ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…

【どらごんくえすとすりー そしてでんせつへ】
ジャンル ロールプレイングゲーム

cARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/
SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX
発売機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ENIX
発売日 1988年2月10日
分類 時代を築いた作品
演出に優れた作品

概要

1988年にファミリーコンピュータで発売されたロールプレイングゲーム。
ドラゴンクエストシリーズにおいてロト三部作と呼ばれる物語の完結編。
魔王バラモスの侵略から世界を救うため、勇者オルテガの息子がアリアハンを旅立つ。

大ヒットした前作からさらにパワーアップしたシステムや、
アレフガルドの謎といったシリーズの関連を仄めかす広告などにより発売前から期待を呼び、
当日には日本中の玩具店で行列ができる光景がニュース映像として報道されるなどの
社会現象を巻き起こした、文字通りの「伝説」となったゲームとして知られている。

ゲーム内容も前評判のハードルを余裕で飛び越す完成度を誇り、
職業システムの自由度の高さや転職による育成のやり込み、
攻略順の自由度の高さによる冒険感を演出しながら
行き詰まってしまうような理不尽な謎解きや初見殺しを抑え
広いユーザーが遊ぶ事を意識した配慮が行き届いている。

演出やギミックの強化も目覚ましく、昼夜を取り入れたマップや
技巧を増した煌びやかな音楽、実在の世界を思わせる各地の文化など
退屈を感じさせない世界の多彩さが表現されている。
そして何よりも真の敵の存在が明かされると同時に
これまでのシリーズでそれとなく積み上げてきた伏線を綺麗に回収して
エンディングへ向かう怒涛の展開はプレイヤーたちの度肝を抜き、
本作一作では完成し得ない、シリーズを通した壮大な物語に連なっていく事を体験するのである。

その人気から発売の瞬間から各ゲーム誌では攻略の特集を組み、
早解きや職業縛り、最強育成など数々のやり込みプレイが
ゲームライターやユーザー投稿によって競われていた。

多くのゲーム誌で累計一年以上の期間読者人気一位に君臨し、
発売十年後に当たる1998年のファミ通企画「読者が選ぶ心のベストゲーム」で堂々の一位を獲得している。
その他の人気投票企画でも、ドラゴンクエストシリーズで最も人気のある作品に選ばれる事が多い。

バグ技も数多く見つかっており、中でも「ランシールバグ」は
棺桶だけで歩いたり、存在しないマップからゲームが再開するなど
通常のプレイでは起こり得ない様々な怪奇現象の入口として知られていた。
2020年代になっても新たなバグの発見や検証もあり、
「ホットプレート等を用いたバグの挙動管理」といった異次元の技術が複数のプレイヤーによって競われたり
本作プログラマーの内藤寛ご本人がYouTubeでデバッグ検証動画を投稿するなどの活況を呈している。

システムの進化

操作形態は従来と同じく、コマンド選択によって行動を選択するスタンダードな2Dマップ、ターン制バトルのロールプレイングゲーム。
重要な変化として、主人公の勇者以外のパーティの職業や人数を「ルイーダの酒場」で自由に選べる方式になっている。
パーティの最大人数は4人に増加。以降のシリーズでも基本的な戦闘参加人数の上限となる。
預り所が初登場。料金は掛かるが、持ち物が一杯でも捨ててしまわずに済むようになった。
フィールドや街に昼夜の概念が登場し、会話やイベントに違いが出るようになった。
パーティアタックが導入され、眠った味方を攻撃して起こすなどの戦法が加わった。ただしスマホ以降のリメイクではシステム簡略化により廃止された。
バッテリーバックアップが導入され、前作で最大52文字にも上っていたパスワード「復活の呪文」からついに解法された。
ただしファミコンのカートリッジは衝撃や接触不良に弱く、誤ってコードを引っ掛けただけでセーブが消えてしまう悲劇も日本中で起こる事になった。
シリーズ初の飛行乗り物が登場。オーブを揃えた終盤に満を持して登場し、その物悲しい音楽が心を打った。
シリーズで始めてマップが複数構成になった。真の敵の登場とともに見覚えのあるマップに降り立つ展開が衝撃を与えた。
魔法の体系化が行なわれ、これまで存在した魔法に上位版や下位版が数多く設定された。これが以後のシリーズでの基本ともなる。

なおシステムの進化の多くは実際にはドラクエがリアルタイムに発明した物ではなく、
ユーザーが馴染みやすいようにシンプルなシステムから順次採用した物*1だったが
この作戦は見事に当たり、パソコンゲームなどに馴染みのないユーザーらは
短期間に劇的に進化したRPGの時系列を疑似体験する事になった。

BGM

ポップス作曲の大家でもあるすぎやまこういち氏の楽曲は前作から人気があるが、
今作ではさらにスピード感のあるグリッサンド、トリルなどを多用した疾走感ある曲調も見受けられる。
特に最終ボス戦闘である「勇者の挑戦」は同シリーズのボス曲としては珍しく、
従来のようなスローテンポで重圧感を表現した曲ではなく、緊迫感のあるかなりハイテンポな戦闘曲となっている。
リメイクではややテンポが下がってしまったが、ED曲のそして伝説へなどと共に本作の象徴的な曲目となっている。

同時期のRPGとの比較

前作から大幅な進化を遂げた本作だが、発売日延期の影響もあり、
同時期に発売した他のRPGに先んじられてしまった要素も多い。
例としてセーブ、職業システム、空飛ぶ乗り物などはFF1のほうが先に世に出る事となった。

ボスの強さの秘密

FCの少ないメモリで敵のHPの多さを表現するため、今作では自動回復という極悪なシステムが採用されている。
言葉の通り1ターン毎にHPが多少のランダム幅をもって回復するという物なのだが、
この仕様の影響として、攻撃力が一定以上あれば一気に勝てる戦闘が、
敵の回復量を下回ると永久に倒す事ができなくなってしまう。
しかもこの仕様はテキストなどで告知してくれないため、低レベル気味だったり少人数などで進めていると
累計で膨大なダメージを与えているのにいつまで経っても倒せない状況が発生してしまう。
この仕様は今日ではよく知られているが、公式には強さの秘密を演出するために徹底的にその存在をとぼけられており*2
知らずに罠にかかるプレイヤーが圧倒的に多かったようである。

気になる点

  • UIが今日の観点でみるとややモタついた所があり、覚えた魔法や所持品がウィンドウを開かないと確認できない点などは次作で改善する事となる。
  • 「逃げる」を選択できる隊列先頭に魔法を使用できるキャラを置くと、コマンド表示数の都合で「防御」が選択できなくなってしまう。

リメイク

今作はその人気からリメイクが幾度に渡って行われているが、基本的に最初のリメイクとなったSFC版をベースとしている。
このため原作のFC版とはかなり異なった要素が多い。場面にも拠るが基本的には難易度は下がっている。
最も大きな変更として、キャラクターに職業と性別の他に性格という要素が追加され、ステータス成長に補正がかかるようになった。
これに伴い、スタート時にこの性格を決定するための診断イベントも追加され、ゲーム開始時からだいぶ印象が変わっている。
このほか、敵のステータスなどの数値設定の見直し、装備品の大幅追加、タンスなどから拾えるアイテムや小さなメダルの追加、
新職業の盗賊の追加、クリア後に挑戦できる追加ダンジョンとボスの追加など完全新作に近い作り替えがされている。
前作までのリメイクが演出と難易度以外に大きな変更点が無かった事と比べると非常に挑戦的なリメイクになっており、
やや過剰に強すぎる装備の追加や、賛否の分かれる演出の変更点などの問題を指摘される事もあるが、
SFC後期の技術を投じた映像表現や快適さを追及された操作形態、FC版と異なる形で練られた難易度と
やり込み要素の数々から、原作の名声に甘んじない、新たな完成形を提示した名作となっている。
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最終更新:2022年08月21日 19:09

*1 CEDEC 2009 基調講演より。ハードウェアの進化という幸運も要素の一つとして語られている。

*2 参考:DQ大辞典【自動回復】