12月23日夕刻。
ブラックハウス隊はルナツーにあったティアンム提督の第二連合艦隊と合流していたが、結局補給を受けられないまま、宇宙要塞ソロモンを目指していた。艦隊の輸送艦、空母からはすでにパブリク突撃艇が発進し、それらは腹部にビーム撹乱幕を搭載したミサイルを抱えていた。パブリク突撃艇は先行突進してビーム撹乱幕をばらまく任務を帯び、史上最大規模の艦隊の露払い役を務めていた。
そして今、その大船団の壮大な方陣が、冷たい真空の海をかき分けて、ジオンの支配する要塞へ迫ろうとしていた。それは、ついに鎖を解かれた自由世界の怒りと力だった。次から次へと切れ目なく続く無数かつあらゆる種類の艦船が、作戦開始ライン目指して突き進んでいた。戦艦、高速連絡艇、輸送艦、病院船、補給艦、せわしなく動き回るタグボート、そういったものの群れが際限なく続く。これらの船舶の大部分は、大きな空母艦と同じように、攻撃予定地の前方にむけて発進させる多くのジムやボールを積んでいて、さらにその上空を戦闘機の編隊が旋回しながら敵の襲撃を警戒していた。
この大船団は、かつて試みられたことがないほどに正確に組まれた分刻みの航行パターンに従って、着実に進撃を続けていた。ルナツーを出た艦船は、まずはその沖合の集結地点に向かって進み、そこで組分けが行われた。全艦隊がそれぞれの目指す攻撃地点ごとに集結し、所定の位置についた。
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08/23 22:52 Windows(PC) [330]エルザス
329
あずにゃんはブラックハウスの艦橋から周囲の大艦隊を見渡していた。すぐ隣には頼りになる僚艦、
アースラの姿がある。そしてその周りには目の届く限りに大小の船が並んでいた。これまであずにゃんの見たあらゆる景色の中で、この光景はもっとも印象的でもっとも忘れられない眺めだった。とにかくあずにゃんは、この後いかなる苦難が待っているにせよ、ようやく出撃できたことにほっとしていた。補給は受けられなかったが、もう艦隊に遅刻する心配はないのだ。依然緊張はあるが、ストレスは多少なりとも和らいでいた。それは傍らに立つ京にしても同じらしい。珍しく彼女のほうから雑談をふってきた。
「すばらしい景色ですね。」
「本当に。ルウム戦役のあと、よくこれだけの戦艦を建造したものです。」
「ビンソン計画のおかげと言っても過言ではないでしょう。ゴップ将軍に感謝しなくては。」
「ムギ先輩にもです。こうして後ろで支えてくれる人がいるから、私たちも戦える。そんなことを実感できますね。」
「艦長は、いつから前線勤務を?」
「この船の艦長になる前は輸送艦の副長をやっていました。戦艦勤務の経験はありましたが、まさかいきなり艦長になるとは。」
「荷が重い、とおっしゃるので?」
「今はそうでもありません。支えてくれるのは後方の人だけじゃありません。京大尉だって支えてくれます。それにパイロットのみなさんも。」
「そう言っていただけると光栄です。」
「副長は、いずれは艦長になって、そしてゆくゆくは提督にもなるんでしょうね。」
「おそらくは…家系が代々海軍ですから。一人娘だった自分も、7歳で海軍幼年学校に入学しました。そのあとはもう必死です。戦争が始まって、いつの間にか自分の乗っていた船は撃沈されていました。」
「というのは?」
「ルウム戦役の前に、船をおろされたんです。父の差し金で。父は連邦軍の勝利を確信していましたが、念には念をということだったんでしょう。自分はルナツーに取り残され、父は艦隊を率いてルウムへ向かいました。最後にあったとき自分は反発したものです。なぜ一緒に戦わせてくれないのか、と。しかし、今思えば父は正しかった。自分の乗っていた船はシャアに沈められ、そして父の座乗艦も…」
「そうですか…でも始めてですね。副長が自分のことを話してくれるの。」
京はハッと我に返ったように不動の姿勢をとり、慌てて帽子を被りなおした。
「き、気にしないでください!少し内省的になってしまいました。」
あずにゃんはそんな京を見て笑いながら言う。
「いいんですよ。なんだか私は嬉しいです。副長にもそういう一面があるんだなとわかって。作戦前で緊張しているんですね。」
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08/23 22:53 Windows(PC) [331]エルザス
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似たようなことが、この大船団のあちこちで起こっていた。何千人もの兵士が普通なら他人に言わないようなことを打ち明けていたのだ。彼らはこのとき、自分の恐怖を隠す気にもならなかったし、もっとも個人的な問題を話してもいいとさえ感じていた。そして、京大尉と同じブラックハウスに乗っている乃人もまたそんな一人だった。彼女はすでに出撃準備にかかっているナガモンのもとを訪れていた。乃人は周りを進んでいる威風堂々たる戦艦群を見てもどうにも落ち着かなかった。
「ナガモン先輩、生きて帰れるチャンスがあるって本当に思ってますか?」
ナガモンは武装のチェックを続けながら答えた。
「お前は何を言っているんだ。当然だろう。殺されるなんて考えてはいけない。戦いのことは戦いが始まってから考えろ。それまでは準備をきっちりやっておくんだ。」
そこへ、黒猫がやってきた。
「晩ご飯の時間だよー。作戦前だから豪華な晩餐だってさ。先に行ってるよ。」
残されたナガモンは整備中の武装と乃人とを見てから言った。
「腹が減っては戦はできぬ、だな。」
彼女はそういって整備用の手袋を外し、乃人の手を取って歩き始めた。
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08/23 22:55 Windows(PC) [332]エルザス
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コックの黒が腕によりを掛けた「最後の晩餐」は、たしかに豪華であった。だがそれを前に、気むずかしい顔をしている男がいた。軍医の阿部さんである。となりに座っていたミチシタはそれに気がついた。
「どうしたんですか?」
「いや、あまり食事中にいうことじゃあない。」
「はあ。」
ミチシタは黙ってメインディッシュのステーキを食べ始めた。阿部さんはそれをじっと見ている。彼が心配しているのは、この豪華な夕食を食べ終えた兵士達を、明日治療しなければならないと言うことだった。彼らはおなかいっぱいになるまで食べるだろう。その結果、明日どうなる?もし腹部裂傷を負った兵士が阿部さんの前に運ばれてきたら、その時軍医である彼はステーキでいっぱいの腹を切開しなければならないのだ。なれているとはいえ、あまり気持ちの良いものではない。せっかくのごちそうを前に、彼の食は進まなかった。
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08/23 22:57 Windows(PC) [333]エルザス
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作戦は確実に侵攻していた。それは攻撃を受ける側も充分に察知していたのである。ソロモン要塞の司令、ドズル中将は、参謀のラコックを伴って司令室へと急いでいた。
「グラナダのキシリアはなんと言っている?」
「援軍を出すとのご返事です。」
「ギレンのソーラ・レイのほうは、どうなっているか。」
「デギン公王が難色を示しておられるようです。」
「ソロモンに落ちろと言うのか、父上は。」
ドズルがいらだたしげにするのもやむを得なかった。もっと早くの段階で、ドズルはギレンにさらなる援軍を要請していた。しかし届いたのは期待していたリックドムではなく、新型MAだけだったのだ。「戦いは数」と考えるドズルにとって、これはギレンのいやがらせにも等しい援助だった。もっとも、ドズルは私的な理由からコンスコン艦隊を出撃させ、ホワイトベース隊によって全滅させられている。コンスコン艦隊には12機ものリックドムがあったのだが。
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08/23 22:58 Windows(PC) [334]エルザス
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宇宙世紀0079、12月24日。ソロモン攻略を目指すチェンバロ作戦がついに開始された。艦隊に先行していたパブリク突撃艇がさらに増速し、艦隊は横一文字隊形をとるために躍動する。作戦開始から15分後には、新兵器のソーラ・システムが照射され、この戦いを一気に優位に進める計画だ。その先兵となるべく、パブリク突撃艇がこれまで大事に抱えてきたビーム撹乱幕のミサイルを放った。と、同時にそれらを捕捉したソロモンの対空砲が一斉に火を噴いた。濃密な弾幕が形成され、それに絡め取られたパブリク突撃艇が一隻、また一隻と撃破される。その損耗率はかなりのものになっていた。突撃艇の乗組員たちは、もはや生還する望みを捨て、せめてミサイルを撃つまで被弾しないよう全力をあげた。だが、現実は残酷であった。ソロモンからの弾幕は空前絶後の規模で展開され、宇宙一面が飛び交う砲弾で埋め尽くされたようだった。機動力の低いパブリク突撃艇は端から被弾し、次々に爆発した。だが、それでも彼らは任務を果たしたのと同じだった。彼らの抱えていたミサイルが誘爆し、周囲にビーム撹乱幕がばらまかれた。予定された地点ではなかったにせよ、たしかにそれらはビームを無力化していた。そして、パブリク突撃艇の狂気のような突進はその後も続いたのだ。撃墜された突撃艇の数は計り知れなかったが、連邦軍の用意したビーム撹乱幕のミサイルはそれを差し引いても作戦に支障がないほどの量だった。第二連合艦隊旗艦、マゼラン級タイタンに乗艦するティアンム提督のもとに、「ビーム撹乱幕、散布完了」の知らせが届いた。提督は即座に麾下の艦隊に前進命令を下した。
ワッケイン率いる連邦軍第三艦隊は、サイド4の残骸からソロモンに接近し、さかんな攻撃を仕掛けた。ここに、第13独立部隊、ホワイトベース隊がいた。そしてそこからソロモンを挟んで反対側に、ブラックハウス隊が展開していた。
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08/23 22:59 Windows(PC) [335]エルザス
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「アースラより信号、『MS全機発進』であります!」
ブラックハウスの艦橋から双眼鏡を覗いていた京は、意気揚々と報告をあげた。艦長席に座るあずにゃんがうなずく。
「了解しました!アークさん、発進準備は?」
「いつでもいけます!先頭はBlackCat、次が
ブラックRXです!」
「全MS発進!発進後、ブラックハウスは最大船速にて前進、ソロモンへ肉迫します!!」
「了解。ナガモン中尉、発進どうぞ!」
「シン・ナガモン、BlackCat、イきます!!」
「続いて黒猫中尉、どうぞ!」
「黒猫、ブラックRX、イきます!!」
ブラックハウスを飛び出したMS隊は、アースラからのナノハ、シンとタチバナ小隊と合流し、荒れ狂う戦場のまっただ中へと突き進んでいった。そしてそれが切り開いた道を押し広げるようにしながら、ブラックハウスとアースラがありったけの武器を射ちまくって押し通る。すでにビーム撹乱幕の効果が現れているのか、ソロモンからはミサイルによる対空射撃しかなかった。もちろんこちらもビーム兵器の威力は下がっている。しかし主砲がレールガンであるブラックハウスはかえって優勢だった。迎撃に出てきた敵のMSが二隻の戦艦を襲う。だが、それらはトレインの狙いすました連続射撃によって一掃された。
そのころ、ソロモン要塞内ではドズル中将が戦略の転換を余儀なくされていた。ビーム撹乱幕は予想以上の規模に渡ってしかも濃密に散布され、その外側にいる
地球連邦軍艦隊にビーム攻撃を行うためには、ビーム兵器を装備する艦船等をソロモンから出さねばならなくなったのだ。このため、ドズルはソロモンから離れて上陸前迎撃を行うことを決めた。迎撃部隊の発進は急ピッチで進められ、連邦軍の進撃はあちこちで頓挫し始めた。
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08/23 23:01 Windows(PC) [336]エルザス
† † † † †
「こちらナガモン!ナノハ!援護してくれ!このままだと押し返される!」
「了解!いくよ!ディバイィィィン・バスタァァァー!!!!」
オレの機体のすぐ横を、
レイジングハートの強烈な一撃が駆け抜けていった。直撃をうけたジオンのザクが瞬時に爆散する。
「ひやりとさせられたな…」
オレはそうつぶやき、素早く周囲に目を配らせた。いまオレ達の先頭にいるのはシンのディステニー、そのすぐ後ろにシンを援護する乃人のWhiteCat、オレの横に黒猫、後ろにナノハ。その周りを敵味方双方のMSやら戦闘機やらがびゅんびゅん飛び回っている。マスタースパーク、
リトルデーモン、ストロードールの三機は戦艦の直援に回って後方にいる。タチバナ小隊の姿はここからは確認できない。
「ソロモンからミサイル群、来ます!」
乃人の叫び声が聞こえ、確認するより先に機体を踊らせる。そのすぐ後に一群のミサイルが飛来し、味方のジムとボール数機が餌食になった。
「動きを止めるな!死にたくなかったら!!」
生き残った味方にそう叫び、オレは再びソロモンの方向を振り向く。今ので味方のジムは怖じ気づいた様子だが、構っている暇はない。今度はシンが叫んだ。
「シリウスの方角からザク三機!俺と乃人さんでやります!」
言うが早いかディステニーの翼が翻り、機体が上を向いて射撃を始める。WhiteCatもそれにならって十字砲火を展開する。
「ザク三機は二人にまかせていい。ナガモン中尉はさらに進撃してください!」
今のはアースラのユーノだ。実戦を見るのは初めてらしいが、適確な指示を出してくる。オレは黒猫とナノハを振り返って「続け」と合図を出す。前進。相変わらず濃い弾幕が張られているが、それを縫って突き進む。味方のジム小隊も頑張ってついてくる。上方に光が見えた。シンと乃人は早くもザクをしとめたようだ。前だけに集中できる。と、真正面に粒のようなMSの機影が見えた。どんどん近づいて来る。
ゲルググとザクが一機ずつ。
「このまま突破する。あいつらには構うな!ジムに任せる!」
黒猫とナノハにそう言い、オレは機体を加速させる。ジムの小隊長からも了解の合図が来た。ザクが撃ちかけてくるが、まだ遠い。射撃をよけてそのまま敵の正面からそれる。迂回してやり過ごすのだ。
ゲルググはザクに援護を任せ、一気に接近してきたが、オレ達がコースを変えると、ジムのほうへ軌道修正した。そのとき、黒猫が叫んだ。
「あいつ、ただ者じゃない!ナガモン、戻ろう!!」
「無茶な、ジムに任せておけばいい!」
「違う!あいつは、やばい!!」
黒猫はそういうと、ブラックRXを駆ってジムのもとへとって返した。
「どうするの?」
ナノハがきいてくるが、こうなればやむを得ない。
「仕方ない、戻ろう。黒猫はなにかを感じ取ったらしい。」
確かにオレもあのゲルググから異様な殺気を感じる気がする。敵のエースか。
ゲルググはジムの目前まで迫ると、急に減速してサーベルを抜いた。
「行くぞッ!!」
ジムの小隊長が猛って躍りかかり、他のジムもそれに続く。だがゲルググは素早い機動でジムの斬撃をすべてよけきってしまった。
「なんだと?!」
小隊長の焦った声が聞こえた。一瞬ジムの動きが止まる。
「バカ!止まるな!」
叫んだが、無駄だった。ゲルググのサーベルが一閃し、小隊長機が一瞬にして叩ききられた。
「ぐわああああ…っ!!」
小隊長の生々しい断末魔が響き、ジムは爆発した。他のジムはそれを見て凍り付いたように動かない。ゲルググのモノアイが不気味に光、残ったジムを睨みつけた。
「動けって言うのに!」
黒猫が叫びながら割って入り、ゲルググに体当たりを仕掛ける。しかし、ゲルググは一瞬早くそれを察知し、機体を翻して黒猫のRXをやり過ごした。
「まずい!」
オレも割って入ろうとしたが、間に合わなかった。再びゲルググの刃が振るわれ、ジムが今度は三機まとめて爆発した。
「こいつ、エースだ!!」
オレはトンガリコーンをかざしてゲルググに殴りかかる。右手、かわされた。左手、これもよける。今度はゲルググが拳を繰り出してきたが、こっちも機体を後退させてよける。離れた瞬間にアームストロング砲を発射体勢。トリガーを引く瞬間、機体が急な振動に襲われた。
「ぐあっ!」
ザクマシンガンを被弾したのだ。先ほどこいつに付き添っていたザクが、背後から狙ってきた。
「ナノハ!ザクを足止め…おっと!」
ゲルググの連続攻撃で通信もろくにできない。だが意図は伝わったらしい。
「この近距離じゃ無理だよ!味方にあたっちゃう!猫さん!」
「わかった。ザクはわたしが抑える。ナノハはナガモンの援護を!」
「ダメ!ソロモンから新手!戦闘機4機が接近中!」
「ナノハは戦闘機を頼む!オレがこいつを!シンと乃人はいるか?!」
呼びかけてみるが、応答がない。そばにはいないのか。まさか…いや、それはないはずだ。余計なことを考えているうちにゲルググが新たな一撃を繰り出し、オレはお返しとばかりアームストロング砲を撃ち込む。だが、避ける。敵ながら見事だ。
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08/23 23:05 Windows(PC) [338]エルザス
† † † † †
第302哨戒中隊隊長、アナベル・ガトーは、目の前に現れた強敵に半ば喜んでいた。
「ふん、のろまばかりと思っていた連邦軍に、これほどのパイロットがいるとはな!だが…!!」
彼の乗るゲルググのサーベルが目にもとまらぬ速さで一閃、敵機、ガンダムBlackCatの巨大な爪、すなわちトンガリコーンをかすめた。
「私の剣先を読んでいるのか?!やる!」
ちらと僚機のザクに目をやると、黒いMSを相手に防戦一方の状態になっていた。
「カリウスと互角以上にやり合うとは…ただのパイロットではない。カリウス、一度退くぞ!補給に戻る!」
ザクのパイロット、カリウスは即座に了承した。飛びついてきた黒いMS、ブラックRXにヒートホークを投げつけ、敵がそれをかわした隙に一気に増速する。と、同時にマシンガンをガトーのゲルググの前面に撃ち込み、BlackCatの動きも封じる。
ガトーもまたブラックRXに射撃を加え、離脱をはかった。離れていく敵を見ながら、ガトーはつぶやいた。
「黒い奴…二度と忘れん。」
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08/23 23:06 Windows(PC) [339]エルザス
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その頃、ソロモンのとあるゲートから、一機の大型MAが発進しようとしていた。黄色い派手なカラーリング、巨大なヒートナタ、そして何より顔のようなその見た目から、MAは戦場でも異彩を放つ存在となっていた。MAは二機のドムバインニヒツを従え、一気に増速して戦場へと飛び出していく。この機体、MA- 04X「
ザクレロ」は、機体下部の2基の大型バーニアユニットにより推進し、機体中央に拡散メガ粒子砲を装備しており、その偏向器の形状と合わせ、複眼式のメインカメラによって顔面のような奇怪な形状となっているのだった。
ザクレロのパイロット、デミトリーは、ドズル中将から直々に特命を言い渡されていた。曰く、「ソロモンに最も接近している敵を、戦域を問わず襲撃し、撃破せよ。」
彼はいま、目標となるべき敵を探していた。すでにソロモン外部の艦隊による防衛ラインは敵との戦闘で混乱状態にあり、一刻も早い反撃を必要としていた。そしてその反撃の狼煙となるべき機体が、このザクレロだったのである。
デミトリーの目に、一機の黒い敵MSが映った。その機体は押し寄せるザクやドムを次々に屠り、後続の味方をリードしていた。
「まずはお前からだ!」
ザクレロの機体が翻り、上空から黒い敵機を襲う。
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09/01 22:50 Windows(PC) [340]エルザス
† † † † †
「アンノウン接近!上方やや右!ナガモン!」
黒猫の声がして、オレはとっさにBlackCatを旋回させた。その途端、目の前を派手な色のMAがものすごい速さで通過していった。
「なんだ今のは?!」
「わからないけど、敵の新型機らしいよ!注意して!」
言われるまでもなく、オレはMAへの警戒心を一気に高めていた。見た目からしてただの機体ではない。どんな武装を持っているか想像もつかない。MAは二機の見慣れぬドムをつれていたが、そいつらは後方の戦艦へと向かっていった。
「オレはあのばかでかい顔を相手にする。黒猫とナノハは今行ったドムを!」
「一機じゃ無理だよ!わたしも残る!」
黒猫が頑固に言い張った。こうなると意地でも言うことを聞かない。
「ナノハだけで突っ込ませるわけにはいかないか…。よし、三人でやろう。またあいつが来るぞ!」
BlackCat、ブラックRX、レイジングハートがそれぞれ散開し、再び接近してくる敵MAを警戒する。
「ナノハ、敵の装甲は頑丈そうだ。お前の火力が頼りだ。思いっきり頼む。」
「了解。まかせて。」
「黒猫はあいつをおびき寄せてくれ。オレは奴とすれ違いざまにビームサーベルを突き立ててみる。」
「わかった。相変わらずおいしいところは譲らないいんだから。」
「来るぞ!」
巨大な顔が遙か彼方から現れ、みるみるうちに近づいてくる。
「ディバイィィン・バスタァァァァァァァ!!!!!」
レイジングハートから強烈な一撃。しかし敵の速度はナノハの予想を大きく上回っていたらしい。MAはナノハの攻撃を受け流すように増速し、口の部分からビームを放った。
「にゃんと!?」
黒猫が驚きの声をあげ、危ういところで回避する。ただのメガ粒子砲ではなかった。一体いまのは…?
考える暇もなく敵機が通り過ぎてゆく。その先には、ようやく追いついてきたシンのディステニーと乃人のWhiteCatの姿があった。
「二人とも、気をつけろ!!」
叫んだが、遅かった。MAは巨大なナタを振りかざし、目にもとまらぬ速さでディステニーを切り裂いた。
「ぐわああああッ!!」
シンの叫び声が聞こえ、直後に乃人が敵を狙い撃つ。ディステニーは右腕を肩から綺麗に切断されていた。持っていたビームライフルは失ったが、まだ戦えそうだ。
「シン、しっかりしろ!まだやれるな?」
「くそッ!なんなんだよあいつ!」
ディステニーが制御を取り戻し、オレ達は一度集合した。
「ナガモン先輩、あのでっかい顔は一体?」
乃人が周囲を警戒しながらきいてきた。オレにわかるはずもない。
「知るもんか。とにかくあいつはここでオレ達がしとめるぞ。あんなのが味方の主力艦隊に殴り込んだら厄介だ。」
「了解。」
「来たよ!」
黒猫のブラックRXがオレ達の真下を指さした。上下左右、あらゆる方向から仕掛けてくる。
「散開しろ!ナノハと乃人は射撃準備、黒猫とシンはあいつの真正面に出ろ!」
「おもしろくなってきた!」
黒猫が嬉々として叫び、機体の両手両足を広げて敵を待ちかまえる。その傍らにディステニーがアロンダイト・ビームソードを持って並び、ナノハと乃人は先制攻撃の為に射撃姿勢になる。オレはビームサーベルを抜いて敵を見極める。どう動く。このまま来るか、ビームか?
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09/01 22:53 Windows(PC) [341]エルザス
340
刹那、MAの口がわずかに光るのが見えた。ビームが来る!
「ビームだ!」
オレは叫びながら飛び出し、RXとディステニーの前にでた。ナノハも一瞬後れて動き、シールドをかざして身構える。その途端、敵のビームがシールドを直撃し、レイジングハートが激しく揺さぶられる。
「うっ、ああああッ!!」
「ナノハ!」
「ナガモン!来てるよ!」
「こいつゥ!!」
オレがレイジングハートを抱えて横に飛び出し、次の瞬間MAが黒猫をかすめて通過していった。だが、突然ディステニーの姿が消えた。理由はすぐわかった。
「お前は俺が討つんだ!今日、ここで!!」
シンの声が聞こえたのは、離れていく敵機のほうからだった。ディステニーはあの速さで通り過ぎていった敵機に飛びつき、しがみついていたのだ。
「シン!なんて無茶を!」
自ら飛びついたとはいえ、その衝撃は事実上あれに体当たりを受けたのと同じはずだ。失神しなかっただけでも驚異的だが、さらにすごかったのはその後だった。敵機はシンがしがみついていることに気づいてナタを振り回したが、シンは敵機をよじ登るようにしてこれを避け、片腕のディステニーでビームソードを振り上げたかと思うと一撃でMAをまっぷたつにしてしまった。巨大な爆発がおこり、ディステニーは弾かれるようにしてこちらへ飛んできた。
「シン!おい大丈夫か!?」
「やってやりましたよ!見てたでしょ!!」
「お前って奴は…」
オレはあきれてものも言えなかった。ひとつ間違えば即死だった。こいつだってそれはわかっていただろうが、それにしても…
「あまり心配をかけさせるな!バカ野郎!」
本心からでた言葉だった。
最終更新:2010年11月03日 17:24