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ツナギ、でも作業着ではないのであしからず。

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♪なっちゃん:さて、予想通りとは言え、メイド浪漫、仮。非常に更新が停滞気味ですね。

 

×セーファ:全くだ…。というわけで、何もしていないというのも困りものなんで、今回は大海の生活を見ていきたいと思います。

 

※大海:何で!? 聞いてない、聞いてないよ!

 

×セーファ:安心しろ、過大に演出かましておくから。

 

※大海:ワケわかんねぇって!

 

♪なっちゃん:大丈夫です、大海さん。

 

※大海:何がさ!

 

♪なっちゃん:…大海さんの日常なんて、本当のことを書いても、信じてくれる人は少ないですから。

 

×セーファ:…それもそうだな。

 

※大海:それのどこが大丈夫なんだ!? 信じられないならやる意味はないだろ!?

 

♪なっちゃん:やることに意味があるのです。嘘と現実が入り混じってるのか、あるいは現実にあったことしか書いてないのか、はたまた嘘しか書いてないのか…。読者自身の自由ですよ。だから、大丈夫です。

 

※大海:何故!?

 

×セーファ:…読者の自由っちゃ、まぁ、メイド浪漫自体、信じるかどうかなんて読者任せだがな。まぁ、企画ってのはたまに、やりたくもないことをやることだってあるわけだな。というわけだ。さっさと行くぞ。

 

※大海:酷いや…。うぅ…。俺だけ…?

 

×セーファ:うるせー。野郎に同情しねぇって。というわけで、嘘で塗り固めた100%偽モンな、メイド浪漫かっこ仮かっことじ、番外編。大海の日常、はじまりはじまりー。

 

♪なっちゃん:わーい。

 

※大海:ちょっと! 今、嘘100%って!

 

×セーファ:うるせ、もうはじまったんだから気にすんなや! 大体、メイド浪漫の仮に出たメイド、一部妹が関わった場面しか流さないって!

 

※大海:あーっ、この前、なっちゃんさんが一日中付きっきりだったときのか!?

 

×セーファ:気付くのが遅いぜ!

 

※大海:くっ、ほんとに嘘のこと書けよ、いくらなんでも訴えるぞ!

 

×セーファ:おぉ、うまいこと言う。訴えられたくないから、そこそこ脚色するさ、しまくるさ。18禁仕様にな!

 

♪なっちゃん:そんなことは許しません。

 

×セーファ:づぁっ!?(なっちゃんの蹴ったサッカーボールが横っ面に直撃

 

※大海:…事実を覆い隠す程度に、脚色をお願いします。

 

♪なっちゃん:お任せください。

注、この開幕の収録時にはシュニフィア不在。

 

※このお話は、一日中24時間大海に張り付いていた「なっちゃん」によるリポートがあり、それを「セーファ」が脚色したものを、更に「なっちゃん」が手直ししたものです。よって、いつもの「メイド浪漫(仮)」とは文章形式から変わっています。また、酷く身内ネタが多く、これを掲載したサイトによっては「誰?」と思われるような人が何人か出てきます。『身内ネタ? イラネ』とか『そもそもシュニフィアとか人物自体うさんくさいし』とか興味出ない人は読む必要ないですし、というかそもそもこんなものは読む価値すらありません。片手間よりも暇なときに読むぐらいの気で一気に読み進めてみてください。それでは、はじまります。

ちなみに、収録は平成20年2月某日。

 

犠牲者詳細:大海

 メイド浪漫(仮)、メイド議談の企画においては最大の功労者。この人の家にメイドが居たことにより、企画ができたと言える。本人は至って普通なのに、周辺の人がセーファをはじめ奇人変人が多いために、「普通」であることがおかしく見えてしまうという不遇な人。ちなみに、この企画は投票で決められており、MSTというゲーム内で、『島袋大海の私生活バラし V.S. シュニフィアのメイド浪漫(仮)出演予定者一気に紹介』というタイトルの大会において、島袋大海の私生活バラし組が勝利したために実行された。

 

AM5:30 一日のはじまり

2月某日、早朝のことだ。早朝と言っても、外はまだ暗いものの、新聞配達は終わっているし、部活の朝練がある人たちも既に置きだした後、という微妙な時間ではある。

がちゃっ、とドアノブを回す音。それは起きている人にとっては物音として注意がいくものの、寝ている人を起こすような音ではなかった。

そのような音を立てて部屋に入ってきた人は女性である。その彼女について語れば、顔はそこそこ、背丈も平均的という特徴がない女性だと言える。それでも彼女が彼女だとはっきり言えるような特徴がないわけではないが、それは本人にあるのではない。その彼女の特徴は、無駄とも言えるほど大きな、ピンク色をしたリボンを付けていることだ。そして、そのリボン以外で、彼女を判別できる点を挙げるとすれば、彼女がメイド服を着ていることだけだろう。そのメイド服は、白を基調として、ところどころにエメラルドグリーンとサファイアブルーが散見できた。テレビなどで見るようなメイド服と違い、ヒラヒラしたレースはほとんど使用されていない。もっとも、彼女の友人が言うには「ありえない色の使い方をしているメイド服」ということだ。余談だが、そのメイド服は着ている本人によるカラーコーディネイトのはずで、そういう色を平気で使うのが、この女性のセンスだった。

そのメイド服の女性は、後ろ手でドアを閉めるような不躾なことをせず、ちゃんと振り返ってからドアを閉めた。そして一呼吸置いてからまた振り返り、部屋の奥にあるベッドに向かって進んでいく。

『マスター、マスター。朝ですよ』

彼女はベッドにまで辿り着くと、そこで布団を抱きしめるようにして寝ている男性…ネットでは大海と呼ばれている人だが…の肩に手をかけると、声をかけながら揺さぶった。

『う…。うん?』

少し間があって、大海が返事をした。

『マスター、朝です』

『うー…。うん。ん、んっー!』

メイド服を着た彼女の断定に、大海は寝転んだまま伸びをした。「あと5分…」と渋る様子もなく、大海は目が覚めたらしい。

『おはようございます、マスター』

彼女の方に目を向けてきた大海に微笑して、目礼して挨拶をする。略式ではあるものの、礼儀は礼儀だから、それは問題ない。

『おはよ、シュニフィア』

『はい』

彼女、シュニフィアが顔を上げるのを待ってから、大海も挨拶した。

『ふぁぁ…。…うー、眠い…。そして、寒い…。』

『動いていれば、覚めます。それに、姉さんがコーヒー淹れてくれますよ。』

まだベッドでぐずついている大海をあやすような口調で、シュニフィアは部屋のカーテンを開けていく。この部屋は2階で、いつもならカーテンからは海と山が見えるはずだが、この時間帯ではよく見えない。だから、カーテンを開くこと自体には意味がない。

それでもカーテンを開くのは、シュニフィアがカーテンを開けている間だけ、大海はベッドに居座ることを許されているからだ。

『そうだねー…。起こしてくれてありがと、シュニフィア。着替えてから行くよ』

シュニフィアがカーテンを開けて、ドアの近くにまで行く頃には、大海も気持ちを切り替えられた。

『はい』

大海の言葉に頷いてから、一礼してシュニフィアは部屋を出て行く。

『…さて、今日も一日がんばるかなー。』

…こんな感じで、日常に「メイドが居る」という非日常を送る大海の一日がはじまった。

 

 AM11:55 妹たちのお迎えに

『今日のノルマ終わったー!』

机の上にある、大量に散らばっていたプリントをまとめながら、大海は嬉しそうに叫んだ。

一大学生であっても、大海は既に職に就いているから、今日のように大学が休みのときに一気に終わらせるようにしていた。

『…幼稚園に、お迎えに行きますか?』

大海の叫び声を聞いたからかもしれないが、こちらに来て大海に話しかけてきた女性もメイドなのだが、メイド服は着ておらず、私服だ。

家から出る場合、メイド服は脱ぐようにしているのだ。

『そうだね。みんなもそろそろ終わる頃だし。明日美さん、車、お願いできる?』

早生まれだった大海は、大学受験のときにいろいろあって、車の免許を取れていない。取りに行こうとは思うものの、大学に入るのと同時に就職してしまったので忙しく、免許を取るタイミングを完璧に失っていた。せめて、職が車を必要にしていれば免許を取る機会もあっただろうに、前述のように在宅でできるような職だったのが不幸だった。

『はい。お任せください』

面倒くさがって免許を取れていない、というわけではないことを知っているから、明日美のように免許を持っているメイドはなるべく大海の外出には車を出すようにしている。

今回の妹のお迎えは、幼稚園の後に保育園まで回るので、どうしても車が必要だった。

…家庭の都合というか、兄の都合の所為で、迎えに行く人数も1人や2人ではない。

『…免許、取らないとなぁ』

もっとも、メイドの仕事だってそれなりに理解している大海にしてみれば、「仕事の邪魔をしているのではないか」と思うから、申し訳ないと感じている。

『ふふ。大丈夫ですよ。どこに行くにしても、私が居ますし、他の人も居ます。行きたいところへ、いくらでも行けますよ。それに、行けないときはきちんと言いますから、遠慮せずに申し付けてください』

『うーん。それはそれでヒモとかみたいで何だかなぁ。とりあえず、行こっか』

もっとも、申し訳ないと思っていても、いつも明日美のように笑ってフォローされると「このままでいいか」と思ってしまうようで、結局「免許を取りに行く」ということが実行できていない。

『はい』

もっとも、他人から見れば、免許を持っているメイドの多くが、大海に免許を取って欲しくないようにも見えるわけで。

 

 PM3:45 ちょっと訓練

『行くぞっ』

短く息を吐いて、大海は木刀を構える。訓練と言っても軍ではないし、体力づくりといった程度のものがメインで、今からやるチャンバラモドキはほとんど遊びの領域だ。セーファと大海の勝負は前座で、このあとに受ける師匠との戦いのためのウォーミングアップのようなものだ。

だから全力でやる必要はないものの、2人とも「あいつには負けたくない」という意識があるから、それなりにやる気はある。

ふー、と深く息を吐いた大海の目線の先には、呆れ顔を見せるセーファが居る。

男性としての身長は平均以下ぐらいの大海と、元々身長のあるセーファとが相対すると、親子のように見えなくもない。しかも、大海と違って木刀を構えずに左手で保持するだけのセーファが相手をしているので、未熟な子どもを相手にするリラックスした父親のように見えた。

『さっさと来い。てめぇ、俺より弱いんだから、遠慮すんな!』

セーファはかなりの長身ながら、病的な細さはなく、むしろガタイはいい。

木刀をぶら下げても、木刀の切っ先は地面に着かないのだ。構えるよりも、自然体の方が相手にプレッシャーをかけられるという姿を彼は持っている。

『勢ッ』

セーファの悪口に呼応して、大海が一気に踏み出すのと同時に、姿勢も低くする。

その踏み込み速度は速いものの、距離は開いていたから、セーファは余裕を持って対応できた。

『ッらァ!』

薙ぎ払いにいくと見せかけて、大海はすぐにジャンプする。今度は木刀を両手で持って、全体重を掛けて振り下ろす。

『ふん?』

と、読みきっていたようにセーファがスウェーバックして、反撃しようとした。

『牙ァッ!』

そこで大海は、木刀が振り切れる手前で着地する。その場で、切っ先がセーファの顔面を向いたとき、思いっきり木刀を突き出す。

『おあ!?』

今度は、セーファはスウェーなどと余裕を見せず、跳び退る。

『歩、疾ィイイイッ!!』

『ちっ』

そこでは更に大海が追撃とばかりに、セーファに向かって突撃する。

袈裟懸けに入る大海の木刀を、セーファの木刀が止める。

『出ッ!』

と、木刀同士がかみ合ってる場所に体重を預けるように大海が跳ねる。

『猿が、アっ!』

大海の足がセーファの顔面を狙うが、セーファの方が木刀で押し込んで大海の腹を叩く。

別に剣道をしているというわけではないし、木刀だけを使う技ばかりではなく、時には今のように無茶苦茶なやり取りもある。

今のも、大海だってセーファに防がれるのは理解できていたからやったわけだし、セーファも腹を一発叩いたぐらいで大海がダウンするとは思っていなかった。

『いってッ』

力でセーファに勝つのは無理だとわかっているのだろう。大海は下手に逆らわずに、叩かれた勢いそのままにセーファから離れる。

『絶! 決めるッ!』

『死んでろや!!』

着地と同時に姿勢を直して、大海が懲りずに突撃する。

それに応じるように、セーファの方も笑っているような顔で突進する。

お互いに薙ぎ払いにいった木刀同士がぶつかって、大海の手から木刀が離れていった。

片目を瞑って右手の手首を抑える大海の鼻面に木刀を向けて、セーファが息をついた。

『手首、大丈夫か?』

『いって~…。負けたな、って思った瞬間に木刀は手放したから、大丈夫かな…。はぁ、また負けた。』

『ふん、まぁ、こんなもんだろな。速いから、無駄な動作があっても普通ぐらいの相手ならどうにでもできただろう。ま、俺みたいな相手だと無駄を突かれるからな。もっと無駄削れ。そうすりゃお前の速さが活きる』

『チッ、まだ無駄があるということだな…』

強くなりたければ、突き詰めれば速度があればいいのだ。相手に触れられない速度があれば、一方的に殴ることもできるし、それができないような相手ならば逃げればいい。

『…それでは、今度は私がセーファを教える番、ですか』

遠くから2人を見ていた、メイド服の女性が微笑しながら2人に近づいてきた。女性としては背丈がある方だが、それでも女性らしい細さがあった。柔らかい笑顔で、美人ではあるものの、この場においては恐怖の対象でしかない。

と言っても、恐ろしいのは彼女自身ではなく、彼女の剣の腕前の方だ。

『藍姉』

『…そなのね。いや、ほら、俺ちゃんってば叩かれて伸びる子だから…』

藍と呼ばれたそのメイドは、木刀ではなく竹刀を持っていた。

『マゾいな』

セーファの言葉に返事をしたのは大海だったが、それは無視された。

『セーファから相手ですか?』

『今日こそ、今日こそは抱きついてみせる!』

『お前…。それ、セクハラじゃんさ…』

藍を指差して宣言したセーファに呆れる大海だが、藍は気にした様子はない。

『…それでやる気が出るならいいですけどね。…30センチ、それ以上は近づけさせませんよ』

『…!』

藍の返事には無言で、セーファが片手突きをする。ボッ、と空気を切り裂くような音さえするような突きだった。奇襲のようなタイミングではあっても、それで藍が後れを取るような女性でないとセーファは十分に知っている。

『組み手ならともかく、撃剣での力押しは無意味と教えたはずですが?』

『もらったァ!』

セーファが木刀を保持していなかった手で、迎撃にきた藍の竹刀を掴む。

『!?』

ぐいっ、とそのまま竹刀を引き寄せるようにして、藍との間を詰めてきた。

『って、おい!?』

大海と同じく、藍もセーファの力には逆らわなかった。セーファの方に力があるのは、否定できない。抗うどころか、藍は逆にセーファに向かって飛び込んだ。

セーファが引く力と、自分の飛び込みで素早くセーファの懐に入って、藍は寸剄を打ち込む。

『ぐえっ!?』

『…あら。いい内功ですね』

それでダウンするほどセーファは脆くないものの、ダメージはそれなりにあったらしい。その隙に、竹刀を持って藍が離れた。

『今のは痛いなぁ…』

『カウンターとは言えませんが、勢いはカウンターそのものですからね。まだ動けますか、セーファ?』

見ていた大海の感想というか独り言だったが、それに律儀に返事をするのが藍の性格だ。

『あー、俺様の耐久力万歳…。藍嬢、なんつーか、寸打なら島のが痛いぞ。』

それなりにへこんでいるらしい。唾を吐いてから、セーファはそんなことを口にした。

『当たり前です。私は刀剣しか扱いませんから、剄力はそれほど強くありません。しかしながら、大海の剄力と比べて私のものは…、遅効性です』

『意味がわからんっての!』

『休んだほうがいい、というだけです』

『ぬぅ、今日こそ抱きつかせていただく!』

『…だから、それセクハラ…』

大海は呆れるばかりだが、セーファは突撃する。

『…ふむ』

乱撃するセーファだが、藍はそれを丁寧に捌く。避けることはできるはずだが、敢えて竹刀で受けていた。

力量が同じ程度ならば防御側が不利なのだが、藍はそれほど苦労していないような涼しい顔で受けている。

『ちっ、余裕かよ!』

またセーファが仕掛ける。撃剣した瞬間、後ろ回し蹴りをするモーションに入ったのだ。そこに藍が突きを入れようとしたが、セーファはわざと倒れこむようにしながら、突きにきた竹刀に、器用にも足を絡めてくる。

『どっ、せい!』

どういう力の入れ方をしたのかわからないが、セーファの怒声と共に竹刀が折れた。

『どうなのよコレ!』

『全く、仕方ありませんね』

『へ?』

快哉を叫んだセーファだったが、逆に藍は冷静だった。折られた竹刀は投げ捨て、蹴り足を下ろしきらないセーファに肉薄する。

『おめでとうございます、30センチ以内の距離ですよ』

『嬉しくなッ?!』

そこで藍は、軸足になっていた足を払って、セーファを転がした。

『いぐェっ』

うつ伏せに倒れこんだセーファの背中に藍が乗って、藍はそのままセーファの首を絞めた。

『終わりですね。お疲れ様です』

見ようによっては藍がセーファに抱きついているようにも見えるが、本気になればこの時点でセーファを殺せるポジショニングだ。それがわかるから、セーファも地面をバンバン叩いてギブアップの意思表示をする。

『むぅ、抱きつきたいのであって、抱きつかれたいわけではないが…、うん。尻に敷かれるというのも中々…。というか、藍嬢』

『何ですか?』

何故か感慨深げなセーファを、いぶかしむ様に藍が促した。

『けっこ、胸あるのなー。淫牙には及ばないが、なっちゃんよりはあドゴッ!?』

『お前、いい加減にしとけっての』

割り込んできた大海が、セーファの後頭部を強打していた。

『まぁ、竹刀を折られるのは予想していませんでした。この調子なら、セーファは4月には木刀で相手をしなければならなくなりますね』

気絶したのかわからないが、ぴくりとも動かないセーファを無視するように藍は立ち上がりながら言っていた。

『藍姉。怒ってもいいと思うんだけど…』

『そうですか? かわいい弟分がしっかり怒ってくれたので、私が怒る必要はないでしょう?』

『…藍姉がそんなんだから、セーファが反省しないんだと思うんだけど?』

元々、藍は大海に剣を教えていたこともあり、大海は藍のことを姉のように慕っていた。藍は剣以外でも勉強を見てくれることもあり、大海が小さい頃には、藍が友達と遊びに行くときにも連れて行ってくれたこともあったようで、大海の実の姉よりも大海は藍を慕っているようにも見える。その所為か、大海はメイドとして藍が勤務している間は「藍さん」、こういう剣の指導などメイドでないときの藍は「藍姉」と呼び方を使い分けしている。

『口でどう言っても、セーファはやるときには忘れてますからね。マジメな子ですよ。大海の方がちょっと敏感に反応しすぎです』

『…そうかなぁ。そんなことないと思うけど?』

『ふふ。それはさておき、セーファは私の寸打が効いてきた頃に痛みで起きるはずだから、今度は大海とやってみましょうか』

『…うん。今度こそ、一撃ももらわないからね』

そう言ってから、大海は藍から離れていく。

藍も藍で、セーファを介抱する気はなく、そこに放置する。

『それは楽しみですね』

セーファは自身の耐久力もあるが、元々攻撃よりも防御の方に適正があったようなので防御はそれなりに仕込みをするものの、基本的に藍はセーファの相手をするときには攻撃の訓練しかしない。さっきまでのセーファとの戦いではあまり攻撃に回らなかったのも、セーファに攻撃させるためだった。

そして、大海の方はと言えば、大海は目の良さと俊敏さも手伝って回避に優れているから、ヒット&アウェイの戦い方が一番得意なスタイルであるものの、回避力が元々高い所為で防御が疎かになりやすい傾向があった。だから、藍は大海にはとことん防御を教えていた。今からやる大海と藍との戦いでは、藍の方が手数を増やしてくる。

『今日はフェイントはノーカウントで15回、受けられたら合格でしたね』

『よろしくお願いします』

『では…、歩ッ』

大海が半身で構えたのを確認してから、藍は一気に大海との間合いを縮めてきた。

結局のところ、藍の言ったとおりにセーファが「痛ぇ!」と叫んで起き上がったところで隙を見せたらしい大海の手首を、藍が竹刀で打ち込んで終了した。大体、8撃目ぐらいだったはずだ。

…格闘家でも剣術家でもないリポーターの目ではちょっと見えなかったので詳しく書けたものではなかった。

『ぬぐぅ、マジで後からキたぁ…。うぉぉぉ…』

『うぅ、昨日と同じ回数で叩かれた…』

『セーファは武器破壊に頼らないように。するな、とは言いません。大海はあまり落ち込まないように。一日でいきなり強くなったりはしませんからね』

『『はい…』』

セーファは痛みから、大海は気落ちからか、その返事は落ち込んでいた。

『それでは、今日はここまで、ということにしておきます。お疲れ様でした』

『『ありがとうございました…』』

 

PM10:00 妹寝る

『お、人気者だね、島君』

『何だそりゃ…?』

1階にあるリビングにセーファが来てみると、ソファの真ん中に座ってテレビを見ている大海の膝を枕にして、2人の女の子が寝ていた。1人は右膝、もう1人は左膝を枕にしている様子だ。右膝の子は小学2年の子で、左膝の子は幼稚園の子だったとセーファは思い出していた。

…この時期は沖縄でも寒く、2人とも毛布を被せてある。

『人気者かね、これ?』

2人の妹と手を繋いだ状態で大海はそんなことを言う。

大海はチャンネルを変える気になって、幼稚園の子から手を放そうとしたが、その妹の方が「ん~」とか唸りながら手を握ってきたようで、それはできなかった。

『あ、悪い、チャンネル、ニュースに変えてくれない?』

『いいぞ。俺の妹…、あ、柚じゃねぇぞ。下の方の妹な、連中なんか兄貴の俺の膝枕で寝ようなんて一度もしなかった』

その様子を見ていたセーファは苦笑しながらチャンネルを変えて、不満そうに言ってくる。

柚と言ったのはセーファの双子の妹で、セーファには柚以外にも妹が居る。

『そうなの? 瑞希はこの前、膝枕要求しに来たけど…』

瑞希というのもセーファの妹で、セーファの4つ下にあたる。

『あー、瑞希はお前にベタ惚れだからそれはどうでもいい。…しっかし、瑞希もアレだな。ファーストキスはお前だったし、祝☆初膝枕もお前。…果報者め』

『何それ…』

『知らないのか? 女の子のファーストキスって家族内で終わるのが多いんだぞ。どういうわけか、うちはそうじゃないのが多いけど』

『…家族のはノーカウントじゃないの?』

呆れ顔の大海だが、セーファにとってはマジメな話だったらしい。

『まぁ、女性はそういうのノーカウントにしたがるけどな。…オヤジ、泣いてたぞ。「パパのお嫁さんになる」を飛ばして、「島さんのお嫁さんになる!」宣言だったからな。…小3ぐらいだもんなぁ』

『…そっか。もうそんな付き合いか。っていうか、瑞希は「パパの~」、はしなかったんだ』

大体、大海とセーファが会ったのは小6とか中1ぐらいの頃で、もう2人とも大学3年ぐらいだから、9年近い付き合いになる。

『「お兄ちゃんの~」もなかった』

じと、と淀んだ目つきでセーファは大海を見つめてくる。

『…お前、そっちで恨んでるのか?』

『いや、別に。俺、お前ほどシスコンじゃないし』

実際、どうでもいいことなのだろう。あっという間にセーファは普段の顔に戻っていた。

『ご主人様?』

『あ、守樹(すじゅ)?』

呼ばれた声に振り向く大海と同じく、セーファまで振り向いていた。声をかけてきた女性もまたメイド服で、全体的にシュニフィアに似ているような気もするが、シュニフィアよりも大人しそうな雰囲気と、落ち着いた感じをこちらに与えてくる。シュニフィアに似ているのも当然で、シュニフィアとは双子の関係になる。本人たちにしてみれば、「あまり似てない」と言われるのが心外らしいが、身に纏う雰囲気が違いすぎて、「似ている」ことよりも「違いすぎる」ことが先立ってしまうのだからしょうがない。

『はい』

名前を呼ばれたからか、大海がわざわざ振り向いてくれたからか、とにかく守樹はにっこりと笑顔を見せて、寄ってくる。

『眠る前ですが、よく眠れる…、らしい飲み物を作ってみました。はじめてですので、お口におあいするかわかりませんが、どうですか?』

『何だ、その怪しげで不安げな提案は…』

『もらうよ。ありがと、守樹』

不安そうなセーファと対照的に、大海は守樹が持っていた盆の上からコップを取った。

『そして飲むのか?!』

『守樹は自分で飲んで試したあとにしか来ないもの。安全だよ』

『ふむ、シュニだったらすぐに巻き込もうとするからな』

どうも色が不自然な茶色をしているのだから気が引けるだろうに、セーファもコップに手をつけた。

『姉様がいつも、すみません』

守樹は守樹で、セーファにシュニフィアのことをそう評価されても文句は言えないから、苦笑しながら盆を小脇に挟むと、一礼する。

『いいけどさ。アイツ、アレはアレで面白いし』

セーファの場合、シュニフィアに巻き込まれるよりも、シュニフィアを巻き込むことが多いのだから、お互い様というのが実情だ。

『…コスプレはどうにかしてほしいけど』

『…そうですね』

『え、何で。そこが良くない?』

大海に同意したのは守樹だけで、セーファは反対意見のようだ。

『…この前、俺がもらったカエルの着ぐるみパジャマに対抗してクマのバージョン寄越しやがった』

『私はスカートをマイクロミニにされました…』

マイクロミニというのはスカートの丈のことで、メイド服に合わせるスカートとしては一番丈の短いスカートのことである。

『…島のは見たくないが、守樹嬢のは見たかった…』

『ご主人様のお目汚しですよ、私がマイクロミニなんて…。私はご主人様の方を見たかったですね』

『俺は自分のも守樹のも見たくない…』

『…需要と供給が一致しねぇな、おい』

『一致しないだろ、コスプレでそんなもん』

『…まぁ、「お前がやるな」ってときもあれば、「あんたならもっとイケるのに」ってのもあるわな』

大海の意見に、いちいち頷きながらセーファは納得したらしい。

『そういう意味じゃないんだけど…。ありがと、守樹。』

話しながら少しずつ飲んでいて、ようやく飲み干したコップを守樹に渡しながら大海は微笑する。

『どういたしまして、ご主人様。明日の朝、飲んでの感想を教えてくださいね』

『ん? 安眠できたー、って?』

『正直に、です』

大海が飲みきったのを確認してからセーファも守樹から受け取ったものを飲み始めたが、いきなりむせていた。

『ん、そうなら予言できるかもね』

寝ているクセに、手を放そうとしない小2の妹から手を無理矢理抜いた大海だが、その子が何かを探すように手をにぎにぎする様子を笑って見て、守樹の方を向く。

『はい? 予言ですか?』

『「いい夢だったよ、守樹が出てきたからね」とか』

慌てて顔を伏せた守樹を放置するように、大海は幼稚園児の妹をお姫様抱っこして出て行こうとする。

大海はまだやることがあるのでまだリビングに居座るのだが、妹たちをそれに付き合わせては風邪をひかせてしまうからだ。

休憩も兼ねて、妹たちを部屋に連れて戻しに行く予定である。

『………。ふむ、島』

『何?』

『そこで照れてる守樹嬢じゃツッコミしないから言わせてもらうぜ』

『何だってば』

『…すごい、エロい夢でも見る気か、お前? 女性が出てきて、「いい夢」て』

『………。お前、アホだろ』

呆れた、を通り越したようだ。大海はセーファを無表情で見返しながら呟いてきた。

『いや、バカだぞ。天才と紙一重のな』

『…っつーか、ドアホだろ』

『繰り返すなよ!?』

『うるせぇ』

ドッ、といきなり大海はセーファに近づいて、セーファの顎を蹴り飛ばした。

『おい…』

いいところに当たったようで、セーファは床に倒れこんでしまう。いわゆる、「揺らされた」ということだ。

『寝ている子も居るんだから、大声出すな』

『そうですね、もう夜中ですし』

『無念…』

それっきり、セーファは喋らなくなった。

『そういや、シュニフィアは?』

『部屋でゲームをしています。呼んでおきますか?』

『じゃ、お願いしようかな。30分後、リビングに来ておいて、って』

『わかりました』

『うん、それじゃ、また明日ね。いい夢を、守樹』

今日の分のメイドとしての仕事を終えている守樹はもう眠るだけが仕事になっている。早寝早起きが守樹というメイドの方針だ。

『ありがとうございます、ご主人様。ふふふ、ご主人様は絶対に私が出てくる夢を見てくださいね? 私はプリマでなくて構いませんから』

『夢まで遠慮するなよ、守樹…』

『性分ということですよ。では、ご主人様にあっては、いい夢と、いい朝を』

『うん、ありがと。それじゃ、また明日ね』

微笑を交わして2人ともリビングから居なくなる。残されたのは、小2の女の子とセーファだけだ。

『…せめてイチャつく前に俺をどうにかしてくれないかなぁ。動きたくても動けねぇよ、風邪ひいちまうだろ、俺また外国に行くのにさぁ………。…そうだよなっちゃん、何か打ち込んでくれない? 変に決まったらしくて、マゾなぐらい動けないんですが』

『…今の私は空気役ですから、何も出来ません。あぁ、なんと役に立たないメイドでしょうっ。というわけでセーファ、私をクビにしませんか?』

『…おうとも、クビにしてやりたいとも。だがな、そうするとお前はすごくいい笑顔で、なんていうか俺が初めて見るような素敵な笑顔を俺に向けてくれそうだから、絶対にクビになんかしねーえー』

『そうですか、だったらがんばって風邪をひいてください』

『…お前、いい嫁か、悪い姑になるわ。絶対、確実』

『ありがとうございます』

『褒めてねぇ…』

その後、20分後にリビングに来たシュニフィアから「トーアカマタ!」とかいう意味不明な気合と共に、倒れこみながらの裏拳を打ち込まれてセーファは復活した。

『今日も藍の姐御に怒られたからね。うん、ストレス解消はご主人様をボテくるに決まるね』

そう言うシュニフィアは、いろいろあって、セーファのことを「ご主人様」と呼んでいた。

『俺はサンドバッグかよ…』

嬉しそうなシュニフィアに、げっそりとした様子でセーファは返す。

『サンドバッグより価値はありますよ。絶対、壊れませんし』

にっこりと満面の笑みを浮かべてなっちゃんが宣言する。

『いや、あの…なっちゃん? 俺もね、普通より頑丈なのは認めるけど、人間だぞ? 死ぬんだぜ? 死ぬ、絶対』

『絶対、壊れませんし』

今度はシュニフィアだった。

『…おい』

『絶対、壊れませんし』

もう一度、今度はなっちゃんである。

『………』

『絶対、壊れないですし』

押し黙ったセーファに最後の一撃と言わんばかりに、シュニフィアとなっちゃんが同時に言った。

その5分後。

『…うお!? どうしたんだ、セーファ!?』

リビングに戻ってきた大海の目の前は異様な光景だった。

シュニフィアとなっちゃんがソファに座って、テレビを見ながら談笑しているだけなら普通の光景だったのに、そのソファの後ろでセーファが床に転がって「の」の字を書き続けながらぼそぼそと呟いている光景なのだ。

異様というか、シュールかもしれない。

『俺だって壊れるよ、生身だぜ? アニメかマンガのような耐久力誇るけど、ちゃんと努力して手に入れたマジモンな防御力なんだぜ? いやほら、俺、姉貴のシゴキで鍛えられただけで、気がついたらこうなってたような気もする。何か事故っても入院したことないぐらい不条理な防御力だけどさ。死ぬって、壊れるって、限界あるって、無理無理無理無理無理…』

『セーファ!?』

『いっそ空気になれたらいいのに…』

『何があったんだよ、セーファ!』

2日後、セーファは風邪をひいたが、この日が原因なのかは定かではない。

 

AM2:00 眠らせて…

『…今日一日、俺に付き添ってたわけだけど、満足できました?』

『えぇ、それなりには』

ベッドを整えながら、大海は背後で何やらメモを取り続けるなっちゃんに話しかけた。

『そうですか。…何かに使うんですか?』

『いえ。人物スケッチに使おうと思っただけです。セーファでもやったので、大海さんもやってみたかっただけです。…ご迷惑でしたか?』

『ううん、それはないけど…。そか、人物スケッチか…。がんばってるね』

『いえ…。後で、シュニフィアさんにも頼もうと思っているんです』

もちろん、嘘だ。人物スケッチが目的ではないのはこの企画を見ている人全員が知り及ぶものだろう。セーファの人物スケッチなんかは「変態」と書いて一発終了だし、シュニフィアの人物スケッチだって「メイド芸人」で終わる。

今回のことは、なっちゃんにとってもただの暇潰しだし、この企画のための記録を取っている間は有給扱いだから、拘束時間とメモを取る労力だけで済む分、いつものようにセーファに付き従っているより楽なものだ。

『そう?』

『はい。今日はとても助かりました、ありがとうございます』

『ううん、なっちゃんさんには結構世話になってるから、また何かあったら言ってください』

『…まぁ、私はそうならないことを祈りますよ』

『へ?』

『いえ。…もう、眠るだけですよね?』

『えぇ、まぁ…』

『…それなら、もう私も出ますね』

『あ、はい』

用事は済んでいるし、セーファはさっきのことでダウンしているから騒ぎもなく、なっちゃんは大海の部屋から出た。

『それでは、いい夜を』

『ありがと。おやすみなさい、なっちゃんさん』

 

とまれ。これが、2月某日の出来事だ。大海にとっては特に問題もない1日であり、なっちゃんにとっては楽な労働だった1日で、セーファからすると久しぶりに口撃にやられた1日だったし、シュニフィアにとっても普通の1日だった。多分、ここに運悪く書かれた人にとっても日常だっただろう。

 

>リポートはここで途絶えている…。

 

 

すたっふ ろーりんぐ!

提案:某サイトのメイド議談閲覧者

提供:島袋家のみなさん

情報:なっちゃん

企画:セーファ

制作協力:セーファの友人数名

掲載協力:掲載サイトの管理者全員

著作:島袋家のみなさん セーファ なっちゃん 掲載サイトの管理者全員

感謝:読者全員 掲載サイトの管理者全員

陳謝:大海

制作総責任:メイド浪漫(仮)制作委員会

総責任者:セーファ

 

総責任者挨拶:

×セーファ:というわけで、新作アップの遅れをごまかす企画をお送りしました。一応、収録は急いでますが、どうにも遅れ気味です。完結までは長くなりそうですが、暖かい目で見守るもよし、斬り捨てるもよし、そこらへんはフリーダムでお願いします。俺等もフリーダムだし。あ、いや…新作アップ、がんばらせていただきます。はい。それでは長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。

 

訂正事項:

 「犠牲者詳細」が抜けていたので、追記。

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