や捜索差押えの手続きによって真っ先に中身を厳重に検閲・没収されてしまうのではないかという、身も蓋もない現実的な問題点も残る。
    • また、ゲームという媒体の性質上、凄惨な死体が次々と劇的に発見されなければミステリーとしての物語が成立しないというメタ的な都合はあるものの、現実の犯罪心理として考えた場合、わざわざ精緻な時間差トリックを駆使してアリバイを証明しつつ、最初の被害者の遺体を宿泊客たちにわざわざ発見させる必要性自体が薄い。ペンションの舞台となる建物までの雪深い山道や、ルートから完全に外れた広大な原生林、あるいは深い沢の底にでも遺体をあらかじめ遺棄しておけば、吹雪に閉ざされた環境も相まって、警察の本格的な捜索が入るまでの数日間、最悪の場合は春の雪解けの季節を迎えるまで死体が発見されるリスクを極限まで低く抑えられたはずだからである。
    • これについて作中の犯人は死体を完全に隠蔽して消し去るには多大な労力と時間がかかるし、自分は現在進行形で警察の手から逃亡している身であるため、屋外で自由に不審な動きを取る余裕はなかったと言い訳の弁を述べているが、なぜ殺害直後の道中の段階で速やかに遺体を処理しなかったのかという根本的な疑問への説明としては極めて苦しい。
    • 動機が暴かれるエンディングにおいて、犯人自身が相棒には前科があったが、自分自身には警察にマークされるような前科が一切ないため、警察が自分と相棒の隠された接点に自力で気付く可能性は極めて低いと豪語している点を見ても、死体をわざわざ発見させて自ら騒ぎを大きくするメリットは見当たらない。
    • ちなみに、作中で2人目の犠牲者が発生した直後に提示される特定の選択肢において、あまりにも軽率な行動を選んだ際に突入するギャグ交じりのバッドエンドがあるが、その内容たるやそんなあからさまな暴挙を皆の前で犯したら、他の一切の推理を挟むまでもなく誰が犯人なのかが一発で全員に露見してしまうという、犯人の高い知性と冷徹なキャラクター性を完全に無視した極端な描写となっている。
    • 合わせて、ゲーム側がプレイヤーに対して実は隣にいるヒロインこそがすべての事件の真犯人、あるいは協力者なのではないかという疑心暗鬼を意図的に植え付けるための演出の都合なのだろうが、作中におけるヒロインの行動もまた、客観的に見ると支離滅裂で不可解な挙動が非常に多い。
    • 深夜、階下の暗闇から不審な物音が聞こえてきた際、同じ部屋のすぐ隣のベッドで就寝しているはずの頼れる主人公をなぜか一切起こそうともせず、か弱い女性の身でありながらたった1人で危険な夜の調査に向かうという無謀な行動を起こす。
    • これが大好きな主人公を不測の危険やトラブルに巻き込みたくないという彼女なりの健気な配慮だったのかと思いきや、物語が進行して別の宿泊客無残に殺害される本物の非常事態が発生すると、今度は一転して早く下に行って様子を調べて来てよ!と、恐怖に震えながら主人公を1人きりで危険極まりない殺人現場へと平然と向かわせるなど、その場限りの都合に満ちた矛盾した態度を見せる。
    • さらに、緊迫した連続殺人の真っ只中であり、全員が一箇所に集まって警戒を強めるべき極限の状況下において、客観的には全く今すぐ必要とも思えない私物や荷物を回収するためだけに、周囲の制止を振り切ってわざわざ1人きりで2階の自室へと不用意に戻ろうとするなど、怪しさを演出するためとはいえ、ミステリーの登場人物としてはあまりにも危機感に欠けた不可解なスタンドプレイが目立つ。

+ 2人目の犠牲者が出た直後のバッドエンドの問題点について、中程度のネタバレ注意
  • 2人目の犠牲者が発生した直後、特定の選択肢を選んだ際に突入するバッドエンドの描写には、ミステリーとしての整合性を著しく欠く問題点が指摘されている。普通に進めると提示される二者択一のうち、片方を選ぶとそのままバッドエンドへ直行するのだが、その内容たるや現場を調べに行く主人公とヒロインにある人物が同行する流れになり、ヒロインとその人物がなぜか部屋に入って来ず、先に部屋の中に入っていた主人公が異変を感じて廊下へ戻ったところを背後から襲われるというものである。
    • もう一方の正解の選択肢を選んだルートでは特に襲われることもなく捜査が続行される展開になるため、テキスト中で明言こそされないものの、状況証拠から襲撃を実行できた容疑者がその同行者にほぼ確定してしまう。こうなるともはや精緻な推理を挟む余地すらなく、公式ファンブックでもこの選択肢について間違った選択をすれば犯人の見当は付くだろうと明確に記述されている。
    • これが物語の終盤であればまだしも、2人目の犠牲者が出たばかりのかなり早い段階で発生する上に、二択という極めて容易な条件で到達してしまう。さらに言えば、直前の緊迫した状況や心理的な誘導から、初見のプレイヤーが意図せずそのアウトな選択肢を選んでしまう可能性も高い。
    • ただし、本作の仕様として、序盤はトリック自体の全貌が分からなければ最終的な犯人当てパートまで辿りつけない構造になっているため、あらかじめ誰が犯人なのかの目星をわざとプレイヤーに付けさせるための強引な救済措置、あるいはヒントとして機能していたとも考えられる。
    • 展開があまりにも露骨であからさますぎることや、このパートの直前までの主人公の推理では該当の人物には強固なアリバイがあり、殺人を起こすのは物理的に不可能な状態に見える上に、それが同行者に選ばれた理由でもある。さらに、廊下に出る直前に主人公自身が、いやそんなはずはない、仮に同行者が犯人だとしてもヒロインを襲う必要がないはずだと犯行を否定する思考を巡らせているため、同行者が犯人というストレートな仮説をあえて除外し、実は犯人の真の狙いはその同行者の方だったのではないか、あるいは同行者とヒロインも先に別室で殺害されてしまったのではないかという、メタ的な深読みやミスリードを誘う状況としても一応は成立していた。

  • トゥルーエンドが胸糞悪い
    • トゥルーエンドは犯人が捕まるが、一人が自殺するというオチ
    • 一応全員生還ルートがあるが、これは真相が不明のまま終わる。


  • プレイヤー自身が犯人の正体とトリックを完全に理解していれば、あとはそれをゲーム内の主人公に発言させるよう選択肢で誘導するだけなのだが、一見すると突拍子もない突飛なセリフから解決への展開がスタートするため、真相に気づいていても正解のルートへ導くのが難しいというゲームデザイン上の難点がある。
    • もっとも、これは推理の難易度をあえて引き上げるための巧妙なトラップとしても機能しており、プレイヤーの知識と主人公の行動を必ずしも直結させないサウンドノベルならではの表現技法でもあるため、一概に単なる不親切なシステム上の問題点として片付けられるものではない。
  • 利便性を欠くリトライ仕様とイベントスキップ機能の不在
    • 本作におけるリトライ地点の選択は章ごとにしか指定できないため、特定の選択肢を選び直して異なる展開を確認したい場合、該当する章の冒頭まで大きく巻き戻り、そこから地道にテキストを読み直していかなければならないという煩わしさがある。
    • さらに、既読の文章を高速で処理するための早送り(スキップ)機能すら搭載されていないため、目的の分岐点に到達するまではひたすら決定ボタンを連打し続ける必要があり、快適な周回プレイを著しく阻害している。
    • 黎明期におけるサウンドノベルというジャンル自体が未成熟であったことや、当時のハードウェアの制約・時代背景を鑑みれば致し方ない側面もあるものの、現代の基準から見るとユーザーインターフェースやシステム面での不便さが目立つ。ただし、後年にリリースされた各種移植版においては、フローチャート機能をはじめとする多彩な便利機能が追加され、この問題は大幅に解消されてプレイしやすくなっている。
  • ピンクのしおり
    • ゲーム内の特定のやり込み条件を満たすことで出現するピンクのしおりを一度達成してしまうと、そのデータにおいては以降、主人公とヒロインの名前を二度と変更できなくなってしまうという不可解な仕様が存在する。
    • しおりが出現するまでの段階であれば名前変更は何度でも自由に行えるため、うっかり冗談半分で設定した変な名前のまま条件を満たしてしまうと、完全にその状態で固定されてしまい元に戻せなくなる。どうしても名前を変えたい場合は、全ての進行状況を諦めて完全に最初から新規データでやり直すほか手段がない。
    • ストーリーの演出やギミックにおいて、ピンクのしおり到達後に名前の変更を不可能にしなければならない必然性は全く見当たらず、プレイヤー側に対して一方的に不便を強いるだけの不親切な仕様となっており、システム側からの事前の警告やアナウンスなども一切存在しない。
    • この制限の意図については、発売当時にピンクのしおりを出現させた画面写真を撮影してチュンソフトへ郵送すると、先着3000名に限定オリジナルドラマCDである「ちょっとエッチなかまいたちの夜」がプレゼントされるという早解きキャンペーンが実施されていた背景が関係している。一人のユーザーが主人公とヒロインの名前だけをその都度書き換え、あたかも別人の応募データ(別の応募者)であるかのように偽装して複数回応募する不正行為を物理的に防止するための、当時の苦肉の策としてのセキュリティ対策であった可能性が極めて高い。なお、後年の移植版においてはこのような物理的な懸念がなくなったため、ピンクのしおり到達後であっても制限なく自由に名前を変更できるよう改善されている。
  • 金のしおり
    • ゲーム完全コンプリートの絶対的な証として君臨する金のしおりの出現条件は、ゲーム内に存在するすべてのテキストを完全に閲覧するという、想像を絶するほどに過酷で徹底的な網羅を要求される。
    • この条件を満たすためには、用意されたすべての選択肢を漏れなく選び尽くすことはもちろん、中盤の犯人入力パートにおいて想定されるすべての名前パターンや不正解の入力を一通り網羅しなければならない。
    • 膨大な労力を費やしてこの困難な偉業を達成したとしても、ゲーム内において得られる恩恵はしおりの色が金色へと変化する視覚的な演出のみであり、完全新規の隠しシナリオや特別なシステム特典が解放されるわけではなく、実質的には当時開催されていた公式キャンペーンへの応募資格を得るためだけの要素であった。
    • そのキャンペーン内容も、金のしおりに到達した画面写真を撮影して応募すると、先着50名に本作の舞台およびモデルとなった実在のペンション「クヌルプ」のペア宿泊券がプレゼントされるという破格の催しであったが、条件の厳しさに加え、当時はインターネットによる情報共有や攻略コミュニティがほとんど普及していなかった過酷な情報環境も手伝って、自力で達成できたプレイヤーは極めて稀であった。結果として、わずか50名の定員枠がすべて埋まるまでに、ゲームの発売から数えて7ヶ月以上もの膨大な時間を要したという記録が残されている。
    • そもそも、この極限の網羅条件に挑む前段階として、出現させること自体が最難関である前述の隠しシナリオを自力で解禁していなければならない点も難易度を跳ね上げている。ゲームクリア後に実質的なゲーム内報酬が一切用意されていない点から推察しても、本作のすべてを極限まで遊び尽くし、あらゆる惨劇と可能性を見届けてくれた熱狂的なプレイヤーの熱意を最大級に称えるための、一種の栄誉あるオマケ要素として配置されていたと捉えるのが自然である。この金のしおりの条件に関しても、プレイステーション版以降のリメイク作では達成条件が大幅に緩和された上で、ゲーム内のコレクション要素や別の豪華な連動特典が用意される形へと刷新された。

総評

  • プレイヤー自身が紡ぎ出す推理の成果によって、単に目前の事件が論理的に解決するだけでなく、物語全体のプロットや世界線の展開そのものが根本からダイナミックに変貌を遂げていくという、極めて斬新な発想と非の打ち所がない完成度を誇る構成力は各方面から不朽の賛辞を浴び続けており、発売から長い年月を経た今なお、推理アドベンチャーゲームの歴史的頂点に立つ大傑作としてその名を轟かせている。
    • プレイヤーはゲームという媒体を通じて、物語上の全く同じ時間を何度も繰り返し行き来し、異なる選択肢を選んでは新たな手がかりや断片的な情報を収集し、それらをパズルのように繋ぎ合わせることで惨劇の回避を目指すこととなる。この体験は、プレイヤー自身がさながら時間跳躍を繰り返す「ループもの」フィクションの主人公として運命に立ち向かっているかのような、強烈な没入感と冒険の興奮を提供する。
    • 幾度となく残虐なバッドエンドの絶望を味わい、大切な人々が命を落としていく惨劇を何度も五感に焼き付けられた末、自らの知略と試行錯誤によってようやく一人の犠牲者も出さない完璧なグッドエンドへと辿り着いた瞬間のカタルシスと達成感は、あらかじめ用意された一本道の結末をただ受動的に読み進めるだけの推理小説では絶対に味わうことができない。これこそが、受け手の選択が世界を変えるインタラクティブなメディアだからこそ成し得た唯一無二の感動であり、本作が不朽の名作とされる本質である。

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最終更新:2026年08月18日 17:18

*1 バーチャルコンソールで付与されたレーティングを記載。