鏡合わせのクロックワークス
第0.0話 事の始まり ~ルンフォが死んだ!~
全ては、一つのファンブルから始まった。
某月某所、大都会部室での、とあるソードワールド2.0キャンペーン卓での出来事。
某PL1「あっ…そのダメージだと、HP0以下。生死判定っすね」
某PL2「えっ大丈夫!? 死なない!?」
某PL1「だいじょぶだいじょぶ、ゆーてHP-3とかだから、ピンゾロじゃなければ絶対成功……(ころころ)あっ」
振られたダイスの出目を見て、その場の全員が顔色を変えた。
GM・他PL全員「「「ピンゾローー!!!?」」」
某氏(PL1)「……し、死にましたー!!」
はい、お疲れ様です! 南無三!
SW2.0ではHPが0以下になった時に生死判定を行います。
判定基準は置いといて、判定に成功したら「気絶状態で生還」、失敗したら「死亡」ということになるのですが、
ピンゾロを振ると自動失敗扱いになり、どう頑張っても死亡します。
というわけで、某PL1氏のPCは、生死判定ピンゾロにより、無事死亡しました。南無。
でも、SW2.0では、死亡=キャラロストではなく、基本的に(※1)死亡後も「蘇生」で復活可能です。
GM「……蘇生する?」
某氏(PL1)「しますよ!? しない理由ないですよ!! まだ我々の戦いはこれからですよ!!」※当時はキャンペーンの割と序盤
よかったよかった。キャラロストはなかったんだ。
……なのですが、某PL1の使っていたPC種族が【ルーンフォーク】だったことがすべての元凶でした。
SW2.0の種族、【ルーンフォーク】は魔動機文明時代に生み出された人造種族です。
かつて労働力として生み出された経緯から、多くが「主に仕えたい本能」を持つ生粋の奉仕種族(※2)。
人造種族ゆえの「他の種族と同じような魂を持たない」という設定からか、色々とルール適用面でも他の種族と違う部分があります。
ラクシア世界観の中で割と大きな要素を占めるはずの「神様」の声が全く聞こえず、信仰心が存在しなかったり(プリースト技能が取れない)、
何故か妖精の姿が見えなかったり(フェアリーテイマー技能が取れない)。
他にもいろいろな固有設定があるのですが、今は置いといて……
この時問題だったのは、【ルーンフォークは死亡した場合、最新の1年間の記憶を失う】という設定。
GM「……ってわけでおめでとう! 君は、死亡時から一年前までの記憶がふっとんだよ!!」
某PL1「んああああッ」
他PL陣「(爆笑しながら数名頭を抱える)」
某PL1「う、うわー。これまで培ってきた思い出や取ってきた情報が全部吹っ飛んだ。
それどころか、旅に出たのが一年弱前の設定だから、パーティメンバーのことみんな忘れた! すんません!」
某PL2「ちょ、奥さん、それ俺のことも綺麗さっぱり忘れてるよね……? これ何? 離婚の危機?」(←一年弱前にPL1と結婚した設定のPC)
某PL3「私のことも忘れたねー、母さーん!?」(←一年弱前にPL1の養子にしてもらった設定のPC)
某PL4「家庭崩壊っすね……」
某PL5「ふっww」
GM「キャンペーンヒロインも呆然。どうしようかこれ!」
要は一年間の記憶喪失になるわけです。
一年記憶が吹っ飛ぶと諸々齟齬が出る。ついでに、これまで培ってきた他のPC勢やNPC勢との関係が吹っ飛んだりもする。
記憶喪失! 記憶をなくした側と、忘れられた側の苦悩!
正直設定的にはすっごく美味しく、蘇生後のロールプレイ(RP)でなかなかドラマチックでエモい展開になったりします。
蘇生後ロールプレイのアツさから、「ルンフォは死に得!!」とか言い出す人もいる(筆者調べ)。
ただ、予想外のタイミングであまりにも唐突に死ぬと、キャンペーンのシナリオ組み直しなどにつながって、GMが頭抱えて死んだりします。
GM「めっっっちゃ記憶喪失ネタ拾いたい、が、シナリオ予定的に、がっつりネタとして組み込む時間的余裕がない……」
某PL1「すいません! すいません! でもめっちゃエモい!!!! よっしゃあ!!!!」
某PL3「エモければ勝ち!!」
この時のキャンペーンでも、死亡したPC1本人のRPや周りのRPが盛り上がり、最終的になかなかドラマチックな物語が展開されました。
GMとして見ていても面白かったし、切ないながら大団円を迎えたいいキャンペーンになりました。
……しかしそれはそうと、GM的には、「もっと記憶喪失ネタ掘り下げたい」という気持ちが残った。
十分盛り上がったし盛り上げたが、もっと、RPだけでなく、シナリオとしてルンフォの記憶喪失ネタを拾いたい!
そうだ。
いっそルンフォ死亡後の一年間記憶喪失ネタで一本新しいキャンペーン組めばいいじゃん???
え?そのネタもう公式で見た?(※3)
気にしない気にしない。発想や根本のネタが同じでも、シナリオや参加するPCの数だけ全く別展開になるのがTRPGだから。
でも、一応レベル帯は被らないようにしておこうか。
いろいろSW2.0のキャンペーンやってきたから、参加PL的にも少し変わり種が欲しいだろうし、いっそ高レベル帯で。
……それにデータ的にもちょっと悩みどころを造りたいし、いっそ、どうせだったら全員ルンフォでやってみたらどうだろうか。(※4)
いいよねルンフォ。(※5)
とりわけ奉仕種族というところがいい。
「主に仕えたい本能」、こんな美味しいネタがあるだろうか。
アンドロイドチックなところもとても良い。見てくれあの首の硬質パーツ。「決して外すことのできない首輪」だよ? 業が深い。
どんな個体でも、あの首輪だけは外せないんだよ。奉仕種族としての起源は、身体特徴として常について回るんだよ。
というわけでルンフォの従者いいよね。うん。
全員従者になってもらおう。
@T〇itter
「…ってわけで、ドキッ!ルンフォだらけのSW2.0高レベル卓~みんないっぺん死にました~をやろうと思うんだけど需要あるでしょうか。
こんなコンセプトだけど、内容は結構シリアスで」
「おっええぞ」
そんな経緯で、ルーンフォーク限定卓、通称「ルンフォ卓」が始動したのです──……。
※1 現在の「穢れ度」が3以下で、PC設定的に蘇生を受け入れる場合に限る。穢れ度4点始まりの蛮族PC等は即ロスト。
※2 もちろん個体差あり。全くもって誰かに仕えたがらない、自立心溢れるルーンフォークもいます。
※3 SW2.0公式リプレイ「ルーン・うぉーかーズ」。
※4 上記「ルーン・うぉーかーズ」でも、PC全員ルーンフォークですね。やっぱりデータ的な悩みどころを作りたいとき、種族固定するとなかなか面白い。
※5 ゲームサークル大都会には、現在熱狂的なルーンフォーク好きが二人いる。一人はこの冒頭でピンゾロしてPCが死んだ某氏で、もう一人はこのキャンペーンのGM(筆者)。いいよねルンフォ。ルンフォに囲まれたいがゆえにキャンペーンを立てたと言われても否定はできない。
最終更新:2018年11月10日 22:57