186 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:08:46 ID:???
 フリーデン人材・能力開発センターの副所長を勤めるテクス・ファーゼンバーグは、センターの一室で
診療所を営む医者でもある。その大人びた態度と的確なアドバイスは訪れる人々を安心させ、いつしか
怪我や病気の他に、単に悩みを聞いてくれる相談所としての役割も果たすようになった。
 今回は、そんなフリーデンのある一日を紹介しよう。



  カルテNO・1 ”変態兄弟


テクス 「とりあえず…コーヒーでも一杯どうだ?」
シャギア「ありがたい。何せ今はコーヒーを買うお金もなくてな」
オルバ 「ふんぞりかえっても情けないことには変わりないよ、兄さん」
テクス 「…で、今日はなんの相談だ?」
シャギア「実はス○ロボのことなのだが…」
オルバ 「僕たちは原作では最後までちゃんと生きてるんだよ。」
シャギア「しかし何故、ゲームでは毎回毎回死ななければならんのだ!!」
テクス 「私に言われても困るが…。製作サイドに掛け合ってみたらどうだ?」
シャギア「何度もそうした!!だが、製作サイドは我々の話を聞かず、ACE3でも容赦なく
     殺された!私たちが悪役であるからと!」
オルバ 「たったそれだけの理由で、僕等は黙殺されたんだよ!」
シャギア「だから決めたのだ…」
オルバ 「次の作品では必ず生き残って見せるとね!」
テクス 「………これまでがそうだったからといって、次も死ぬとは限るまい。
     ゲーム内での扱いを恐れるより、まずは出演できたことを喜ぶべきだ。
     私など、次の作品に出演できているかわからないのだからな」
シャギア「むぅ…そういわれればそうだな」
オルバ 「確かに、確実に出れるだけいいのかもしれないね、兄さん」
テクス 「そういうことさ」
シャギア「そう…だな。世話になった。……ところで」
テクス 「なんだ?」
シャギア「コーヒーに砂糖を頂けるか?スプーン大さじ5杯くらい」
オルバ 「僕もお願いするよ」
テクス 「それは中毒症状だ。病室にいけ」






オルバ 「閉じ込められたね、兄さん」
シャギア「ああ。しかし地下室よりは格段にマシだ。見よ、窓から見える景色の美しさを」
オルバ 「まぶしくて涙が出てくるよ…」
シャギア「よし、オルバよ。出演したらどのように暴れるかを考えるのだ」
オルバ 「また、悪い事するんだね?兄さん」
シャギア「そうだ、悪い事だ。……む?あれはガンダム兄弟の…」
オルバ 「キラだね。青い顔をしているけど、どうしたんだろう?」

187 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:09:54 ID:???
  カルテNO・2 ”スーパーコーディネイター”


キラ 「黒いラクスが…ラクスがああぁぁぁぁぁ……!!」
テクス「まあ落ち着いて、コーヒーでも一杯どうだ?」
キラ 「す、すみません…動揺してしまって…」
テクス「別にかまわんさ。君くらいの年齢なら、しばしば情緒不安定になるものだ。
    …それで?なんの相談だ?」
キラ 「実は、うちの兄弟がみんなピンクの電波に侵されてしまって…
    二言目には『ラクスさんを拒絶するな!!』『あの人は純粋なだけだ!!』
    『黒ラクスなど、このスレにはいない!!!』……みんな騙されているんだ!」
テクス「…私から見ても彼女は天然なだけで、いたってまともに見えるがね…」
キラ 「あなたまでそんなことを!?ドクターパーフェクトと呼ばれたあなたなら、
    きっと電波に負けないって信じていたのに…」
テクス「別に呼ばれてない。一度、彼女とゆっくり話し合ってみるべきだ。
    しっかりと自分自身の目を開き、周りを見るゆとりを持てば、
    偏見にとらわれることなく、彼女の真の姿に気づくはずだ。」
キラ 「ラクスの真の姿……?」
テクス「そう。大概の問題はコーヒー一杯飲んでいる間に、心の中で答えを見つけるものだ。
    後はそれを実行できるかだ。…飲まないのか?冷めてしまうぞ?」
キラ 「コーヒー…!!……虎か!虎なんだな!?」
テクス「は……?」
キラ 「危うく騙されるところだった…。あなたはドクターではない!!虎だろう!
    ぼ…僕はこんな何が入っているか分からないコーヒーなんて飲まないぞ!!
    この…ラクシズの尖兵め!!」
テクス「重症だな…やむを得まい」
   (Pi♪Po♪Pa♪)
テクス「…もしもし?私だ。すぐに一人”ホワイトハウス”に移送してくれ。……そう、
    今すぐにだ」
キラ 「ホワイトハウス?…って、何なんだ君たちは!?…え?白い部屋?…やめてよね、
    部屋は英語でルームじゃないか。小学生でも知っているよ、そんなことは…」
テクス「3日も過ごせば、ある程度は偏見も消えるだろう。後は、君しだいだ」
キラ 「うわ、ちょっと…両腕を掴まないで、電波はいや、だけど洗脳も嫌だぁぁぁ!!」
テクス「許せ。私は患者を健康に戻す義務があるのだ。…精神的にもな」
キラ 「うわああぁぁぁッ!!!!」

188 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:10:42 ID:???
ティファ 「ガロード…しっかり…」
シャクティ「あれくらいで気絶するなんて…修行がなっていませんね」
ガロード 「う~ん…」

ぐったりと気絶したガロードを、右側からティファが、左側からシャクティがそれぞれ支えている。
美少女二人に両側から支えられるという、ある意味うらやましい光景であるが、あいにくと当の
ガロードの顔は貧血で青ざめており、このシチュエーションを楽しんでいるわけではないようだ。

シャクティ「しかし重いですね~、フリーデンの診療所までけっこうあるのに…」
ティファ 「はい……そう…ですね……」
シャクティ「身長はティファさんとそう変わらないのに……。あ!ちょうどいいところにキラさんが。
      運ぶの手伝ってもらいましょう。お~い…ってあら?」

ガロードは身長が高いほうではなく、体重も軽い方なのだが、やはり少女二人で運ぶには重い。
特に、華奢なティファでは支えるのがやっとであり、息も絶え絶えであった。そこでシャクティが
キラを見つけ、声をかけたのだが…

キラ   「あ~る~はれた~ひ~る~さがり~い~ち~ば~へつづ~くみち~♪」
シャクティ「………」
ティファ 「………ド○ドナ?」
シャクティ「怪しげな人たちに両側から拘束されていますね…今のはやりですかね…?」

いわゆる”捕らえられた宇宙人”のポーズでキラが引きずられて行く。売られてゆく仔牛の目を
しており、二人に気づいた様子はない。助けるべきだろうか?一瞬そういう考えが頭をよぎるが、
関わってはだめだと脳が勝手に警告を発した。見なかったことにしよう。二人共そう結論付けると
再びガロードを抱えて歩き出した.

シャクティ「仕方がないですね。もう一踏ん張りしますか。ティファさん、大丈夫ですか?」
ティファ 「……はい、ガロードの…ためだから…」
シャクティ「…見せつけてくれますね」
ヒイロ  「何をしている?」
シャクティ「うわ!?…ヒイロさん、ですか。脅かさないでくださいよ」
ヒイロ  「ガロードが気絶…何があった?…いや、聞かないでおこう」

知らない方がいいことだろうしな…。そうつぶやくと、ひょいと片手でガロードを抱え上げる。

ティファ 「あ……」
シャクティ「見ためによらず、すごい力ですね」
ヒイロ  「診療所に運ぶ…任務了解」
ティファ 「ありがとう…ございます」
ヒイロ  「気にするな…俺も向かっていたところだ」
シャクティ「え…?ヒイロさんが病気?」
ヒイロ  「いや………カウンセラーだ」




テクス  「ちょっとした貧血だ。しばらくしたら目を覚ますだろう」
ティファ 「よかった…ガロード…」
テクス  「今日は念のために家にとめておこう。…ティファ、悪いがガロードを
      隣の部屋のベッドへ寝かせてきてくれ。シャクティはジャミルに事情を
      説明してきてくれないか?私は後で事情を聞こう」
ティファ 「わかりました」
シャクティ「了解です。ばっちり説明しときますヨ♪」



テクス  「さて…何の相談だ?」
ヒイロ  「ドクター…リリーナの料理の腕を上げる方法はないだろうか?どんなことでもいい」


189 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:11:23 ID:???
  カルテNO・3 ”お前を殺す”


テクス「なるほど…公務で忙しいと言うのに、その激務の合間を縫ってお弁当を
    作ってくれるのか。…で、その味が殺人的であると…」
ヒイロ「ああ…」
テクス「私は食べたことがないから何とも言えないんだが、そんなにひどい物なのか?」
ヒイロ「試しに、鉄の胃袋を持つドモン兄さんの食事にこっそり混入したところ、
    意識不明の重体となり二週間の入院を余儀なくされた。…俺の、ミスだ…」
テクス「ガンダムファイターにとってさえも脅威となる料理か…」
ヒイロ「教えてくれ、ドクター。俺はあと何回リリーナの作った劇薬を食べればいい?
    俺はあと何回、リリーナの弁当を食べて天国への階段を登らなければならないんだ…
    ゼロは俺に何も答えてはくれない……」
テクス「何故こっそり捨ててしまわないんだ?」
ヒイロ「リリーナが俺の為に忙しいなか作ってくれた弁当だ…食べない訳にはいかない…」
テクス「…確か、君の兄弟で料理のうまい人がいただろう。彼に協力してもらって
    彼女に料理のレクチャーをしてもらえればいい」
ヒイロ「ロラン兄さんはただでさえ忙しい。…俺の勝手な理由で迷惑はかけられない…」
テクス「家族思いで恋人想いか……分かった。ならばこうすればいい」
ヒイロ「何か方法があるのか!?」
テクス「何、簡単な事だ。そのお弁当を二人で一緒に作ればいい。無論、君と彼女の
    二人分を、協力してな」
ヒイロ「協力…か」
テクス「忙しい中、それでもお弁当を作ってくれているのは、なかなか二人の時間が
    取れないからだろう。せめて気持ちだけでも。そう思い、渡しているんだ。
    ならば、二人で共に料理を作ることに対して、反対する理由はなかろう。
    それに、一緒に作ることで、互いの好みの味付けを理解し、彼女の調理能力の
    向上にも繋がる」
ヒイロ「しかし…リリーナの迷惑にはならないだろうか?」
テクス「大切に思うのと、大切にするというのは、似ているようで違う…事、女性に関してはな。
    君がもっともよいと思う方法を取ればいい。私にできるアドバイスは、それくらいだな」
ヒイロ「………」
テクス「後はコーヒーを一杯飲んで、ゆっくりと考えることだな……丁度できたな。コーヒーだ」
ヒイロ「……うまい」
テクス「そういってもらえると、作った甲斐があるというものだ。…君も、彼女の料理でうまいと
    言えるようにすればいい」
ヒイロ「………任務、了解。世話になった」


テクス「………似ていないと思っていたが、やはりガロードの兄だな。まっすぐだ。
    …問題は、リリーナ嬢の料理に対する成長度だが…こればかりは本人次第だな」






アムロ「ヒイロ、診療所の前で何をしている?お前が病気とは思えんが…」
ヒイロ「少し人生相談に…アムロ兄さんこそなぜここに?」
アムロ「ああ…俺も人生相談さ…兄弟のな」
ヒイロ「?」


190 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:12:03 ID:???
   カルテNO・4 ”白い悪魔”


アムロ「弟たちや妹に異性への興味を持ってほしい…」
テクス「私はまだ独身だし、結婚相談所は専門外なんだがな…」
アムロ「せめてセレーネとマイと刹那が異性に関心を示して、シローとドモンが結婚して、
    チェリーがシーマさんに攫われれば、俺も安心して家を出ることが出来るんだが」
テクス「部外者の私が言うのも何だが…その前に、まずは自分の女性遍歴をなんとかしたほうが
    いいんじゃないか?」
アムロ「ああ、俺はいいんだ。一人の例外もなく全員を幸せにしてみせるし、彼女達も
    待ってくれる。問題はないさ」
テクス「そこまで豪語されると、こちらとしては感心すらしてしまうな。ここの所長にも
    見習わせたいくらいだ」
アムロ「はぁ…俺は懸命にやってきたつもりだが、育て方を間違えたかな…」
テクス「いや、それはない」
アムロ「そうかな…?」
テクス「ああ…私はここの診療所を開いてからたくさんの患者を見てきた。だが君たち
    ガンダム兄弟以上に仲の良い家族には、いまだかつてお目にかかったことがない。
    それも一人一人が性格も考え方も違うにも関わらずに、だ。…おそらくそれも、
    長兄がしっかりとリーダーシップを発揮して、みんなを導いたからだろう。
    …これは誇りに思うべきだ」
アムロ「……そうかもしれないな。少し焦っていたみたいだ」
テクス「まぁ、そちらの悩みの解決の手助けにはなっていないがな」
アムロ「いや、充分だ。考えてみれば、成長に関わりがあるのは兄だけじゃないからな」
テクス「?」
アムロ「兄弟で性格が違うって話さ。例えば、ドモンなんかは東方不敗やキョウジさんと
    関わることが今の性格になった一因といえるだろう?俺だって、両親の他に
    ブライトやシャアとかと関わらなければ、今の俺はない」
テクス「なるほど…その人の性質を決定付けるのは関わりを持った人、ということか。
    そうだな、ティファもガロードとの出会いや、この地域での交流がなければ
    心を閉ざしたままだったろうな。ジャミルとガロードも互いによい影響を及ぼした」
アムロ「そういえば…あなたがたはあの地域出身だったな」
テクス「ああ、約十年前にコロニーが落ちた、あの地域だ」
アムロ「ガロードが行方不明になって…っと、話がそれたな。まぁとにかく、のんびりと
    兄弟の成長を待つさ。人々と触れ合うことでな」
テクス「そうだな。………忘れるところだった」
アムロ「なんだ?」
テクス「ガロードが少し貧血でな…今日一日はここで泊めたいんだが、いいか?」
アムロ「別に構わないが…どこにいるんだ?」
テクス「隣の部屋で寝ている。おそらくティファが付きっきりで看護しているだろう」
アムロ「そうか…(…とりあえずガロードは安心だな。いや、キラの例もあるからいっその事ここで
    脱童貞をさせて確実に…)」
テクス「…キラといえば、ちょっとした旅行に一人でいくから三日ほど帰れそうにないと聞いたな」
アムロ「旅行?俺はそんなこと聞いてないぞ?」
テクス「どうやら一人で大統領官邸を見に行くらしい」
アムロ「??…なにがしたいんだ?あいつは。…まあいいか。ところでドクターは結婚しないのか?」
テクス「薮から棒だな…今のところはそんなつもりはないが…」
アムロ「まぁそんなことは言わずに、俺の妹なんてどうだ?風呂に入って化粧したらびっくりするくらい
    美人になるが…」
テクス「人と交わっての成長を待て」
アムロ「時間がないんだ!」

191 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:12:46 ID:???
ルチル  「あら?シャクティちゃん。いらっしゃい」
シャクティ「こんにちは、ルチルおばさま」
ルチル  「ジャミルが固まってたけど、何か言ったの?」
シャクティ「実は、以前ティファさんにこれを渡したんですけど」
ルチル  「…明るい家族計画?シャクティちゃん、これって…」
シャクティ「ただ、使い方を知らなかったみたいで、わたしがふざけて、『恋人同士では
      絶対必要!ガロードさんに使い方を聞いてみたらいかがですか?』と言ったのを
      本気にしたみたいで…」
ルチル  「で、実際に聞いてみて、ガロードは鼻血で沈没、ジャミルは話の途中で石化、
      といったところね」

ルチルとシャクティは意外に仲がいい。母親の仕事の都合で、普段は一人暮らしをしているシャクティは、
よくティファと(で)遊びにフリーデンにやってくる。ルチルも、元々の子供好きな性格もあって、よく
シャクティと話すようになった。

ルチル  「ガロードが久しぶりに家に泊まるみたいだけど、シャクティちゃんもどう?きっと
      ティファも喜ぶと思うけど」
シャクティ「う~ん。でも私が泊まるとガロードさんとティファさんのお邪魔になりませんかね?」
ルチル  「大丈夫。ガロードが泊まるときはジャミルやドクター、時々ランスローなんかも加えて
      みんなでいろいろなゲームをしているから、ご馳走もあるわよ」
シャクティ「ご馳走ですか?それならぜひ!!」
ルチル  「ふふ…それならはりきって準備しないとね」




ガロード「う…ティファ…?」
ティファ「ガロード…大丈夫?」

 ガロードが目を覚ますと、ティファがベッドのすぐそばにいた。どうやらずっと看病してくれていた
ようだ。簡素なベッドは一時期ガロードが使用していたもので、ここがフリーデンの一室であることを
教えてくれた。

ガロード「!!…ティ…ティファ!シャクティちゃんに今度は一体何を吹き込まれたんだ!?」

 ガロードが驚くのも無理はない。何しろいきなりティファが"例のブツ”をとりだして、『これの
使い方を教えて』と言ったのだ。…その後の光景は記憶になく、気がつけばベッドに横たわっていた。
どうやらショックで気絶していたらしい。

ティファ「そ…その…、シャクティが、こ…こい…恋人…同士には絶対…必要だって…///」
ガロード「は…はは…そうなんだ…」
ティファ「あの…使い方は…?」
ガロード「あ、ああ。ドクターの方が説明上手だから、ドクターに聞けばいいと思うよ」

 自分で説明できるはずがない。かと言ってシャクティにまかせるのは非常に危険である。
アムロ兄にいたっては論外である。よって、自分の知る限り、一番の大人であるテクスに任せる事にした。
………本人にとってはいい迷惑である。

192 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:13:26 ID:???
   カルテNO・5 ”オセロコンビ・白+α”


テクス  「………私は産婦人科は専門外なんだがな…」
ティファ 「?」
アムロ  「ドクター、ここはやはりガロード本人に実戦で教えてもらうのがいいと思うぞ?」
ガロード 「い、いきなり何言ってんだよ!と言うかまだいたのかよ!!」
シャクティ「アムロさん必死ですね」
アムロ  「そうだシャクティ。泊まるなら家に泊まらないか?今日はガロードもいないし
      キラもいない。ご馳走ならロランが作ってくれるし、きっとウッソも喜ぶ。」
テクス  「じっくり待つんじゃなかったのか?」
アムロ  「方向を見失った者には、拳を振り上げ、突き放す勇気がいる。ここの所長の
      口癖だろう?俺はそれにしたがっているだけさ」
ガロード 「いや、道を誤ってるのはアムロ兄のほうだろ…」
ティファ 「あの…」
テクス  「似ていないと思っていたが…やはりキラの兄だな」
シャクティ「残念ですけど今日はここに泊まります。せっかくルチルおばさまがご馳走をつくって
      くれるのに、食べないのはもったいないし」
アムロ  「そうか…それは残念だ、ウッソを鍛えてもらいたかったんだが…」
シャクティ「また後日に伺わせてもらいます」
ティファ 「その…」
アムロ  「それじゃ、俺はこれで帰る。…ガロード」
ガロード 「な、なんだよ」
アムロ  「十五歳なんてのは、半分大人だ。ここで大人への階段を登るといい」
ガロード 「いや、ここはティファに妙な真似をしないように忠告するところだろ!」
テクス  「それに、後の半分は、まだ子供だ。焦ることはないさ」
アムロ  「手を握るくらいならいいと思うがな…ティファ、ガロードの事、よろしく頼む」
ティファ 「え?は、はい!…その、使い方…」
アムロ  「それじゃあ、また」


シャクティ「…アムロさんって、あんな性格でしたっけ…」
ガロード 「最近なんだよな、ああいうふうになったの…」
テクス  「…大人になるとな、人に言えないことをたくさん抱えて生きていかねばならん。
      色々苦労が溜まっているんだろう」
シャクティ「……子供だって、同じです」
テクス  「そうだな…」
ティファ 「あ、あの!!」
テクス  「ほら、コーヒーだ。うまいぞ」
ガロード 「お、サンキュー」
シャクティ「ありがとうございます」
ティファ 「……頂きます」
テクス  「…うむ、自分で言うのも何だが、うまいな」
シャクティ「あのー」
テクス  「ん?何だ?」
シャクティ「お砂糖頂けます?」
ガロード 「あ、俺はミルク」
ティファ 「私は…両方…」
テクス  「………ブラックの良さが分からんとは…」



テクス  「なに?使い方?…こういうことは同じ女性であるルチルに教えてもらうといい」
ティファ 「………くすん」


193 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:14:50 ID:???
ガロード「ティ…ティファ、あのさ…」
ティファ「…何?」
ガロード「俺はもう大丈夫だから、下でルチルさんやシャクティの手伝いにいってきなよ」

 …あの後、テクスのすすめで夕食時までは部屋で安静にしているようにいわれたガロードは
ベッドに横になっていた。そこにティファが看病を申し出たのである。
 看病と言っても、横になっているガロードの右手にティファの両手が添えられているだけである。
だけではあるが、右手にティファのぬくもりを感じるガロードは眠るどころではなかった。

ティファ「ううん…私がこうしていたいから…」
ガロード「で、でもさ…」
ティファ「…ガロードは、嫌?」
ガロード「そんなわけないだろ!…でも、そろそろ人が来るかもしれないし…」
ティファ「大丈夫…カギ…かけたから」
ガロード「ティファ!?」

 思わずティファの顔を見ると、耳の先まで真っ赤に染めてうつむいてしまった。その動作は
ガロードの眠気と理性の一部を吹き飛ばすには充分な威力があり、

ティファ「だから…大丈夫」
ガロード「ティファ…」

 そのままティファがガロードに寄りかかった状態で瞳を閉じた。
ガロードも覚悟を決め、上半身を起こすと、ティファの背中に手を回し、ゆっくりと顔を近づける。
唇が触れ、二人はほんの一瞬だけ、口付けを交わしあった。




シャギア(オルバよ…我々は、どこでスレを誤ったのだ…)
オルバ (兄さん、しっかり!ここは兄弟スレだよ!!)
シャギア(しかし…このタイミングでは出るに出られんではないか…)
オルバ (実際僕達がいるのは、ガロードの両側のベッドだからね…顔を出したら見つかるね)
シャギア(ガロードはともかく、ティファには見つかりそうなものだが…。ガロードしか
     目に入っていない。我々などアウトオブ眼中か)
オルバ (アウトオブ眼中だね、兄さん)
シャギア(ここではキスまでに止めてほしいものだがな)
オルバ (僕達の精神的にね…)


194 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:15:24 ID:???
 兄弟の願いを神が聞き届けたのかどうかは不明だが、救いは意外に早く訪れた。

ジャミル「ガロォォォドォォォォッ!!!」

   ドォン!!!!

ガロード「うわっ!?」
ティファ「きゃあ!?」

 カギのかかったドアをハイキックの一撃で粉砕し、サングラスを怪しげに輝かせながら部屋に現れたのは
フリーデンの所長を勤めるジャミル・ニートその人であった。全身に闘気を漲らせ、片手にはサテライト
キャノン(釘バット)を装備している。はっきり言ってかなり怖い。

ジャミル「ガロード…ティファが天然なのをいいことに、破廉恥な行為を強要していたというのは
     本当か!?」
ガロード「なっ!…んなことするわけないだろ!!誰にそんなでまかせを聞いたんだ!?」
ジャミル「やはり指導が足りなかったようだ。…その根性を鍛え直してやろう!!!」

 言うと同時に釘バットを下段に構え、一気に突っ込んでくる。一歩で踏み込み、バットをふるう。
ガロードを確実にミンチにせんと放たれた一撃は、咄嗟にティファを抱えて横っ飛びに飛んだおかげで
ゼロコンマ数秒の差で回避に成功する。ガロードにかわされた一撃は、一瞬前まで横たわっていた
ベッドに直撃し、轟音と共に一瞬でベッドを葬り去った。

ガロード「やべえ…殺す気か!?」
ジャミル「ミンチになってもすぐに復活できる…。そうなりたくなければ、私を越えてゆけ!!」


195 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:16:22 ID:???
   カルテNO・6 ”オセロコンビ・黒+β”


ルチル  「シャクティちゃん…ジャミルにどう説明したの?」
シャクティ「う~ん、そのまま説明したんですけどね…」
テクス  「仕方あるまい。ジャミルはティファに対して少々過保護だからな」
ルチル  「ガロードに対しては厳しいけどね」
テクス  「なに、それだけガロードの事を評価していると言うことさ」

ジャミル 「ティファに手を出すなど三年早い!!出直してこい!!」
ガロード 「うわ、あぶねぇ。…やめろ!ティファに当たったらどうする!?」
ジャミル 「そんなミスは犯さん!!それに惚れた女の一人くらい、自力で守って見せろ!!」
ガロード 「言いやがったな!ティファは俺が守る!守って見せる!!」
ティファ 「ガロード…///」
ジャミル 「それでいい…来い!!」
ガロード 「うおおぉぉぉぉぉっ!!」

シャクティ「…いい動きをしていますね、二人共。ガロードさんはドモンさんの弟だから
      分かるとして、ジャミルさんの方は何かしていたんですか?」
テクス  「ああ…じつは向こうの地域にいたときは、警察の対テロ用の特殊部隊にいた」
ルチル  「向こうはこっちに比べて治安が悪くてね…MSによるテロが横行していたの…
      ジャミルの仕事はGXとGビットでのサテライトキャノンの一斉掃射による
      殲滅戦担当。テログループをまるごとミンチにかえて、まるごと逮捕する。
      ……でも、その力を恐れたテログループがコロニー落としを強行…」
テクス  「無論警察側も止めに入ったが、サテライトキャノンのチャージが間に合わず、
      コロニーは落下。援軍に向かうはずだったランスローは試作機が空中分解
      引き起こして現場に駆けつけれなかった。二人はその時のショックでNT能力を
      失い、ジャミルにいたっては更にコクピット恐怖症になってしまった」
シャクティ「…そういえばニュースで見たことがあるかも。というかNT能力ってそう簡単に
      なくなるものでしたっけ?」
テクス  「あちらの地域出身のNTは、こちらに比べて不安定だからな。…能力も若干異なっている」
シャクティ「確かにティファさんの予知能力は貴重ですね。…おかげで色々助かっていますが」
ルチル  「あの子、ガロードと出会う前は本当に人見知りが激しかったから、ここで友達ができるか
      心配してたの。ティファと仲良くしてあげてね、シャクティちゃん」
シャクティ「はい!もちろんです!」


196 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:16:55 ID:???
ジャミル「どうした、その程度か!?」
ガロード「まだまだぁ!!」
ジャミル「達人であろうと、所詮は人の動きなのだ。相手の動きを見切りさえすれば、回避はたやすい
     …やってみろ!!」
ティファ「ガロード…あなたに、力を…」

シャクティ「仲がいいですね。(師弟間での禁断の愛…う~ん、やっぱり美形×美形に比べると
      マニアックですかね…それに、さすがにティファさんが協力してくれなさそうだし…。
      だったら…)」
ルチル  「ノリがガンダムファイターになってるわね…」
シャクティ「(戦後の世界を駆け抜ける漢たちの熱い友情と愛情の物語…『漢たちの挽歌』
      …ダメダメ。何だか変な層が釣れそうだし…)」
シャア  「だったら…」
グエン  「我々とローラとの絡みでどうかね?」
テクス  「…連れていけ」
シャア  「まて!出てきた瞬間に拘束するとはどういうことだ!?」
グエン  「我々の人生相談にも乗ってくれてもよいではないか!?」
テクス  「必要ない。君たちに必要なのは精神科医だ」
シャア  「ええい、放せ!今日はまだガンダム家に行っていないのだ!」
グエン  「ローラの姿を見ずに死ねるものか、放せぇぇぇ!」
ルチル  「………なんだったのかしら、今の…」
シャクティ「(…これね!ウッソの性格を直すにはもう洗脳しかない。明日にでもアムロさんに
      頼んで、小型化エンジェル・ハイロゥを作ってもらって…そうすれば)…ドクター」
テクス  「ん?なんだ?」
シャクティ「ありがとうございます。これで悩みが解決しそうです」
テクス  「?」
ルチル  「二人共、ご飯が冷めてしまうからそろそろ向こうの三人を止めてきてくれる?
      ランスローも仕事帰りに此処によるみたいだし」
テクス  「分かった」
シャクティ「そうだ、ドクター、次の同人誌のネタについて何かアドバイスをください」
テクス  「は……?」


197 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:18:09 ID:???
テクス「ふう…昨日はつい年甲斐もなく騒ぎすぎてしまったな」

あの後、皆で一緒に食事をとったあと、ビリヤードやポーカーをはじめとしたゲームの数々を行い
(罰ゲームつき、発案は無論シャクティ。ちなみにビリヤードは年少組には受けが悪かった)
かくし芸大会を行い(これもシャクティ発案。ちなみに優勝したのはフロスト兄弟のかくし芸
二人シンクロナイズドスイミング)
更にビールなどが振る舞われたため、皆が睡魔に負けるまで騒ぎが続いた。

テクス「未成年者に飲酒させるとは…医者失格だな。気をつけねば」

つぶやいて、立ち上がる。どうやら一番最初に目が覚めたらしく、周りを見回すと、ルチルとシャクティ、
ガロードとティファの二組がソファーに座って互いによりかかりながら眠っている。すやすやと可愛らしい
寝息を立て、見ていて微笑ましい気分にさせてくれた。
…フロスト兄弟も同じポーズで眠っているのを発見したが、こちらは黙殺した。
ジャミルとランスローは酒に弱いのか、テーブルで突っ伏して眠っていた。ちなみにジャミルのほうは
サングラスをかけたままである。

テクス「…もうこんな時間か。そろそろ診療所を開けなければな」

 もしかしたら急患が待っているかもしれない。心に悩みを持つ人がくるかもしれない。
いずれにしろ、患者あっての医者である。
 一つ伸びをすると、皆を起こさないように注意しながら、静かに部屋を出て行った。

                               完


198 名前:ドクターテクスの診療所投稿日:2008/05/07(水) 01:18:43 ID:???
   おまけ

ルチル 「これの使い方…ね。こういうのは男の方がよく知っているものよ。
     ジャミルに聞きなさい」
ティファ「はい」

ジャミル「な…テクスに聞いていなかったのか…。使い方はガロードに聞けば…いやダメだ
     危険過ぎる……ちょうどいいところにランスロー。…私は忙しいからな、
     悪いがあそこにいるランスローに聞いてくれ」
ティファ「はい?」

ランスロー「……この間までは熊のぬいぐるみで喜んでいたのに…どこで道を踏み誤ったのだ…」
ティファ 「?」



シャギア「…我々のところには相談にこなかったな、オルバよ」
オルバ 「そうだね、兄さん…」



                                こんどこそ完

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最終更新:2013年09月15日 13:56