もはや
ガンダム一家の朝食にギンガナムが同席することに兄弟達が何の違和感
も感じなくなったある日、事件は起こった。もちろん原因はギンガナムにあるの
だが。
ギンガナム「小生今日はちょっとした知り合いを連れて来たのである。しかし朝
ご飯を食べると元気になるなぁ!シロッコ!」
シロッコ「生の感情をむき出しにして食べるとは・・・これでは人に品性を求め
るのは絶望的だな。やはり人は絶対者によりより良く導かれねばなら
ん。ほぉ、ご飯の炊き具合は悪くないな、シャア。」
シャア「正確な評論だな。では食べさせてもらおうか、この家の朝食のおかずと
やらを!む、この鮭の焼具合はなかなかやる!」
ハマーン「甘いな、シャア!この鮭はほんの少し焼きすぎだよ。(シャア、私と
来てくれれば・・・朝食ぐらいいくらでも作ってやるというのに)」
ロラン「やめてください!皆さん!兄弟のぶんがなくなってしまう・・・ギンガ
ナムさん、いったいどういうことなんです!?」
ギンガナム「小生がいつも素晴らしい朝ご飯を食べていることを自慢したかった
んだよぉ、ローラァ!」
戸惑うロランをよそに4人は次々と朝食を片付けていった。その都度いちいち
批評を行いながら。そしてついに全ての食事が彼らの胃袋におさまったとき、兄
弟達が朝食をとるためにリビングにあらわれた。そして彼らは惨状を目の当たり
にした。
ヒイロ「朝食、未確認。おそらくは侵入者に食べられたと思われる。」
アムロ「シャア、貴様!・・・人の家の朝食を勝手に・・・」
カミーユ「シロッコ、ハマーン、クワトロ大尉まで!人んちで何やってんです、
あなた達は!」
ジュドー「ハマーン!?何でお前がここにいるんだ?」
ウッソ「おかしいですよ!人の家の朝ご飯をすっかり食べてしまうなんて!」
続く・・・ やつらが知り合いなのは
パラレルということで・・・
朝食をすっかりシャア達に食べられてしまった兄弟達の中でも喧嘩早いカミーユ
とジュドーはすぐさまそれぞれシロッコとハマーンに飛びついていった。が、
シロッコ&ハマーン「勝てると思うな、小僧!」 「見くびっては困る!」
2人から発せられる独特の波動がカミーユとジュドーを襲う。しかし彼らもまた、
カミーユ「暗黒の世界に帰れ、シロッコ!お前はここにいちゃあいけないんだ!」
ジュドー「ハマーン、憎しみが憎しみを呼ぶだけだって分かれ!」
4人のNT独特の波動がぶつかり合い、彼らの周りだけでなく家さえ揺れ始めた。
その力はまだまだ大きくなると感じさせる。同時に彼らの圧倒的な力は他のものの
介入を許さないと告げている。
シロー「家が・・・震えている?」
コウ「NTの力ってこんなに凄いのかよ!こ、このままじゃあ・・・」
キラ「コ、コーディネーターでも
こんなことは不可能なのに・・・」
ドモン「腕力なら負けないんだが、それとは違った力だな、これはぁ!」
4人の対決に危機感を覚えたアムロはウッソとシーブックを近くに呼んだ。ちな
みにギンガナムはこんな状況でも他になにか食べるものはないかと探している。
アムロ「いいかシーブック、ウッソ。このままじゃうちはもちろんお隣のコバヤシ
さんの家まで危ない。そうならないように俺達の力であいつらの力を相殺
する。こいつは賭けだが俺たちになら、いや、俺たちにしかできないんだ!」
アムロ「いくぞ!うぉお、νガンダムは、伊達じゃない!!」
シーブック&ウッソ「なんとぉーーー!!」 「ガンダム!!」
(おのおのが気合を入れるための叫び。特別意味はない。類義語に「ユニバース!」)
勢いよくアムロ達の波動が、カミーユ、シロッコ、ジュドー、ハマーンの力にぶつか
った。ぶつかりあった力は一瞬の急激な膨張ののち、一気に収縮して元から何もなか
ったようにして消えた。アムロ、シーブック、ウッソの賭けは成功したのだ。
波動がぶつかり合って消えた後しばらくは沈黙が支配した。シャアが静かにお茶
をすする音とギンガナムが食べ物を探す物音だけが存在していたなか、シロッコが
いつもの気取った口調で沈黙を破った。続いてハマーンも感慨深げにつぶやく。
シロッコ「フッ、時の運はまだ私に傾いていなかったか。サラとレコアのもとへ帰
るとしよう。」
ハマーン「朝食をいただきに来て良かったよ・・・強い子に、会えて・・・」
捨て台詞と共に帰っていく二人の背中には奇妙な満足感すら漂っているようにみえ
る。シャアは二人の背中をを無言のまま見つめていた。クワトロと名乗るときのサ
ングラスを掛けながら。
ジュドー「ハマーン、シロッコ・・・次はその力をもっといいことに使えよ。」
ウッソ「ハマーンさんって綺麗な人ですね、ああ・・・(ウッソ妄想に突入。)」
カミーユ「シロッコめ・・・(サラもレコアさんもヤツのどこがいいんだ?)」
そんななかガロードはふと違和感を感じ、その原因に思い至った。彼は何気なく
シャアに尋ねた。
ガロード「シャアのおっさん、あんたいつもロラン兄ちゃんにちょっかいだしたり
してうるさいのに、今はなんかやたら静かだよな。」
アル「そういえばそうだね。でもそんなことよりさぁ、シャアのおじさんもNTな
んでしょ。じゃあさっきみたいなこと出来るんだよね、すごいや。」
シャア「今の私はクワトロ・バジーナだ。それ以上でも、それ以下でもない。・・
・では、私もそろそろお暇するか。
ロラン君、おいしい食事だった。」
無表情にそう言い捨てて去ってゆくシャアの背中は、さきほどの二人とは対照的
に寂しく感じられる。その後姿はいつもより小さくさえ見える。アムロにはその理
由がわかる気がした。あのララァを除けば最もシャアを理解している彼には。
ガンダム兄弟の家で朝食を発端とした騒動の起きたその日の夜、シャアは飲ん
でいた。辛いときについ足が向く居酒屋、
青い巨星で主人の
ランバ・ラルと女将
のハモンに愚痴をこぼしながら。
ラル「キャスバル様、そんなに飲まれては体に毒です。もうおやめになったほうが。」
シャア「いいや、まだだ、まだ終わらんよ!ったく、ラル、父の恩を忘れたかぁ。
ヒック。チクショウ、私の父の言い出したNTというのはなぁ、変な波動が出
せるやつらのことじゃねぇってんだよぉ。それを、あいつらときたら・・・そ
りゃどうせ私にはジオングは使いこなせなかったさ、サザビーのファンネルだ
ってサイコフレームの力を借りてやっと動かしてたさ、しかし、しかしぃ、私
だってNTのはずだぁあ!・・うぅう、ララァ、私を導いてくれぇ・・・」
ついに泣き出してしまったシャアにラルとハモンが困り果てているとき、店の扉を開
けて一組の男女が入ってきた。
ハモン&ラル「すいません、きょうはもう・・・、あら?」 「ほぉ、小僧か。」
アムロ「やだなぁ、ランバ・ラルさん、もう小僧じゃありませんよ。・・・シャアもし
やと思ったが、ここだったか。相当酔ってるな。」
ラル「NTがどうのこうのとおっしゃられて、わしにはよくわからんのだがなぁ。」
セイラ「兄は鬼子です。出来もしないことを出来ると思い込んで・・・あぁ、兄さん。」
アムロ「男には飲みたいときもあるさ、セイラさん。特にシャアはいろいろ辛いから。」
ラル「アルテイシア様まで・・・それにしても小僧、大人の男になったものだな。」
セイラ「さぁ、兄さん帰りましょう。アムロが送ってくれますから・・・」
シャア「優しかったアルテイシア、ララァ、私だってNTのはずだよなぁ、ヒック。」
終わり
最終更新:2018年10月30日 15:43