584 名前:白熊隊 前へ!! 1/8 :2009/01/08(木) 09:58:08 ID:???
ガロード「♪俺たちゃ~町のジャンク屋さんっと」
ジュドー「なんだよ、その歌w」
元気に労働にいそしむ中学生たち。
この日も郊外の路肩に放棄されていたドム・トルーパーの前に集まり、品定めである。
ビーチャ「どうだ?」
イーノ「電子装備まわりが全滅だね。 ヒートロッドかウミヘビの直撃を受けたのかも」
モンド「あ、左肩の融解痕はそいつかな」
ジュドー「んじゃ、こいつはMSとしてはもうお陀仏、ってことだな」
ガロード「南無南無」
ビーチャ「電装品が取れないんじゃ、旨みは少ないなぁ…」
モンド「アクチュエーターなんかも制御装置が逝ってるだろうしなー」
イーノ「今回はハズレかな?」
ガロード「ま、そんなでも幾らかにはなるんだ。 贅沢言っちゃ、バチが当たんぜ?」
ジュドー「だな。 んじゃ、今回は大物回収コースってことで」
ビーチャ「キッドんトコのキャリア空いてるといいんだけどな」
ジュドー「ガロード、俺たちの
ガンダム出すか?
クレーンやプチモビ使うよりは…どうしたの」
モンド「あれ、パーラじゃないの?」
ガロード「あ、ほんとだ。 いい目してんなー」
ポーチから取り出した双眼鏡で、モンドの示すスクーターを捉えるガロード。
ガロード「
なんかすごい形相してんぞ」
ジュドー「…またサテリコンでなんかあったのか?」
途端に酢を飲んだような表情になる一同。
そんな中にパーラはチョイ乗り用の電動スクーターを、アクセルいっぱいで乗りつける。
パーラ「ガロードーー!!」キキキキキー
ガロード「危なっ!」
パーラ「カリスが、攫われた!」
ジュドー「はい?」
ガロード「なんだってーーーー!!」
585 名前:白熊隊 前へ!! 2/8 :2009/01/08(木) 09:59:38 ID:???
ガロード「どう言う事だよ!」
パーラ「アタシだって判んねーよ! とにかく、『フォートセバーン』に出入りしてる、
ごっつい大男たちがカリス担いで運んでたらしいんだ!」
パーラのスクーター――銘『Cファルコン』――に二人乗りで疾走するパーラとガロード。
ちなみに二人乗りは禁止の上に、ガロードはノーヘルという二重の違反である。
ガロード「ふぉーと…なんだって?」
パーラ「『フォートセバーン』!! 札付きの連中が出入りしてる店だよ!」
クスリの取引を始め、本当に兄弟スレに存在する店なのかと思うような、
さまざまな悪徳がなされていると言う。
ガロード「おいおい、なんだって今頃そんな名前が…」
風とモーター音のために、ガロードのつぶやきはパーラには届かなかった。
パーラ「カリスってば、顔だけ見れば、美少女だろ? ひょっとして…」
ガロード「怖いこと言うな!」
叫びながらリアカウルを掴み、地面に肩を擦りそうなほど乗り出すガロード。
モーターと足回りを強化されている『Cファルコン』は、
スクーターとは思えないスピードでコーナーをクリアして行く。
パーラ「ガロード! 前の停留所、ティファだ!」
ガロードたちに合流するつもりだったのか、イーゼルを背負い、
画材やキャンバスなどの大荷物を抱えたティファがエレカ・バスから降り立つ。
パーラ「ティファはとりあえず無事みたいだな」
ガロード「ティファアアアア!!」
ティファ「ガロード…パーラ?」
ガロード「ジュドーたちから離れるなよおおおおおおぉぉぉぉぉ!」(ドップラー効果)
ティファ「…えっ?」
一陣の風を残して、スクーターはあっという間に見えなくなった。
586 名前:白熊隊 前へ!! 3/8 :2009/01/08(木) 10:00:47 ID:???
クラブ『フォートセバーン』は繁華街から一つ通りを隔てた小さなビルにあった。
夕刻も近い時間であったが、通りにはまだ人は少なく…
パーラ「いたっ! あれだ!!」
そろいの白ジャンパーを着た10人ほどの大男たちが急ぎ足で行く姿はとても目立つ。
その中に、一瞬カリスの綺麗な金髪が煌く。
パーラ「どうする!?」
ガロード「このまま突っ込め!」
パーラ「あん? …ったく、無茶いいやがるぜ!」
言いつつも、ハイになった者の笑顔を浮かべてアクセルをひねるパーラ。
後ろにガロードを乗せているため、浮き上がったフロントに体重をかけて押さえ込み、
一直線に大男たちに向かって突進する。
パーラ「おらおらおらぁ! どきな!この雑魚ども!!」
大男A「うおっ!」
大男B「なんじゃあ!!」
ガロード「カリスを…」
疾走するスクーターを蹴って宙に舞うガロード。
ガロード「放せぇぇぇぇぇ!!」
どがん!
カリスをお姫様だっこしていた禿頭の大男の顔面に、ガロードの靴がめり込む。
ちなみにこの靴は一見ただのスニーカーだが、鉄板とスチールメッシュが仕込まれている
いわゆる安全靴である。
スクーターのスピード×ガロードの体重×安全靴=破壊力!
大男C「げっふぁ!」
たまらずひっくり返る大男の手からカリスをひったくり、
空中で体を入れ替えて受身を取るガロード。
ガロード「いっつつつ…」
パーラ「ガロード!」
ガロード「行け! テクスとジャミルを呼んできてくれ!」
パーラ「けど!」
ガロード「早く!」
パーラ「…無茶すんじゃねーぞ!!」
さすがに強化してあると言っても、スクーターで三人を運ぶのは不可能である。
アクセルターンで車体を廻し、路地に飛び込むパーラ。
大男A「はっ!」
大男B「小僧! 貴様突然何をする!」
その時になってようやく混乱していた大男たちが立ち直り、ガロードを取り囲む。
587 名前:白熊隊 前へ!! 4/8 :2009/01/08(木) 10:03:17 ID:???
ガロードの腕の中で気を失っているカリスには血の気がまるでなく、
ただでさえ白皙の肌が蝋細工のようだった。
ガロード「(変な薬の匂いはしねぇ… 例の発作で気を失ったのか?)」
薬物の投与で後天的にNT的な能力を発現させられたカリスは、
一月に一度ほどのペースで、強烈な痛みを伴う発作――
シナップス・シンドロームが発症する。
回想カリス『もし手元に銃があれば、間違いなく自分で頭を打ち抜いてますねw』
明るく言い放つカリスだったが、話半分で聞いても身の毛がよだつ。
副作用を承知の上で、自ら望んで強化処置を受け、
その背に負った十字架に負けず、立つ。
無頼に見えるガロードであったが、敬意を覚えている人間は多い。
だが、同年代で畏敬の念を抱いたのは、
カリス・ノーティラス…
この強靭な心を持つ少年が始めてだった。
大男D「小僧、聞いて…」
ガロード「テメェら…」
手近なビルの壁にカリスをもたれかけさせ―ガロードでも持ち上げられるほど軽かった―
立ち上がった少年に、大男たちが言葉を飲み込む。
ガロード「俺のダチに手ぇ出して、只で済むと思ってねぇだろうな?」
そこには、一匹の虎がいた。
大男たちは、後々までそう語ったという。
588 名前:白熊隊 前へ!! 5/8 :2009/01/08(木) 10:04:13 ID:???
大男E「な、なんちゅう小僧じゃい…」
四人目の仲間を倒され、大男たちに動揺が走る。
身長差では40cm、体重に至っては3~4倍はありそうな男たちを相手に、
ガロードは小さな体と、地形、周囲にある全ての物を武器として対抗していた。
しかし、その時…
大男F「フハハハハ~! さすがガンダム・ザ・ガンダム、
ドモン・カッシュの弟サンじゃのう!」フシュルルルー
ずしん!
一同の中で一際体格の良い男が前に出る。
大男G「知っちょるのか、オオヤマ君!」
大男F「オウよ。 こう見えてこの小僧、世界最強GFの弟よぉ」フシュルルルー
大男ズ「「「「なんじゃとーーー!」」」」
ガロード「やべぇ…」
小さくつぶやくがロードであったが、それは己の出自を知られたからではない。
ガロード「コイツ…本職だ…」
最初の奇襲で倒した男はさておき、他の男たちは体格こそ脅威であったが、
こと格闘においてはまったくの素人であった。
だが、前に出た大男は、その巨大な体格にもかかわらず、動き、構えに隙がない。
オオヤマ「ネオジャパン代表選考会の時に見た顔じゃあ。
お兄さんは元気にしとるかのぅ」
ガロード「テメェ…ガンダム・ファイターかよ…」
オオヤマ「候補じゃったと言うのが正確じゃな。
ドモン君に負けて、GFになりそびれたんじゃあ」
ガロード「けっ、ドモン兄に負けたんなら、たいしたこたぁねぇな」ニヤリ
オオヤマ「がっはっは! この期におよんでハッタリがかませるとは、
元気な小僧じゃのう!!」
ガロード「ヘン! 今の今まで仲間の後ろに隠れてたんだろーが!
んなビビリ野郎がこのガロード様に挑もうなんざ100年早え!」
言いつつ、閃光弾や発煙筒、ナイフ、パームガンなど、隠し持つ武器を
意識せずにいられないガロード。
オオヤマ「普段なら相手をしてやってもいいんじゃが…今は時間が惜しい。
早いとこ、隊長サンを連れ帰らんとのう」
一歩、二歩と、ガロードを見据えつつ横へ動くオオヤマ。
ガロード「テ、テメェ!」
オオヤマ「隊長サンは返してもらうぞ」
ガロードに向き直ったオオヤマは、カリスを背後にかばう位置にあった。
589 名前:白熊隊 前へ!! 6/8 :2009/01/08(木) 10:20:01 ID:???
オオヤマ「早うせい! ここはワシが引き受ける」
大男E「おお!さすが副隊長!」
大男G「やっぱりオオヤマ君は頼りになるのぅ」
大男たちは喜んでカリスの元へ駆け寄ると、大事なものを持ち上げるように
そっとカリスを抱き上げる。
ガロード「カリスに、触れるなああああああ!!」
オルバ「おっとそこまで」
シャギア「頭を冷やしたまえ、ガロード・ラン」
弾丸のように飛び出したガロードを、左右から伸びた手が掴む。
ガロード「フロスト兄弟!」
オオヤマ「おお、兄さん方」
ガロード「え?」
オルバ「オオヤマ君にフルボッコされる君の姿にも、ちょっと興味が尽きないんだけどね」
シャギア「彼らはカリス・ノーティラスの仲間だ。 残念ながら君たちが争う理由はない」
ガロード「えええええーーー!!?」
猫のように摘み上げられたガロードの声が響き渡った。
オオヤマ「ワシらはぢ体大の学生でな。 だいたいこの辺りに住んどるんじゃが…」
ジュドー「(大学生?)」
パーラ「(見えねー)」
大男A「普段お世話になっちょる人たちに、何か恩返しがしたいと思うちょったんじゃ」
オオヤマ「じゃが、ワシら、体力には自信があるが、知っての通り、
頭がからっきしじゃからのう。
おかげで随分空回りして、いろんな人に迷惑をかけてしもうた」
大男A「そんなワシらを見かねて、色々と教えてくれたんが、隊長サンなんじゃ」
パーラ「その、隊長、ってのは?」
オオヤマ「ええっと、なんじゃったかのう?」
大男A「じ、じ、じけーなんとか…」
オルバ「自警団」
オオヤマ「そう!それ!」
ジュドー「自警団って…」
シャギア「南口商店街にもあるだろう。
モスグリーンのジャンパーに可愛らしい熊のエンブレムを背負った一団が」
ジュドー「ああ! 肉屋のスミルノフさんがリーダーやってる!」
オルバ「それと同じものを、北口商店街でも発足させたんだよ、カリス君はね」
590 名前:白熊隊 前へ!! 7/8 :2009/01/08(木) 10:22:27 ID:???
トン、カン、トン、カン…
ガロード「だーっ! そこはそーじゃねーだろ! こういう棚は上に物を載せるんだから…」
おっかなびっくり振るう大男から金槌を引ったくり、
あっと言う間に釘を打ち付けるガロード。
隊員E「おお~~」
隊員G「す、すまんのう」
ガロード「い、いや、ぶっ壊したのは俺だし…」ポリポリ…
きゅっ!
ティファ「終わり、です。 他に、痛いところはありませんか?」
隊員B「はっ! 別に、無いですタイ。 結構なお手前で…」ポワワ
ティファ「えっ?」
隊員C「なんだか、いつもの3倍早く治りそうな気がするぞなもし」ポワワ
隊員D「腕っ節が強くて、手先が器用で、こんな可愛い彼女サンがおるとは…
さすが隊長サンのお知り合いなだけはあるのう」
カリス「やれやれ、普段から女っ気がないとこれだから…」
テクス「病は気からとも言うが、実際に気の持ちようで怪我の回復が
早くなるという実証データもある。
あながち思い込みだけというわけでもないさ。
よし、バイタル安定。 もう大丈夫そうだな」
カリス「いつもすみませんね、ドクター」
テクス「まあ、できるなら入院して安静にしていてもらいたいんだがな」
カリス「毎度のことです。 少し休めば大丈夫ですよ」
ジュドー「そう言えばさ」
パーラ「ん?」
カリス「はい?」
ジュドー「怪しいクラブに出入りしてるって話は…」
カリス「ああ、『フォートセバーン』ですか?
あそこは今、我々が事務所として使ってるんです。
我々の初陣があそこの困った人たちの排除で…
その後はビルのオーナーさんのご好意でお借りしてるんです」
エル「ああ! その話は聞いた覚えがある! そっか、カリスも咬んでたんだ~」
パーラ「何だよ、結局、ぜーんぶアタシの早とちりってこと?」
カリス「そうなりますね。 まあ、心配してくださったのは有難いですが」
パーラ「ちぇっ!」
ガロード「そんな塗り方してたらムラになっちまうだろ! ここはこう!!」
591 名前:白熊隊 前へ!! 8/8 :2009/01/08(木) 11:29:48 ID:???
日曜日の昼下がり。
アルとシュウトが元気に駆け回る
ガンダム家では、ロランが洗濯物を干していた。
隊員A「こんにちは~」
ロラン「あ、みなさん! こんにちは」
隊員B「すんません、部長サンはいらっしゃいますかいのう?」
ロラン「ガロードですか? ちょっと待ってくださいね。
ガロード! 白熊隊の皆さんがいらしてますよ!」
隊員C「部長~! 営繕部長~!」
ガロード「人を勝手に部長にするなーー!!」
隊員A「おお、部長!」
隊員B「3丁目のタバコ屋のばあちゃんが階段から足滑らせて落っこちたとですタイ」
隊員C「ばあちゃんの面倒はワシらが看れますけぇ、大丈夫なんじゃが…」
隊員A「ばあちゃんが滑らんように階段に手ぇ入れるんは、やっぱり部長で無いと…」
ガロード「ぐう…」
隊員A「お願いします、部長!」
ガロード「だから部長は止めろ! ったく…カリスの奴、覚えてろよ」ガシャリ
ロラン「(それでも道具箱の用意はしてあるんですね)」クスクス
自警団『ポーラベア小隊』。
ジオン体育大学の学生によるボランティアを中心とした非営利団体であり、
防犯、防災のみならず、町のちょっとした困りごとなら何でも引き受ける
頼りになる集団として認知されるには、それほど時間はかからなかった。
その中には、「何でも直す営繕部長」として、一人の少年が参加していたという…
どっとはらい。
最終更新:2013年10月05日 13:48