570 名前:咆哮哀歌 7-1/4 :2010/05/20(木) 15:12:04 ID:???
サンダース『うおっ!』
カレン『サンダース!』
シロー「!!」
 とっさにライフルを向けるシローとカレンだったが、
 足を掬い上げられ、体勢を崩したサンダース機が間にあるため引き金が引けない。
サンダース『隊長! 撃ってくだs…うおおおっ!』
 “四本足”はそのまま陸戦型ガンダムの足を引きずると、全身をつかって振り回し始めた。
カレン『なんてパワーなの…』
シロー「カレン、援護しろ!」
 言うが早いか、ライフルを投げ捨てたEz-8はサーベルを引き抜いて走り出す。
 そこへ、“四本足”は振り回していた陸戦型ガンダムを投げつけた。
カレン「なっ…」
サンダース「なっ!」
シロー「なんとおおーー!」
 MSの黎明期とも言える時代に開発された陸戦型ガンダムの機体重量は52.8t。
 新素材の開発、使用により軽量化が進む最新のMSに比べれば数倍する。
 それを振り回し、あまつさえ放り投げるなど、
 サイコガンダムやデストロイガンダム等の超巨大MSでも可能であったかどうか。

シロー「くそっ!」
 Ez-8がビームサーベルを投げ捨て、正面から陸戦型ガンダムを受け止める。
 轟音と、そして衝撃。
サンダース『がっ!』
シロー『うわああっ!』
カレン「隊長! サンダース!」
グラハム『巡査部長!』
カレン「えっ?」
 敵性MSに対し、目を切ったのは一瞬だった。
 だが、目を戻した時には―

 ヴィン!

 モニターいっぱいに、モノアイの光が映る。
カレン「くっ!」
 とっさに操縦桿を操るカレンであったが、鈍い音が頭上から響き、
 次の瞬間にはモニターがすべてブラックアウトしてしまった。
 頭部粉砕による回路過負荷。
 バランサーも機能を失い、カレンの陸戦型ガンダムはゆっくりと地面に倒れこんだ。

シロー『カレン! くそっ、おい、サンダース! 聞こえるか!』
 サンダース機のコクピットにシローの声が響くが、
 パイロットの巨漢はぐったりとしたまま動かない。
 ヘッドギア越しとは言え、衝撃でシートのヘッドレストに後頭部を殴られたのである。
シロー『サンダース!』

グラハム「歴戦パイロットの駆る5機が、こうも容易くっ!」
 グラハム・エーカーの専用カスタムフラッグが、空中でMSモードへ変形、
 弾体を撃ちつくしたライフルを捨て、プラズマソードを引き抜きながら降下した。


571 名前:咆哮哀歌 7-2/4 :2010/05/20(木) 15:13:26 ID:???
シロー「サンダース、借りるぞ!」
 Ez-8の左手端子を陸戦型ガンダムのバックパックに接続、上位者コードで以てサーベルラックを開く。
 投げ捨てた自機のサーベルの代わりにそれを引き抜いて、Ez-8は立ち上がった。
グラハム『警部補、いけるか?』
シロー「はっ! 駆動系に若干の赤ランプはありますが…まだ無理は利きます!」
グラハム『ふっ…頑丈な良い機体だな!』
シロー「自分の、相棒ですから!」
 ドン!
 ロケットモーターとジェットエンジンが唸りを上げ、二機のMSが“四本足”に突進する。
 盾をかざして一直線に突き進むEz-8と、それをブラインドにすばやく機体を切り返す漆黒のフラッグ。
シロー「うおおおおおっ!」
グラハム「ちえすとぉぉぉぉ!!」
 裂帛の気合と共に振り下ろされるビームサーベル。
 軽やかなサイドステップでかわす“四本足”だが、
 そこへさらに二本のプラズマソードが追い討ちをかける。
グラハム「なんとっ!」
 必殺と思われた連撃だったが、“四本足”はそれすらバックステップでかわして見せた。
シロー「まだまだぁ!!」
 大重量を支えるパワーにものを言わせて機体を立て直したEz-8は、
 さらにビームサーベルを切り上げる。
グラハム「(逃げ場は上のみ!)」
シロー「(空中戦なら警視正のフラッグが有利っ!)」
 シローの狙いを読んだグラハムは愛機を上昇させる。
 だが。
シロー「下だとっ!」
 下から切り上げるEz-8のビームサーベルをものともせずに“四本足”は体を伏せさせる。
 ビームの先端が“四本足”の表面を焼き、電波吸収性らしき塗料を剥がすが…
 それだけだった。
グラハム「見切りとはっ!」
 かの剣豪、宮本武蔵は、額に貼り付けた米粒だけを斬らせることができたと言う。
 シローとグラハム、二人の名手をして計りきれなかった距離を、
 “四本足”は見切って見せたのである。

シロー「ぐっ!」
 ビームサーベルを振りぬいた体勢のEz-8に飛び掛る“四本足”。
 とっさにシールドをかざして受け止めるシローだったが、それこそが“四本足”の思惑。
シロー「俺を踏み台に!」
グラハム「狙いはこちらかっ!」



572 名前:咆哮哀歌 7-3/4 :2010/05/20(木) 15:15:28 ID:???
‐‐‐「―――ド、――大丈――― お―ハワード!」
ハワード「う…」
ダリル「ようやくお目覚めか、寝ぼすけ」
ハワード「ダリル? 俺は… ! 奴は!」ガバッ!
ダリル「ここには居ない。 おそらく08小隊と、隊長が戦っている筈だ」
 言われてハワードは、遠くから響く聞きなれたジェットエンジンの音に気付く。
ハワード「俺はどれくらい気を失っていたんだ?」
ダリル「さて、俺もさっき目を覚ましたばかりなんでな。
    まぁ何十分とは経ってないはずだが」
ハワード「お前もやられたのか…」
ダリル「ああ、なんとか足止めだけでもと思ったんだが…
    ありゃあ何者だ?」
ハワード「判らん。 隊長は何か心当たりがあるようだったが…
     ! そう言えば、ジョシュアは?」
ダリル「あっちだ。 機体はお釈迦だが、奴自身はピンピンしてるよ」
 巨漢が親指で示す先には、横たわるフラッグのコクピット・ハッチに
 不貞腐れた顔で座り込む男の姿。
ハワード「ジョシュア! 貴様…」
ダリル「お、おい、ハワード」
ジョシュア「…何か?」
ハワード「貴様、自分が幾つ服務規程を違反したか判っているのか!」
ジョシュア「…ちっ」
ハワード「貴様がフォーメーションを乱さなければ!」
ダリル「落ち着け、ハワード!」
ハワード「放せダリル! 今日という今日は…」

 その時であった。

 ゴウッ!

 一瞬、日輪をさえぎる影と、そして巨大なスラスターが吼える独特の飛行音。
ハワード「何っ!」
ダリル「あれは!」



573 名前:咆哮哀歌 7-4/4 :2010/05/20(木) 15:17:18 ID:???
 バキャン!
シロー『警視正!』
グラハム「堪えろよっ!」
 とっさにフラッグを横滑りさせたグラハムだったが、
 “四本足”はすれ違いざまにフラッグの右腕を肩からもぎ取った。
 衝撃と重量バランスの急変、無理な機動が祟ったフラッグは一気に失速、
 地面に叩きつけられるような勢いで落下する。
グラハム「ぐうううっ!」
 それでも左腕と両足を振り回したフラッグはメインノズルを地面に向けることに成功、
 地面効果もあり、かろうじて大地への激突を免れる。
シロー『ご無事ですか警視正!』
グラハム「心配無用!」

シロー「くそっ、バーニィの奴、こんなのに奇襲されてよくも…ぐうっ!」
 シールドに衝撃。
 “四本足”は、正確にカメラの死角を突いてくる。
 逆に言えば、姿を見失った瞬間には「そこ」にいると言うことである。
シロー「こっち!」
 幾度目か、振り下ろしたビームサーベルはしかし、やはりかわされ、
 その手を引き戻すよりも早く“四本足”が突進する。
シロー「うわあああああっ!」
 かろうじてシールドで防御するものの、体ごと吹き飛ばされるEz-8。
グラハム『警部補!』
 各部の異常を知らせるランプが一斉に点灯、コクピット内が真っ赤に染まる。
 ダメージ・コントロール・システムがフル回転して致命的な部分を優先して復帰させるが、
 赤燈が消えたのは一部だけ。
 不具合の出たシステムを切り離し、サイドパネルに腕を突っ込んで手動で回復を図るも、
 正面には身構えた“四本足”。
シロー「くっそおおおお!」

?????『やれやれ、もう少しゆっくりするべきだったな』
シロー「?」
グラハム『なっ!』
 不意に、眼前が塞がれる。
 それは、潮風にたなびくABCマント。
キンケドゥ『そうすれば、警察のMS乗りトップ2がいなくなってくれたんだが』
グラハム『キ…』
シロー「キンケドゥ!」
 盗賊団「クロスボーン・バンガード」リーダー、怪盗「キンケドゥ・ナウ」の駆る、
 クロスボーンガンダムX1が、そこにあった。


本日の投下はここまで。
続きは明日になります。

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最終更新:2014年08月08日 22:12