深夜のサンタクロース - Todarodes pacificus

深夜のサンタクロース

●●「今年は３年に１度のビッグイベント、
　　　１泊２日のパーティ＆スキー合宿！
　　　すっごい楽しみ！
●●「こんな日なんだから、
　　　午前中の授業なくてもいいのに。
●●「やっと、授業終了！
　　　……ん？
●●（机の中にメモが……
　　　なんだろう。）
メモ「『俺、合宿パスするから。
　　　クリスマスは書き入れ時なんだ。
　　　２日も店、休めない。
メモ「楽しんで来いよ。
　　　じゃあな！
　　　　　　　　　　　　T.S』
●●（T.Sって……
　　　佐伯くんだ。）
●●（そっか、
　　　佐伯くん、参加しないんだ……。
　　　お店があるんじゃ仕方ないよね。）

●●「ん……電話……？
佐伯「もしもし？
　　　俺。
●●「……佐伯くん！？
　　　どうしたの？
佐伯「寝てたか？
●●「寝てるよ！
　　　だって、今……４時だよ！？
佐伯「そっか。
　　　まあ、いいや。
　　　窓、開けてバルコニーに出て。
●●「？？？
　　　どうして？
佐伯「どうしてもだ。早く。
　　　・
　　　・
　　　・
●●「ウゥ〜、寒いっ！
　　　もう、なんなの……。
？？？「ヨッ、と！
●●「……！？
佐伯「オッス。
●●「佐伯くん！
　　　どうしたの！？
　　　泥棒かと思ったよ！
佐伯「クリスマスだぜ？
　　　サンタに決まってるだろ？
●●「…………。
佐伯「玄関が閉まってたんだ。
　　　それに、こういうドラマっぽいの
　　　一度やってみたかったし。
●●「もう。
　　　どうしてこう、いちいち
　　　やることが極端かなぁ……。
佐伯「ブツブツ言うな。
　　　わざわざ、
　　　プレゼント持ってきてやったんだぞ？
●●「そうだったんだ……ありがとう。
佐伯「うん……。
　　　メリークリスマス。
●●「メリークリスマス。
　　　……ごめんね。
　　　わたし、プレゼント持ってない。
佐伯「いいよ。
　　　顔見れたから、それで勘弁してやる。
●●「……なんだか、佐伯くん、
　　　今日はいつもより優しいね。
佐伯「そうかな？
●●「それに……元気ないみたい。
　　　昼間は、お店が忙しいんだって、
　　　あんなにはりきってたのに。
佐伯「ああ、店、な。
　　　……うん。
●●「……？
　　　珊瑚礁で、何かあった？
佐伯「今夜で、閉店になったんだ。
●●「エッ！？
　　　だって、そんな急に……。
佐伯「うん。
　　　……けど、じいさんは、もう、
　　　ずいぶん前から決めてたんだって。
●●「でも！
　　　佐伯くん、
　　　珊瑚礁のために今まであんなに——
佐伯「大きな声だすなよ。
　　　みんな起きるだろ？
　　　大丈夫。俺、思ったより平気だ。
●●「佐伯くん……。
佐伯「もう行くよ。
　　　タクシー待たせてるんだ。
　　　……おやすみ。
●●（佐伯くん。
　　　平気だなんて、
　　　そんなハズ無いのに……。）