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極限脱出ADV 善人シボウデス

【きょくげんだっしゅつあどべんちゃー ぜんにんしぼうです】

ジャンル 極限脱出アドベンチャー

対応機種 ニンテンドー3DS / PlayStation Vita
発売・開発元 チュンソフト
発売日 2012年2月16日
定価 【3DS】6,090円&br;【PSV】(PKG)6,090円 / (DL)5,480円
セーブデータ 1個
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
判定 良作
極限脱出シリーズ &br;9時間9人9の扉 / 善人シボウデス / 刻のジレンマ




概要

  • 多彩な登場人物たちが織り成す緊迫したサスペンスを描いた脱出ゲーム『極限脱出』シリーズの第2弾。前作『極限脱出 9時間9人9の扉』のシステムを継承しつつ、2年の歳月を経て登場した。
    • シナリオ執筆は引き続き打越鋼太郎氏が務め、キャラクターデザインも前作に続き西村キヌ氏が担当している。
  • チュンソフトが独立したパブリッシャーとして発売した最後のアドベンチャー作品となった(同年4月よりスパイク・チュンソフトへ統合されたため)。


ストーリーと舞台設定

突如として誘拐され、意識を失っていた主人公が目を覚ますと、そこは見覚えのないエレベーターのような密閉空間だった。
突如、ウサギの姿をした不可解なAIキャラクターの映像が映し出され、「速やかに脱出しなければエレベーターが墜落する」という死の宣告を受ける。

この危機を皮切りに、主人公を含む年齢も性別も異なる9人の男女は、謎に満ちた巨大な施設へと集められる。
そこで彼らに課せられたのは「ノナリーゲーム アンビデックスエディション」という奇妙なゲームへの参加だった。
それは、施設からの脱出権を奪い合う、参加者同士の「信頼」と「裏切り」が試される残酷なルールに基づいていた。

  • ノナリーゲーム アンビデックスエディション
    • 9人の参加者が命を賭して挑む死のゲーム。前作にも同名のゲームが存在したが、今作では「裏切り」や「騙し合い」の要素がより色濃く反映された特別ルールが適用されている。
    • 参加者の腕には「バングル」が固定される。これには個人の「BP(バングルポイント)」が表示され、行われる「AB(アンビデックス)ゲーム」の結果によって数値が変動する。このBPを9まで溜めた者だけが、「9の扉」を通過して生還することができる。
    • ルールを破った際の制裁など、命の保証がない極限状態での運営は前作のノナリーゲームと同様である。

+ ゲーム序盤で説明を受けるルールについて
  • ABゲームへ移行するためには、特定の色彩で識別された「CD(カラードドア)」の先にある各部屋の謎を解き明かし、鍵となるカードキーを回収しなければならない。

  • 各参加者のバングルには「現在のBP」「色情報」「ソロまたはペアの属性」という3つのデータが表示される。このうち、BP以外の2項目がCDを通過する際のグループ編成の鍵となる。
    • CDへの進入は、9名が同時に3人ずつのユニットに分かれて行う必要がある。
    • ユニット編成には厳格な制約がある(1人の「ソロ」と2人の「ペア」の組み合わせ、かつバングルカラーの合成色がドアの色と一致しなければならない)。一見複雑だが、要約すると「脱出パートは常に3人1組で行動し、ドアの色指定によってメンバーの組み合わせが数パターンに限定される」という仕組みである。
  • BP以外の属性表示は、ABゲームが1回終了するたびに全参加者分がランダムに更新される。

  • 参加者の初期BPは3。BPを増やす手段はABゲームの勝敗のみに委ねられている(このゲームは理論モデル「囚人のジレンマ」を土台としている)。
    • 共同で脱出を目指した対戦相手(ソロ1名 vs ペア2名)が、それぞれ完全に隔離された個室で投票を行う。操作盤で「協力」か「裏切り」を選択し、その相互の選択の組み合わせでBPが増減する。
    • BPの変動ルールは以下の通り。
      • 自らが 「協力」 を選択した場合:相手も「協力」なら「+2」。相手が「裏切り」なら「 -2 」。
      • 自らが 「裏切り」 を選択した場合:相手が「協力」なら「3」。相手も「裏切り」なら「±0」。

  • BPを9以上に到達させた者のみが「9の扉」を開き、施設から外の世界へと逃れることができる。ただし、この扉が開くチャンスは一度きり。
  • ゲーム中に不正行為や規定違反が発覚した場合、バングルから即死性の薬剤が注入されるという非情なペナルティが実行される。

解説は煩雑に見えるが、これら基本原則は物語の冒頭で説明された後、主人公の視点ですぐに要点が整理される。システムを深く把握せずとも物語には入っていけるため、過度な心配は不要だ。


システム

ゲームの流れは前作同様、物語を読み進める「ノベルパート」と、謎解きに挑む「脱出ゲームパート」を交互に繰り返す形式で進行する。

脱出ゲームパート
  • 今作の脱出パートにおける背景はフル3Dで表現されている。探索の操作感は、前作の固定画像を切り替える方式から、周囲を360度見渡すようにカメラを振る方式へと進化した。
    • 基本的な仕組みはオーソドックスな脱出ゲームに準じており、室内をくまなく調べてアイテムを入手したり、ヒントを解読して、次の区画へ進むためのパスコードを割り出す。
  • (3DS版)操作系は「タッチパネル操作」と「ボタン操作」の両方に対応。プレイヤーの好みに合わせて柔軟に使い分けが可能であり、どちらか一方のみでプレイを完結させることもできる。

  • 探索中に取得するデータは、物理的に使用・合成する「アイテム」と、設定資料やヒントが記載された「アーカイブ」に大別して管理される。
    • 資料類である「FILE」のほか、各室の「PASS」、操作マニュアルの「HELP」などはアーカイブ画面の各タブに集約される。これらは一度入手すれば、部屋をクリアした後でも自由に見返すことが可能。

  • 難易度設定
    • 「Hard」と「Easy」の2段階が用意されている。初期設定はHardだが、脱出の最中であればいつでもEasyへ切り替えが可能。
    • Hardでは最小限のヒントしか提示されない。対してEasyでは同行するキャラクターたちが頻繁にアドバイスをくれ、解法のヒントから直接的な正解まで段階的にナビゲートしてくれる。ただし、Hardモードにこだわる場合にはシステム上の留意点が存在する(詳細は後述)。

  • 隠し要素のPASS
    • 各部屋には脱出に必要なコード以外に、機密情報「SECRET」を閲覧するための特別なPASSが隠されている。
    • SECRETには、物語の背景設定や専門用語の解説、前作の出来事に触れる内容などが含まれている。
    • 難易度EasyでこのPASSを入力した場合、解放される情報の一部が隠蔽されるペナルティがあるが、Hardで再入力すれば全情報を得ることができる。

ノベルパート
  • フローチャート
    • ストーリーはグループ分けの決断や、ABゲームでの選択によって多岐に分岐する。どのメンバーと協力し、誰を裏切るかによって、登場人物のBPや関係性が劇的に変化し、異なる結末へと繋がっていく。
    • これらの全体像はフローチャートとして可視化されており、一度通過したシーンへはチャート画面から瞬時にジャンプできる。脱出パートでの細かな行動が分岐に直接影響することはない。

  • シナリオロック
    • 特定のルートを読み進めていると、物語が不自然に途切れて先へ進めなくなる「ロック」がかかることがある。これを解除するには、別のルートで鍵となる情報(フラグ)を入手しなければならない。
    • これは開発元の過去作『』や『428』でも採用されていた、物語の読解順序を制御しつつ全容を把握させるための仕組みである。

  • 結末の管理
    • エンディングの記録枠は計9つ。各エンドに到達するごとに、セーブデータ上にクリアを示すアイコンが追加されていく。


グラフィックなど

  • 会話シーンでは、3Dで描画されたキャラクターモデルとテキストウィンドウが組み合わされる。一方で主人公の独白などの心象描写は、背景CGの上に文字が重なるレイアウトで表現される。
    • (3DS版)上画面にテキストを表示し、下画面はテキスト送りやメニュー操作を行うための領域として機能する。
  • 画面は基本的にフル3D構成だが、過去の回想シーンなど特定の演出においては2Dのイラストが用いられる。

  • 主人公のセリフや一部の追加シーンを除き、ノベルパートは実力派声優陣によるフルボイス仕様となっている。

評価点

難易度
  • 本作に盛り込まれた多彩なギミックやパズル要素は、総じて「平易すぎず、かつ不条理でもない」という絶妙なバランスを維持している。
    • 今作では特に空間認識能力を問う図形問題が拡充された。ダイスを転がすパズルや、コンポーネントを回転させて形状を整える問題などは手応えがある。ちなみにダイスに関しては、往年の名作パズル『XI』の経験者であればスムーズに解けるだろう。
    • プレイヤーの任意で難易度を切り替えられるようになったため、「自力で攻略したいのに意図せぬヒントで興を削がれる」ことや、「物語を急ぎたいのに謎解きで詰まってしまう」といったストレスが大幅に軽減された。脱出ゲームとノベル、それぞれのファン層のニーズを過不足なく満たしている。

  • 金庫に設定されたアーカイブ用のパスコードには、脱出用コードよりも高度な思考を要するものも存在する。進行に必須ではない解答を模索することで、散らばった情報から正解を導き出す推理の醍醐味が深まった。
    • 「同一の仕掛けから異なる正解を導き出す」というアプローチは前作にはなかった新要素であり、全体のプレイ体験としての密度を高めている。

シナリオ面
  • 世界観そのものが幾重もの謎に包まれており、伏線の配置はテキストの枠を超え、システムやゲームの構成そのものを用いたダイナミックな仕掛けとなっている。物語の進展に伴ってそれらが鮮やかに氷解していく過程は圧巻であり、一度没入するとエンディングまで一気に駆け抜けてしまうほどの強い牽引力を持っている。
    • 物語の骨子は、ある種の思考実験を脱出劇へと昇華させ、そこに「生命体と非生命体の対比」というテーマを織り交ぜたもの。題材ゆえに難解な側面もあるが、複数のエピソードを通じて繰り返し主題が提示されるため、理解を助ける配慮がなされている。

  • ABゲームによる葛藤
    • BPの増減を巡る「ABゲーム」の結果は、対戦相手それぞれの内面に潜む本音やエゴを鋭く描き出す。
    • 他者を裏切ってでも生存を優先するか、あるいは連帯して全員の救済を目指すか。キャラクターの出自や状況によって揺れ動くその決断は、常にプレイヤーに重い緊張感を強いる。画面上には直接描写されない各人の「隠された物語」が、作品全体の深みと緊迫感を支えている。

  • 全容を把握した後に二周目をプレイすると、初見時には聞き流していた何気ない会話の裏にある真意や、緻密なダブルミーニングに気づかされる構成になっている。
    • 単にクリア回数で特典が解禁される仕組みではないが、こうした「真相を知るからこそ味わえる発見」を好むプレイヤーにとって、二周目の精読は非常に満足度の高いものとなるだろう。

  • キャラクター造形
    • ディオや天明寺といった人物は、選択したルートによって立ち振る舞いが劇的に変化する多面性を見せる。一方で、極限状態にあっても信念が一切揺るがないキャラクターも存在し、対比が鮮明である。
    • 全てのエンディングを網羅することで、各人の行動原理や秘められた意図が矛盾なく繋がるよう設計されている。

  • 豪華なボイスキャスト陣
    • 納谷六朗氏、釘宮理恵氏、能登麻美子氏、小野大輔氏といった、ベテランから実力派までを揃えた配役がドラマに命を吹き込んでいる。
    • 中でも今作のキーマンである「ゼロ三世」には、国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』の主人公役で知られるTARAKO氏が起用されており、その独特のキャラクター性が際立っている(配役の妙については余談を参照)。
    • 特定のルート限定で登場するキャラクターにも大塚明夫氏や榊原良子氏といった重鎮が充てられており、非常に贅沢な仕様となっている。

  • 総プレイ時間はHardモードでの挑戦を含めると30時間程度を見込める。脱出パートの試行錯誤を含め、全体のボリューム感は申し分ない。

システム面
  • 前作でユーザーから指摘された不満点の多くが改善されている。特にフローチャート機能の導入は画期的であり、難易度選択による調整機能も利便性を大きく高めた。
    • 前作でも脱出パートを再プレイするモードは存在したが、物語上の重要な対話が省略される不備があった。今作ではフローチャートから特定の場面へ直接遷移できるため、ストーリーの連続性を保ったまま遊び直すことが可能となった。

+ システムの評価について補足:軽度のネタバレ注意
    • 「極限脱出」シリーズは、ゲームの仕様そのものがシナリオの構造と密接に関わっている点が最大の特徴である。前作における不便な仕様も、実のところ演出や物語の整合性を優先した結果であり、単純な改修が困難な繊細な問題でもあった。
      • 今作でそうした不満点が解消されたのは事実だが、これらを「純粋な評価点」と見るか、あるいは「演出上のトレードオフ」と捉えるかは、プレイヤーの価値観によって意見が分かれる部分かもしれない。
      • 本作のフローチャートも「分岐の全容が当初から見えすぎている」「ジャンプ地点の区切りがやや大まか」「各人のBP変動を一覧できず、状況把握に混乱を来す」といった細かな課題はあるが、これらもまた制作側の意図に基づいた設計である可能性を付言しておきたい。

問題点

シナリオ面
  • どの選択を選んでも不快感や後味の悪さがつきまとう
    • ABゲームの多くは、「裏切り」を選べば道徳的な非難を浴び、「協力」を選べば相手に裏切られて損失を被るという、どちらに転んでも利益の少ない苦渋の選択を強いられる。
    • NPCがBP「9」に到達した際は速やかに脱出を許してしまう展開が多い一方で、プレイヤー側が「9」に達した途端に周囲から制止され、バッドエンド扱いになるという不条理な格差がある。
    • 加えて、真の結末(トゥルーエンド)に辿り着くには全ての分岐を網羅しなければならない。結局は不本意な選択肢もすべて選ぶ必要があり、後味の悪い体験を何度も繰り返す設計になっている。
      • ただし、この過酷な仕様は前述の通り、本作の物語構造やテーマと密接に結びついた不可欠な演出でもある。

  • キャラクター造形
    • 登場人物の大半がアメリカ出身という設定だが、その背景が物語やキャラクター性に深く活かされているとは言い難い。
      • 全員が日本の文化やことわざに精通しており、日常会話の節々が極めて日本人的であるため、わざわざ外国籍の設定にした必然性が感じられない。
      • これは海外市場を意識した戦略的側面もあったようだが(事実、北米等での評価は非常に高い)、ドメスティックな描写との乖離が目立つ。
      • この傾向は次作でも見られるが、本作に比べれば幾分か海外らしい雰囲気の醸成に努められている。
    • ルート分岐によっては同一人物とは思えないほど性格が豹変するキャラクターもおり、その急激な変化に違和感を覚えるプレイヤーも少なくない。

  • 前作『9時間9人9の扉』に関する 回避不能な重大ネタバレ の存在
    • 本作の根幹は前作の事件と不可分な関係にあるため、本作を先にプレイすると前作の楽しみが著しく損なわれる。
      • 具体的には、前作における事件の真相や黒幕の正体といった、物語の核心部分が劇中で明白に明かされてしまう。
      • 「前作のキャラが登場するので関連性は予想していたが、ここまで徹底的にバラされるとは思わなかった」という声も多い。純粋にシリーズを楽しむなら、前作のクリアは必須と言える。
    • 脱出ゲームとしてのパズル要素や、主人公の主観で物語を追う楽しさは残るものの、段階的に謎が解けるカタルシスは既に失われた状態でのプレイになってしまう。

  • シナリオが重厚な反面、未解決の謎を残したまま終わる「打ち切り」のような閉塞感
    • 幽閉場所からの脱出という当面の目的は達成されるものの、その背後にある壮大な計画や世界の状況については、断片的な情報が提示されるだけで全容は霧の中にある。
+ エンディング内容に踏み込んだネタバレを含むので注意
      • 本作のノナリーゲームを画策した首謀者には明確な動機が存在する。プレイヤーはそれを察することはできるものの、その動機を裏付ける具体的なエピソード描写は乏しい。また、ラストシーンで示唆される「次に起こる事象」についても、解決編を待たねばならない。
      • メインキャラクター9名のうち、本作の範囲内では「正体不明」のまま終わる人物が1名存在する。いくつかの示唆はあるものの、真相は次作に委ねられる。
      • すなわち本作は、 前作の謎を豪快に解明する一方で、それ以上に巨大な新しい謎を山積みにして提示する 構成となっている。これらの懸案事項は完結編『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』へと持ち越されることとなった。
      • 結果として『刻のジレンマ』の発売まで4年の空白期間が生じ、ユーザーは物語が完結するか不明なまま、長きにわたり現実世界での「シナリオロック」を強いられる形となった。
      • 続編で多くの謎は解消されたものの、シリーズ全体を通しても未回収の伏線や説明不足な点は一部残存している。

  • 『9時間9人9の扉』の続編としての賛否
    • 前作の正統な後日談として見た場合、本作で描かれる凄惨な世界情勢や、前作登場人物のその後の扱いに否定的な見解を示すファンもいる。
+ 深刻なネタバレを含むため注意
      • 前作はあくまでクローズドな状況下での事件であり、一部に謎を残しつつも勧善懲悪に近い形でヒロインを救い出す「綺麗な終わり方」を提示していた。しかし、本作で明かされるその後の未来は、一転して絶望的な状況に陥っている。
      • 世界規模で壊滅的な打撃を受けた未来が描かれ、前作のキャラクターたちが安寧を手に入れたとは言い難い描写が続く。物語を最後まで進めれば、かすかな希望を見出す者もいるが、前作のハッピーエンドを信じていたファンにとっては受け入れがたい現実を突きつけられる。
      • 「前作の功労者が不幸な末路を辿る続編」という構図になっており、これに対する拒否反応が出るのは避けられない。
      • 完結編が発売された現在では評価も定まっているが、本作時点の視点では、前作のキャラクターに強い愛着があるプレイヤーほど、手放しで推奨しづらい側面がある。

システム面
  • ゲームテンポの停滞
    • 移動シーンではマップをなぞる演出に加え、扉が開閉するモーションが都度挿入されるため、進行のテンポが損なわれている。
    • とりわけ階層をまたぐ移動の際は、「エレベーターホールへの移動、扉の開放待ち、乗車、昇降待機、到着後の降車、目的地点への移動」といった冗長なプロセスが挟まれ、かなりの待機時間を要する。既読スキップによる高速化は可能だが、それでも快適とは言い難い。
    • また会話パートにおいても、スイッチを押すなどの些細な動作に対して仲間に確認を求めたり、執拗なカウントダウンを行ったりする演出が冗長に感じられる場面がある。
      • 謎を解いて鍵を開けるたびに過度な警戒を伴うカウントダウンが入り、結果として何も起きないというパターンが繰り返されるため、焦燥感を覚えるプレイヤーも少なくない。

  • スライド操作による視点変更やズーム機能の導入により、操作体系が煩雑化し、入力に対するレスポンスが低下した。これが脱出パートにおける快適性を削いでいる。
    • 操作の癖によっては、上下の視点移動判定にカーソルが意図せず引っかかってしまうといった不具合も散見される。
    • 前作に存在した、調査可能な範囲を枠で明示するサポート機能が廃止された点もマイナスに作用している。

  • 3DCGモデルのクオリティ不足
    • 登場人物の3Dモデルは、特に顔や手のクローズアップ時に人形のような硬さが目立ち、髪の毛の表現も固定された塊のように見えるなど、質感の粗さが否めない。
    • 2D描写だった前作は、キャラクターのドット絵やモーション、背景CGの質がいずれも高水準で、操作性にも大きな不備がなかった。それらと比較すると、今作の3D化による恩恵よりも欠点の方が際立つ結果となっている。
    • 脱出パートにおける上下の視点変更に攻略上の意味が乏しいことや、3DS版の立体視においても人物が平面的に見えるなど、3Dグラフィックを活かしきれていない。
    • 上下視点の切り替えは本作からの新要素だっただけに、お遊び要素を含めたギミックがほとんど仕込まれていない点に失望するファンは多い。

  • 不親切な仕様のHardモード
    • キャラクター同士の対話が制限されるHardモードでは、謎解きに関係のない「雑談」の大部分がカットされてしまう。
    • Easyモードに切り替えればこれらの会話は復活するが、物語の中には 全ての脱出パートをHardで突破しなければ解放されないシナリオが存在しており 、システムとして不親切である。Hardであっても世界観を深める雑談程度は残すべきだったという意見がある。
    • 雑談の有無はキャラクターへの愛着に直結するため、Hardで完全攻略した後に改めてEasyで再プレイする方が、人物像をより深く理解できるという皮肉な状況を生んでいる。
    • なお、この難易度設定に関する反省からか、次作では難易度の概念自体が撤廃された。

  • 前作に引き続き、バックログ機能からキャラクター音声を再生することはできない。
  • メッセージの表示速度を調整する機能が備わっておらず、プレイスタイルによってはストレスを感じやすい。

  • タッチパネルの入力判定に難があり、特定のパズルにおける操作性が著しく低い。
    • 特に「所長室」での図形の組み替えや、「減圧室」での点繋ぎパズルにおいて顕著である。
    • 図形の組み替えは、複数のピースを配置して特定の形状を作るものだが、判定がシビアすぎて移動や回転が思い通りにいかない。
      • 救いとしては、判定自体がやや曖昧でも正解として受理される点や、パズル自体を解かずとも金庫のパスワードが推測可能な構造になっている点が挙げられる。
    • 点繋ぎのパズルは、迷路のようなラインに沿って点を結ぶものだが、入力感度の悪さから線を引くだけでも困難を極める。
      • 試行錯誤を繰り返したい場面で操作が追いつかないため、フラストレーションが溜まりやすい。コースを逸れると最初からやり直しになる点も厳しい。
      • 幸いにも、計3回のパズルにおいて「何をすべきか」という目的自体は明確であるため、徒労感は多少なりとも軽減されている。

総評

「極限脱出」シリーズは、根幹の設定から作品全体の構造に至るまで非常に緻密で複雑な設計がなされている。そのため、物語の理解と攻略を力強くサポートするフローチャート機能の導入は、多くのプレイヤーから高く評価された。また、知的好奇心を刺激する脱出ゲームパートについても、シナリオ没入を妨げないよう配慮されつつ、思考の醍醐味を十分に味わえるよう調整が施されている。これらの改善により、シリーズ独自の魅力にアクセスしやすい地盤が整ったと言える。

その一方で、本作が描く物語は極めて重厚かつ過酷であり、プレイ中のみならずクリア後も消えない負荷としてプレイヤーの心に刻まれる。さらにその衝撃は、前作の物語の根幹にまで及ぶものである。脱出ゲームとしてのみ割り切って楽しむことは困難であり、かつ物語が完全には完結しないこと、真相を知るためには完結編のプレイが絶対条件となる点には、あらかじめ相応の覚悟が求められる。

また、システム面における進化が乏しい点や、3Dグラフィックの完成度に対する評価の低さなど、技術的な課題も残されている。
しかしながら、それらの欠点を補って余りあるほどに、複雑な分岐構造を物語の深層へと昇華させるシナリオ演出と、適切に整えられたゲームバランスは秀逸であり、シリーズの中核を成す一作として評価を確立している。

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最終更新:2026年05月05日 00:06