「ほら、カレーが出来たぞ」
辮髪の大男、砲岩は鍋から容器にカレーを移し、目の前の白髪の美少年へと手渡す。
「ありがとうございます」
カレーを受け取るその美少年の名は春日野悠という。
悠はこの殺し合いが始まって間もなく砲岩と出会っていた。
―『!?…他の参加者!?に、逃げないと…』
―『待て!俺はこの殺し合いに乗っちゃいねぇ!』
「あの時は驚きましたよ。砲岩さんすごい威圧感でしたもん」
「ハハ、強面なのは自覚してるぜ」
何の嫌がらせか、砲岩の支給品はレトルトカレーが作れる一式セットであった。
一体何の役に立つのか皆目見当もつかなかったが、捨てるのも勿体なく思えた。
そこに悠が現れ、情報交換も兼ねて食事の席を設けることにしたのであった。
「砲岩さんの知り合いもここに呼ばれているんですか?」
「ああ、何人かな」
容器のカレーライスを掻っ食らいながら砲岩は告げる。
「ラーメンマン…美来斗利偉・拉麺男は間違いなくこの殺し合いに反抗するぜ。あいつは弱者を助け悪事を挫く事を生業としているからな」
腹が減っていたのか、砲岩は更にカレーを掻き込んだ。
「シューマイってガキと蛾蛇虫はラーメンマンの仲間だ。多分あいつらも殺し合いに乗る事はないだろう」
「この拉麵男・懢蝱って人はラーメンマンさんと関係があるんですか?」
「分からん、だが人様の名前を騙るような奴に碌な奴はいねえぜ。注意した方がいいかもな」
そこまで聞いて、悠は食事の手を一旦休め口を開いた。
「僕も知り合いが呼ばれてるんです。妹の穹にクラスメイトの天女目に渚さん、近所のお姉さんの奈緒ちゃんに、それから初佳さん…」
最後の一人の名を口にした時、悠の表情は暗くなった。
それを見た砲岩はある事を察する。
「そうか、見せしめにされた…」
「はい…」
「メイドさんの方かい?」
「はい……」
「そりゃあ、辛かったな…」
暫し重苦しい沈黙が流れた。
砲岩もどう声をかけてやるべきか悩んでいたが、沈黙を破ったのは悠の方であった。
「ねえ、砲岩さん。優勝したら願い事を叶えるって話、本当なんでしょうか?」
「あ?ああ、あの玉王の言う事だ。あいつは悪巧みしか考えてねえ。眉唾もんだな」
「…そうですよね。出来るって言ったって出来ない事もありますからね」
「まさか死んだ奴が生き返るなんて事出来るはずないからな」
それだけ言うと砲岩は突然倒れた。
その場に突っ伏したこの大男は二度と動くことは無かった。
心臓は活動を停止し、瞳孔は開いていた。
流星拳砲岩は死んだのだ。
【流星拳砲岩@闘将!!拉麺男 死亡確認】
…殺した。
……殺してしまった。
春日野悠の胸には一抹の後悔があった。
先程まで親しげに話していた人を殺してしまったことに。
砲岩のカレーの容器に毒を盛ったのは間違いなく自分だ。
自分の意思で春日野悠は殺人を犯したのだ。
「うっぷ…」
己のやった事に思わず吐き気がこみあげてくる。
本当にこれでいいのか?と自問自答の声が心の内に響く。
だが、それでも悠は止まるわけにはいかなかった。
「初佳さん…」
この殺し合いの見せしめにされて殺された悠の恋人、乃木坂初佳のために悠はゲームに乗った。
優勝の報酬で彼女を生き返らせるのが今の彼の目的であった。
無論、砲岩の言った事を忘れた訳ではない。
優勝すれば願いを叶えるという主催者の言葉が嘘である可能性もある。
しかし、結局のところ悠は嘘ではない方に賭けたのだ。
そして、人を殺した。
もう後戻りはできないところに来てしまった。
「ごめんなさい、砲岩さん…」
砲岩の遺体の瞳を掌で閉じ、悠は歩き出した。
自分では砲岩のような格闘家とまともにやり合って勝てる可能性は0だ。
故に、主催に反抗するグループに潜り込み、騙し討ちでキルスコアを稼ぐのが悠の当面の目標である。
おあつらえ向きに彼の支給品は、何の因果か毒であった。
まさにこれからの方針にピタリと合致するものと言えるだろう。
「穹、天女目、渚さん、奈緒ちゃん、皆…ごめん」
願わくば、自らの手で知人達を殺める事が無いように…と祈りながら、悠は歩みを止める事は無かった。
【一日目/深夜/E-2 山中】
【春日野悠@ヨスガノソラ】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、毒薬、ランダム支給品×2
【思考】
0:優勝して初佳を生き返らせる。
1:対主催グループに潜り込む。
2:知人とは会いたくない。
【備考】
※アニメ版Cパート最終話以降からの参戦です。
最終更新:2018年09月08日 20:51