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Corpses are called Adults(Deco Online private story)
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※主に、Deco Onlineの世界の魔法に関して、ボージェスを守るボージェスに守られるボージェス氏の考察を加える形で話が進みます。
この話においてDeco Online公式設定と食い違う記述や描写が含まれることをご容赦ください。
ここは難民キャンプの一区画であり、大きな空き地となっている。
ある時期には、難民軍の兵士が個人で露天などをして賑わうところであるが、普段は物資を置いておくための場所であり、人は寄り付くところではない。
しかし、今日は子どもが多く居て、それらが地べたに座りながら、1人の男の話を聞いている妙なところになっていた。
俗に言う、青空教室の体である。今回は、難民軍やレイン軍が使用している魔法についての講義であるため、子どもが通常の青空教室のときよりも多い。それもそのはずで、難民の子どもたちというのは、魔法については興味津々だったからだ。
ベルサリオ『…と、いうわけで。さて…。エレノアさん。』
エレノア『…。』
先生をしている男、ベルサリオは居眠りしている生徒を指名してみるが、もちろん相手は寝ているから、返事は無い。
一葉『ちょっと…エレ…。』
エレノアの左隣に座っているエレが肘で突いてエレノアを起こそうとするが、返事は返ってこない。
ベルサリオ『…いいですよ、一葉さん。』
溜息ひとつでベルサリオはすぐにマジメな顔に戻った。
ベルサリオ『そうですね、皆さん。エレノアさんを見てください。』
最後部に座っている、エレノアの方に生徒たちの視線が向かっているはずなのに、一葉は何だか自分を見つめられているようで落ち着かなかった。
ベルサリオ『少し魔法を使います。いいですか、これは風の属性の魔法で、そうですね、エコーとでも名付けておきましょうか。』
ここまで来るとエレノアが面白い魔法の実験台にされると一葉でもわかったが、生徒全員と、先生の視線の前では、エレノアを起こすために行動することはできない。
エレノアを起こそうものなら、魔法を見たがっている生徒が後で何かしてくるかもしれないからだ。いじめのように暴力的だとか陰湿的なことはないだろうが、何かはあるだろう。
ベルサリオ『さて、いいですか、これから私はこの音量で、エレノアさんにおはようございます、と言います。皆さんには普通の声に聞こえると思いますが、エレノアさんはエコーの効果で、大声で叫んだときと同じぐらいの大きさで聞こえるようになっています。それではいいですか?』
一葉(ごめん、エレ…。)
謝罪は当然、本人にはしない。そもそも、エレノアだって今日は講義を楽しみにしていたはずで、それが寝ているのがいけないのだ。一葉に悪いところはないはずで、肘で一度突いただけでも感謝してもらえるはずだ。
第一、講義中の居眠りはベルサリオが許していないし、眠ったりお喋りするぐらいなら、青空教室に出てこなくてもいいと言っていた。それは青空教室を永久追放という意味ではなかったし、「そのときの講義」だけの話だ。
そして問題なのは、ベルサリオは居眠りや私語を注意するときに、面白くアレンジした魔法で注意することだ。毎回、注意するために使う魔法が違うこともあって、傍観者にとっては講義中のイベントとして楽しみのひとつだ。そのため、魔法を受けるために居眠りしたりする人をグループ内で回している子どもたちも居た。
エレノアはそういうタイプではなく、今回は本気で居眠りをかましている。
ベルサリオ『おはようございます、エレノアさん。』
エレノア『い゛ッ?!』
ベルサリオが言い終わらない内に、エレノアは立ち上がって周囲を警戒するように見渡した。
ベルサリオ『エレノアさん、起きましたか?』
エレノア『…あ。』
ベルサリオ『さて、エレノアさん。魔法の基本項目を言ってもらいましょうか。』
エレノア『さて、て…。うぁ…。』
ちろ、とエレノアは一葉の方を見るが、一葉は顔を背けた。
エレノア『くっ…。』
今度は右隣の方を見るが、右隣に座っているセティアを見ても、セティアも顔を伏せてくる。
ベルサリオ『…はぁ。いいですか、基本は属性。項目は指向性です。』
エレノア『あ…。えっと、属性は地、火、水、風です。指向性はプラス、活性とマイナス、減退です。』
前に習ったことだから、エレノアならヒントをもらうだけで十分に答えられる。
この基本項目というのは、人間というよりも、生物全般が扱う魔法に当てはまることだ。生物が行える魔法は、全て基本項目で説明できる。
ベルサリオ『いいでしょう。座ってもいいですよ。』
別に、答えられても、そうでなくてもベルサリオは非難しないし、その後も引きずることはしない。
エレノア『あ、はい…。』
慌てて立ち上がったままだったので、座るタイミングを失っていたエレノアは座るついでに、一葉もセティアも軽く叩いて気を晴らした。
一葉『エレ!』
セティア『エレノア…。』
小声だったが、2人とも吐き出したのは私語だ。
早速、ベルサリオに指摘される。
ベルサリオ『では、この属性はあくまでも象徴でしかありません。さて、セティアさん。』
セティア『ぴっ!?』
がたんっ、とセティアは音を立ててて立ち上がった。
セティア『は、はいっ!』
ベルサリオ『では、属性の象徴しているものを答えてもらいましょうか。』
セティア『は、はい! えっと、火は熱、水は不変、地は生命活動、風は変化、です。』
ベルサリオ『その通りですね。さて、一葉さん。あ、座っていいですよ、セティアさん。』
一葉『はい?!』
セティア『は、はい。』
別に指名されても立つ義務は無いから、一葉は座ったまま返答した。
ベルサリオ『指向性はふたつありますが、それは属性全てに当てはまりますよね? 属性がよっつ、指向性はふたつ。全ての魔法はやっつの系統に当てはまるわけですね、4属性×2変化=8ですから。さて、それでは一葉さん。やっつの系統、全てを説明してください。』
一葉『え…。』
ベルサリオ『あぁ、簡単な説明で結構です。』
もう系統分類になると、専門分野である。未だにレインや難民軍で研究がなされているぐらいのもので、説明するのは難しい。
一葉『あ…、はい。火属性は暖めることと冷やすこと…で、水属性は維持と崩壊…。確か、地属性は生命力の増強と衰退…。風、属性は…、は…。』
ベルサリオ『風属性は、端的に言えば加速と減速です。まぁ、前は地までしか実践しませんでしたから、風は覚えていないのも仕方ありません。はい、皆さん、ここから新しいところですから、こちらに注目してください。』
生徒全員が自分を見ていることを確認してから、ベルサリオは両手を叩いた。
ベルサリオ『さて。魔法の基本、自然の四属性と項目のふたつの志向性。このクライス大陸の魔法はほぼ全て、それで説明できます。そしてまた、多くの魔法が知っての通りかもしれませんが、音によって発動します。これを音声魔法と言います。現行しているプロイマ魔法の多くは、その音声魔法に分類されるわけですね。』
ふよふよ、とベルサリオの周辺にしゃぼん玉が幾つか、いきなり現れた。
ベルサリオ『あぁ、石鹸水のものではない、ただの水泡なので長くは保てません。これは水、風、地の属性を使ったものです。魔法はひとつの属性だけを扱う、ということはあまりしません。よっつの属性の組み合わせと、どの属性がどれぐらい含まれるのか、その項目は何なのか、に左右されます。この魔法自体は使い方次第では遊びにも使えますし、攻撃手段にもなるということで、私が私の先生から教えてもらったものです。』
浮く水泡を消してから、今度は大きな板を魔法で呼び出す。
ベルサリオ『今のは地、水。さて、魔法と同じように、このクライス大陸の生物は全て、よっつの属性を持つと言われています。』
出した板に簡単な人を書きながら、ベルサリオは説明していく。
ベルサリオ『人間はオールマイティ…。よっつの属性がどれも突出しないで、バランス良く持っていることが多いですね。もっとも、個人差はあるのですが、これは簡単な性格判断でわかりますね。』
水萌『はーい、センセ。』
ベルサリオ『何ですか、水萌さん。』
人を書き終えて、幾つかモンスターを書いていた手も止めて、ベルサリオは質問してきた子を見る。
水萌『性格判断なんかで、そういうのを知ることってできるんですか?』
ベルサリオ『絶対的に当たるわけではありませんが…。昔の人たちはですね、本人の資質として、どの属性に強いのか、ということがわかれば、それは魔法にも応用できるのではないか、と考えたのですよ。例えば、資質として火属性の影響を多く受ける人なら、火属性の魔法を、他の人よりも上手に使えるのではないか、と考えたわけです。それが現実問題として、多少は有効だったらしいので、今では資質を考慮するのが当たり前になっているわけです。その考慮…、まぁ、本人の資質を他人の視点で把握できるように、と考えられた性格判断があります。難民軍でも、レイン軍でも使っていますよ。さて。』
軽く手を叩いて、皆の注意を引いてからベルサリオは話を続けた。
ベルサリオ『まぁ、これは一番単純な性格判断なので、あまり信用できませんが…。いいですか。火属性の影響は、感情の起伏が激しくなる、というものです。怒りやすいとか、落ち込みやすいとか、そういう人は火属性の魔法を扱うといいということです。水属性は…、言い方は悪いんですけど、無気力になってしまいますね。やる気が足りないとか、やろうと思っても、中々実行できないとか…。そんなところです。そして地属性は…更に酷い言い方になりますが、家を出たがりません。出かけるのは最低限、という感じです。風属性は落ち着きがありません。じっとしていられないタイプです。落ち着きがなく、いつも動いているイメージの人ですね。』
子どもたちは周囲の人同士で、「お前は風だなー」などと言い合っている。
ベルサリオ『はいはい、皆さん。今のは簡単な判断ですから、必ず正解するわけではありませんよ。詳しい判断をしたいなら、難民軍の方にでも聞いてください。確か、マヤ・ヒギンズだったかな、難民軍キャンプ入り口に居る女性に聞いてください。…さて、ここで問題なのは、他のモンスターもそのように、生まれたときから体内に属性バランスを有していることです。ただ、モンスターの方は種族によって属性が偏る傾向にあるので、その属性の魔法を先天的に…、そうですね、勉強しなくても魔法が使えます。』
セティア『あの、先生…。』
おずおず、と手を挙げてセティアが質問のようだ。
ベルサリオ『はい?』
セティア『あの、属性が偏ると魔法が使えるんですか…?』
ベルサリオ『そうですねぇ…。偏るから使えるのではなく、偏るから使いやすい、といったところです。』
例えば、と一息ついてから、ようやくベルサリオは自分が描いたモンスターの絵について説明する。
ベルサリオ『これ、ミレナでは有名なキラガス。このモンスターは地属性に偏りますが、魔法は使えません。そうですねぇ、やたらと無駄に皮膚が硬いわけですが、これは地属性の影響だと言われています。それぐらいの影響なのですが、さて、同じくミレナで有名な“木”のモンスター。…名前は忘れてしまいましたが、この木、これも地属性に偏っています。ですが、この木は魔法を使えます。で、違いとして…ん?』
突然話を止めて、鋭い目つきでベルサリオは周囲を見渡した。
ベルサリオ『…? 気の所為…ですかね。』
警戒行動と同時に、周囲のプロイマ精霊にも呼びかけて情報を集めてみる。だが、精霊たちはベルサリオに応じてはくれない。応じない、ということはよくあることなので、ベルサリオは感応しないことを気にはしない。
ベルサリオ『うーん、時間が微妙に残っていませんね。終わりましょうか。』
今回のようなベルサリオの講義自体に時間設定などされてはいない。
ただ、難民は難民で食料生産が義務化しているし、そこには子どもも協力するように言われているから、ベルサリオとしてもあまり講義で子どもを束縛するわけにはいかない。
大体、こんなことをしているベルサリオはあくまでもボランティアだ。こんなことをしていても、稼ぎには直結しない。
この青空教室が不定期なのも、講義の時間も決まっていないことも、それが原因だった。
ベルサリオ『さて、次は5日後くらいですかね。前日にはまた、まりをさんに連絡させますので、それでは。』
この後からがベルサリオの仕事だ。
今の講義で質問がある、とわざわざベルサリオのところまで来た子どもに答えてから、ベルサリオは自分の職場である難民軍キャンプの一角、魔法研究施設に向かった。
…続く?
この話においてDeco Online公式設定と食い違う記述や描写が含まれることをご容赦ください。
ここは難民キャンプの一区画であり、大きな空き地となっている。
ある時期には、難民軍の兵士が個人で露天などをして賑わうところであるが、普段は物資を置いておくための場所であり、人は寄り付くところではない。
しかし、今日は子どもが多く居て、それらが地べたに座りながら、1人の男の話を聞いている妙なところになっていた。
俗に言う、青空教室の体である。今回は、難民軍やレイン軍が使用している魔法についての講義であるため、子どもが通常の青空教室のときよりも多い。それもそのはずで、難民の子どもたちというのは、魔法については興味津々だったからだ。
ベルサリオ『…と、いうわけで。さて…。エレノアさん。』
エレノア『…。』
先生をしている男、ベルサリオは居眠りしている生徒を指名してみるが、もちろん相手は寝ているから、返事は無い。
一葉『ちょっと…エレ…。』
エレノアの左隣に座っているエレが肘で突いてエレノアを起こそうとするが、返事は返ってこない。
ベルサリオ『…いいですよ、一葉さん。』
溜息ひとつでベルサリオはすぐにマジメな顔に戻った。
ベルサリオ『そうですね、皆さん。エレノアさんを見てください。』
最後部に座っている、エレノアの方に生徒たちの視線が向かっているはずなのに、一葉は何だか自分を見つめられているようで落ち着かなかった。
ベルサリオ『少し魔法を使います。いいですか、これは風の属性の魔法で、そうですね、エコーとでも名付けておきましょうか。』
ここまで来るとエレノアが面白い魔法の実験台にされると一葉でもわかったが、生徒全員と、先生の視線の前では、エレノアを起こすために行動することはできない。
エレノアを起こそうものなら、魔法を見たがっている生徒が後で何かしてくるかもしれないからだ。いじめのように暴力的だとか陰湿的なことはないだろうが、何かはあるだろう。
ベルサリオ『さて、いいですか、これから私はこの音量で、エレノアさんにおはようございます、と言います。皆さんには普通の声に聞こえると思いますが、エレノアさんはエコーの効果で、大声で叫んだときと同じぐらいの大きさで聞こえるようになっています。それではいいですか?』
一葉(ごめん、エレ…。)
謝罪は当然、本人にはしない。そもそも、エレノアだって今日は講義を楽しみにしていたはずで、それが寝ているのがいけないのだ。一葉に悪いところはないはずで、肘で一度突いただけでも感謝してもらえるはずだ。
第一、講義中の居眠りはベルサリオが許していないし、眠ったりお喋りするぐらいなら、青空教室に出てこなくてもいいと言っていた。それは青空教室を永久追放という意味ではなかったし、「そのときの講義」だけの話だ。
そして問題なのは、ベルサリオは居眠りや私語を注意するときに、面白くアレンジした魔法で注意することだ。毎回、注意するために使う魔法が違うこともあって、傍観者にとっては講義中のイベントとして楽しみのひとつだ。そのため、魔法を受けるために居眠りしたりする人をグループ内で回している子どもたちも居た。
エレノアはそういうタイプではなく、今回は本気で居眠りをかましている。
ベルサリオ『おはようございます、エレノアさん。』
エレノア『い゛ッ?!』
ベルサリオが言い終わらない内に、エレノアは立ち上がって周囲を警戒するように見渡した。
ベルサリオ『エレノアさん、起きましたか?』
エレノア『…あ。』
ベルサリオ『さて、エレノアさん。魔法の基本項目を言ってもらいましょうか。』
エレノア『さて、て…。うぁ…。』
ちろ、とエレノアは一葉の方を見るが、一葉は顔を背けた。
エレノア『くっ…。』
今度は右隣の方を見るが、右隣に座っているセティアを見ても、セティアも顔を伏せてくる。
ベルサリオ『…はぁ。いいですか、基本は属性。項目は指向性です。』
エレノア『あ…。えっと、属性は地、火、水、風です。指向性はプラス、活性とマイナス、減退です。』
前に習ったことだから、エレノアならヒントをもらうだけで十分に答えられる。
この基本項目というのは、人間というよりも、生物全般が扱う魔法に当てはまることだ。生物が行える魔法は、全て基本項目で説明できる。
ベルサリオ『いいでしょう。座ってもいいですよ。』
別に、答えられても、そうでなくてもベルサリオは非難しないし、その後も引きずることはしない。
エレノア『あ、はい…。』
慌てて立ち上がったままだったので、座るタイミングを失っていたエレノアは座るついでに、一葉もセティアも軽く叩いて気を晴らした。
一葉『エレ!』
セティア『エレノア…。』
小声だったが、2人とも吐き出したのは私語だ。
早速、ベルサリオに指摘される。
ベルサリオ『では、この属性はあくまでも象徴でしかありません。さて、セティアさん。』
セティア『ぴっ!?』
がたんっ、とセティアは音を立ててて立ち上がった。
セティア『は、はいっ!』
ベルサリオ『では、属性の象徴しているものを答えてもらいましょうか。』
セティア『は、はい! えっと、火は熱、水は不変、地は生命活動、風は変化、です。』
ベルサリオ『その通りですね。さて、一葉さん。あ、座っていいですよ、セティアさん。』
一葉『はい?!』
セティア『は、はい。』
別に指名されても立つ義務は無いから、一葉は座ったまま返答した。
ベルサリオ『指向性はふたつありますが、それは属性全てに当てはまりますよね? 属性がよっつ、指向性はふたつ。全ての魔法はやっつの系統に当てはまるわけですね、4属性×2変化=8ですから。さて、それでは一葉さん。やっつの系統、全てを説明してください。』
一葉『え…。』
ベルサリオ『あぁ、簡単な説明で結構です。』
もう系統分類になると、専門分野である。未だにレインや難民軍で研究がなされているぐらいのもので、説明するのは難しい。
一葉『あ…、はい。火属性は暖めることと冷やすこと…で、水属性は維持と崩壊…。確か、地属性は生命力の増強と衰退…。風、属性は…、は…。』
ベルサリオ『風属性は、端的に言えば加速と減速です。まぁ、前は地までしか実践しませんでしたから、風は覚えていないのも仕方ありません。はい、皆さん、ここから新しいところですから、こちらに注目してください。』
生徒全員が自分を見ていることを確認してから、ベルサリオは両手を叩いた。
ベルサリオ『さて。魔法の基本、自然の四属性と項目のふたつの志向性。このクライス大陸の魔法はほぼ全て、それで説明できます。そしてまた、多くの魔法が知っての通りかもしれませんが、音によって発動します。これを音声魔法と言います。現行しているプロイマ魔法の多くは、その音声魔法に分類されるわけですね。』
ふよふよ、とベルサリオの周辺にしゃぼん玉が幾つか、いきなり現れた。
ベルサリオ『あぁ、石鹸水のものではない、ただの水泡なので長くは保てません。これは水、風、地の属性を使ったものです。魔法はひとつの属性だけを扱う、ということはあまりしません。よっつの属性の組み合わせと、どの属性がどれぐらい含まれるのか、その項目は何なのか、に左右されます。この魔法自体は使い方次第では遊びにも使えますし、攻撃手段にもなるということで、私が私の先生から教えてもらったものです。』
浮く水泡を消してから、今度は大きな板を魔法で呼び出す。
ベルサリオ『今のは地、水。さて、魔法と同じように、このクライス大陸の生物は全て、よっつの属性を持つと言われています。』
出した板に簡単な人を書きながら、ベルサリオは説明していく。
ベルサリオ『人間はオールマイティ…。よっつの属性がどれも突出しないで、バランス良く持っていることが多いですね。もっとも、個人差はあるのですが、これは簡単な性格判断でわかりますね。』
水萌『はーい、センセ。』
ベルサリオ『何ですか、水萌さん。』
人を書き終えて、幾つかモンスターを書いていた手も止めて、ベルサリオは質問してきた子を見る。
水萌『性格判断なんかで、そういうのを知ることってできるんですか?』
ベルサリオ『絶対的に当たるわけではありませんが…。昔の人たちはですね、本人の資質として、どの属性に強いのか、ということがわかれば、それは魔法にも応用できるのではないか、と考えたのですよ。例えば、資質として火属性の影響を多く受ける人なら、火属性の魔法を、他の人よりも上手に使えるのではないか、と考えたわけです。それが現実問題として、多少は有効だったらしいので、今では資質を考慮するのが当たり前になっているわけです。その考慮…、まぁ、本人の資質を他人の視点で把握できるように、と考えられた性格判断があります。難民軍でも、レイン軍でも使っていますよ。さて。』
軽く手を叩いて、皆の注意を引いてからベルサリオは話を続けた。
ベルサリオ『まぁ、これは一番単純な性格判断なので、あまり信用できませんが…。いいですか。火属性の影響は、感情の起伏が激しくなる、というものです。怒りやすいとか、落ち込みやすいとか、そういう人は火属性の魔法を扱うといいということです。水属性は…、言い方は悪いんですけど、無気力になってしまいますね。やる気が足りないとか、やろうと思っても、中々実行できないとか…。そんなところです。そして地属性は…更に酷い言い方になりますが、家を出たがりません。出かけるのは最低限、という感じです。風属性は落ち着きがありません。じっとしていられないタイプです。落ち着きがなく、いつも動いているイメージの人ですね。』
子どもたちは周囲の人同士で、「お前は風だなー」などと言い合っている。
ベルサリオ『はいはい、皆さん。今のは簡単な判断ですから、必ず正解するわけではありませんよ。詳しい判断をしたいなら、難民軍の方にでも聞いてください。確か、マヤ・ヒギンズだったかな、難民軍キャンプ入り口に居る女性に聞いてください。…さて、ここで問題なのは、他のモンスターもそのように、生まれたときから体内に属性バランスを有していることです。ただ、モンスターの方は種族によって属性が偏る傾向にあるので、その属性の魔法を先天的に…、そうですね、勉強しなくても魔法が使えます。』
セティア『あの、先生…。』
おずおず、と手を挙げてセティアが質問のようだ。
ベルサリオ『はい?』
セティア『あの、属性が偏ると魔法が使えるんですか…?』
ベルサリオ『そうですねぇ…。偏るから使えるのではなく、偏るから使いやすい、といったところです。』
例えば、と一息ついてから、ようやくベルサリオは自分が描いたモンスターの絵について説明する。
ベルサリオ『これ、ミレナでは有名なキラガス。このモンスターは地属性に偏りますが、魔法は使えません。そうですねぇ、やたらと無駄に皮膚が硬いわけですが、これは地属性の影響だと言われています。それぐらいの影響なのですが、さて、同じくミレナで有名な“木”のモンスター。…名前は忘れてしまいましたが、この木、これも地属性に偏っています。ですが、この木は魔法を使えます。で、違いとして…ん?』
突然話を止めて、鋭い目つきでベルサリオは周囲を見渡した。
ベルサリオ『…? 気の所為…ですかね。』
警戒行動と同時に、周囲のプロイマ精霊にも呼びかけて情報を集めてみる。だが、精霊たちはベルサリオに応じてはくれない。応じない、ということはよくあることなので、ベルサリオは感応しないことを気にはしない。
ベルサリオ『うーん、時間が微妙に残っていませんね。終わりましょうか。』
今回のようなベルサリオの講義自体に時間設定などされてはいない。
ただ、難民は難民で食料生産が義務化しているし、そこには子どもも協力するように言われているから、ベルサリオとしてもあまり講義で子どもを束縛するわけにはいかない。
大体、こんなことをしているベルサリオはあくまでもボランティアだ。こんなことをしていても、稼ぎには直結しない。
この青空教室が不定期なのも、講義の時間も決まっていないことも、それが原因だった。
ベルサリオ『さて、次は5日後くらいですかね。前日にはまた、まりをさんに連絡させますので、それでは。』
この後からがベルサリオの仕事だ。
今の講義で質問がある、とわざわざベルサリオのところまで来た子どもに答えてから、ベルサリオは自分の職場である難民軍キャンプの一角、魔法研究施設に向かった。
…続く?
