暖かな手 - Todarodes pacificus

暖かな手

●●　（はぁ、これで今年のパーティも
　　　　おしまいかぁ……。）
●●　「……部屋に戻って寝ようっと。
　　　　・
　　　　・
　　　　・
●●　「なんだかパーティで興奮して、
　　　　寝そびれちゃったかな……。
若王子「●●さん。
　　　　どうしたんですか？
　　　　こんな時間に。
●●　「若王子先生。
●●　「ちょっと、目が冴えちゃって。
　　　　若王子先生は？
若王子「目が冴えて夜更かししてる子を
　　　　叱りに来ました。
●●　「すいません、
　　　　わたし部屋に——
若王子「冗談です。
　　　　先生は……なんだか、幸せで、
　　　　眠るのが惜しくなって。
●●　「幸せで？
若王子「……手がかじかんでます。
　　　　貸して。
●●　「あっ……。

若王子「温まった？
●●　「はい。
　　　　若王子先生、さっきのお話……。
若王子「……うん。
若王子「僕は、ずいぶん子供の頃から
　　　　数年前まで、
　　　　ずっとアメリカの研究所で働いてた。
●●　「はい。
若王子「その頃は、クリスマスって、
　　　　デスクの上のおもちゃのツリーと
　　　　冷たいターキーのことだと思ってた。
●●　「そんな……。
若王子「それが不幸せなことだなんて、
　　　　考えもしなかったから。
●●　「若王子先生……。
　　　　でも、今は違いますよね？
若王子「うん。
若王子「今夜はこうして大騒ぎをして、
　　　　大好きな生徒達の寝息を
　　　　確かめて歩いてる。
若王子「それに、ときどき寝付きの
　　　　悪い子がいて、
　　　　話し相手になってくれたりもする。
●●　「すいません。
若王子「こんなに幸せなことは無い。
　　　　僕は今、幸せを噛みしめてる。
若王子「困ったな。
　　　　これ以上贅沢を覚えると、
　　　　後が大変そうだ。
●●　「若王子先生……。
若王子「さあ、
　　　　そろそろ部屋に戻ろう。
　　　　頬っぺが赤くなってきました。
●●　「はい。
若王子「●●さん。
　　　　メリークリスマス。
●●　「メリークリスマス。
　　　　若王子先生。
若王子「来年は君の手が、
　　　　かじかんだりしませんように。
●●　「はい。
若王子「来年も君の頬っぺの上に
　　　　幸せが訪れますように。

●●　（こうして、
　　　　２００８年のクリスマスイブは
　　　　終わった……。）