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ZERO ESCAPE 刻のジレンマ

【ぜろえすけーぷ ときのじれんま】

ジャンル 極限脱出アドベンチャー
対応機種 ニンテンドー3DS / PlayStation Vita / PlayStation 4 / Windows(Steam)
発売元 スパイク・チュンソフト
開発元 チャイム
発売日 【3DS/PSV/Steam】2016年6月30日&br;【PS4】2017年8月17日
定価 【3DS/PSV】5,800円(税別)&br;【PS4】3,800円(税別)&br;【Steam】5,638円→4,104円→2,190円(税込)
レーティング CERO:D(17歳以上対象)
判定 良作
ポイント シリーズを締め括る最終章&br;「究極の選択」を強いるデスゲーム
極限脱出シリーズ &br;9時間9人9の扉 /善人シボウデス / 刻のジレンマ





概要

緊迫したサスペンスと複雑に絡み合う人間ドラマ、そして脱出パズルを融合させた『極限脱出』シリーズの完結編。
前作『極限脱出ADV 善人シボウデス』の衝撃的な幕切れから4年の歳月を経て制作された本作は、三部作の集大成として位置づけられている。
シナリオ執筆およびディレクションは、全シリーズを通して打越鋼太郎氏が継続して担当。一方で、視覚的な印象を左右するキャラクターデザインは、これまでの西村キヌ氏から友野るい氏へとバトンタッチされた。

物語の構造も変化しており、単一の主人公視点で時系列を追った前作までとは対照的に、今作では登場人物が3つのチームに分断され、それぞれの視点から同時並行で脱出を目指す群像劇スタイルの演出が採られている。

また、国内タイトルから「極限脱出」の冠が外され、海外展開時の名称である「Zero Escape」へと統合された。これに伴い、演出面やビジュアル表現においても、従来以上にグローバルな市場を意識したハードな作風が強調されている。


ストーリー

すべての惨劇の起点となる「X-Day」。致死性のウイルス「ラジカル6」が拡散し、全人類のうち60億人の命が失われることが確定した日。
2028年12月31日、ネバダ砂漠。
実験施設「Dcom」での閉鎖環境テストが開始されてから6日目を迎えていた。
その日、施設で共同生活を送っていた被験者を含む9名の男女は、意識を取り戻すと冷淡な監禁室の中にいた。
各々の手首には、不気味に輝くバングル。
困惑する彼らの前に、仮面で素顔を隠した謎の怪人が姿を現す。
「ある日、道端に偶然一匹のカタツムリがいた。ただそれだけの理由で、一人の女性が命を落とした。人生とはかくも不条理なものだ……そうは思わないか?」
自らを 「第二のゼロ」 と称するその人物は告げる。
「諸君には今からDecisionゲームを遂行してもらう。これは君たちの、私自身の、そして全人類の命運を懸けた試練だ」
「Decision(決断)」という言葉が意味する真の恐怖とは何か?
3つの区画に隔絶された状態で進行するデスゲームの結末は?
絶望の淵で生き残るのはどのチームか。
そしてゼロが口にした「人類の存亡」の真意とは。
今、凄惨な悪夢の幕が上がる。

世界観・用語

  • ''ディシジョンゲーム(Decision Game)''
    • 謎の人物「ゼロ」によって強要される、命懸けのゲーム。地下に建設された巨大な核シェルターからの生還を目指す。
    • 9人の参加者は3名ずつのユニットに隔離される。Cチーム(カルロス・淳平・茜)、Qチーム(Q・ミラ・エリック)、Dチーム(ダイアナ・シグマ・ファイ)の3組だ。シェルター内部はC・D・Qの3つの独立した区画に分断されており、参加者は自分たちの区画外へ移動することは許されない。
      • シナリオの主観人物は、Cチームがカルロス、QチームがQ、Dチームがダイアナ。プレイヤーはこの3人の視点を切り替えながら、断片的な物語を読み解いていく。
    • 地上への唯一の出口は、各区画のラウンジから繋がるエレベーターホールの先にある「Xドア」のみ。
    • この重厚な扉を解錠するには、計6個のパスコードが必要となる。パスコードは「参加者が1名死亡するごと」に1つずつ開示される。つまり、自分たちのチームが助かるためには、最低でも他チームの6名が犠牲にならなければならない。
    • 過去作に登場したノナリーゲームのような数字合わせや複雑な競技ルールは排されている。基本的なルールは「90分ごとに記憶がリセットされること」と「6人の死によって脱出の鍵が得られること」の2点のみ。
      • しかし、各区画内には殺傷能力の高いトラップや巧妙なギミックが多数配置されており、参加者たちは常に生命の危機に直面しながら、理不尽な「決断」を突きつけられることとなる。

  • バングル
    • 参加者の腕に強制的に固定されたリストバンド。起動から90分が経過するたびに、装置から強力な麻酔薬と記憶消去薬が注入される仕組み。このため、参加者は直前の行動や体験を保持することができない。ただし、ゼロの気まぐれにより投与が免除される例外も存在する。また、側面のボタンを押すことで現在時刻の確認が可能。



システム

  • クエストパート
    • シリーズ伝統の脱出パート。シェルター内の各種施設を徹底的に探索し、各所に仕掛けられた高度な謎や物理パズルを解き明かしていく。
    • 今作では上下左右の全方位にギミックが配置されており、前作と比較してもパズルの難易度は全体的に底上げされている。

  • シネマパート
    • 本作における物語描写の核となるパート。静止画主体のノベル形式から、フルボイスの3Dムービーによる劇的な演出へと進化。映画的なカット割りと臨場感あふれる演技によって、緊迫したドラマが展開される。

  • ディシジョンパート
    • 今作のデスゲームを象徴する究極の選択。ゼロから提示される非人道的な二者択一や、極限状態での仲間との対立など、その内容は多岐にわたる。ここで下した決断は後の展開を劇的に変容させるため、一瞬の油断も許されない重い選択が求められる。
    • 最善と思える選択が破滅を招いたり、逆に非情な決断が道を開いたりと、単純な善悪の基準では測れない、ジレンマに満ちた選択肢がプレイヤーを翻弄する。

  • フローティング・フラグメント・システム
    • 本作独自の物語構造。時系列がシャッフルされた「物語の断片(フラグメント)」の中から、任意のものを選択してプレイを進めていく。
    • 断片をクリアするごとに新たなエピソードが解放され、バラバラだったピースが繋がることで世界の全貌が浮かび上がる。特定の箇所で進行が滞った場合でも、別のチームの視点に切り替えることで、物語の背景を補完する新たなヒントが得られることもある。また、読了したエピソードは「グローバルフローチャート」上で時系列順に整理されていく。

  • Quest-FILE
    • 脱出パートの探索中に発見できるデータ群。主に謎解きをサポートするヒントや、パズルの補足情報が記載されている。

  • Cinema-FILE
    • ムービーパートで語られる設定や専門用語、固有のキーワードを詳細に解説してくれるデータベース。

評価点

歯ごたえのある脱出ゲームの難易度
  • 今作においても、多彩なギミックやミニゲーム形式のパズルが豊富に盛り込まれている。好評を博した前作のバランスを継承し、全体の難度は「平易すぎず、かつ不条理でもない」という適切な水準を保っている。
    • 画一的な脱出プロセスが多かった過去作とは異なり、解法のバリエーションが拡充された。二人の人物の視点を切り替えて攻略するシチュエーションなど、プレイヤーを飽きさせない工夫が随所に見られる。
      • これまでの脱出パートは、物語を進めるためのノルマや余興といった側面が強く、シナリオ上の必然性は希薄だった。しかし、今作の脱出パートはすべてストーリーの流れに密接に組み込まれており、謎を解くことがそのまま物語を解明するモチベーションへと直結している。
    • 施設内のあらゆる箇所を精査し、断片的な情報を繋ぎ合わせて一本の真実を導き出すクエストパートは、正統派の謎解きとしての醍醐味に溢れている。プレイヤーの洞察力や推理力がダイレクトに試されるシステムであり、難局を突破した際の達成感は極めて大きい。
    • 前作までは打越氏がパズルデザインも一手に引き受けていたが、今作では新たに二名の専用パズルデザイナーが参画。その結果、謎解きのバリエーションがより豊かになっている。
    • 本作の象徴的で意味深なパッケージイラストは、実は特定の脱出パートにおける一場面を描いたものである。忘れた頃にその光景に遭遇する演出は、プレイヤーに鮮烈な驚きを与える。

シナリオ面
  • 先を読ませない吸引力のある物語
    • 時間、空間、歴史が複雑に交錯する物語は、無数の謎に満ち溢れている。過去作同様、伏線の配置はテキスト表現に留まらず、ゲームの構成要素そのものを活用したダイナミックな手法が採られている。
    • 物語の進展に合わせてそれらが次々と氷解していくカタルシスと、明かされる真相の意外性は、プレイヤーを強く物語に引き込む。
    • 閉鎖環境でのデスゲームが生み出す、圧倒的な臨場感を伴った人間ドラマも健在である。
    • 追い詰められた状況下で、ある者は復讐に駆られ、ある者は絶望のあまり自暴自棄に陥る。しかし、そうした極限状態だからこそ芽生える信頼や愛情も描かれる。絶望の中に光る人間性の機微こそが、本作の大きな魅力となっている。

  • システムと設定の高度な融合
    • 「フローティング・フラグメント・システム」によって断片的に語られるエピソード群は、その形式自体が巨大な伏線として機能しており、作品の世界観と見事に合致している。
    • 「なぜこのシステムでなければならなかったのか」「なぜこの状況に置かれているのか」という根本的な疑問すらもが謎解きの一部となっており、知的好奇心を刺激する。
    • 特定のルートではパスワードが不明で立ち往生するものの、別の断片をプレイすることでその情報を入手できるといった構造になっており、ゲーム全体が巨大なパズルのように構成されている。

  • 過去作の伏線回収
    • 過去作、特に前作において未解決のまま残されていた数多くの謎に対し、今作では明確な解答が提示される。物語はシリーズの集大成としての大団円を迎えることとなる。
      • 前作の結末に納得がいかず、長らく「現実世界でのシナリオロック」状態にあったファンにとって、本作はようやくその閉塞感を打ち破る待望の作品といえる。物語がどのような終着点を見せるのか、その全貌はぜひ自らのプレイで確かめてほしい。

  • 哲学・数学・心理学的な考察要素
    • 「スワンプマン」「眠り姫問題」「モンティ・ホール問題」といった、哲学や心理学の論題をシナリオに織り交ぜる手法は今作でも健在。打越氏が得意とするこれらの要素は、トリックの独創性と相まって物語に深い知的な奥行きを与えている。某有名SF映画を引用した時間遡行に関する考察なども興味深い。

  • 探索中の雑談要素の拡充
    • 脱出パートにおけるキャラクター同士の掛け合いが復活。淳平と茜によるコミカルなやり取りをはじめ、重苦しい本編における絶妙な清涼剤となっている。
    • 前作では低難易度モードでしか聞けなかった要素だが、今作では条件を気にせず、キャラクターの個性を楽しみながら謎解きに没入できる。

キャラクター
  • 『999』から淳平と茜、『善デス』からファイとシグマが再登場。歴代のメインキャラクターが一堂に会する豪華なキャスティングは、完結編に相応しいものとして発売前から大きな反響を呼んだ。前作から持ち越された因縁や伏線の回収も、ファンにとって最大の目玉である。
  • 新キャラクターであるダイアナ、Q、カルロスらも、旧来のメンバーに劣らぬ強烈な個性を放っており、彼ら自身も物語の核心に深く関わっている。
  • シネマパートでは各人の意外な過去や秘められた一面に光が当てられており、ドラマとしての密度が非常に高い。
  • 新規のキャスト陣も杉田智和氏、石田彰氏、坂本真綾氏といった、実力・知名度ともに抜群の人気声優が揃っている。迫真の演技が、極限状態の人間模様をより一層ドラマチックに演出する。
    • 後にボイスが追加された『999』移植版における淳平と茜の声は、今作のキャスティングが基準となっている。
    • 能登麻美子氏がダイアナ役として前作から続投している点には、物語上の重要な必然性が隠されている。

グラフィック
  • 3Dモデルのクオリティ向上
    • 前作で不評だった3Dモデルの粗さが劇的に改善された。特にファイのモデリングは刷新され、ファンからも高い評価を得ている。
    • シネマパートではキャラクターたちが生き生きと動き、語り合うため、まるで海外のサスペンスドラマを鑑賞しているかのような没入感を味わえる。

システム面
  • フローチャート機能
    • 時空間を激しく往来し、複数のチームや場面を使い分ける構成だが、洗練されたフローチャートの存在により、時系列の混乱を最小限に抑えながらプレイできる。
    • クリア後に改めて全体の時系列を見渡すことで、初見時とは異なる解釈や発見が生まれる設計になっている。

  • バックログ機能およびスキップ機能の実装
    • ユーザーの要望に応える形で、過去の会話を確認できるバックログや、既読箇所を飛ばせるスキップ機能が搭載され、プレイの利便性が向上した。

賛否両論点

  • ショッキングな描写の激増
    • 「参加者のうち6名が命を落とせば脱出の鍵が得られる」という過酷なシステム上、登場人物の死亡が「日常茶飯事」として描かれる。キャラクターを問わず何度も凄惨な末路を迎えるうえ、実行される処刑シーンも残虐性が高く、耐性のないプレイヤーは強い不快感を抱く可能性がある。
      • 刺殺や射殺といった直接的な表現は序の口。中には「強力な酸で肉体が溶け去る」「焼却炉で灰燼に帰す」「爆発で頭部が損壊する」、さらには「切断された首のみが晒される」といった極めて凄惨な死に様まで描写される。
      • 新規参戦組はもちろん、淳平や茜、シグマ、ファイといった過去作からの人気キャラクターが無残な亡骸と化す場面を避けることはできず、その描写の凄まじさは前作の比ではない。

  • ドラマパートの演出
    • グラフィックの進化に伴い、キャラクターが動くことで臨場感が増した点は評価されている。しかし、動きが加わったことで各シーンの尺が伸び、結果として全体のテンポが損なわれている側面もあり、一長一短の評価となっている。
    • 制作の背景に海外での熱烈な反響があったためか、キャラクターの背景設定や言動、発生するイベントの構成が洋画を彷彿とさせるスタイルにシフトしている。登場人物も日本人設定は茜と淳平のみに絞られている。
    • こうした洋風でシリアスな空気感を好意的に捉える層がいる一方で、過去作までにあった日本のアドベンチャーゲーム特有の軽妙な掛け合いが薄れたことを惜しむ声も存在する。

  • Qの正体に関する仕掛け
    • 物語の核心を担う「Qの正体」については、その手法に賛否が分かれており、プレイヤーによってはアンフェアな騙し討ちと感じる場合がある。
+ ネタバレ注意
    • 本作において当初「Q」として扱われていたヘルメットの少年は、実のところ「Qではない」。本来のQは別に存在しており、呼称も異なっている。
    • だが、彼がQチームの操作キャラクターであることや、劇中で周囲が彼の名をほとんど呼ばないこと、そして真相が明かされるまで「本物のQ」の姿が(意図的に排除されて)視覚的に示されないことなどから、多くのプレイヤーは彼こそがQであると誤認させられる。その一方で、彼が別人であることを示す伏線は巧妙に張り巡らされている。この打越氏らしい洗練されたミスリード手法自体は、高く評価するファンも多い。
    • しかし、 公式サイト や広報資料、さらには予約特典の冊子などにおいても明確に「Q」として紹介されていたため、ゲーム外の情報も含めたこの誘導を不誠実と捉えるユーザーも少なくない。
      • 打越氏の過去作(『infinity』シリーズ等)でも「説明書の記述が虚偽である」といったトリックは存在したが、それらは物語上の必然性に基づいたものだった。対して今作の少年をQと誤認させる仕掛けは、登場人物たちは全員が別人だと認識しているため、劇中での意味は乏しい。
      • 幸い、本作のパッケージ説明書には詳細なキャラ紹介がないため、外部の事前情報を一切遮断してプレイしたユーザーであれば、この矛盾に苦しむことはない。
    • 結論として、この仕掛けはストーリーの整合性を高めるためというより、純粋にプレイヤーの認識を欺くためのメタ的なトリックという側面が強い。
      • そのため、「難解な物語をより不透明にしているだけ」という批判的な受け止め方をされることもあり、この種のギミックに面白みを感じるか否かで、作品への評価は大きく分かれる。
      • システム上、プレイヤーの認識が現状と乖離したままシナリオが進行するため、真相が開示された瞬間に周囲の反応と噛み合わなくなり、唐突な変化に混乱をきたしたという指摘もある。
      • 騙される驚きとのトレードオフにはなるが、もう少し物語の文脈に沿った納得感のある伏線が必要だったという意見も根強い。

  • SHIFT能力の一般化
    • 前作のクライマックスで重要な役割を果たした「SHIFT能力(別時間軸の自分と意識を入れ替える力)」が再登場するが、前作では限られた者のみが使えたのに対し、今作ではほぼ全登場人物がこの能力を行使する。その発動条件が「周囲に能力者が多数存在することによる感応」という説明に留まっているため、設定として安易ではないかという不満も出ている。
    • また終盤、SHIFTを行うことで転移元の自分(意識の入れ替え対象)を「死が確定した絶望的未来」へ置き去りにすることを躊躇する描写があるが、それまでの過程で散々この能力を多用してきた経緯があるため、今更な葛藤に見えてしまうという指摘がある。
      • 劇中でも比較的早い段階から「SHIFTとは他者を犠牲にするものだ」と割り切るよう諭される場面があるため、なおさらこの温度差が目立ってしまっている。

  • バッドエンドの完走が必須な構造
    • 前作同様、シナリオの構成上「どちらを選んでも凄惨な結末が待っており、かつ両方を見なければ先に進めない」という選択肢が頻出する。本作のテーマである「不条理な運命」を反映し、突きつけられる決断は極めて冷酷なものが多い。物語全編を通して非情な選択を強行し続ける必要があり、精神的な消耗は避けられない。
    • トゥルーエンドに到達するためには、夥しい数の陰鬱なバッドエンドをすべて通過しなければならない。悲劇を積み重ねた分だけ、最終的な脱出時のカタルシスは強調されるが、そこに至るまでの血塗られた道程には覚悟が必要となる。
      • ただし、物語が進むにつれて登場人物の死が繰り返され、後半にはSHIFT能力が前提の展開となるため、多くのプレイヤーは次第に生命に対する感覚が麻痺していく傾向にある。キャラクター自身が目的のために自ら死を選びSHIFTを試みる場面もあり、彼らと同様のドライな視点を持てれば精神的負担は和らぐだろう。
      • もっとも、そのような境地に至るまでの序盤から中盤にかけては、救いのない展開に打ちのめされることも多い。

  • 脱出パートの音声未実装
    • 過去のシリーズ作品と同様に、パズルを解く脱出ゲームパートにおいてはキャラクターのボイスが収録されていない。

  • トゥルーエンドの幕切れに関する是非
+ ネタバレ注意
    • 物語の真の結末は、最後の重大な決断の結果を描かずに終了する、いわゆるオープンエンド(解釈を委ねる形式)を採用している。
    • これまで幾度となく「決断」を強いてきたディシジョンゲームの終着点として、肝心のラストがプレイヤーに委ねられる形になったことに対し、完結編としてのカタルシス不足を指摘する声も上がっている。

問題点

シナリオ面

  • キャラクター造形の変質と悪化
    • 過去作から引き続き登場する4名のキャラクターのうち、ファイは性格が維持されており、シグマも変貌に至る明確な背景が示されている。しかし、淳平と茜の二人に関しては、納得のいく理由が提示されないまま、ビジュアルの刷新も相まって『999』当時とは 別人と見紛うほど に性格が豹変している。
      • 淳平は、かつての正義感に溢れる快活な青年像から一転し、常に荒んだ言動を繰り返す、粗暴で周囲に不遜な態度を取る人物へと成り下がった。一応、そのような精神状態に至った経緯は語られるものの、要約すれば「裏社会の凄惨な現実を知ったため」というありふれたものであり、急激な変貌を正当化するには説得力に欠ける。
      • かつての優しさや誠実さを感じさせるフォロー描写も乏しく、特定の結末で見せるカルロスへの仕打ちは、恩を仇で返すような身勝手な振る舞いが目立つ。
      • 茜についても、『999』の真相を踏まえた多面的な描写というよりは、淳平の身に危機が及ぶと即座に理性を失い、ヒステリックで攻撃的な反応を見せる情緒不安定なキャラクターとして描かれている。
+ ネタバレ注意
      • とりわけ、損壊した淳平の遺体を目の当たりにして発狂し、チェーンソーを振り回して無実のカルロスを襲撃する場面は、多くのユーザーから批判の対象となっている。
      • 最愛のパートナーが変わり果てた姿で発見されるという、筆舌に尽くしがたい衝撃を受けた心情は察するに余理あるが、それを差し引いても、真相を確かめぬまま(状況的に容疑者となり得るのは茜自身かカルロスのみという限定的な環境ではあるが)仲間に殺意を剥き出しにして襲いかかる短絡的な行動は、キャラクターへの共感を著しく損ねている。
      • このシーンは分岐の一つにおいて、実際にカルロスの左腕を分断するという、取り返しのつかない実害を及ぼしている。カルロス側が制止しなければ、確実に無実の人間を惨殺していたであろう異常な光景である。
      • もう一方の分岐では、絶望したカルロスが自責の念から自ら命を絶つが、その瞬間に茜が憑き物が落ちたように正気に戻る演出も、あまりの身勝手さに不安定な印象を強めている。
      • 総じて、新主人公であるカルロスは茜の暴走や二人の個人的な事情に振り回される場面が非常に多く、本作最大の不遇な被害者であるといえる。
      • こうした性格の変質により、ファンからは「淳平にとっては本作の結末よりも、前作『善デス』のルートの方がまだ幸福だったのではないか」という皮皮肉交じりの不満が出るほどであり、第一作の看板カップルの扱いに大きな不満を残す結果となった。
    • 惨酷なデスゲームを進行させるための物語上の都合による変更とも推察されるが、それにしても過去作ファンが抱いていた好感度を著しく損なう描写であり、作中を通して彼らに共感を抱くことは困難である。

  • 後日談の描写不足
    • シリーズ完結編として期待された各キャラクターのその後だが、トゥルーエンド到達後に 「Cinema-FILE」内でテキストのみで語られる という、非常に簡素な形式に留まっている。ボイスや動的な演出も一切存在しない。
      • そもそも、クリア後に後日談が追加されたことを知らせるシステムメッセージ等が表示されないため、その存在に気づかないままプレイを終えてしまうユーザーも存在する。
    • トゥルーエンド自体が究極の決断の結果を明示しないオープンエンド形式であるため、後日談においてもその核心部分への言及はない。完結を求めていたプレイヤーには消化不良な印象を与えかねない。
      • テキストの内容自体は概ね希望を感じさせる良好な内容であるだけに、演出の乏しさが一層悔やまれる。開発リソースの制約があったのか、映像化されなかったことへの失望感は根強い。
    • さらに、 Dチームに関しては後日談自体が用意されていない 。制作側は意図的な演出であると述べているが、不公平感は否めず、後にSNS上で謝罪が行われるほどの事態となった。

  • 特定のキャラクターに関する描写も、説得力に欠ける部分がある。
+ ネタバレ注意
    • 登場人物の一人であるミラは、物語の中で稀代の連続殺人犯であることが露呈するが、倫理観の欠片もなかった彼女が、後日談において 突如として改心し、自首を選択する
    • 劇中で改心に至る心理的な葛藤やプロセスの描写があれば納得もいくが、実際には終始一貫して冷酷な自己中心的態度を崩しておらず、自首を選択するほどの内面的な変化がいつ生じたのかは完全に不明である。
      • 後日談では、彼女が罪を償う契機となる重大な出来事も記されているが、これもやはり静止したテキストのみ。シリーズの最後を飾る場面として、相応の映像演出を望む声は多い。
  • Xドア解錠用パスワード入力の煩雑さ
    • 脱出の要となるXドアを開く際、逐一6種類のパスワードを手動で打ち込む必要があり、いささか手間を感じさせる。これらを入力させる行為自体に演出上の深い意図が含まれる場面は少なく、作業的な印象が拭えない。

  • 未回収のまま残された伏線
    • シリーズ完結を謳っているものの、三部作全体を見渡すと依然として謎のまま放置された要素が散見される。『善デス』に登場した面々のその後の足取りや、前作におけるオルタナティブエンドの詳細など、今作のメインストーリーに直接介在しない過去作の伏線は、その多くが回収されずに終わっている。
      • 前述の通り、『善デス』と物語上の繋がりが深いDチームに後日談が用意されていないことが、この不完全燃焼感に拍車をかけている。主人公であるダイアナ、シグマ、ファイはもとより、前作で重要な役割を担ったKやアリス、天明寺たちが最終的にどのような運命を辿ったのかは、闇に包まれたままである。
      • 『999』の登場人物に関しても言及は断片的なものに留まるが、彼らの物語は本編や前作である程度完結しているため、まだ納得の余地はある。ただし、前作に再登場した四葉のように、救済の有無が不明なままのキャラクターも存在する。
    • 制作側は「シリーズ累計のファンを満足させる」ことと「予備知識のない新規層も楽しめる」ことの両立を目指したとしているが、その配慮が仇となり、過去作の設定への言及が物語進行上の最小限に絞られてしまった感は否めない。
      • 新規プレイヤーへの間口を広げる姿勢自体は合理的だが、その結果として長年のファンに消化不良な印象を与えては本末転倒である。完結編を名乗るのであれば、完全に新規を切り捨てる必要はないまでも、物語を美しく完結させることに主眼を置いた構成にすべきだったという意見も根強い。
      • そもそも完結編かつ重層的な構造の物語である以上、どれほど配慮を重ねても初心者が完全に内容を把握するのは困難である。結果として、どちらの層に対しても中途半端な立ち位置になってしまった印象は免れない。
    • 加えて、今作の中で提示された謎についても一部説明が不足している箇所がある。
    • 特定のルートにおいて、地下施設に留まるダイアナがなぜマインドハックの影響を受けたのかといった点など、不可解なまま終わるディテールが存在する。

システム面
  • 不十分なスキップ機能
    • ムービーシーンをスキップしようとすると、現在のシーンだけでなく、後続の1、2シーンまでまとめて飛ばされてしまうことがある。
    • 自分のリズムで読み進めたいプレイヤーにとっては非常に不便な仕様である。特に今作は凄惨なシーンが多いため、そうした箇所を迅速に回避したいユーザーからの不満も集中した。
    • また、全編フルボイスのシネマパートでは、個別のセリフ送りが不可能となっている。同じ内容の会話や繰り返しのセリフであっても、強制スキップ機能を有効にしない限り、一文ごとに飛ばすことはできない。

  • タッチパネルの入力精度の低さ
    • 前作から改善されておらず、画面のレスポンスに難がある。メモ機能が使いにくかったり、脱出パートにおける調査ポイントの判定が極めて狭かったりと、操作ミスによる足止めを食らいやすい。
      • ストレスを最小限に抑えるためには、ゲーム内の機能に頼らず、手元に物理的な筆記用具を用意してプレイすることが推奨される。ただし、前作で見られた図形パズルのような、操作性そのものが致命的な謎解きは影を潜めている。


総評

完結編という位置付けに相応しく、過去作で培われた伏線やキャラクター造形を随所に散りばめ、一つの物語として結実させている。
一部のミスリード手法には賛否の声もあるが、ゲーム全体の完成度としては十分な水準に達していると言えるだろう。
旧作から引き継がれた一部の謎に未解決な点は残るものの、『999』から長らく続いてきた壮大なサーガの主軸には一応の決着が付けられている。これまでのシリーズを追い続けてきたプレイヤーであれば、相応の満足感を得られる仕上がりとなっているはずだ。

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最終更新:2026年05月05日 00:22