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幸せな子ども◆PatdvIjTFg


聖杯戦争のために用意された名前の無い街、南西部に位置するその中学校は、
画一的な、極一般的に想像するコンクリート製の学校のそれとは違い、西洋館を思わせる体裁を持った建造物であった。
さて、校門から続く煉瓦の道を通り校舎内に入ろう。
外面だけの話である、中に入ってみれば何の事はない普通の校舎である。
デザインに凝ったところで、所詮中身は他と違うところは無い。
いや、内装まで追求しようと思えば出来るのだろうが、所詮は中学校、通うは少年少女。
彼女たちは校舎にそこまでは求めないし、校舎もまた彼女たちにそこまでを求めない。
故に、この中学校は内面と外面が不一致を起こして、どこか――歪んでいる。
最も、その奇妙さも些細なもの、誰も特に気にすることはない。

二階へと上がろう、そこにはずらりと二年生教室が並んでいる。
その教室の内の一つ。
授業合間の休憩時間、生徒たちがそれぞれ友人同士集まって群れを形成している。
小集団の集合から少し外れて、ただ一人で少女がノートと向き合っている。

足先から頭の天辺まで可愛らしい容貌をした彼女の名は輿水幸子、アイドルである。
当然、学校のだとか、町内のだとか、そういった小規模なものでなく、百人中百人がアイドルと聞いて想像する職業のそれである。
そんな彼女は年頃の少年達が視線をやるのも気にせずに、趣味である勉強ノートの清書を行っている。

「あっ、ごめんなさい輿水さん」
今まさに清書を行っていたノートが、彼女の制服が、花瓶から放たれた水によって、濡れる。
「手が滑っちゃった」
偶然にも、彼女の目の前で、ノートを台無しに出来るように、持っていた花瓶を滑らせる。
ある特定の少女という人種はそのような器用で陰湿な芸当をいともたやすく行ってみせる。
「いえ、ボクは全然気にしてませんよ」
くす。と誰かが幸子の発したボクに笑う。
敵を排除しようとする動きは人間社会の常である、そして少女達の中では敵と判定されるハードルは限りなく低い。

舌打ち。
彼女はアイドルだから。
舌打ち。
彼女は誰よりも可愛いから。
舌打ち。
彼女は自分の可愛さを知っているから。

呪詛。
何がボクだ、オタクに媚びているのか。
呪詛。
何が幸子だ、何時の時代の名前だ。
呪詛。
何だそのじとついた目は、男を誘っているのか。

悲鳴。
ああ、なんで私が好きなあの人は、あの女を見る。

少女の理論で彼女への攻撃は正当化される。

殴ることもせず、蹴ることもせず、ただひたすら陰湿に。

彼女が作り上げた物を壊し、
彼女が必要とする物を隠し、
彼女が発する特異を嗤い、
彼女の活動について語る。

「いえ、ボクは大丈夫ですよ、プロデューサーさん」
放課後、隠し切れない摩耗を、それでもアイドルの演技力で見せないように、幸子はプロデューサーに電話をかける。
輿水幸子は、万人のためのアイドルではない。
何万人、何億人が彼女を愛そうとも、彼女の根本にあるのはただ一人。
己のプロデューサーに愛されること。

それは恋愛感情なのかもしれないし、そうではないのかもしれない。
ただ、輿水幸子は彼といると安らげる、それは確かな事実だった。

だから、彼女はあの少女達のアイドルにはなれなかった。

「プロデューサーさんには見えないのが残念なぐらいに、ボクは変わらずカワイイですよ!」

ここしばらくは何らかの事情とやらで、仕事も、それどころかレッスンすらなかった。
声だけの関係性、直接会う必要は無いのだから当然と言えるが、それでも苦しい。
直接会って、何時もの調子でプロデューサーと接すれば、学校生活で蓄積するものは綺麗さっぱり消えるはずだった。

会いたい、と思う。

「まぁ、そろそろ、プロデューサーさんは僕に会いたくて会いたくてしょうがないと思いますから、別に会いに来てもいいんですよ!」
「……そうですか、まぁ全然気にしてないですけどね!」
すいません、という謝罪は理性では受け入れられる。
向こうが社会人である以上、どうしようもない面はある、それを受け入れられない程に幸子は子どもではない。
ただ、感情が――輿水幸子という少女が受け入れられないだけだ。

「じゃあ、そろそろ切りますよ……あっ、切っていいんですか?プロデューサーさん、もっとカワイイボクとお話したくないですか?僕に切らないでくださいってお願いするなら……」

電話が切れる。
一人の世界が戻ってくる。

「輿水さん」
「えっと、ボクに何か用ですか?」
背後からの声に振り返ると、クラスメイトの小柄な少女が立っている。

「ずいぶん、楽しそうに電話してましたね」
「いやぁ、どうでしょうか」
「隠さなくてもいいですよ」

少女は幸子を攻撃しない、いやそれどころかクラスの女子で唯一、表立ってではないが、友好的な立場だった。
少女は幸子のファンだった。

「すいません、輿水さん……えっと、あの、その…………遊びに来ませんか?」
「えっ」
「いや、もし良かったらでいいんですけど、最近輿水さんが暇してるって言うから」
「あっ……と、カ、カワイイボクでよかったらお邪魔させていただきますよ!」
「本当?良かったぁ……」

校門を出て、更に歩いて数分、赤い屋根の、まるでドールハウスのような屋敷が、彼女の家だった。
「お邪魔します」
「どうぞ、と言っても今日は誰も居ないんですけどね」
中二階に少女の部屋があった、ぬいぐるみが多くて、どこか甘い匂いのする部屋だった。

「で、えっとなんでボクを呼んだんですか?」
「えっと、ですね……」
少女が部屋の内側から鍵を掛ける、何故鍵を――幸子の疑問の答えはすぐに明らかになった。

「脱いで、輿水さん」
「え?」

振り返った少女の目を幸子は知っている。
クラスメートと同じ、その目を幸子は知っている。

「撮影会をしたいの、服はいらないけどね」
「え?え?」
だが、あまりにも理解に苦しむ。

「好きな男の子が輿水さんのファンでね、あっ……もちろん、彼は輿水さんに告白しようだなんてこと考えてないよ、ただ、アイドルとして好きなだけ。
だから、私の告白にもオッケーしてくれた、人生で一番うれしい日だったなぁ……」
「そ、そうですか」
「でも、彼は私と付き合っても未だ、輿水さんのポスターは張ってあった。当然よね、憚る必要はないもの、私だって輿水さんのファンなんだから。
でも、恐ろしい。もしかしたらって思うと、彼は私よりも輿水さんの方が好きなんじゃないかって。
彼のことを信じたい、でも愛は目に見えない。可愛さは……輿水さんが可愛いってことはよぉく、この目に映っているのにね。」
「…………」
今、はっきりとこの少女が幸子にとっては恐ろしい。
いや、悍ましい。

「私はアイドルにはなれない、私は輿水さんより可愛くなれない、私は輿水さんには勝てない。
だから、幸子ちゃんを壊す。まどろっこしいいじめなんかしない。
貴方がアイドルでいられなくなるような写真を撮って、ネットで流す。
私は輿水さんに勝てないから、輿水さんが勝手に負けてもらうしか無いの
わかったら脱いで、邪魔は絶対に入らないし……素直に従わないなら、私が勝手に輿水さんの服を切って、捨てる。
手元が狂って、身体まで傷つけちゃうかもしれないし、裸で家に帰ることになるからおすすめはしない、
それに私は興奮して幸子ちゃんの事を何発も何発も殴ると思うわ、どうする?」
「お断りです」
「そう」
「ボクはアイドルですから」
「じゃあ、幸子ちゃんは野外露出が好きなマゾヒストってことになるわね。おめでとう、多分今までやってきた活動以上に有名になれると思うわ」

少女は既にカッターナイフを構えていた。
震えが止まらない。
幸子がここまで悍ましい悪意と狂気を向けられるのは、人生で初めてだった。
泣きたくなる。
それでも、アイドル輿水幸子を守護らなければならなかった。

自分からアイドルを捨てる真似はしない。
アイドルを捧げてやることもしない。

部屋から脱出し、クラスメイトが一人とても遠いところに引っ越すことになる、それで終わりだ。

「じゃあね、アイドルの輿水幸子さん」

幸子は負けた。
人生というものは覚悟だけではどうにもならないことを知った。









「!?」
携帯電話の着信音が鳴り響く。
「出ていいよ、輿水さん」
発信者名はプロデューサー。
「誰か知らないけど、今から何されるかをたっぷりと教えてあげたら良いわ」
手を伸ばす。
「絶対に撮影会を止めるには間に合わないけどね」


ピ。
『輿水さんですか』
「プロデューサーさん」

『なァんて』

『わたしの人形はよい人形。目はぱっちりといろじろで、小さい口もと愛らしい。わたしの人形はよい人形』
「あぁ、やっぱり、そうでしたか」

「やっぱり、僕が今まで電話してきた相手は偽物のプロデューサーさんだったんですね」
『うふふ……申し訳なく思いますわ、でも、いない人と電話は出来ませんもの。
わたしの人形はよい人形、腹話術師の代わりにお話する人形はお気に召して?』
「ボクは……怒っています」
『うふふ……』

『でしたら、また何時かお会いしましょう。貴方のサーヴァントと共に』

輿水幸子は信じていた、こういう時にはあまりにも陳腐な展開が待っていると。
プロデューサーが自分を助けにやって来ると。
来なかった。

だから、彼女は今この状況を夢だと思った。
夢だと思い込んだ。
夢だと思いこむしか無かった。

だから、彼女は真実を認識した。

聖杯戦争、彼女が巻き込まれているものを。



「創造主【クリエーター】!」
己がサーヴァントのクラス名を叫ぶ。
それが始まり。

クリエーターが幸子の手を握る、幸子がクリエーターの手を握る。

「カワイイボクに呼ばれるだなんて、クリエーターは幸運ですね」
「僕としてはもうちょっと魔力の多いマスターに呼ばれたかったんだけど……でも、いいや」

「あの娘は殺す?」
「殺さないで下さい」
「そう」

「鍵を開けて下さい、家に帰ったらたっぷり寝ます、起きたらボクは少し泣くと思います。
少しだけ泣いたら、カワイイボクに戻ります」
「うん」

「どうするかは、それから考えます」
「そう」

「まぁ、一つ忠告しておくけどさ。
多分、この世界で、きっと君は誰からも愛されないよ。僕みたいに」
「ボクはカワイイから大丈夫です、あぁ、クリエーターがカワイクないわけじゃないから勘違いしないでくださいね!」

「そりゃどうも」

【マスター】
輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
???

【weapon】
カワイイヤッター!

【能力・技能】
カワイイヤッター!

【人物背景】
中学二年生の十四歳。
「ボクが一番カワイイに決まってますよ」と事あるごとに自分を「カワイイ」と発言するなど自意識過剰な性格の髪の右側に緑と赤のヘアピンをした薄紫のショートヘアの少女。
髪の両端の一部が少しハネている(持ち歌の歌詞では寝癖)。一人称は「ボク」。口癖は「ふふーん!」。どこか慇懃無礼な口調だが、
分が悪くなると強がりつつも弱腰になる。元の世界ではエスカレーター式の私立に通っている。
現在の所CDデビューを除いたすべてのレア名には「自称・」が付く。自称・マーメイドでカナヅチであることが判明。

【方針】
後で考える

【クラス】
クリエーター
【真名】
クリシュナ@夜明けの口笛吹き

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A+++ 幸運E 宝具EX

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
創造:C+
世界の理を知ることで、世界の創造を可能とするスキル。
上位ランクともなれば、週休一日制での天地創造が可能になる。
このランクならば、同ランク程度の陣地作成とモンスターの創造を可能とする。
また、このスキルのためにクリシュナは異常なほどに高い魔力を有している。

【保有スキル】
神性:C-
元の世界においての偽りの神性、世界の理を知ることで擬似的に神と化した。

魔術:C
元の世界における魔術体系、マギをある程度修めている。

反骨の相:D
権威に囚われない、その始まりが奴隷であったことに起因する。
同ランクの「カリスマ」を無効化する。

【宝具】
『救われよ、己(ハレ・クリシュナ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
世界を滅ぼさんとする少女の意思、史上最悪の八つ当たり。
己の姿を天使、異形の怪物、千手観音と、段階的に変化し、その度にパラメーターを上昇させていく宝具。
変身中に超火力を撃たれると台詞が最後まで言えないまま死ぬ。


【人物背景】
「どうしてこんなことが出来るか不思議だって?
実は、キミがモタモタしている間に、
僕は現実世界に辿り着いたんだ。
そしてもう一度この世界に帰ってきた。
世界の両方を行き来したお陰で、
僕は現実と虚構の関連性について学んだんだよ。
この虚構の世界が人の記憶や情報の世界なら……
どういった形の記憶が
全ての人に共通する虚構を生み出すか。
それを理解できたからこうして世界を創造できるし、
他人にとっての脅威を生み出せる。
言っちゃあ、僕はもう神様なんだよね……

【サーヴァントとしての願い】
???

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Happy Birthday! 輿水幸子&クリエーター(クリシュナ 000:前夜祭
003:目覚め/wake up girls!

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最終更新:2015年05月11日 21:28