546 名前:咆哮哀歌 2-1/3 :2010/05/20(木) 01:09:58 ID:???
540の続き
ピュウゥピュウゥピュウゥ――
警官「はい、被害者は
バーナード・ワイズマン、19歳(ry」
シロー「すまん! 通してくれ!」
回転灯が煌く中を、シロー・アマダは慌てた様子で走り抜ける。
シロー「シーブック! バーニィ!」
シーブック「あ、兄さん」
救急車の側で所在無さげに紙コップのコーヒーをすすっていたシーブックが手を上げる。
その傍らでは、バーニィが救急車のストレッチャーに腰掛け、
女性救護員に包帯を巻かれてやに下がっていた。
シロー「無事か! 怪我はっ!」
シーブック「俺は完全に無傷。 最後にちょこっと割り込んだだけだからね」
救護員「こちらの方も怪我のほとんどは打ち身です。
三日もすれば治りますよ」ポン
バーニィ「ど、どうも…(//」
シーブック「あんまりデレデレしてると、クリスに言いつけるぜ?」キシシ
バーニィ「なんとぉーー!」
シロー「そうか…無事でよかった…」
とりあえずは元気な二人の様子に安堵のあまり、ひざを着きそうになるシロー。
その頭上を飛行形態のカスタム・フラッグがフライパスした。
シーブック「お、フラッグ」
シロー「エーカー警視正のカスタム・フラッグだな」
現場を確認するように旋回したフラッグは、現場を荒らさないよう外れに
集められていた車両群の上空で変形し、鮮やかなタッチダウンを披露する。
バーニィ「すげぇ…生グラハム・スペシャルだよ」
シロー「また、無駄に高等技術を…」
などとシローがつぶやいているうちに、ワイヤー・リフトで地上に降り立ったグラハムは、
行き交う警官たちの敬礼に応えつつ、まっすぐシローの元へ歩み寄る。
シロー「おつかれさまです!」ビシッ!
グラハム「ご苦労。 二人とも、怪我の方は大丈夫かね?」
シーブック「はい。 俺は無傷ですし…」
バーニィ「俺は、打ち身だけです。 シーブックのお陰で助かりました」
グラハム「それは何よりだ。
しかし…ステルス型の高機動MS…思った以上に厄介だ」
シロー「では…」
グラハム「ああ。 残念ながら振り切られた。
東の山岳部に潜んでいるんだとは思うが…さすがに月明かりだけでは探しきれん。
現状では付近を封鎖するだけで精一杯だな」
547 名前:咆哮哀歌 2-2/3 :2010/05/20(木) 01:11:36 ID:???
シーブック「何者なんでしょうね。 機動性ならGFの
ガンダムに匹敵するくらいでしたし…
しかも四本足となると、かなり特殊な機体だと思うんですけど」
グラハム「…実は、まだ確証は無いのだが」
シロー「警視正、捜査機密を一般人に…」
グラハム「奴と相対して生き残った数少ないパイロットだ。
オブザーバーとしてその意見を聞くことは捜査上、十分な意義がある。 違うかね?」
シロー「それは…そうですが」
グラハム「というわけで、これは他言無用を厳守してもらいたい」
一応だがね、とウィンクするグラハムと、うなずく二人。
グラハムは小型のホログラムモニターを取り出し、画像を表示させる。
そこには、無残に切り刻まれ、地に伏すザクの姿があった。
グラハム「三日…いや、もう四日前だな。
某所の郊外で、ザクが襲われると言う事件があった。
これはその最初の犠牲者だ」
シーブック「最初の?」
グラハム「そう。 この日だけで三機のザクが襲われ、基幹パーツを強奪されている。
パイロットは全員見るも無残な姿にされていたそうだ」
バーニィ「そんなに!?」
シーブック「そんなの、ニュースじゃ…」
グラハム「一件ごとの事件現場が離れすぎていた。
この三件では、犯人は合計で80Kmを移動している。
警察もマスコミも、この事件を関連のあるものと思っていなかったのだよ」
バーニィ「あ! そういえば、バンスポにそんな記事が…」
グラハム「そう、いわゆる“疑惑”記事が正鵠を射てしまったのさ。
正しく嘘から出た真、だな。
斯く言う私も、現場写真を実際に見てみるまでこれらの事件を
結びつけようとも思わなかったのでね。 まったく汗顔の至りだ」
バーニィ「その犯人が…」
グラハム「と、私は睨んでいる。 そろそろ鑑識結果が出るころだが…」
遠くのハワード「隊長!」
グラハム「どうやら出たようだな。 こっちだ!ハワード・メイスン!!」
仕立ての良いスーツ姿のハワードが、マニラ封筒を手に駆け寄る。
ハワード「お待たせしました、隊長」
グラハム「休暇中にすまんな。 デート中だったのか?」
ハワード「は? ああ、この格好ですか? 知人に食事につき合わされたんですよ。
いろいろあって断り辛い相手でしたので… それで、結果は?」
グラハム「ビンゴだ」
548 名前:咆哮哀歌 2-3/3 :2010/05/20(木) 01:13:21 ID:???
グラハム「切断面に一切の付着物無し…」
バーニィ「えっ? ガンダリウム合金ほどじゃないにせよ、
ザクの装甲はチタン・セラミック複合材ですよ?
切りつけた刃物の微細粉くらい…」
シーブック「…PS装甲」
グラハム「その通り。 犯人の得物はPS装甲材でできた四本爪のクローだ。
ビームサーベルやヒートエッジのような切断力はないが、
折れず、曲がらず、刃こぼれも無い。 刃物としてはある意味理想的だな」
ハワード「ですが隊長、それでは犯人は、ただの刃物でザクの装甲を切断した、と?」
グラハム「不可能ではあるまい? ガンダム・ザ・ガンダムなら
それくらいやってのけると聞いているが?」
シロー「ええ、まぁ…」
シーブック「あははは…確かに、ドモン兄さんならそれくらいは―
って、つまり、犯人はドモン兄さんクラスの達人ってことですか!?」
グラハム「ふむ…私の見たところ、ドモン・カッシュほどの技量は無いようだが…
それでも
シーブック君の駆るF-91から逃げおおせているんだ。
侮っていいレベルではないな。 だが…」
バーニィ「?」
グラハム「そんな相手に、ほぼノーマルの06FZで生き延びるとは、
さすが最強のザク・ファイターだ」ポム
にこやかにバーニィの肩を叩くグラハム。
バーニィ「さ、最強って!」
グラハム「謙遜しなくてもいい。
ザク乗りは数あれど、今の君ほどザクを乗りこなせる人間はいまい」
バーニィ「あはは… あ、ありがとうございます」
グラハム「フラッグに乗り換えたいと思ったらいつでも言ってくれ。 相談にのるぞ」
ハワード「隊長…」ワルイビョウキガ…
最終更新:2014年08月06日 19:33