玲&エンブリオ ◆ACfa2i33Dc
聖杯によって作り上げられた架空の街とはいえ、この街は広い。
特に未だに成人にも満たない少女にとっては、【街】という大きな枠は、そのまま彼女にとっての小さな世界だ。
たとえ地図を読んで知識として知ってはいても、実際に路地裏を入ればそこに広がっているのは未知の場所。街の全貌を知る事なんて、少女たちにとっては難しすぎるし、多感な彼女たちにはそんな事を気にしてはいられない。
他の住人たちはよくできた偽物。街の事を知っているふりをしているだけで、実際のところは空っぽだ。
だから、本当の意味でこの街を知っている人間なんて、この街には存在しなかった。
聖杯の贄として呼び集められた少女達にとって、ここは迷宮だ。小路一つを曲がって、その先に知らない世界が広がっていない保証はない。
そして、確かにそうだった。
この街には、町という名の迷宮が存在する。
§
駆け足で抜けていく街並みを、横目に眺めながら、玲は『商店街』を目指していた。
時刻はお昼過ぎ。だがまだ玲は、昼食を食べていなかった。だから早足に急ぐ。
「今日のーっ、ご飯はーっ、なににしようかなーっ……コロッケ? カツサンド?
それともー……んー、やっぱり選べない!」
はしゃぐように。いや、実際にはしゃぎながら、玲は人通りの多い街中を駆け抜けていく。
走って、走って、走って。次第に人通りは少なくなって、それでも走って。
たどり着いたのは、人もまばらに通るか通らないかという程度の、寂れた住宅地。
人の気配はない。外を歩く人影はない。家の中に籠もっているのか、それとも、誰もが家を出てしまっているのか。
そんな事は気にもかけず、玲は進む。足取りは少し緩やかに、けれど急ぎ足に。
四つ角を曲がって、路地の裏手に入り込む。
『その他の注意』の標識の脇を抜けて、その先に、それはあった。
『商店街』。
個人経営の商店から、大衆向けの銭湯、そして昭和の香りがする住宅が立ち並ぶ。
商店街は、夕焼けの茜に染まっていた。外はまだ、昼過ぎだというのに。
けれど玲は気にしない。ここでは『いつもそう』なのだ。
「おっ、嬢ちゃん! いつものお使いかい!」
店頭に出ていた惣菜屋の店主が、玲を呼び止める。
これもいつものこと。
「もう店じまいだけどコロッケならあるぜ。残しといてもしょうがねえ。
定価70円だが60円にまけとくよ」
「くださいなっ!」
元気よく答えて。玲は店主に代金を渡してコロッケをほおばる。
そしてすぐにぺろり、と平らげて、にこりと笑った。
「おいしいっ!」
「そうかいそうかい。もう一個どうだい?
えーい特別大特価50円だ!」
「くださいなっ!」
「まいど! もう一個どうだい?
えーい特別大特価50円だ!」
「くださいなっ!」
「まいど! もう一個どうだい?
えーい特別大特価50円だ!」
「くださいなっ!」
かれこれ10回くらい同じやりとりを繰り返して。
コロッケを11個お腹に収めた玲は、満足気な顔をしながら蒸し鳥にかぶりついていた。
「これも美味しい~……♪」
もぐもぐ、と。行儀が悪いぞ、と指摘されるのも構わず――実際には、『商店街』には彼女に注意をするような者はいないのだけど――歩きながら食べている。
『商店街』の中は、彼女にとって目新しいモノでいっぱいだ。
――いや。それを言うならば。『商店街』の外、街の風景だって、玲にとっては、とても楽しい。
記憶喪失。玲は、そういうものらしい。気がついたらこの街にいて、気がついたら『商店街』と『町』に迷い込んでいて、そして、気がついたら。
『彼女』が、傍にいた。
だから玲は、なぜ自分がここにいるのかも。ここに来る前に、自分が何をしていたのかも知らない。
ただ、自分がどこかに閉じ込められていて、外を見たことなんてほとんどなかった。という、それだけは、なんとなくわかっていた。
だから玲は、街が好きだ。『商店街』も、『町』も好きだ。
自分のことを保護してくれて、一緒にいてくれる『彼女』も好きだ。
外を自分の力で歩けて、散策できて、いっぱい食べられる。それだけでたまらなく嬉しい。
『町』と『商店街』の人たちは優しいし、街の人たちはそうではないけれど、それでも外を歩くのは玲は好きなのだ。
だから今日も玲は、街を歩く。本当は『彼女』にはずっと『町』か『商店街』にいた方がいいと言われているけれど、そんな勿体ないことはできない。
街の中で少女は願う。
迷宮の中で少女は願う。
「この毎日が、ずっと続きますように」
――けれど。ふと玲は、また違うことを思い出した。
自分は、もっと前、違う誰かと一緒にいた気がする。……誰だっただろう?
思い出せない。何度も何度も考えて、頭を捻って。思い出せなかったから、また、玲は忘れてしまった。
……路地裏と『町』の狭間で、犬が一匹、死んでいた。
§
薄暗い、部屋の中。
少女が一人。
一人の、
ある少女が。部屋の中で、佇んでいた。
ある少女は願う。少女の幸福を。
ある少女は願う。少女が永く生きる事を。
だから、ある少女はできるだけ永く続けようと思う。この聖杯戦争を。
さいはての『病院』で。繰り広げられる、偽りの日々を。
だから。
ここは、少女のためのさいはてだ。
【クラス】エンブリオ
【真名】ある少女@さいはてHOSPITAL
【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具EX (通常時)
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力B 幸運B 宝具- (魔法少女ネガティブはるるーと)
筋力C 耐久B 敏捷C 魔力A+ 幸運C 宝具EX (ある少女)
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
創造(偽):EX
殻の中での特権。エンブリオのサーヴァントは、自らが創造/想像した殻の中で開拓者としての特権を発動できる。
この場合のEXランクは『そもそも規格が存在しない』という意味であり、超越性を意味するものではない。
悪く言ってしまえばひきこもり。
星の開拓者(偽):EX
あらゆる難航、難行が“不可能なまま”“実現可能な出来事”になる。
エンブリオのサーヴァントはこのスキルによって殻の中で起きた『不可能な事象』を解決する事ができるが、同時に『自らに敵対する存在』にも『星の開拓者』のスキルを与えてしまう。
エンブリオが殻の中では不可能はない事の証明であり、同時にその殻を破壊する者が現れるという運命を暗示するスキル。
【保有スキル】
マホウ:EX(B)
魔術でも、魔法でもなく、マホウ。
エンブリオの殻の中でのみ作用する、独自の超越能力の体系。
エンブリオは自らの殻の中でこれを自在に操るが、殻の外ではまったく効果を発揮しない。
ただし、『変身』スキル使用時は殻の外でも使用できる。
変身:B
魔法少女ネガティブはるるーとに変身する。
大して意味はない(むしろ固有結界内だとステータスが低下する)が、この姿が他の世界(物語)に登場した逸話により、魔法少女としての姿ならば、本来自らの固有結界の外では無力なエンブリオでも、自らの固有結界の外でマホウが使用できる。
ただし、変身中は『創造(偽)』スキルも『星の開拓者(偽)』スキルも自らの宝具の効果も使えない。
【宝具】
『最果ての殻、最果ての町、最果ての病院(さいはてHOSPITAL)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大補足:-
エンブリオの『殻』。一種の固有結界。この聖杯戦争の舞台である『街』と、重なって存在している。
固有結界の中の出来事、あるいは外の出来事が相互に干渉する事はないが、出入りできる点は複数存在し、その辺の裏路地がこの固有結界に繋がっている事もあるし、どこかの家の玄関が出入り口となっている事もある。
この固有結界の中では、エンブリオは『ある少女』形態に変身できる。
この固有結界の主として、エンブリオは固有結界内の環境を操作できる。ただし、本来三人いる開拓者がエンブリオ一人しかいないため、その権限は1/3にまで落ちている。
『桃源祈祷』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:4人
エンブリオ最大最強のマホウ。
マホウを全力で収束し、全ての魔力を敵対者へとぶつける。
与えるダメージは『最大耐久力-1』で固定。故にどれだけ耐久力が低かろうと万全の状態ならば必ず耐えるし、逆にどれだけ耐久力が高くても傷を受けているなら必ず致命傷となる。
エンブリオの必殺(にはなりきらないが)宝具だが、発動には3ターンの祈祷(マホウの収束)を必要とするため、サーヴァント同士の戦いでは非常に大きな隙を晒す事となる。
【weapon】
なし。
【人物背景】
「目と耳を塞いで朝日から逃れよう
西日が射したならカーテンを閉めよう
親しい誰かを失わないように
虹の空には唾を吐き
夜の月にはワラ人形を
美しい世界に勘違いしないように
今となっては 全て幼い日の幻
されど私は望む あの日への回帰を
千年の喪に服すために
世界中が喪に服すために!」
「……何言ってんの?」
「魔王の名乗り向上 のってよ恥ずかしいじゃない」
【サーヴァントとしての願い】
???
『エンブリオ』
【殻】のサーヴァント。自らの領域を創造(あるいは想像)し、その中で絶対者として存在する。
その性質上、固有結界、あるいはそれに類するモノを所持している事がこのサーヴァントとして召喚される事の条件となる。
スキル特性は創造(偽)と星の開拓者(偽)。
このスキル群はその名の通り偽りの創造であり、想像である。故に、ランクはどのサーヴァントでもEX(そもそも規格が存在しないため)となる。
そして、同時に『殻は打ち壊される』という運命の暗示でもある。
【マスター】玲@ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス
【マスターとしての願い】
このまま偽りの街の中で日常生活を続けたい。
【weapon】
なし。
【能力・技能】
回復の力が使える。
【人物背景】
八十神高校の1年生。何者かに記憶を奪われてしまったらしい。
どこからともなくアメリカンドッグやドーナツなどを採りだして、つねに食べている。不思議な雰囲気を持った少女だ。(公式サイトより)
【方針】
日常生活を続ける。
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玲&エンブリオ(ある少女) |
000:前夜祭 |
最終更新:2015年08月04日 20:32