荒れ狂う鮫台風ことシャークネード。
その暴風に巻き上げられながら戦う男たちがいた。
「フンッ!」
「でぇい!」
二つの影が風によって舞い、交差する度に金属同士のぶつかる音が響く。
片方の男は人間の姿をしておらず、長剣を手に携えていた。
名は月蝕仮面ジャークムーンと言い、魔人軍団ジャマンガの最高幹部の1人である。
もう一人の男は髭を生やし筋骨隆々とした風貌であり、手には黄金に光るチェーンソーを携えていた。
名をフィン・シェパードと言い、サメ退治の英雄として米国に名を馳せた好漢である。
二人はこの場に転送された瞬間から宙に舞っていた。
初期位置がシャークネードの中だったのである。
フィンは一瞬戸惑ったが、ジャークムーンは即座に刃を眼前の男に向けていた。
戦意を感じ取り、話し合いも不可能だと判断したフィンは支給されていた黄金のチェーンソーを取り出し臨戦態勢を取った。
シャークネードに飛ばされるのはこれが初めてではない。
幾度となく鮫台風と対峙してきた男にとって、荒れ狂う暴風も最早自身の庭に等しかった。
「ハァッ!」
「くっ!」
しかし敵もさるものである。
ジャークムーンもまたこの暴風の流れを読み取り、すれ違うタイミングで的確に剣撃を打ち込んでくる。
フィンはこの攻撃を黄金のチェーンソーの刃でいなしていたが、決定打を返すことが出来ないでいた。
「邪魔だ!」
「クソ!あっちへ行け!」
また、彼らの敵はお互いだけではなかった。
シャークネード内のサメが不規則に飛んできて自分たちを餌にしようと牙を向いてくるのだ。
ジャークムーンは大口を開けて飛びかかってきたホオジロザメに対し大上段に振りかぶり、唐竹割の要領で真っ二つにした。
鮮血がほとばしり、ジャークムーンの身体は真っ赤に染め上げられた。
だが、飛んでくるサメは一匹だけではない。
上から下から、右から左から、正面から背後から、次々とサメは飛んでくる。
そのサメ達を一刀の元に切り伏せながら、ジャークムーンはフィンと戦っていた。
無論、フィン・シェパードも条件は同じである。
飛び交うサメ共を持ち前のチェーンソースキルで次々とヒラキにしながら空中戦を演じていた。
「そこだ!」
ジャークムーンは近くにいたノコギリザメを剣に突き刺すと、フィン目掛けて投げつけた。
剣先から抜けたサメの遺骸が、弾丸のように飛んでいく。
「危ない!」
飛翔するサメに対し、フィンはチェーンソーを振りぬいて斬り落とす。
切断面から血が噴き出し、フィンの視界は赤で埋め尽くされた。
視界が塞がれた事を確認したジャークムーンは空中でシュモクザメの腹を蹴り飛ばし、その反動でフィンへと飛びかかってきた。
「ぬぅ!」
なんとか剣撃をチェーンソーで凌いだフィンだったが、咄嗟の事だったので態勢を崩してしまった。
その隙を見逃すジャークムーンではない。
「暗黒月光剣・三日月の太刀!」
ジャークムーンの握る月蝕剣にエネルギーが込められ、三日月状のエネルギー波がフィンに向かって放たれた。
なんとか回避しようと体を捻るフィンだったが、エネルギー波は体を掠めた。
「うわっ!」
衝撃でフィンはチェーンソーを取り落としてしまい、その身も大きく弾き飛ばされた。
「うわあああああああああああ!」
そしてフィンは風の激流に飲み込まれ、ジャークムーンの目の前からその姿を消した。
◇
暴風に飲み込まれたフィンはなんとか態勢を立て直していた。
だが、チェーンソーはもう無い。
今この状態でサメに襲われれば一溜りもない。
フィンの額を冷や汗が流れた。
そして、悪い予感は現実へと変わった。
「畜生!来やがったか!」
見れば、オオワニザメが己を餌にせんが為に迫って来ていた。
遂に俺も年貢の納め時か、とフィンは諦めかけた。
―――その時である。
「!?こ、これは…!」
なんと、新たなチェーンソーがフィンの元に飛んで来たではないか。
何故、こんなところをチェーンソーが飛んでいるのか。
その理由はフィンには分からなかったし、考える暇もなかった。
即座にフィンはそのチェーンソーのグリップを握り、電源を起動させると、オオワニザメの鼻目掛けて思い切り突き刺した。
「暴れるなよ!」
そして突き刺したチェーンソーを軸にして体を大きく反らし、サメの背中へと飛び乗った。
フィンはガッシリとサメの身体を掴み、サーフボードの上に寝そべるかのような態勢をとった。
オオワニザメにフィン、更にチェーンソーの重量が加わる。
これはシャークネードの風圧でも持ち上げられない重さであり、それ故フィンはサメ諸共地上へと落ちていった。
「ぐ、うう…」
地上まで残り10m。
振り落とされれば最期だ。
フィンは必死にオオワニザメの体に縋りついていた。
地上まで残り5m。
4m。
3m。
2m。
1m!
「うおおおおおお!!」
ザザザ、と音を立てながらオオワニザメは地を滑り、やがて勢いを失って静止した。
フィン・シェパードは着地に成功した。
それはすなわちシャークネードの範囲から脱出した事も意味していた。
後ろを振り返ると未だ風が吹き荒れる音が聞こえてきたが、今いる位置からはいくらか離れた所で吹いていることが分かった。
「こいつがなきゃ死んでたな…」
オオワニザメの鼻柱からチェーンソーを抜きながらフィンはそう呟いた。
このチェーンソーは何処から来たものなのか?
答えは数刻前に遡る。
このチェーンソーは、あのSZ姉貴の使っていたものと同様のものである。
シャークネード内で手放されたこのチェーンソーは風に巻き上げられて飛び続け、何の因果かフィンの元へと飛んできた、という訳だ。
「さて…」
もみじおろしのようになったサメの死骸を見ながらフィンは呟く。
「どうやって降りよう…」
フィンの着地した場所は屋上であった。
【一日目/深夜/D-5 特捜エクシードラフト本部】
【フィン・シェパード@シャークネードシリーズ】
【状態】疲労(中)、軽傷
【装備】チェーンソー@シャークネードシリーズ
【所持品】基本支給品一式、ランダム支給品×2
【思考】
0:主催者を倒す。
1:エイプリルと合流したい。
2:黒い剣士(=ジャークムーン)に警戒。
【備考】
※4以降からの参戦です。
※黄金のチェーンソー@シャークネードシリーズはD-4のシャークネード内にあります。落ちてくるかもしれません。
◇
「私は…そうか…魔物の心に動かされていたのか…」
ジャークムーンは独り言ちる。
騎士としての誇りと邪悪な魔物としての心のせめぎ合いにより彼の体は蝕まれていた。
この殺し合いの場に適合させる為か今はまだ万全の状態にはされていたが、それでも彼は自分にもうあまり時間がない事を察していた。
「早く決着を付けねば…リュウケンドー…!」
心が完全に邪悪に染まる前に、また体が朽ち果てる前に、彼は己の好敵手との決着を付けねばならなかった。
黒の剣士は未だ鮫台風の中であった。
【一日目/深夜/D-4 森】
【ジャークムーン@魔弾戦記リュウケンドー】
【状態】疲労(小)
【装備】月蝕剣@魔弾戦記リュウケンドー
【所持品】基本支給品一式、ランダム支給品×2
【思考】
0:リュウケンドーとの決着を付ける。
1:先程の男が気にかかる。
【備考】
※21話からの参戦です。
※制限により、邪悪な魔力の影響を受けています。
※体の崩壊が始まっています。
※シャークネードの中にいます。
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最終更新:2018年08月16日 11:11