374 名前:とある12月の風景・Aパート 1/4 :2009/12/09(水) 10:49:30 ID:???
うう、369の後に投下するのは心苦しいが…パラレルってことでひとつ。

ソーマ「似顔絵描き?」ズズ…
ティファ「はい。 熱いから気をつけて…」っ【紅茶】
フェルト「あ、ありがと…」
ソーマ「…とは、なんだ?」
 かくん、と20°ほど傾く二人。
 しっかりしている様で、この年上の友人は意外と一般の社会常識に疎い。
フェルト「え~っと…」
ティファ「お客さんの似顔絵を描いて、それを買ってもらうんです」
ソーマ「ああ、この1000円がその値段なのか。
    …商売になるのか?」
ティファ「専門のプロの人もいますから。
     でも、普通は絵の勉強をしている人が修行…って言うんでしょうか。
     練習と、ちょっとした収入をあてにしてするのが多いです」
ソーマ「ふむ。 芸術はよくわからん。
    どこかの飲食店でアルバイトと言うわけにはいかないのか?」
ティファ「そういう所はだいたい長期間拘束されますから。
     コンクールも近いので…」
フェルト「ガロードとも会えないし?」ニヤニヤ
ティファ「…」(////)
ソーマ「やれやれ、ご馳走さま、だw
    それで、私たちにできることはなんだ?」つ【空きカップ】
ティファ「えっ?」
フェルト「モデルでも客寄せでも、何でもやります!」ムフー
ソーマ(うむうむ)
ティファ「…えっと、似顔絵はお客さんを描くので…別にモデルは…
     それに、客寄せは…」



375 名前:とある12月の風景・Aパート 2/4 :2009/12/09(水) 10:51:01 ID:???
●フェルトの場合
フェルト「あ、あの…」
ロアビィ「ほい? あれ? あんた、たしかライルさん所の…
     フェルトちゃん、だよね? こんな所で何してるの?」
フェルト「え、えっと…」
ロアビィ「あ、こんな吹きっさらしで立ち話もなんだし。
     どう?お茶でも。 ハーブティの美味い店、知ってるんだ」
フェルト「えっ! い、いえ、あの、えっと…似顔絵…」
ロアビィ「大丈夫、とって食ったりしないから。
     俺、仲間内でも紳士で通ってるんだぜ?」肩抱きっ
フェルト「ふえっ!」
ロアビィ「う~ん、近くで見ると、益々かわいいねぇ…
     どう、本気でお兄さんと付き合っt」
 ビシッ!
ロアビィ「あだっ! 痛って~… 何コレ…ゴム弾?
     ってことは…」ソーー
遥か遠くのニール「………」←ウチのフェルトに何しやがるオーラ
ロアビィ「うはははは…(汗
     相変わらずい~い目してらっしゃること…
     んじゃ! お兄さんが怖いからこれにて失礼!」
フェルト「…あう」

●ソーマの場合
ソーマ「おい貴様!」
カツ「えっ? ぼ…俺、ですか?」
ソーマ「そうだ。 貴様、似顔絵は欲しくないか?」
カツ「ええっ? 似顔絵? って、一体…」
ソーマ「要るのか要らないのか! はっきりしろ!」
カツ「はっ、はいっ! …いえ、あの、別に…」
ソーマ「…」ギロリ
カツ「ひいっ!」
ソーマ「はっきりしろと言ったはずだ。 貴様の耳は飾りか!」
カツ「い、いえ、あの…」
ソーマ「聞こえん!」
カツ「ご、ごめんなさーーーーーーーい!(涙」→→→脱兎
ソーマ「あ、おい!」


ティファ「(なんてことに…)」
フェルト「(なりそうな…)」
ソーマ「(なにやら不穏当なことを想像されている気が…)」


376 名前:とある12月の風景・Aパート 3/4 :2009/12/09(水) 10:51:51 ID:???
フェルト「………何か手伝えること」
ティファ「ありがとう。 その気持ちだけで十分です」
ソーマ「む…しかし、だな…ティファががんばっているのに、
    何もしないのは友人として、その…」
ティファ「これは、私のするべきことですから。
     お二人は自分のことをがんばってください」
 困ったような笑みを浮かべて言うティファ。
フェルト「と言われても…」
ソーマ「店は定休日だし…
    調整日だから、今日のメニューはもう終わってしまったし…」
フェルト「ミッションがエージェントからの情報待ちで…
     連絡がくるまですることが…」
ティファ「えっと…」
ソーマ「………」
フェルト「………」
 思わず、己の趣味の無さに顔を見合わせる二人。
ティファ「こ、紅茶、もう一杯いかがですか?」
ソーマ「すまん…」
フェルト「いただきます…」
ティファ「はい」
 椅子にしている箱の脇を開き、ポットを取り出すティファ。
ソーマ「良くできているな、そのボックス」
フェルト「ひょっとして…」
ティファ「ええ、ガロードが作ってくれたんです。
     いろいろ便利なんですよ?」
 ハロにも使われている小型、軽量、大容量のパワーセルを内蔵し、
 温度調節AIにより、ヒーターの温度は常に最適の状態を維持する。
ティファ「欠点は暖かか過ぎて、お尻に根っこが生えちゃうことですね」
フェルト「こたつみたい…」
ソーマ「うむ。 あれは…危険だ…」
 こたつで溶けるソーマの姿を想像して、思わず笑う二人。


377 名前:とある12月の風景・Aパート 4/4 :2009/12/09(水) 10:53:48 ID:???
ソーマ「しかし、またガロード君か」
ティファ「はい?」
ソーマ「いや、その、こうも…何というか、負けっぱなしと言うのが…
    気に入らん」
 友人として、ティファを思う気持ちは紛れも無く本物である。
 が、何かをしようとすると、その遥か前方をあの陽気な少年が
 スキップしながら進んでいるのである。
 ソーマの中の負けん気がむくむくと頭を上げる。
フェルト「でも、しかたないですよ。 ガロードですし」
 あらゆる分野で天才揃いの、かの兄弟にあって、
 ガロード自身には飛びぬけた才能がある訳ではない。
 だが、ことティファ・アディールが絡むとその行動力と才覚が爆発する。
 その様は10倍界○拳ともスーパー地球人とも例えられ、
 齢15にして既に数々の伝説を残していた。
 人は謂う。
 ――やはり白い悪魔の弟である――と。

ソーマ「それでもだ!」
 握りこぶしで立ち上がるソーマ。
ソーマ「何か、私にも――私たちにも出来る事があるはずだ」
フェルト「うん!」
ティファ「………」
 やはり困ったような、それでも、確かに笑顔を浮かべる
 ティファ・アディールであった。

Bパートへつづく。
規制回避のため、少し時間を置いて投下します。


379 名前:とある12月の風景・Bパート 1/4 :2009/12/09(水) 12:00:49 ID:???
フェルト「お客さん…来ないね」
ティファ「そうね(苦笑」
ソーマ「場所が悪いのではないか?
    こんな目立たない所ではなくて、向こうの噴水の近くとか」
ティファ「だめなんです。 こういうのはちゃんと場所が決まってて…
     あそこはサーカスの人たちが…」

 その言葉を聞いていた筈も無いが、煌びやかな衣装と派手なメイクを施した、
 見るからに芸人といった面々が賑やかな音楽と共に現れる。
 半面の仮面をつけた少年がアクロバティックな体術を披露して歓声を誘い、
 背中の開いた衣装の美女が集まった人々にビラを配る。
キャスリン「さあ! 続きが見たい人は中央公園に来てねー!」

 時間にして数分の事であったが、ひとしきりビラを撒いた一団は
 風のように去って行く。
 裏方らしい若者達が捨てられたビラをすかさず回収してしまったため、
 後には何も残らず、まるで白昼夢のような一時だった。

ティファ「ああやって、公演の合間に宣伝して行くんです」
ソーマ「むう…」
フェルト「サーカスかぁ…(ロックオンと二人で…)ポワワ
ソーマ「(中佐と一緒に…)」ポワワ
ティファ「二人で行ってきますか?」クスクス
フェルト「えっ?」
ソーマ「ふむ… それも悪くはない、が…行くなら三人で、だな」
ティファ「三人?」
ソーマ「ティファも一緒でなくてはな。 だから、この話はもう終わりだ」
ティファ「はい」


380 名前:とある12月の風景・Bパート 2/4 :2009/12/09(水) 12:01:52 ID:???
ソーマ「う~ん、こうなると、やはり我々で客寄せを…」
フェルト「できるでしょうか…」
ソーマ「できるかどうかではない! やるのだ! 成せばなる!」ゴゴゴ
フェルト「うう…」
ティファ「(やっぱり>>375…)」
フェルト「こんな時、ガロードなら…」ブツブツ…
ティファ「はい?」
ソーマ「どうした、フェルト」
フェルト「やっぱり、ガロードですよ」
ティファ「?」
ソーマ「いや、だから、何でもかんでも彼に頼るというのは…」
ティファ「それに、ガロードはお仕事で忙しいみたいだから…」
 いわずと知れた、クリスマス・プレゼントの資金を稼ぐためである。
ソーマ「まぁ、確かにガロード君ならありとあらゆる手を使って、
    行列を作って見せるだろうが…」
ティファ「さすがにそれは…(汗」
フェルト「そうじゃなくて…ティファ、ガロードの似顔絵、描けるよね!」
ティファ「え? ええ、まぁ…」
フェルト「描いて!」
ティファ「はい?」
ソーマ「フェルト、何をするつもりだ?」
フェルト「やっぱりガロードなんですよ!」
ソーマ「?」
 妙に盛り上がるフェルトと、眉を顰めるソーマ。
 そして。
ティファ「…どうしよう、スケッチブックが足りない」
フェルト「え?」
ソーマ「スケッチブックなら、そこにいっぱい…」
ティファ「だめなんです。 五冊くらいじゃぜんぜん足りないんです」
 と、泣きそうな顔で二人を見上げるティファ。
ソーマ「………」
フェルト「あの、とりあえず、三枚くらいでいいから…(汗」
ティファ「え? 三冊、じゃなくて?」
フェルト「さんまい! 画用紙で三枚!」
ティファ「は、はい…」


381 名前:とある12月の風景・Bパート 3/4 :2009/12/09(水) 12:02:51 ID:???

 タタッ…
ソーマ「待たせた。 もらって来たぞ」っ【ダンボール】
フェルト「あ、ありがとう」
ソーマ「しかし、こんなもので良かったのか?
    ホームセンターが近いから、ちゃんとした木材でも買ってこれたが」
フェルト「裏打ちするだけだから、これで十分。
     要らなくなったらすぐに捨てられるし」
ソーマ「なるほど。 それで…ティファは…うおっ!」
ティファ「………」
 黙々と鉛筆を走らせるティファ。
 その佇まいに普段と変わるところは無かったが、その眼光、
 表情には何人も寄せ付けない気迫が篭っていた。
ソーマ「鬼気迫るとはまさにこれだな…」
フェルト「ティファも十分、普通じゃないね…」ペタペタ
ソーマ「うむ…似合いと言っていいのやら…」
 と、突然ティファの手が止まる。
ソーマ「お」
フェルト「ん?」

ティファ「描けましたー!」キラーーン

ソーマ「くぅっ!」
フェルト「ま、眩しい…」
 バックに花びらが舞い散るようなめっさいい笑顔に、目がくらむ二人。
ティファ「?」


ソーマ「ほう…」
フェルト「ふふっ…やっぱりガロード、笑ってるんだ」
 差し出された三枚の画用紙には、今にも笑い声が聞こえてきそうな、
 生き生きとしたガロードの似顔絵が描かれている。
ソーマ「…絵のことは良くわからんが…これは、いいな」
フェルト「うん。 …じゃあ、これにしよう」
 フェルトが取り上げたのは、やさしい笑顔を浮かべた一枚。
 ガロードが相手を、どれだけ大切に想っているのかはっきりと判る一枚である。
ティファ「?」
 ダンボールで作った即席の額縁にその絵を収め、
 ティファが普段持ち歩いているイーゼルに載せる。
ソーマ「なるほど、看板か…」
フェルト「アクティブな客寄せが使えないなら、パッシブで」
ソーマ「ふむ、状況に応じて戦術の転換は必要だな」


382 名前:とある12月の風景・Bパート 4/4 :2009/12/09(水) 12:05:01 ID:???
伯爵「ふむ?」
ロメロ「ん~? どうした、伯爵」
伯爵「いや… この絵はお嬢さんが描いたのかね?」
ティファ「あ…はい」
伯爵「うん、いい絵だ… どれ、私も一枚頼もうか」
ロメロ「やれやれ、相変わらず酔狂だね、お前さんは」
伯爵「はっはっは、私から伊達と酔狂を取ったらこのツナギくらいしか残らんよ。
   ここに、座ればいいのかな?」
ティファ「あ… ありがとうございます!」

フェルト「(Yes!)」握りこぶし
ソーマ「(うむ!)」

伯爵「この絵の若者は、お嬢さんのいい人かね?」
ティファ「えっ! その…えっと………はい」(////)
伯爵「そうか、うん。 おっと、あんまりお喋りはしないほうがいいのかな?」
ティファ「あ、いえ…楽にして下さって結構です」
伯爵「おお、それはありがたい」
ロメロ「………どこかで見た顔だと思ったら、この若いのはウッソの兄さんじゃないかね」
伯爵「ウッソの? そうなのかい?」
ティファ「ええ、ウッソ君の…二つ上のお兄さんです」シャッシャッ…
伯爵「ほぉ…私たちはボランティア団体リガ・ミリティアの仲間でね。
   偶にウッソにも手伝ってもらってるんだよ。
   公園の花壇や植木の世話などね」
ティファ「そうなんですか…」シャッシャッ…

物陰のソーマ「フェルトの所も似たような事をしてなかったか?」
物陰のフェルト「うん。 でも、この町って公園とか多いから…
        CB以外にも、そんな事してるところはいっぱいあるみたい」

 ピリリ…
ティファ「はい、できました」っ【似顔絵】
伯爵「ほう… どうだいロメロ、似てるかな?」
ロメロ「あ~、駄目だな。 絵の方がいい男過ぎる」
伯爵「おいおい、酷いな。 よし、ほかの皆にも見てもらおう。
   ありがとう、お嬢さん。 いい絵だよ」つ【お札】
ティファ「はい… ありがとうございました」ペコリ

Cパートにつづく。

また少し置きます。あ、Dパートまでありますんで…

387 名前:とある12月の風景・Cパート 1/4 :2009/12/09(水) 13:05:18 ID:???


 午後の混雑が終わった荒熊精肉店。
セルゲイ「ふう…夕方までは一息つけるな。 皆、今のうちに休憩しておくように」
ミン「はい。 じゃあ交代で…ピーリス、お前からだ」
ソーマ「は? 自分から、でありますか?」
ミン「何か気になることがあるんだろ?」
ソーマ「えっ?」
セルゲイ「む? そうなのかね」
ソーマ「えっ、ええ、まぁ、気になるといえば、気になることが…
    私事の些事ですので…少し出てきます」
セルゲイ「うむ」
ミン「ケータイはちゃんと持っておけよ」
ソーマ「はっ!」カッ!
店員A「てんちょ~、商工会のノベンタさんから御電話っす~」


 ざわざわ…
ソーマ「? 随分と人が多いな…」
 あれから数日。
 フェルトによれば、ティファの似顔絵は評判もよく順調とのことだった。
ソーマ「まぁそうなったらそうなったで、不安になるのは心配のし過ぎかな」
 苦笑してつぶやきつつ、平日ながら妙に人出の多い公園を突っ切る。

クリス「整理券はこっちでーーす!」
フェルト「今、三時間待ち…」
ソーマ「三時間?」
ジュリ「うわ~、どうする?」
アサギ「夜になっちゃうよ…」
エリカ「でもでも、08組のケルちゃんも、
    あの子に似顔絵描いてもらったら彼氏ゲットできたって…」
アサギ「うぐ…クリスマスまでには…クリスマスまでにはぁああああああ!」
ジュリ「シングルには辛い季節よねぇ…」シンミリ
エリカ「よしっ! すみませーん! 整理券くださいっ!」
アサギ「ぬおっ! 抜け駆けは許さんぞエリカ! アタシも!」
ジュリ「三人分ね!」

ソーマ「なんだかすごい騒ぎになってる…(汗」


388 名前:とある12月の風景・Cパート 2/4 :2009/12/09(水) 13:06:35 ID:???
ヤエル「…かけた?」
リアン「ヤエル、動いちゃだめよ」
ティファ「ふふっ、大丈夫…もう少し…はい、お待たせ」ピリリ…
アベド「ふわぁ…」
ダビッド「見せて見せて」
モシェ「………」
ヤエル「うわーーー! お姉ちゃん上手ねー」
ヨセフ「当たり前だろ」
マリナ「はい、皆、お姉さんにお礼を言いましょうね」
子供たち「「「「「「お姉ちゃんありがとー」」」」」」
ティファ「はい」
マリナ「本当に素敵な絵をありがとう。
    お代は…ちょっと細かいんだけど、いいかしら?」ジャラジャラ
ティファ「はい。 ありがとうございます」
マリナ「こちらこそ。 頑張ってね」
ティファ「はい」

ソーマ「順調みたいだな」
ティファ「はい」
フェルト「あ、ソーマさん」
クリス「順調すぎて大忙しよ。 ティファってこんな才能あったのね~」
フェルト「応援…頼んだ」
ソーマ「それなら、私に言ってくれれば良かったのに」
クリス「ソーマさんはお店のお手伝いもあるんでしょ?
    CBは今、暇なんだから任せてちょうだい」ドン
ルナマリア「あの~、整理券ください~」
クリス「あ、はいはい」
 まさか順番待ちが出る程とは思わなかったが、
 頼もしい助っ人のお陰でなんとかなりそうな気配ではある。
ソーマ「これなら大丈夫か…」

 しかし、その時であった。
チンピラA「おらおら、どけっ!」
通行人「きゃっ!」
キース「ちょ、次は俺の番…」
チンピラB「あ゛?」
キース「ひっ…」


389 名前:とある12月の風景・Cパート 3/4 :2009/12/09(水) 13:07:33 ID:???
ソーマ「お前は!」
 お約束のようにチビデブと痩せノッポの二人を引き連れて現れたのは…
ミケロ「げげっ! ソーマ・ピーリス! なんでお前がこんなところに!」
ソーマ「それはこちらの台詞だ。 ネオ・イタリアのGFが何をしている。
    ミケロ・チャリオット!!」
 赤毛をモヒカンにした、派手な身なりのガンダム・ファイター。
ミケロ「はん、俺は元々“こっち”の人間なんでね!
    この所誰かさんのお陰でランキングも下がっちまったから、
    真面目に本業に精を出してるんだよ」
ソーマ「貴様…」ジャリッ
ミケロ「おおっと! 仮にもGFが、民間人に手を上げていいのかな?」
ソーマ「なに?」
ミケロ「悪くすればライセンス剥奪、ガンダム・ファイトから永久追放だぜぇ?」
 元々の悪人面に、さらに邪悪な笑みを貼り付けて立つミケロ。
ソーマ「…だったらお前もそうだろう」
ミケロ「それが俺様は今、GFじゃありません」
ソーマ「なんだと?」
ミケロ「ライセンスを返上して、GFの資格は無いんだよ。
    ま、次の大会が始まったらまたライセンスを発行してもらうがな!」ケケケ
 書類の上では、今現在のミケロは一般人なのである。
 もし一般人の彼にソーマが手を出せば、それは立派な暴行傷害事件となる。
 ソーマだけがGF界から追放、重犯罪者として罰せられることになるのだ!
 まさに悪辣! まさに外道!

 だが。
ソーマ「それがどうした?」
ミケロ「…へ?」
ソーマ「ガルスキー師と、中佐が是非にと勧めるからGFの真似事もやった。
    だが、それは我が武を完成させるための手段の一つ!
    友の一人も守れぬならば、そんな資格、私の方からたたき返してやる!」
 ゴウッ!
 折からの木枯らしに煽られ、ソーマの長い銀の髪が舞う。
ミケロ「くっ!」
チンピラs「「あ、兄貴…」」
ソーマ「どうした、こちらはいつでもいいぞ」ゴゴゴゴ…
 何やら怪しげな効果まで背負い、やる気、否むしろ殺る気?が満々のソーマ。
ミケロ「へ、へへへ…誰がテメェなんぞとまともにやるかよ。 俺の必殺技を忘れたか?」
ソーマ「銅だか錫だかの足がどうかしたのか」
ミケロ「銀だ銀!勝手に安い金属にするんじゃねぇ!
    …と、とにかくだ、俺の銀色の脚は飛び道具だ。
    射程距離はこの小汚ねぇ公園全てを納めて余りある」
ソーマ「だからどうした。 あんなタメの大きな技、目の前で打たれても十分かわせるぞ」
ミケロ「はん、そいつは止めた方がいいな。 でないと、後ろのお嬢ちゃんが真っ二つだぜ」


390 名前:とある12月の風景・Cパート 4/4 :2009/12/09(水) 13:08:49 ID:???
ソーマ「!!」
ミケロ「ま、今をときめくソーマ・ピーリス様なら、俺の衝撃波を打ち落とそう、
    なんてこともやりかねねぇからな。 的は俺の好きに選ばせてもらうぜぇ」
 攻撃対象は、この時公園に集まった人々全て!
 とても一人で守りきれるものではない。
 ならばミケロが技を出す前に一撃で倒すしかないが、
 曲がりなりにもガンダム・ファイト世界大会の決勝に進んだ男である。
 過去の対戦からソーマの間合いは把握済みであり、
 彼女が一足で踏み込める距離には決して近付こうとはしなかった。
ソーマ「貴様…」
ミケロ「ヒャーーッハッハァ! オトモダチが多いと大変だなぁ? ええ?」
 勝ち誇るミケロ。
 事実、戦略レベルでの勝負は決したと言ってもいい。
 ただし――――
ティファ「ソーマさん」クイクイ
ソーマ「ティファ?」
 それはあくまでソーマとミケロの間での話―――
ティファ「大丈夫です」ニッコリ
 気負いの無い、柔らかい笑顔で少女は言う。
ソーマ「しかし!」
ティファ「大丈夫」
 言って、進み出るティファ。
ミケロ「どうやら話は分かるみたいだな。
    さて譲ちゃん、いったい誰に断ってここで商売してるんだ? ああン?」
ティファ「………」
ミケロ「おい、聞いて――」

セルゲイ「この場合、どのような所の許可が必要なのですかな?」
ブシドー「概ねケース・バイ・ケースで異なるものだが…
     自治体、警察、後はこの場所の管理責任者――と言った所ですかな」
ミケロ「…へ?」
アルゴ「………」ベキボキパキ

Dパートにつづく。

もう少しですのでご容赦を。

393 名前:とある12月の風景・Dパート 1/4 :2009/12/09(水) 14:01:29 ID:???
ソーマ「中佐! それに…」
 ざざざっ!
 モスグリーンの、揃いのスタジャンとベレー帽に身を包んだ精悍な男たちが、
 あっという間に周囲を取り囲む。
 南口商店街では知らぬ者の無いNPO、自警団「ワイルド・ベア」
 ―通称「荒熊小隊」の猛者たちである。
クリス「わぉ♪」
 退役、あるいは予備役の軍人が中心となって活動する彼らは、
 もう一方の雄、北口商店街自警団「ポーラ・ベア」の面々に比べれば小柄
 ――彼らの体格が規格外ではある――だが、鍛えられた者だけが持つ、
 その精強さは決して劣るものではない。
ミン「確認が取れました。 町会に書面で正式な許可が申請、受理されています」
セルゲイ「うむ」
ブシドー「ちなみに警察からの認可も下りている。
     エーカー警視正自ら書類を受領したのは確認済みだ」
セルゲイ「となると、残るは――」
クワウトル「うむ。 この娘御が管理人のワシの下へ直接出向いて来ておる。
      あまり良い場所を用意してやれなんだが、がんばっておるようだな」
ブシドー「さて、以上で少女が各方面に必要な“断り”を入れているのが
     実証された訳なのだが…」
セルゲイ「他に、誰に断る必要があるのか…」
クワウトル「じっくりと聞かせてもらおうではないか、お若いの!」ポム!
ミケロ「う…あ…(滝汗」
アルゴ「………」コキッ!パキッ!

ソーマ「副長、いつの間にこちらへ?」
ミン「お前が店を出たすぐ後だ。
   ノベンタさんからこの公園に人が集まっているから、
   見回りを強化してほしいと頼まれて、な。
   丁度その時に要警戒対象――まぁあそこのイタリア人だが、
   ヤツもこの公園に向かってるって情報も入ったから、非常呼集だ」
ソーマ「………私は呼ばれておりませんが」
ミン「ま、一番の理由は団長がお前をマフィアに関わらせるのを嫌がったからなんだが…
   お前がここに来てるのは判っていた。
   下手に知らせるよりはうまく時間を稼いでくれただろう?」
 厳格な性格のスミルノフ麾下とは思えないほど、絵になるウィンクを返すミン。
ソーマ「お見通しでしたか…」
ミン「これでも俺は中佐の一番弟子だからな。 それくらいは読めるさ」


アレルヤ「出そびれた…出そびれてしまったよ、ハレルヤ…」orz


394 名前:とある12月の風景・Dパート 2/4 :2009/12/09(水) 14:02:30 ID:???
アッガイタソ「うきゅ!」∋[数日後]

ソーマ「そうか、今日で終わり…か」
ティファ「はい」
クリス「もったいないなぁ」
フェルト「せっかく評判良かったのに…」
ティファ「目標はずいぶん前に達成できましたから…期末試験もありますし」
フェルト「う゛」
クリス「うはは、学生は大変だねぇ」
ティファ「皆さん、本当にありがとうございました」
ソーマ「なに、あまり役に立ったとは言えないからな」
クリス「そーそー。 困った時はお互い様だし」
フェルト「うん…」
ティファ「それで、あの…これを」
 そう言って、ティファが差し出したのは筒状に丸められた画用紙。
 本来であれば現金をあつかった以上、スタッフ料を支払おうとしたティファであったが、
 一同はこれを断固拒否。
 押し問答の結果、後日『M&S』でのスイーツ食べ放題と言うことで決着はしたのだが…。
ティファ「受け取って…いただけますか?」
フェルト「わぁ…」
 フェルトが受け取った画用紙を広げると、彼女自身が朗らかな笑顔で出迎えた。
クリス「やたー! ティファちゃん(画)の似顔絵!」
ソーマ「む…私はこんな顔をしているか?」
フェルト「うん…時々…」
ソーマ「そ、そうか…(照」
クリス「やー悪いわねー」ホクホク
フェルト「?」
ティファ「あと、これを…」
フェルト「??」


ラッセ「んで、これがその似顔絵か?」
イアン「ほう、誰だこの美人は?」
 ソレスタル・ビーイング日本支部のリビング・スペース。
 情報待ちの待機状態は尚も続いており、暇を持て余したメンバーは、
 フェルトとクリスの持ち帰った似顔絵に集まった。
クリス「ちょっとイアンさん、それどーいう意味よ!」ケリケリ
リヒティ「ちょ、落ち着くっす!(後でこっそりコピーするっす…)」
イアン「わははは、すまんすまん」


395 名前:とある12月の風景・Dパート 3/4 :2009/12/09(水) 14:03:39 ID:???
スメラギ「なるほどねぇ、これがあの、伝説の…」
フェルト「伝説?」
クリス「あれ、フェルトしらないの?」
フェルト「え?」
クリス「何でも、ティファちゃんに似顔絵描いてもらったら、
    イケメンの彼氏ができるって噂。 けっこう有名よ?」
リヒティ「なんですと?」
 青くなるリヒティと、ふるふると首をふるフェルト。
アニュー「あの、それって男の人が描いてもらっても、ですか?」
ニール「うげ…」
ライル「なんの呪いだよ、そりゃ」
クリス「さぁ…あ、そう言えば、モテなさそーな男どももいたわね…」
モレノ「じゃあ、男の場合は彼女ができるって噂なんだろうなw」
ティエリア「くだらん」
一同「「「「(ティエリアの場合はどっちが…)」」」」

ラッセ「けど、なんだってそんな噂が流れたんだ?
    フェルトたちが客寄せに噂話を使ったとも思えんが」
 言われて思わず手をたたくフェルト。
フェルト「その手があった…」
クリス「さぁ…でも、ティファっちが似顔絵描きしてたのって二週間くらいなのよね。
    デマにしちゃずいぶん浸透してるのよ」
スメラギ「それは、この絵が理由…と言ってもいいのかしらね」
クリス「ほい?」
刹那「それはどう言うことだ、スメラギ・李・ノリエガ
スメラギ「簡単なことよ。 御覧なさいなこの似顔絵」
 言いつつ、二枚の似顔絵を並べてみせる。
ニール「良く描けてるとは思うが…」
イアン「そうだな。
    フェルトもこの絵くらい普段から笑ってると、もっとモテるんだがなぁ」
フェルト「う…」
スメラギ「それよ」
クリス「へ? どれよ」
スメラギ「つまり、この似顔絵には、その人の一番いい笑顔が描いてあるのよ。
     彼女の絵描きとしての実力なのか、
     生まれついての特殊能力故なのかはわからないけど…
     これだけ出来のいい似顔絵なら、たいていの人はどこかに飾っとくものでしょ?」
モレノ「ふむ。 毎日お手本になる絵を見せられれば、自然と笑顔も出せるようになる」
イアン「そうすりゃ魅力もぐぐっと上がる」
ラッセ「晴れてめでたく恋人をゲット、と…そういうわけか?」
ニール「人気も出るわけだ、そりゃあ…」


396 名前:とある12月の風景・Dパート 4/4 :2009/12/09(水) 14:05:10 ID:???
クリス「こう? こんな感じ?」ニッコリ
リヒティ「そ、そんなことしなくても、ク、クリスは、その、充分きききき綺麗っす!」
クリス「えへへ~、そう? それじゃ、明日はナンパでもしてくるかなぁ♪」
リヒティ「…へ?」
遠くのミレイナ「皆さーん、晩御飯ができたですぅ~!」
クリス「わーい! お腹ぺっこぺこよぉ」パタパタ…
フェルト「リヒティ…」
リヒティ「………」
男性陣「「「「「「………」」」」」」ポンポン

フェルト「アレルヤ」
アレルヤ「ん? なんだいフェルト。 みんなとリビングに居たんじゃないの?」
フェルト「うん…あの、これ、ティファから…」
アレルヤ「え? 僕にかい?」
 頷くフェルトから丸めた画用紙を受け取る。
 張られたメモには「ありがとうございました」と、丁寧な文字が並んでいた。
フェルト「アレルヤ、何かした?」
アレルヤ「えっ! い、いや、べべべべ、別に?」
ハレルヤ『ケケケ、マリー会いたさに日参してたの、バレてたんじゃねぇか?』
アレルヤ「(やっぱり、そうなのかな…)」
 そうして不埒な連中を人知れず(のつもりで)排除したことがあったのも確かだった。
フェルト「アレルヤ?」
アレルヤ「いや、うん…とりあえず、ありがたく受け取っておくよ」
フェルト「う、うん…」
 まだ少し納得のいっていない様子のフェルトを残し、自室へ戻るアレルヤ。
ハレルヤ『けど、どうするんだ?これ。 手前ぇのツラ見て喜ぶ趣味なんてねぇぞ?』
アレルヤ「でも、せっかくのご好意って奴だからね」
 苦笑しながら画用紙を広げるアレルヤ。
アレルヤ「!!」
ハレルヤ『ハハッ! こいつはサプライズって奴だなァ、アレルヤァア!』

 そこには、はにかみを含んだ柔らかい笑顔の少女。
アレルヤ「ソーマ・ピーリス? いや、これは…」
 ティファの手による似顔絵に、後から書き足したらしい、サインペンのフキダシ。
 丸みを帯びたやわらかい字体でそこには――
『見回りご苦労さまでした(はぁと』



絹江『本日未明、○×町■番地のビルが、サテライト・キャノン級の大出力ビームを受けて
  ミンチよりひどいことになる事件が発生しました。
   当局の調べでは、現場のビルはマフィア系列の組織がアジトとして使用していた、
   との情報もあり、他の組織との抗争によるものとの見方が強まっています。
   復活したリーダーと思しき男性は「もういやだ」「おうちに帰る」などと
   錯乱しており、警察では男性の回復を待って詳しい事情を聴取する方針です。

   CMの後は、ジオン幼稚園で行われた餅つきの様子を―――』

おわり

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最終更新:2014年06月04日 19:31