ふたば系ゆっくりいじめ 998 ほぞんしょくのつくりかた~Persimmon trap~

ほぞんしょくのつくりかた~Persimmon trap~ 39KB


虐待-普通 越冬 群れ 久しぶりの投稿です





ほぞんしょくのつくりかた~Persimmon trap~


そこには大きな柿の木を中心とするゆっくりの群れがある。
群れは高い越冬の成功率を誇り、かつ適正な個体数を保ち続けている。
しかも、そんなにゆっくりした群れであるにも関わらず、
その群れに掟はたった二つしかないという。
この物語は、その群れの繁栄の秘訣を探ろうというものだ。
 季節は10月中旬。
森が鮮やかな恵みをもたらし、その恵みを求めてゆっくりが走り回る季節。

 ぴかぴかと輝くような紅葉樹をまとった山、その中腹。
ゆらゆらと山から白煙たなびくある朝。
群れがおはようのゆっくりしていってね!のため群れの中心に集まると、
群れの象徴ともいえる柿の木。その木になった実が全て落ち、朝露に濡れて光っていた。
その数は200に届かんとする勢い。野生の、しかも一本の木から生る数としては破格だろう。
200の柿が朝日に照らされ煌めくその姿はゆっくりたちから見れば、さしずめ桃源郷ならぬ柿源郷と言ったところか。
 「ゆわーい!かきさんがおちてきたよ!」
 「とってもおいしそうなんだぜ!」
 「はやくたべましょう!」
 「「「「「「ゆっくりいただきまーs」」」」」」
 「そこまでよ!」
美味しそうな柿の実を前に目をキラキラと輝かせ、今にも齧りつかんとする群れを止めたのは、長のぱちゅりー。
 「みんなおぼえてるでしょ。『かきさんはえっとうのためのほぞんしょくにすること』。だいじなむれのおきてよ!」
 「でもこんなにあるんだよ?みんなかきさんがたべたいんだよ?」
 「ちょっとぐらいたべたっていいんだぜ?」
 「ちょっとだけよ!ちょっとだけだからもんだいないはずだわ!」
欲求をお預けされたゆっくりたちはぶぅぶぅ文句を言うが、ぱちゅりーはそれには取り合わない。
 「だめよ。おきてはおきてよ。このむれにはほかのむれにはあるいろんなおきてがないわ。
すっきりせいげんとかね。とってもじゆうなむれのよ。なのに、みんなはたったふたつのおきても
まもれないのかしら?ならそんなゆっくりにはほかのむれにいってもらうしかないわね」
ひょいひょいと柿を回収しながらぱちゅりーは冷たく言い放つ。
 「やだよおおぉぉ!!かきさんたべたいいいぃぃ!!!」
 「がまんできないんだぜええぇぇぇぇぇ!!!!」
 「こんなにとかいはなかきさんをたべられないなんてひどすぎるわあぁぁ!!!」
 「だめといったらだめなのよ。それに、このかきさんはまだしぶいの。
ぱちぇがたべられるようにしてみんなにあげるから、きょうはみんなでかりにいってきなさい」
柿を一か所にまとめながらぱちゅりーは言うと、一匹のれいむが首を傾げながら問いかける。
 「ぱちゅりーはいかないの?」
 「えぇ。ぱちぇはきょうから・・・・・・ほしがきをつくるさぎょうにはいるわ」

 「むーきゅ!むーきゅ!!」
ぱちゅりーが柿を石に擦りつけている。皮を削り落しているのだ。
柿は皮を剥かないと乾かない。人間ならばナイフで剥いてしまうところだが、ゆっくりには
手も足も道具も無い。なので、平らな石に柿を擦りつけることで皮を取り除く・・・ということをする。
効率は当然悪いため、作業は遅々として進まない。午前中いっぱい使ってやっと10個と言ったところか。
 午前の作業を終え休憩していると、一匹のれいむが来た。ただのれいむではない。額に茎が生えている。
越冬準備真っ最中の季節にも関わらず、赤ゆっくりを作ったらしい。しかも生りたて。
普通のゆっくりならば、すっきり制限があろうが無かろうがこんな季節に赤ゆっくりを作るなどということはしない。
食い扶持が増える上に食料を集める働き手が減るからだ。
越冬前に子供を作ったら死ぬ。野生ではまぁまずそう思っておいて間違いは無い。
しかし、見るにつけこのれいむは自信満々、これからの自分の未来に辛いこと苦しいこと苦いこと辛いことが
あるとは微塵も思っていないようだ。まぁ、苦いはともかく辛いことというのは、
野生では実はそうそう体験することは無いのだが・・・。
まぁそれはともかく、このれいむは何故こんなにも自信満々なのか。
頭が残念な個体であるというだけの理由ではないようだ。

 「ぱちゅりー!そのかきさんたちはれいむたちにくれるってほんとうなの?」
れいむがだらだらとよだれを垂らしながら嬉しそうに叫んだ。これが自信の根拠らしい。
 「えぇ。このかきさんはむれぜんたいのえっとうのためのしょくりょうよ。できあがったらみんなにあげるわ」
それに対しぱちゅりーは淡々と答える。
 「じゃあえっとうのためのごはんさんはあつめなくてもだいじょうぶだね!こんなにいっぱいあるんだもんね!」
どうやらこのれいむ、200個の柿を全て自分が貰うつもりでいるらしい。
さっきの言葉は訂正する必要がありそうだ。このれいむが自信満々なのは、偏にれいむの頭が
残念すぎるせいだった。
 「はぁ。れいむ、このかきさんは『むれのみんなのもの』よ。かきさんだけではえっとうするにはたりないわ。
だって、むれのゆっくりはおとなだけでも120いじょういるんですもの。
あかちゃんができたのだったらなおさらよ。あかちゃんがうまれたられいむもすぐ・・・・・・むきゅ?」
ぱちゅりーはため息をつき、目を閉じてお説教を始めるが、途中で目を開けるとれいむはすでにいなかった。
 「ゆっくりーのひー♪まったりーのひー♪かきさんーのひー♪まちどおしいよ!ゆふふふ!」
どこに行ったかと周りを見渡せば、れいむは赤ゆっくりの生った茎をぶるんぶるん揺らし、
歌いながら家に戻る途中だった。れいむとしては、もう用事は済んだのだろう。
ぱちゅりーはもう一つため息をつくと、午後の作業を開始した。

 次の日。ぱちゅりーが外に出ると、一匹のまりさがおうちの前で痙攣していた。
 「にっが・・・・・・これ・・・めっちゃにっが・・・・・・」
 長であるぱちゅりーのお家は、200の柿を収納してなお余るほどの広さを備えている。
しかし、ぱちゅりーは敢えて柿を外に放置してある。不用心なことだが、柿を巣の中に入れてしまうことで
巣と作業場の往復が増え、作業効率が落ちてしまうのを嫌っているのだろうか。

それはともかくこのまりさだ。このまりさ、夜に「そろーり!そろーり!」とか言いながら柿を盗みに来て、
我慢できずにその場で柿を食べてしまったらしい。
最初にぱちゅりーが言った通り、群れの中心にある柿の木は渋柿の木であり、見た目は美味しそうだが
実際は、その実は渋み抜きをせずに食べられるものではない。
苦味や辛味が毒となるゆっくりには、渋柿は毒の塊と同じだろう。
 「にがいいぃぃ・・・・・・ばぢゅでぃ・・・ばりざざばをだばじだんだぜぇ・・・?ごれめっちゃにがいんだぜぇ・・・
どくはいってるんだぜぇ・・・」
ぴくぴく痙攣しながらぱちゅりーを睨みつけるまりさ。
 「ばりざざばをだずげるんだぜぇ・・・・・・ばりざざばをだばじだげすなぱちゅでぃーは
せいっさいっしてやるんだぜぇ・・・・・・」

 このまりさは、群れの中でも札付きのゲスだった。自分では狩りをせず、勤勉、善良な他のゆっくりから
餌を奪い取ってそれを「狩り」などと称している。
下の癖も悪く、つがいのいるゆっくりにも平気で手を出し、怒ったつがいが襲ってきてもそれを返り討ちに
してはげらげらと笑い、にんっしんっさせた事の責任ももちろん取らない。このまりさのせいで
いくつもの家族が不和に陥ったり片親の家庭が出来たりした。
そんな悪行を重ねながらもその足の速さ、喧嘩の強さから誰もまりさを止められなかった。
そんな乱暴者で、群れ全体の鼻つまみ者なのだった。
 「・・・ちょっとまってなさいね」
自分を罵り続けるまりさを冷たい目で見ると、ぱちゅりーは巣の中に帰って行った。
 「ごろじでやるうぅぅ・・・げすなぱちゅりーをせいさいしてやるうぅぅぅ・・・・・・」
 「またせたわね」
ほどなくして、ぱちゅりーは戻ってきた。口には尖った枝を咥えている。
 「ざっざとこのぐるじいのをなんどがずるんだぜぇ・・・めいれいなんだぜぇ・・・!!」
 「まりさ。あなたはむれのおきてをやぶったわね」
 「うるざいんだぜぇ・・・!おいじいものはぜんぶばりざざまのものにきまってるんだぜぇ・・・!!」
 「・・・むれのおきてはたったふたつよ。そんなのもまもれないの?」
 「だばるんだぜぇ・・・!いいがらはやぐばりざざまをたすけるんだぜぇ・・・!!」
ふぅ、とため息を一つつくと、ぱちゅりーはまりさに質問した。
 「『ゆっくりごろしをやってはいけない』。ひとつめのおきてね。
あとひとつのおきてをおぼえているかしら?まりさ」
 「ごちゃごちゃうるさいんだぜぇ!おきてなんてわすれちゃったしどうだっていいんd」
 「『かきさんはえっとうのためのほぞんしょくにすること』。まりさ。むれのおきてはぜったいよ」
 馬鹿丸出しの答えを返すまりさに最後まで言わさず、ぱちゅりーはまりさの底部に枝を突き刺した。
これでもう、ゆっくりは跳ねることができない。
 「ゆぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!!いだいんだぜえぇぇええぇぇぇ!!!」
絶叫。まりさの顔が驚きの色に染まる。
何故?どうして?ぱちゅりーはなんでこのまりささまにこんなことするの?
客観的に見れば何も疑問は無いわけだが、ゲスが自分を省みることなどするはずもない。
ぱちゅりーとは違うんです。まりさは自分を客観的に見られないんです。
 「なにずるんだぜえぇぇ!!!おさのくせにむれのゆっくりにこんなことじていいとおもっでるんだぜ
ええぇぇぇぇ!?」
なので、このまりさが次に選ぶ行動はぱちゅりーを罵ること一択ということになる。
 「このむれはじゆうなむれよ。だからこそ、たったふたつしかないおきてもまもれないゆっくりはいらないの」
ぱちゅりーは淡々とまりさの底部を傷つけていく。
 「じねええぇぇぇ!!げすなぱちゅりーはじねえええぇぇぇぇ!!!!」
しばらくはぱちゅりーを責め続けていたまりさだったが、底部に何度も枝を突き刺され完全に底部が
破壊されると「ごめんなさい」を連呼するようになり、
体中を突き刺され髪を滅茶苦茶に引っこ抜かれる頃には、涙を流して哀願の台詞を叫び狂うようになった。
 「ずいまぜんでじだ!ばりざがばちがってばじだ!!これからはもうおきてをやぶりまぜん!!
だがらゆるじでええぇぇぇぇ!!!だずげでよばぢゅりぃぃ!!!」
だがぱちゅりーはそれ以上何も喋らず、その行動も止まらない。髪を滅茶苦茶に荒らし終わると、
ゆっくりにとってある意味では命にも等しいお飾り・・・まりさ種の場合は帽子だ、を口にくわえた。
 「なにずるんだぜええぇぇぇ!!ばりざのずでぎなおぼうじがえずんだええぇぇぇぇぇ!!!!」
それに対してぱちゅりーは、
 「あなたはさいしょのおきてやぶりだから、みんなへのみせしめになってもらうわ。にどとゆっくりは
できないけど、あなたがわるいんだからりかいしなさい」
そう言って、まりさのお帽子を引き裂いた。
 「ああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー!!!
ばりざの!ばりざのずでぎなおぼうじがあああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!」
大口を開け絶叫するまりさ。滂沱と涙を流すその哀れっぽい姿を一顧だにせず、ぱちゅりーは
まりさにぼろぼろになったお帽子をかぶせ直した。
これで、他のゆっくりから見てもこのまりさは「まりさである」と認識できるようになる。
帽子はボロボロの上全身傷だらけの、とてつもなくゆっくりしていないゆっくりとして、だが。

 「どぼじで・・・どぼじでごんなごどにぃ・・・・・・」
ぶつぶつとうわ言を呟きながらなおも泣き続けるまりさ。そのまりさを見てぱちゅりーは満足そうに
一つ頷くと、一人ごちた。
 「これでかきさんにてをだしたゆっくりがどうなるか、みんなよくわかるでしょう」
そうして最後にまりさの口を潰し、つっかえ棒をして口を閉じられないようにした。

 「「「「なにごれえええぇぇぇぇぇ!!??」」」」
翌朝。群れのゆっくりが長の作業場で見たものは、変わり果てたまりさ。

 「なんでこんなことになってるのぉ!?」
 「このまりさはむれのおきてをやぶったからよ。まりさ、むれのおきてはちゃんとおぼえてる?」
がたがたと震えながらも質問してくるまりさにぱちゅりーは質問を返す。
 「え、『ゆっくりごろしはゆっくりできないよ!』と『かきさんはえっとうのときにたべること』だよ!
それよりまりさのことをせつめいしてね!」
 「じゃあ、わかるでしょ?まりさはおきてをやぶったのよ」
 「でも、あのまりさはとってもつよくて・・・・・・」
 「むれのためならぱちぇはいくらでもつよくなるわ」
 「おさ・・・・・・ほんとにおさがやったの?」
 「そうよ。でもしんぱいすることはないわ。ぱちぇはむれのおきてをまもるいいゆっくりには
なにもしないもの。いままでだってそうだったでしょ?」
 「「「「「ゆぅ・・・・・・」」」」」
 「だからみんなはがんばってかりをして、かきさんをたのしみにしていればいいのよ」

 そうして柿を盗もうとする個体はいなくなった。
一罰百戒。「あのまりさ」を苦も無くせいっさいしてしまった長の逆鱗に触れることを、村の誰もが恐れたからだ。
ぱちゅりーは悠々と、淡々と作業を進め続け、お帽子を破られ食事も与えられず放置され続けたまりさは
涙をこぼし続け、衰弱し続け、口中から水分を奪われてかさかさに萎びていった。

 一週間が過ぎた。
ぱちゅりーは毎日頑張っているが、皮むき作業はようやく3分の1といった所だ。
干し柿は皮をむけばそれで終わりというわけではなく、皮をむいた柿は干さないといけない。
それに、雨が降ったら取り込まないといけない。
それらの作業のせいで、皮むきに使える時間は日々減っていく。
 ひたむきに作業を続けるぱちゅりーに声をかけるゆっくりがいた。正確に言うならゆっくり「たち」か。
 「ぱちゅりー!かきさんをあじみしにきてあげたよ!」
いつぞやの頭に茎を生やしていたれいむだ。今はもう茎を生やしてはおらず、代わりに赤ゆっくりを20近く
連れている。どうやら2回目のにんっしんっとしゅっさんっをしたらしい。
それだけならば良いのだが、今回はそれに加えて夫らしいまりさ、さらに唆して連れて来たらしい
一目見ただけでゲスと分かる、ひん曲がった馬鹿面をしたゆっくりたちを10近く連れてきていた。
どうやら柿を食うことを待ちきれなくなったらしい。数さえ集めればどんな要求でも通ると思っているのだろう。
 「・・・・・・あじみはまにあってるわ」
長ぱちゅりーは冷たく言うが、数を恃んで気が大きくなっているゆっくりたちは、ぱちゅりーの言うことを
聞く様子なぞ微塵も無い。
 「いいからかきさんたべさせるんだぜ!」
 「あじみをしてあげるんだよ!りっぱなおしごとだよ!」
 「なんでもいいからかきさんちょうだいね!」
 「そんなことよりおうどんたべたい」
口々に身勝手な要求を繰り返す。ひとしきり騒いだ後、夫まりさとれいむが
 「ぱちゅりー!これだけいっぱいのゆっくりがほしいっていってるんだぜ!あじみだからもんだいないんだぜ!」
 「あんまりききわけがないようだとせいっさいっすることになるよ!!このかずにかてるとおもってるの!?」
と最後通牒を突きつけた。

 「・・・・・・しかたないわね。かきさんをあじみさせてあげるわ」
ぱちゅりーは半眼で言った。
 「ただしひとつだけじょうけんがあるわ」
 「じょうけんなんてだせるたちばだとおもってるのおおおぉぉ!!!??」
 「いいからかきさんあるだけよこすんだぜええぇぇぇぇ!?」
 「あなたたちがゆっくりしてるならなんてことはないじょうけんよ。あなたたちはゆっくりしてないの?」
「ゆっくりしていること」。それはゆっくりにとって共通のアイデンティティー。それを揺るがすぱちゅりーの
言葉は全員が激昂させ、「そんなものはゆっくりしている自分には簡単だ」と考えさせた。
 「まりさはゆっくりしてるに決まってるんだぜ!?」
 「ぱちゅりーのくせになまいきだよ!さっさとじょうけんをいってみてね!!」
 「かんたんよ。ゆっくりしているゆっくりなら、おいしいものをたべるときはさいしょにみんなでそろって
『いただきます』をいうものよ。ぱちぇのだすじょうけんは、たったそれだけ。ゆっくりしている
あなたたちにはかんたんよね?」
 「そんなのらくしょうなんだぜ!」
 「そんなことでいいならじょうけんをきいてあげるよ!れいむたちはやさしいからね!!
そのかわりにかきさんはいっぱいだよ!!!」
 「すきなだけたべるといいわ」
交渉成立。ぱちゅりーはため息をつくと、馬鹿どもに与える柿を選別しにかかった。

 「まちきれないよ!あーn」
 「あなたはゆっくりしてないゆっくり?」
 「とってもおいしそうだよ!」
 「すぐにわかるわよ」
 「かきさんをひとりじめしてたぱちゅりーははんせいしてね!」
 「はいはい」
つまみ食いをしようとするゆっくりをいなし、罵声を浴びせてくるゆっくりを黙殺し、
ゆっくりたちを横一列に並べた後ぱちゅりーは柿を全員に配った。
一匹に一つ。赤ゆっくりには全員で3つ。全て皮つきのものだ。
 「さて、みんなでたべましょうか」
柿を配り終えたぱちゅりーが言った。自身の前に柿は無い。
 「はい。じゃあみんなでこえをあわせて『いただきます』」
 「「「「「「「「「「「「「「「「ゆっくりいただきます!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
全員が喜色満面、一飲みにする勢いで柿に食らいつき、
 「「「「「「「「「「「「「「「「ゆげえええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
全員が一斉にそれを吐き出し痙攣を始めた。
 ぱちゅりーは冷たい目で全員が動けなくなったことを確かめ、症状の軽そうなゆっくりには
追加で柿を口の中に放り込んでからそこらに落ちている枝を拾うと、手早く全員のあんよを切り裂いた。

 要するにぱちゅりーのとった作戦は、「柿を全員に、一斉に喰わせること」だ。
バラバラに喰い始めれば、柿の危険性に気付く個体が出る。
柿の秘密を守るためにも、逆切れしたゆっくりから身を守るためにも、襲ってきた全員を一斉に
行動不能にしないとといけない。
 一匹のゆっくりが多数のゆっくりと戦って勝てる道理なぞありはしない。
それでも勝たないといけない以上、容赦などという言葉が入り込む余地は、どこにもない。

 「どぼじでごんなごどずるのおおおおおおぉぉぉ!!!??」
 「どくをたべざぜだぱぢゅでぃーはゆっぐりじねえええぇぇぇぇ!!!!」
 「いだいよおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
 「やべでええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
 「あなたたち、かきさんをぜんぶたべちゃうつもりだったでしょう?」
 「ちがいますうううぅぅぅぅぅぅ!!!ちょっとだけあじみするつもりだったんですうううぅぅぅぅぅ!!!」
 「さからったらぱちぇをつぶしちゃうつもりだったでしょう?」
 「ぞんなごとありまぜんんんんんんんん!!!!!!!!!」
 「あなたたち、まりさがどうなったかしってるわよね?」
 「「「「「がわいいでいぶばりざありずをだずげでええええぇぇぇぇぇ!!!!!」」」」」
ぱちゅりー、にっこり笑って死刑判決。
 「あなたたちもおなじようになるのよ。かきさんおいしかった?」
 「「「「「「「「「「ゆっぐりいいいいぃぃぃぃーーーー!!!!!」」」」」」」」」」」

一週間前と同じ虐待が繰り返され、まりさには大勢のお友達が増えた。

 さらに1週間が過ぎた。
群れのゆっくりは越冬のために忙しく餌を集め回っている。
だがその働きぶりは他の群れと比べると、いや一般的なゆっくりの生態から見ても、とても
「ゆっくり」としたものだった。
一部の優秀な個体を除き、誰もがのんびりと餌を集めている。貯め込むことはほとんどしないし、
無理をして美味しいご飯を採ろうともしていない。
そして、食料問題は解決したと言わんばかりに子供を作る家族が激増した。
 諍いも減った。もともとゆっくりが争う理由なんて食料かつがい問題ぐらいのもの。
採ろうと思えばいつでも採ってくることのできる食料と、その潤沢な食料
(越冬用に貯蔵しなければ、事実上秋は餌なんて食い放題だ)を背景にしたたくさんの子供に
囲まれれば、大多数のゆっくりはむやみに他のゆっくりと争おうとは思わないものなのだ。
ゲス資質を持つ個体の多くがぱちゅりーの柿を盗みに行って撃退されたせいで、
群れに比較的善良な個体が多くなっているということもある。
というわけで個々の家庭の事情はあるだろうが、概ね群れは平和だった。
全ては、「ぱちゅりーの『かきさん』はいつか自分のものになるんだよ!」という心の余裕の産物だろう。

 ぱちゅりーは淡々と作業を進める。
削り、干し、取り込む。それと同時に柿を奪おうとしたゆっくりの手入れもしていた。
 馬鹿は時々やってきた。
極悪なゲス個体が排除され、つるむことで調子に乗るゲスが一網打尽にされた後は、
つるむ仲間も突き抜けたゲス資質も持たない有象無象が、単独か多くて2、3でやってきた。
そんなものは、ぱちゅりーは歯牙にもかけず、全て足を潰され口に棒きれ突っ込まれて放置された。
そうしてさらに一カ月が過ぎ全ての干し柿が完成するころ、餌を与えられず生きたまま萎びていく
「干しゆっくり」は、その数30を超す大所帯となっていた。
十分に干し上がったその姿はもうほとんどゆっくりの面影をとどめておらず、帽子が無ければ
同じゆっくりであっても、彼女らを同属とは認識できないかもしれない。

 「きょうからみんなで『えっとう』にはいるわ!」
キンと冷えたある朝、白煙たなびく冬の山。
群れの全員を広場に集め、ぱちゅりーが叫んだ。びゅうびゅうと木枯らしが吹きすさび、
鮮やかな地の恵みはとっくの昔に素っ気ない落ち葉に変わっている。
これ以上餌を採り続けることは不可能だ。
 「それじゃあこれからみんなにかきさんをくばるわ!
かぞくのだいひょうゆっくりはぱちぇのまえにゆっくりならんでね!」
強盗ゆっくりへの毒餌、不衛生な製造環境による腐敗等の原因のため、最終的にできた干し柿の数は
100を切っていた。爆発したゆん口のため、一匹に一個も行きわたらない。
そのためぱちゅりーは、「一家族に何個」という方式で分配することにしたのだ。

 「はい。あなたのかぞくのぶんはこれだけよ」
ぱちゅりーは最初の家族に干し柿を1個渡した。今の群れの世帯数は60弱であり、妥当な数だ。
だが、渡された方はそうは思わなかったらしい。
 「なんなのごれえええぇぇぇぇぇ!?」
にこにこと笑いながら柿を受け取ろうとしたれいむが絶叫する。
 「なんでいっこじがないのおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!??」
 「かきさんはむれのみんなでわけるからよ」
 「こんなちょっとでえっとうできるわけないでしょおおおおおおおおぉぉぉぉ!!?」
 「えっとうようのしょくりょうはかきさんだけをあてにしないでじぶんであつめなさいって、ぱちぇはずっと
いってたでしょう?」
 「なにいっでるのおおおぉぉぉ!!??でいぶにはかわいいおちびちゃんもかっこいいはにーも
いるんだよおおおおぉぉぉぉ!さっさとそのかきさんちょうだいねえぇぇぇぇ!!ぜんぶでいいよ!!!」
 「あげられるわけないでしょう?」
叫び散らすれいむを見、会話の内容を聞いた後続のゆっくりが不満が爆発させた。
自分で越冬用の食料をきちんと備蓄し、嗜好品として干し柿を受け取ろうとしていた個体と違い、
頭の悪い個体は「越冬の食料はぱちゅりーが全部くれる」と理解していたためだ。
 「いいからそのかきさんぜんぶよこしてねええぇぇぇぇぇ!!!」
 「えっとうのためのしょくりょうはかきさんだけでいいってぱちゅりーいったんだぜええぇぇ!!??」
 「まりさがどれだけかきさんをたのしみにしてたとおもってるのおおおぉぉぉ!!??」
 「おさはいなかものよ!」
 「ちーんぽ!!」
殺気立つ群れのゆっくり。家族の代表のつがいと子供は、ゆっくりさせてくれないぱちゅりーを弾劾
するために家族で固まりシュプレヒコール(というよりはただの罵声)を上げ、
賢い個体は惨劇の予感に「そろーり!そろーり!」とその場を逃げ出そうとする。賢い個体は
子供を作っていないため、フットワークも軽いものだ。
群れの馬鹿個体の怒りを一身に受けるぱちゅりーは、周りを見まわすとため息を一つつき、
 「かきさんはかぞくにいっこ。それいじょうはあげないわ」
きっぱりと言い切った。

 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「☆○□※※※▼○□!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 暴動に発展しようとする群れ。その時彼方から大きく響く声が聞こえてきた。

 「「「「うー!うー!!」」」」

ゆっくりふらんが4匹、群れの広場に四方から乱入して来た。

 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ふらんだああぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
怒りに燃える頭を一瞬で冷まさせられたゆっくりたちは、蜘蛛の子を散らすように逃げだした。
 「うー!しね!しね!!」
列の先頭にいたれいむが噛みつかれ、持ち上げられ、地面にたたきつけられた。
 「ばかはしね!」
ひときわ大きい声でぱちゅりーを罵っていたまりさが一齧りで体を4分の1ほど削ぎ落された。
 「おいしくないからしね!!」
子供を口の中に入れようと大口開けていたれいむが上唇にかぶりつかれ、そのまま体を上下泣き別れに引き裂かれた。
 「にげるやつはしね!!」
即座に家族を見捨て逃走しようとしていたまりさがお帽子を取られて泣き叫んだ。

 阿鼻叫喚の渦に叩き込まれる群れ。良く見るとふらんたちの動きは「喰うこと」ではなく「殺すこと」
に主眼が置かれており、なおかつその狙いは「子供を持ったゆっくりの親」だけであることが分かるのだが、
当のゆっくりたちにとってはそんなことに気を回す余裕なぞ無い。
殺戮の嵐から単身逃げるもの、子供を口に入れて護ろうとするもの、
その場で泣くばかりのもの、涙を浮かべながらも戦おうとするもの。
反応は様々だが、4匹のふらんはそれらの全てを嘲笑い、全て平等に喰らい尽くしていく。
 捕食種と呼ばれるゆっくりは、通常種に対して絶対的な生殺与奪の権を持つ。
人間から見れば所詮ゆっくりはゆっくりでありその個体能力の差は大したものには映らない。
しかし通常種ゆっくりには。

空を飛ぶ力
饅頭の皮を易々と引きちぎる牙と咬合力
通常種の攻撃を退ける硬い皮
少々の傷をものともしない再生能力
通常種にとってそれらはまさに同じゆっくりでありながら別種、天敵の証であり、
餡子の奥の奥まで刻み込まれた「恐怖」そのものなのだ。

 群れの成体ゆっくりの実に6割近くを惨殺した後、ふらんは唐突に飛び去って行った。
広場には夥しい量の餡子が散らばり、赤、子ゆっくりの甲高い声が響いている。
そんな地獄の真ん中で長ぱちゅりーは、顔を伏せすすり泣きを漏らし続けていた。

 「かなしいじけんだったわ・・・・・・」
混乱が去った後、ぱちゅりーは改めて群れの全員を広場に集めた。そこかしこに死臭が漂い
とてもゆっくりできないが、ふらん襲撃による被害を把握し、善後策を取らないといけない。
 「むれのおとながはんぶんいかになって、こじゆっくりがたくさんでてしまったわ。みんなどうしたらいいとおもう?」
 「いいきゃらしゃっしゃとれーみゅをゆっくりさせちぇにぇ!!」
 「まりしゃはこじなんだじぇ!かわいそうなんだじぇ!!」
 「かなしみをいやすためにあまあまがひつようだにぇ!!」
 「そうだよ!あまあまたべちゃいよ!!」
 「おにゃかすいちゃ!!あまあまもっちぇこい!!」
数百の赤、子ゆっくりが口々に自分の要求を叫ぶ様はいっそ壮観と言っても良いだろうが、残された成体
ゆっくりにとってそれらはすさまじい頭痛の種だった。
 「ゆぅ・・・・・・こんなにあかちゃんのめんどうをみられないよ・・・・・・」
群れで一番狩りが上手なまりさが困ったように言う。
 「かわいそうだとはおもうけど・・・・・・うちではひきとれないよ・・・・・・」
群れでは保母の役割を果たしており、目が回るほどの忙しさで働いてきたれいむが言う
(なにしろ群れの子供は腐るほどいて、ついでに大半の性根が腐っている)。
 「でも、みすてるのはとかいはじゃないわ・・・・・・」
こーでぃねーたーとして餌取りの傍ら巣の装飾品を集め、群れの文化度に貢献して来たありすが言う。
ここにいるゆっくりのほとんどは「自ら餌のとれる」、「きちんと越冬準備を終えている」固体だ。
群れの仲間が子供を産んでは食っちゃ寝する様を見せつけられてもきちんと自分のなすべきことを
やり終えた頭の良い個体でもある。
だからこそ。
だからこそ彼女らは赤ゆっくり、子ゆっくりに何もしてやることができない。
自分たちが持っているものがどれだけの量なのか正確に知っているから。
施しを与えれば、自分たちが越冬に失敗することを知っているから。
 だが善良な個体は、いやほとんどのゆっくりはゆっくりできる赤、子ゆっくりが大好きだ。
見捨てることには大きな抵抗がある。だからこそ悩み、困り果てている。

 群れの成体は頭の中身がすかすかな赤、子ゆっくりの罵声を無視し、それでも彼女らを
助ける方策を考えつづけた。侃々諤々の議論の末、最後にぱちゅりーが言う。
 「むきゅ・・・・・・やっぱりこどもたちにはじぶんでえっとうしてもらうしかないわね」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ど」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ぼ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「じ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「で」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ぞ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ん」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「な」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ご」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
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「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ー」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

その結論が下った瞬間、喉も張り裂けんばかりに叫ぶ数百の一口~普通サイズ饅頭。
そりゃぁ「」の数もすごいことになろうというものである。
 「「「「「でも・・・・・・」」」」」
成体ゆっくりたちは顔を曇らせるが、ぱちゅりーはしっかり目を開け、真っすぐに言う。
 「ぱちぇはちびちゃんたちをみすてようっていってるんじゃないわ。このこたちのおやがあつめた
たべものをぜんぶあつめて、ぜんいんまとめていっかしょでえっとうさせましょう」
 「で、でもそんなひろいおうちなんて・・・・・・」
 「ぱちぇのおうちをつかえばいいわ。ぱちぇはほかのあいてるおうちをつかうから」
 「で、でもあのこたちのおやがあつめたごはんさんなんて・・・・・・」
 「えっとうのじゅんびができてないいえがそんなにいっぱいあるわけないじゃない?」
詭弁だ。今いる子供たちの親がまともな越冬準備をしていないことなどここにいる全員が
知っている。
 「ふあんなら、こうしましょう。ほしがきさんをこのこたちにぜんぶあげるの」
 「「「「「「!!!!」」」」」」
成体たちに衝撃走る。
そうだ。干し柿さん!山盛りの干し柿さん!!これがあればきっと子供たちは越冬に成功できる!!
そうきっとできる!できてくださいおねがいします!!!!
成体ゆっくりは全員がそう願った。心の奥では不可能だと知っていても、自らの罪悪感を消すために。
 「そうだね!ほしがきさんをぜんぶあげればみんなえっとうにせいっこうっできるよ!!」
 「おさはやっぱりあたまがいいんだぜ!!」
 「とってもとかいはなていあんだわ!!!」
 「じゃあ、きまりね」
ぱちゅりーは子供たちに向き直ると朗々と話しだした。
 「あなたたちはこれからぜんいんでえっとうすることになるわ!
つらいこともあるでしょうし、くじけそうになるかもしれない。でも、あなたたちにはほしがきさんがあるわ!
あなたたちのおやがのこしたごはんさんとほしがきさんをたべてえっとうにせいこうすることを、
わたしたちはみんなねがってるわ!!」
 「ほしがき!ほしがき!!」
 「はやくちょうらいにぇ!!」
 「おさもたまにはやくにたつんだじぇ!!」
 「んほおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
そういうことになった。

 群れは主のいない家から餌を運びだし(笑ってしまうほど少なかった)、長の家、
群れで一番広いお家に集めた。
そして三々五々散っていき、全員巣の入り口を閉じて越冬に入った。

 子供たちを全て巣穴に放り込み越冬の心得を教え込んでいる最中、一匹のれいむが現れた。
保母をしていたれいむだ。
 「ぱちゅりー!れいむはやっぱりおちびちゃんたちとえっとうっするよ!!」
 「れいむ・・・・・・」
 「わかってるよぱちゅりー。なにもいわないで。でもれいむはやっぱりおちびちゃんたちをみすてられないんだよ」
 「いいの?」
 「いいんだよ。れいむはほぼさんだからね!!」
 「・・・・・・ほんとうにいいの?」
 「いいんだよ!!れいむはこうかいしないよ!!!」
 「そう・・・・・・」

 ぱちゅりーが悲しそうに目を伏せた瞬間、3匹のふらんが再び群れに侵入した。

 「「「「「「「「「「「「「「「「どぼじでふらんがまたくるの(にょ)−−!!!!??」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 「おちびちゃんたち!はやくすのおくににげてね!ここはれいむとおさがまもるからね!!」
自身の混乱は一瞬。れいむはそう言うと冷静に狂乱する子供たちを巣に押し込み、巣の入り口でぷくーを始めた。
 「みんな!ふらんがまたきたわ!!すのおくににげてかくれてね!!」
 「「「「「「「「「「「ふらんごわいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」」」」」」」」」」
長ぱちゅりーはあらん限りの声を張り上げて群れのみんなに注意を喚起した。
 「たーべちゃうぞー!!」
 「うー!うー!!」
 「しねっ!しねっ!!」
ふらんは巣の一軒一軒を巡るように飛び回り、大声でゆっくりたちを脅す。
しかし、巣を破るために具体的な行動に出ようとはしなかった。

 ふらんが大声を上げて群れ中を飛び回る中、3人の人間の男が元長のお家に向かってきた。
一人は肩に一匹のふらんをとめている。
 「ふらん。れいむは食っても良いぞ。ぱちゅりーはだめだ」
 「うー!」
男の許可を得た途端、ふらんはれいむに飛びかかり、齧りついた。
 「うわあああぁぁぁぁ!!!いだいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!」
 「むきゅ・・・・・・」
ぱちゅりーはそれを悲しそうに見つめる。助けようとはしない。
 「だずげ!ぱちゅでぃ!でいぶを!だずげ!!なんで!?どぼじででいぶだげ!?」
ぱちゅりーは眼を伏せ、体を震わせはじめる。
 「うらぎっだの!?ぱぢゅでぃは!でいぶだぢを!?ばぢゅでぇ」
 「煩い。さっさと殺せふらん」
男が命令した瞬間、ふらんはれいむの餡子を一気に吸い取った。

 「うだぎりぼど・・・・・・」
もっとゆっくりしたかったでも、なぜれいむが、でも無い。
ぱちゅりーに対する殺意と怨念を残してれいむは死んだ。

 「よぉぱちゅりー。久しぶりだな」
 「こんにちわ、おにいさん・・・・・・」
ぱちゅりーはおどおどと男を見上げる。
 「まぁ積もる話もあるが、先に仕事済ましちまうわ」
男たちはそういうと、大きな大きな、人間でもすっぽり入るほど大きさの麻袋を取りだし、
巣にいる子供たちをまとめて袋に詰め込みだした。
 「にゃにしゅるのじじい!!」
 「はにゃすんだじぇ!!」
小粒饅頭は口々に騒ぐが、
 「うー!うー!!」
ふらんの声を聞くと金切り声で「ふらん怖い」を叫ぶだけになった。
男は鼻歌交じりで赤ゆっくりを袋に詰めていく。
その間に後1人の男がぱちゅりーに話しかけた。
 「おいぱちゅりー、あれはどこだ?」
 「むきゅ、こっちよ・・・・・・」
ぱちゅりーはぽいんぽいんと跳ねていく。
 「じゃあ行ってくるわ」
 「「ん」」
赤ゆっくり拾いをしていた男と麻袋が倒れないように持っていた男に短く伝えると、
男はぱちゅりーについて行った。

 「ゅ・・・・・・ゅ・・・・・・」
 「おぉ、ちゃんと生きてるな。でかしたぞぱちゅりー」
男がぱちゅりーに連れられて来たのは、干しゆっくり置き場だった。
しわしわに干からび、喋る気力も無いが確かに生きてる干しゆっくりたちがそこには大量に並んでいる。
男は30以上あるそれを丁寧に袋詰めすると、嬉しそうに頷いた。
男たちがここに来た目的は、干しゆっくりだったのだ。

 そもそもの始まりは、畑を荒らし山林の資源を食いつぶすゆっくりを根絶以外の方法で
どうにかしようという試みだった。
最初は村の予算でふらん種を4匹買い畑の警備をさせることにした。それはある程度の成果があったが、
しょせん4匹では護れる範囲に限界がある。
それに加えて、一つの問題があった。
冬の間におけるふらんの食料調達の問題だ。
ふらん種は攻撃衝動がとても高い。その衝動をゆっくり相手に定期的に発散させてやらなければ、
衝動を持て余して人間に反抗するようになってしまう。
そのため冬の間中、「生きているゆっくり」を餌として調達する必要があった。
ふらんの「食事」はただの栄養補給ではなく、本能発散の場でもあるからだ。
最初は人間が山に入ってゆっくりの巣をほじり返して採ってきていたが、それはいかにも効率が悪い。
村で頭を捻った結果、「低コストでゆっくりを生かし続ける方法を探ろう」ということになった。
そしてそれは、笑ってしまうほど簡単だったのだ。

 「動けないようにしたうえで、口を開けさせて体全体を乾燥させる」。たったそれだけのことでゆっくりは
生きたままの長期保存に耐えることがわかってしまったのである。

 ゆっくりを底部を破壊するなどして動けないようにすると、ゆっくりは自身の体の代謝を傷口を除いて
極端に低下させることが知られている。
動けるようになれるようになるまで無駄なエネルギーを使わず、傷の修復に全力を使うためだろう。
水分、餡子。その二つからどうやって皮を修復するのかは分かっていないが、
「ゆっくりは皮を修復するために水と餡子が必要」だ。
では、餡子はあるが水が無い。そういう状態に陥ったら?
答えは干しゆっくり。ゆっくりは自身の代謝を極端に落とし、仮死状態になって死か水を待つのだ。
その状態で大量の水に会えば溶けてしまうが、適量の水をかけてやれば、驚くほどピンピンして生き返る。
単純な生物だけに、無駄に生命力は高いようだ。まぁ生き返った所で傷は治っていないから、
びぃびぃと泣き叫んでまた無駄な水分を使うのだが・・・・・・。

 しかし、そんなものすぐに飢えて死んでしまうのではないかと言う方がいるかもしれない。
あまり知られていないことだが、ゆっくりは飢えに対して相当に強い。
栄養バランスなどどうでもよくカロリーさえあれば動くことができるゆっくりは、食事ができなくなると自身の
体組織を糖に変換することで活動を続けようとする。
人間で言うなら全身がこれ脂肪(=エネルギー)の塊のようなものだからだ。

 「ゆっくりを苛めると甘くなる」というのはゆっくりを知る人間にとっては周知の事実だが、
その正確なプロセスは、「ゆっくりがゆっくりできないと感じると甘くなる」である。
その一見無意味な構造は、本来飢えに対する防衛機構としての役割を持っていたものが変化した
結果ではないか、という説がある。
その説によると、元々自然状態において一番頻度の高い「ゆっくりできないこと」とは飢えであり、
それに対抗して活動するエネルギーを生み出すためのシステムである
「お腹がすくと体組織を糖に変換する」が、何らかの要因によって
「ゆっくりできないことがあったらとりあえず体組織を糖に変換する」
にすり替わってしまったのではないか・・・・・・ということらしい。
正直に言って眉唾だが、事実として干しゆっくりは自身の餡子を糖に変換し続けることで
生存のためのエネルギーを捻出し、保存状態によっては驚くほど長く生きる。
「ゆっくりを低コストで長期保存」ができていることを考えれば、
それが事実であろうと何であろうと、村の人間にとってはどうでもいいのだった。

 ちなみに、飢えに対して強いはずのゆっくりがその性能から言うとあり得ないほどの確率で越冬に失敗
するのは、そのほとんどが越冬中の共食いのせいだ。
それも「死ぬから」ではなく、「お腹がすいてゆっくりできないから」共食いをするのだ。
つくづく業の深いなまものである。

 餌の問題は一応の解決を見た。行けるときに山に行き、とれるだけとって干しておく、という形で。
しかし、人間は不満を持ち、不満を解消するために知恵を絞る生き物だ。
案山子に餌をやるためにそんなに手間をかけたくないという考えと、「畑を荒すゆっくりの数自体を減らす」
という試みが次の段階を生み出した。
 「ゆっくり自身に干しゆっくりを作らせよう。できれば原料にゲスを使って」。
そのために様々な案が出され、検討され、一匹のぱちゅりーが選ばれた。
人間との力関係、ゆっくりを治める方法、干し柿の作り方、そしてゲスと戦う方法と干しゆっくりの作り方を
叩き込まれ、半ば人為的に群れの長の座につかされたのだ。
そうして実験的に、ゆっくりによる干しゆっくり作りが始まった。

 やってみると、これが良いことづくめだった。
まず、畑を荒らしに来るゆっくりの数自体が激減した。
ゆっくりという生き物は、元々そんなに活動的、意欲的ななまものではない。
「ゆっくりできるもの」を求めるためにあくせく働くよりは、何もせずぐだぐだとしている方を選ぶ。
今回の場合、「干し柿」という明確なゆっくりできるものが将来手に入ることが確定していることで、
リスクを冒し、畑荒らしをしてまでゆっくりできる食べ物を求めようとはしなくなったのだ。
次に、ゆっくりが山林資源を根こそぎにしなくなった。
やはり上と同じ理由で、「美味しいものを血眼で探す」ことより、
「適当にあるものを食べて柿さんを貰えるのをゆっくり待つ」ことをほとんどのゆっくりが選択したのだ。
無論、「おやさいさんたべたいんだぜ!」とか「かきさんもらえるのがまちきれないんだぜ!!」
などという個体も出る。
そう言う個体を干しゆっくりにすることにした。

 干し柿を餌にしてゲスを排除し、子供を作るかどうかで馬鹿を判断、排除する。
この方法は群れの数と質を安定させ、ゆっくりを山と人間に対してほぼ完璧に
順応させることに成功したのだ。
以来村ではゆっくりの群れの長を人間の味方に仕立て、干しゆっくりを作らせてきた。

 「むきゅ・・・・・・ことしもおにいさんのごようじはこれでおわりかしら?」
全ての仕事を終え、赤ゆっくり、干しゆっくり、干し柿の袋の口を縛っている男に向かって、
おどおどとしたままぱちゅりーが聞く。
「おわりだったら、ことしもあいずのはつえんとうさんを・・・・・・」
言いかけるぱちゅりー。だがそれを聞いた男は首を横に振る。
 「いや、お前は俺の家で越冬してもらう」
びくりと体を震わせるぱちゅりー。
 「な、なんでかしら?」
 「お前も老いてきた。新しい長を選定しないといかん。ここにいる馬鹿どもから使えるやつを
見つくろって冬の間教育するんだ」
赤ゆっくりがしこたま入った麻袋を叩いて男は言った。
 「それならぱちぇがつがいをつくってじぶんのおちびちゃんを・・・・・・」
 「駄目だな。お前の選ぶつがいとやらがお前のように聞きわけが良いとは限らないし、
ガキをお前だけで教育できるとも思えん。そもそもつがいを作ったゆっくりは、くだらないことを企みすぎる」
 「で、でもぱちぇなら!」
 「黙れ。人間に逆らうんじゃねぇよクリーム饅頭。じゃあ、行くぞ」
 「むきゅ・・・・・・」
男はぱちゅりーを持ち上げると麻袋の上に載せた。
ぱちゅりーは俯いたまま何も言わずに男のされるままになっていた。

 3人の男がそれぞれ麻袋を担いだ。撤収だ。
ふらんの飼い主らしい一人の男が口笛を吹くと、ふらんはすぐに男の元に帰って頭や肩にとまった。
 「今年も豊作だったな」
 「これで冬いっぱいふらんの餌はいらねえ」
 「しかし相変わらずゆっくりの作った干し柿ってのは不味いな」
干し柿を食い、男同士が話し合いながら山を下りていると、ふらんが騒ぎ始めた。
 「うー!うー!!」
 「おにーさん!ごほうび!!」
 「ちょーだい!ちょーだい!!」
 「あまあま!あまあま!!」
 「あぁ、そうだったな」
男は袋からクランベリーのように赤いリボンをした赤れいむを一匹取りだすと、高く放った。
 「おしょらをとんじぇるみちゃい!」
 「「「「うー!!!」」」」
4匹のふらんは男の頭と肩から飛び上がると、一斉に赤れいむに襲い掛かった。
 「ぎゃあぁぁぁぁ!!だじぇg」
一匹のふらんがいち早く赤れいむに取りつき、一飲みにした。
 「おにーさんつぎ!つぎ!」
 「ふらんもたべたい!!」
 「はやく!はやく!!」
 「はいはい。お前ら今日は頑張ってくれたからな。今日だけは赤ゆっくり食べ放題だ!」
 「「「「うー♪」」」」

 男は袋から次々と赤ゆっくりを取り出し、放り投げ、ふらんをそれを楽しそうに追う。
男とふらんが戯れるその姿を目に映しながらぱちゅりーは、
袋の中の赤ゆっくりたちの運命、そして自分の一生について思いを巡らし、静かに泣いた。







END





 あとがき
お久しぶりです。どれぐらいお久しぶりかと言うと、anko359以来?うわぁ。
久々にSSを書きたかったので書きました。楽しんでいただけたらと思います。
ついでに過去作のリストを載せておくので、よろしければそちらもどうぞ。

by ゆンテリアあき


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感想

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  • ストーリーも良かったし、途中の考察も説得力があった。 -- 2014-01-08 19:22:22
  • パチェの実子じゃなく、クズゆっくりの子供をしつけさせてもまず上手くいかないとおもうけどな。
    それで上手くいくなら逆にもっと有責な使い道があるってことだし。 -- 2011-07-14 01:19:37
  • 共存というか、家畜の仕込みって気がするな。
    ぱちぇは子孫残せなかったし。

    言うこと聞くからぱちぇの子供は優秀だと思うんだがなー
    人間の役に立つ益ゆっくりだから、ちょっとかわいそうに思えたぜ -- 2010-12-03 21:08:19
  • ゆンテリアあきの面白さは異常 -- 2010-09-28 12:59:31
  • 他のSSで人間の力を理解して、人間を手伝う事で共存するドスの群れの話があったけど
    こう言う共存方法ってのも面白いな
    突き詰めれば共存じゃ無いかもしれないけど、普通のゆっくりが何も知らずに安定して過ごせるなら十分だわ -- 2010-09-13 18:18:12
  • 人間に教わったとはいえ、このぱちゅりー凄すぎるな…。 -- 2010-08-28 13:20:27
  • 面白かった。 -- 2010-06-16 03:31:34
最終更新:2010年03月17日 17:20
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