536 名前:咆哮哀歌 :2010/05/19(水) 21:15:45 ID:???
まず最初に。
すみません、長いです。
ですので、うっとおしいと思われる方は、
名前に↑のタイトルをつけてますのでNG登録をお願いします。
1章が4レス分(例外アリ)、13章あります。
連投規制回避もあるので一度に大量の投下はしないつもりですが。

それと、今回はとある作品のエピソードをここに混ぜるとどうなるかと言うコンセプトで始めました。
ですので、原作つきです。しかも許諾を得ずに勝手にやってます。
ご存知の方にはネタバレになってしまいますが…

 こやま基夫先生、並びに先生と先生の作品のファンの方々、ごめんなさい! <(_ _)>


ご笑納頂けると幸いです。
では、開幕でございます。




537 名前:咆哮哀歌 1-1/4 :2010/05/19(水) 21:16:48 ID:???
カロッゾ「ふはははは、シーブック君、遅くまでご苦労だった。
     今日はもう上がってくれたまえ」
シーブック「あ、はい。 お疲れ様でした」
カロッゾ「うむ。 また、明日もよろしく頼む」
シーブック「はいっ! お先に失礼します!」
セシリー「お疲れ様。 帰りに寄り道しちゃだめよ?w」
シーブック「小学生じゃないんだから。 じゃ、明日学校で」
 にこやかに手を振るセシリーに手を振り返し、
 コックコートを脱いだシーブックは駐機場のF-91へと向かう。
シーブック「ん… やっぱりまだ夜は涼しいなぁ…」
 十三夜の月が、雲間に静かにたたずんでいる。
 孤独と静寂…わずかばかりの贅沢を満喫したシーブックは、膝を付いた愛機によじ登る。
 手馴れた動作で待機状態から起動状態へ。
シーブック「シーブック・アノー、F-91、出るっ!」
 小型、軽量の機体に大推力のエンジンというシンプルなコンセプトで、
 非変形機ながら飛行性能を得たF-91は空へと舞い上がる。
シーブック「ロランのヤツ、晩飯とっといてくれてるかな…」
 まだ新しい商店街からは、ガンダム家のある旧市街までやや距離がある。
 シーブックは充分に高度を取ると、スロットルを押し込んだ。

 ペタ…ペタ…
 抜き足差し足忍び足。
 明かりの落ちたキッチンに、足音をしのばせる小さい影。
 冷蔵庫の前にたどり着いた人影は、一度周りを確かめると業務用にも使えそうなその扉を開ける。
 がちゃん!
 ビン類――飲み物や調味料に並んでアンプルや点滴瓶が混じっているのがこの家の特徴であろうか。
ステラ「しーーっ」
 意外に響いたその音に、思わず人差し指を立てる少女。
 ごそごそ…
ステラ「うぇい♪」
 戦利品に相好を崩すと、ジャンパーの懐に押し込み冷蔵庫を閉じる。
 ペタリ…ペタリ…
 再び忍び足で台所を後にするステラ。
ステラ「ん~~~」ギュウ
 ブーツに足を押し込むと、下駄箱の陰に拳銃やマシンガンと共に置いてある
 鞘付きのナイフを取り上げて腰の後ろに固定。
 かちゃん… トタトタトタ……
 静かに玄関を開け閉めすると、軽快な足音を響かせて走り出す。
スウェン「………」
 階段の影で気配を殺していたスウェンは、ショルダーホルスターに拳銃を押し込み、
 肩に担いでいた革ジャンに腕を通した。



538 名前:咆哮哀歌 1-2/4 :2010/05/19(水) 21:17:51 ID:???
シロー「あれ? エーカー警視正、まだ残っていらしたんですか?」
グラハム「ん? アマダ警部補…本庁から例の資料が届いてね」
シロー「例の…あぁ、連続ザク襲撃事件の…」
グラハム「そうだ。 この町はジオンのお膝元と言うこともあって、ザク乗りも多い。
     犯人が足を伸ばしてこないとも限らないからな」
シロー「かなり広範囲に活動しているとか」
グラハム「ああ。 広域の方では複数犯による犯行の線を強くしているそうだが…」
シロー「警視正は、単独犯だと…そう思われていらっしゃるんですね?」
グラハム「“手”がな…例え同じ剣であっても、使う人物が異なれば、切り口はおのずと異なる。
     逆に言えば…」
シロー「切り口…破砕痕が同じなら、同一犯…
    ですが、事件は一晩で200Kmも離れた場所で起こった例もあります。
    いくらMSを使った犯行とは言え、離れすぎていませんか?」
グラハム「アマダ警部補。 一夜に四パーセクを駆ける、と言う存在を聞いたことはないかね」
シロー「はあ? 四パーセク…ですか? …それ、光速を超えてるじゃないですか」
グラハム「ふむ…君ならあるいは、と思ったが…そうか、アムロ氏は話していないのか…」


バーニィ「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ…」
 緊張のために呼吸が浅くなっているのが自分でも判る。
バーニィ「くそっ、何なんだよ、アイツはっ!」
 正面のモニターはほとんど黒一色である。
 いかに実用MS第一号のザク直系とは言え、バーニィの機体は最後期型の06FZ。
 電子装備は一線級の機種にも劣らず、もちろん光学増感も充分実用レベルの物が装備されている。
 だが、メインカメラ―――ザクの外見的特長であるモノアイそのものを破壊されては、
 まさに目隠しされたも同然である。
 サブカメラの映像をモニターに表示させてはいるものの、こちらには暗視機能などない。
バーニィ「!!」
 それは、具体的な“何か”では無かった。
 ただ、心の奥にある“モノ”――偉い学者様は生存本能、などと呼ぶのだろう――それが命ずるままに
 バーニィは操縦桿を跳ね上げて、ザクを倒れ込ませる。
 ガァァァァン!
 ザクの転倒音とは明らかに異なる轟音が、一瞬前まで立っていた場所から響いた。
 何者かの攻撃。
 それは確かであるのに、襲撃者の位置も、ましてや手段すら不明である。
バーニィ「火器でもビームでも、ヒート系でもない武器? なんなんだ?」
 伊達に何度もガンダムに挑み、撃墜されてはいない。
 当人も自覚していないが、バーニィの中に蓄えられている経験値は、古参兵のそれすら凌駕する。
 遥かな高みに挑み続けたが故に得た力。 それがバーニィの命運をかろうじて繋ぎ止めていた。



539 名前:咆哮哀歌 1-3/4 :2010/05/19(水) 21:18:55 ID:???
 襲撃者は奇襲の初撃で躊躇なく頭部を狙っていた。
 メインカメラをはじめ、電子装備の詰まった頭部は、MSにとってもやはり急所の一つである。
 コクピットを含む胴部は融合炉を内臓していることもあり、堅牢さにおいては比類なし。
 それに対し頭部は幾分脆弱であり、破壊に成功すれば電子装備の過負荷による、
 コンピューターのシャットダウンが期待できる。
 だが、MSは高速で移動する上に、的が小さいこともあり、
 狙って破壊できるのはそれなりの腕がなければ不可能であった。

 もちろんガンダム・パイロットたちはその技量を持ち合わせており――
バーニィ「ぐっ!!」
 幾度と無く頭部を吹き飛ばされてきたバーニィも、その防御方法は熟知していた。
 メキッ!
 とっさに頭をかばったショルダーシールドは、しかし、強烈すぎる一撃に悲鳴を上げる。
バーニィ「左肩の間接が限界… くそっ!このままじゃぁ…」
 その時である。
 ギィィンン!
バーニィ「ビーム発射音? この音…」
 ギィィンン!
バーニィ「ヴェスバー…シーブックか!」
シーブック『バーニィさん! 3時方向に離脱してください!』
バーニィ「すまない! 敵はGFクラス!」
 レバーを操り、ペダルを蹴飛ばす。
バーニィ『近接主体で、姿がまともに見えないくらい速い!』
シーブック「しかも、地形を使うのも上手い…」
 ヴェスバー2門による長距離掃射はことごとくかわされ、廃工場の建物に回りこまれた。
 熱源センサーも補足しきれず、ターゲットを見失う。
シーブック「そのための近接型か…廃熱装置がかなり特殊なステルスタイプだな…」
 ビームは元より、火薬式の砲やレールガンなどもその発する熱は相当なものになる。
 これらを排することで、デュオのデスサイズや二コルのブリッツなど、
 特殊装備を用いた機種とは正反対のステルス性を獲得しているのだ。

シーブック「大丈夫ですか、バーニィさん」
バーニィ『俺は大丈夫だけど…コイツがな。 警告ランプが点きっぱなしだよ』
シーブック「被害は?」
バーニィ『メインカメラと武器をやられた。 悪いけど援護はできない。
     あとは予備もつかってだましだまし…シーブック!』
シーブック「(ピキィィン!)後ろ!?」



540 名前:咆哮哀歌 1-4/4 :2010/05/19(水) 21:20:00 ID:???
 MSが移動した気配―具体的には影や音などを知覚できなかった。
 襲撃者はまんまとF-91の死角に回り込み、自身を砲弾に変えて跳躍したのである。
 機体を切り返すシーブックであったが―
シーブック「間に合わないっ!」
 とっさにビームシールドを展開するが、攻撃態勢だったことが仇となり、
 主要機関、特に頭部を庇い切れない。
 左腕を捨てて受けきれば――
バーニィ『あたれっ!』
 ガンッ!
 シーブックが覚悟を決めた瞬間、風を切って飛来した金属塊が、襲撃者を直撃。
 千金にも値する僅かな隙を作り出した。
バーニィ『どうだ! アムロさん直伝のシールド・アタック!』
 それまでの攻撃で外れかかっていた左肩のシールドを、
 無理やり引き剥がして投げつけたのである。
シーブック「そう言えば、アムロ兄さんも無茶なシールドの使い方するよな…」
 ビームライフル、ビームランチャー、ヴェスバー×2、頭部バルカン×2、
 胸部メガマシンキャノン×2、全火力兵装アクティブ!
シーブック「いけっ!」
 ドウッ!!
 戦艦すら撃沈しかねない火力を叩きつけられ、襲撃者は4分されて地に堕ちる。
バーニィ『やった! さすがシーブック!』
シーブック「………」
バーニィ『シーブック?』
シーブック「やられた…」
 最も大きな残骸の傍らに降り立ったF-91がサーチライトを点灯。
 その光に照らされて浮かび上がったのは――
バーニィ『モビル・ワーカー!?』
シーブック「たぶん、そこの工場で使われてた機体でしょう」
バーニィ『変わり身ってやつか? シュバルツさんみたいなことをやる奴だな…』
シーブック「あながち…外れてはいないかもしれませんよ…」
 月を覆っていた雲が晴れる。
シーブック「バーニィさん…」
バーニィ『ん? どうし… !!』
 空には十三夜の月。
 その光を背に受けて、廃工場の屋根の上に、地上のMSを睥睨する一つの影。
バーニィ『四本足? でも、バクゥ系ともガイアとも違う…』
 それは、狼を思わせる四脚型のMSだった。
 ヴィン!
 逆光の影の中で、モノアイが輝く。

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最終更新:2014年08月06日 19:33