266 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/04/06(水) 11:33:05.71 ID:???
ウッソ「あー、家に僕しか居ないなんて、どれくらいぶりだろう」
     日曜の午後、今日は珍しくウッソ以外の家人が出かけているのであった。
     農作業(じゃがいもの植えつけ)を終えて、茶の間に伸び伸びと
     大の字になってぼんやりしていた。
ウッソ「広いな。たまにはこんなのもいいや」
     心地良い開放感に満たされて、ウトウトし始めたときだった。

     ピンポーン
ウッソ「ううんお客さんか。気持よかったのになぁ」

ウッソ「はーい、どちらさまですか。戸は空いてますよー」
     ガラと玄関戸を開けて入ってきたのはシーマ・ガラハウであった。
シーマ「あら、ウッソ坊やじゃないか。ロランじゃないんだね」
ウッソ「ロラン兄さんにご用事だったんですか?」
シーマ「いいや、コウに会いに来ただけさね。仕事でちょっとばかりイライラ
     することがあったからね。コウの顔を見て気晴らしでもってね」
ウッソ「すいません、コウ兄さんはアルと一緒に出かけてるんです」
シーマ「あらら、そりゃ残念だねぇ・・・。出直してきたほうがいいかね」
ウッソ「朝から出かけてますから、もうそろそろ帰ってくると思いますよ。
     良かったらお茶でも出しますから、ウチで待って待ちますか?」
シーマ「いいのかい?」
ウッソ「ええ、未来の義姉さんになるかもしれないんですから遠慮しないでくださいよ」
シーマ「ハハハ、嬉しいこといってくれるじゃないか坊や。じゃ、ちょいと居座らせてもらうよ」
ウッソ「茶の間でまっててください。すぐにお茶をいれてきますから」


267 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/04/06(水) 12:03:44.26 ID:???
シーマ「すまないね、手土産にたくさんお菓子を買ってきてるからお茶請けにしようか」

 シーマはもってきたデパートの袋からガンダム家ではめったに見られないような
 高級和菓子を取り出し、茶の間のちゃぶ台の上にふたり分置いた。
 一方、ウッソはロランの秘蔵の玉露を隠し場所から取り出し、手際よくお茶の用意を
 始めた。

ウッソ「こんな時じゃなきゃ飲めないもんな。シーマさんが来たって言えばロラン兄さんも
     許してくれるだろうし。今日はなんだか運がいいや」

 湯を沸かすまでの間、ウッソはなんとなく思った。

ウッソ(シーマさんはなんであんなにコウ兄さんのことが好きなのかなぁ)

 ウッソとしてはアムロやカミーユ、ロランのような女性(ロランは男性も)を惹きつける
 兄弟がいるせいなのか、コウのような地味めの男にご執心のシーマが少し不思議だった。

ウッソ「おっとお湯が沸いたな。茶飲み話に聞いてみようかな」


ウッソ「どうぞ、自分で言うのもなんですけど結構美味しく淹れられたと思いますよ」
シーマ「どれどれ……美味しいね、甘みがでてるよ」
ウッソ「ありがとうございます」

 二人はしばしお茶を味わい、和菓子に舌鼓を打った。

ウッソ「ところでシーマさん、前から気になってたんですけど……
     コウ兄さんのどういうところが好きなんです?
     こういうと二人に失礼かもしれないですけど、コウ兄さんって女性にモテるタイプじゃない
     と思うんです。」

268 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/04/06(水) 12:39:08.10 ID:???
シーマ「そうかい?」
ウッソ「ええ、パイロットとしては有能だし、大学ラグビーじゃチームのエースみたいですけど
     アムロ兄さんみたいに気がきくわけじゃないし、カミーユ兄さんやロラン兄さんのように
     強烈に見た目が良いって訳でもないし」
シーマ「実の兄の事を散々にいうねぇ、ハッハッハ」
ウッソ「あ、決してコウ兄さんが駄目な兄だと思ってるわけじゃないんです。
     ただ兄弟で一番猛アタックをかけられてるのがなんとなく不思議で…」
シーマ「そうだね、掻っ攫って行くのはあたし位だろうね」
ウッソ「はい、他にそんな人とそんな事される人は居ないなって」
シーマ「それでどんなところが好きかって話になるんだね」
ウッソ「ええ、良かったら教えてもらえないかなとおもって」
シーマ「そうさねぇ・・・」

 そう言うとシーマは庭先に顔をむけて、遠くを見るような目でしばらく黙っていた。

シーマ「あたしはね、昔はジオンの子会社に勤めてたのさ」
ウッソ「そうなんですか?女社長のイメージしか湧いてこないですけど」
シーマ「だれだって下積みの時期ってのがあるものさね」
ウッソ「それがコウ兄さんとどう関わってくるんです?」
シーマ「まあ、お聞き。少し思い出話も言わないと合点が行かない事なのさ」
ウッソ「わかりました」
シーマ「あたしがそこに勤めてた頃はね、自慢じゃないが仕事もできる結構いい女だったもんさ。
     ついでに会社の為なら何でもしてみせるって張り切ってた。
     だからかしらないけど上司に気に入られてね、コロニーひとつ分のおっきな取引に参加したのさ。
     コロニーのリフォームって言ったら分かりやすいかもしれないね。
     昼も夜もなく一所懸命働いたよ」
シーマ「あたしが任されてたのは主にコロニーの有力者や住民に説明会を開いて、リフォーム後にどうなるとか
     価格交渉なんかだね」



269 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/04/06(水) 13:10:02.11 ID:???クロノクル「このドッゴーラ改は全身が支援そのものなのだ!」

270 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/04/06(水) 13:14:43.97 ID:???
ウッソ「現場で指揮してたわけじゃないんですね。意外です」
シーマ「今は現場も交渉もきっちりしてるさ。
     でも当時は現場なんて自分の持分じゃないと思って大して気にしてなかったね。
     それが間違いだったのさ」
ウッソ「どういう事です?」
シーマ「交渉がまとまって、工事も終わってしばらくしてからのことさ。
     上司が雲隠れしちまいやがったのさ。会社の金を持ってね。
     それからすぐ取引先のコロニーにいろんな欠陥が有るってクレームが来だしたのさ。
     ”空気循環がうまく働かない”、”太陽光発電システムに異常”なんてね。
     それがどんどん酷くなって、そのコロニーは人が住めなくなるまでボロボロになっちまったのさ」
ウッソ「そんな・・・」
シーマ「本当に”そんな…”ってやつさ。責任者は雲隠れ、そして副責任者はあたしだったのさ。
     あの上司はあたしが現場を気にしないのを知ってて、それこそむちゃくちゃな手抜き工事を
     やりやがった。自分が雲隠れするまで持てば良かったんだろうね。
     あたしゃ全部の責任を負わされてクビさ。コロニーに住んでた人たちに散々罵倒されたよ」
ウッソ「そんなのおかしいですよ!!」
シーマ「ああ、おかしいさね。現場をほっておいたあたしもだけどね。
     それから大荒れに荒れて、人間不信もなったし危ないこともするようになっちまった」

 そこまで話して、シーマはお茶を注ぎ足し、ふうとため息をついた。

シーマ「そんなことがあったからかね。純真な、実直な、でも迂闊なとこもあるコウが昔の自分みたいでね。
     地味で迂闊で優柔不断でも根性が真っ直ぐなアイツといると、自分も昔に戻ったような気分になれるのさ」
ウッソ「そうなんですか…。なんだか嫌なこと思い出させちゃったみたいですね」

 そう言ってウッソはシーマに頭を下げてごめんなさいと言った。

271 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/04/06(水) 13:43:23.62 ID:???
シーマ「気にすることじゃないさね。昔のことさ」
ウッソ「そう言ってもらえるとありがたいです。
     コウ兄さんももっとシーマさんときっちり付き合ったらいいのにな。
     こんなにいい人なのに…贅沢ですよ」
シーマ「こんな年増に迫られて及び腰になるだけならあたしにとっちゃ十分だよ」
ウッソ「年増なんて!シーマさんはすっごい美人で魅力的ですよ!」
シーマ「ハッハッハッハ、ありがとうよ」

 そこまで話したところで玄関から「ただいまー」の声が二つ聞こえ、
 茶の間にコウとアルが模型店の袋を持って現れた。

コウ  「うわっ!シーマさん」
アル  「シーマさんだ。こんにちは!」
シーマ「こんにちは、おじゃましてるよ」
アル  「ねえねえ、シーマさんちょうど僕達ガーベラ・テトラのプラモ買ってきたんだ。いろいろ悩んだんだけど
     コウ兄ちゃんが今日はこれにしようって決めたんだ。     
シーマ「へえ」
コウ  「ええと、そのアルの好きなモノアイと実はガンダムって事でお互いの趣味が合うMSの一つかなと思った
     次第であのその他意は無いわけで・・・・・・・ゴニョゴニョ」
シーマ「わかってるよ。そんなに焦らなくてもいいじゃないか」

 言いながらシーマはコウの頭をワシャワシャと撫でながら、いつのもきっぷの良い笑いではなく、
 穏やかな微笑をした。

シーマ「じゃあ帰るよ。世話になったねウッソ坊や」
コウ  「え、もう帰るんですか?」
シーマ「もう用事は済んだんだよ。元気でいなよ」

 そう言って、シーマは普段通りの笑顔に戻ってからガンダム家を去っていった。

273 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/04/06(水) 13:59:57.38 ID:???
アル 「シーマさんも一緒にガーベラ・テトラ作って行ったら良かったのに」
コウ  「それは…うーん、まあ本人の愛機だし悪くはないかもしれないな。
     でも結局なんだったんだ?シーマさんらしくなかったなぁ」

 コウは腕を組んでクビをかしげた。

ウッソ「それはですね。コウ兄さんは幸せものってことですよ」
コウ 「なんだそれー、よけいわかんないよ」
アル 「わかんないよねー」
ウッソ「ハハハ、いつかきっとわかりますよ。
    それよりお茶飲みましょう、シーマさんが美味しい和菓子をお土産にくれたんです」

 ウッソはお茶を淹れなおしに台所に行きつつ、家族を愛してくれている人がいることを嬉しく思い
 今日はいい日だったなと思ったのだった。

    以上
  長文駄文失礼。

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最終更新:2015年01月31日 18:27