199 名前:新たな住人・前編 1/12 :2014/04/01(火) 19:07:55.32 ID:???
※注意
ビルドファイターズ
主人公の兄弟入り話です。気に入らない方や都合の悪い方は
パラレル扱いでよろしく。
前・中・後編全部あわせて36コマ予定なので、何回かに分けて投下します。今回はとりあえず5コマ。
ある日のこと。
「あなた、実は私たちの本当の子供じゃないの」
実の母(と思っていた人)から、真顔でそんなことを言われた。
あくまで真面目に。これは冗談ではないと悟り、少年は聞いた。
「じゃあ、僕の本当の家族は?」
すると、母は面白そうな笑みを浮かべて
「ガンダムさんの家よ。しばらくうちを出て、あの家に住みなさい」
母の言葉に恐怖と好奇と喜びが同時に湧き上がってきて、少年はとても複雑な顔をした。
ガンダム家の居間。たまの休日をのんびりと過ごしているアムロのもとに、ロランが封筒を持ってやってきた。
ロラン「アムロ兄さん。お父さんから手紙ですよ」
アムロ「親父から?」
差出人が自分の父であることを聞いて、アムロは顔をしかめた。
200 名前:新たな住人・前編 2/12 :2014/04/01(火) 19:08:45.43 ID:???
ロラン「なんでそんなに嫌そうなんですか…」
アムロ「…あの親からの手紙って言ったらな」
言いながら、封筒の封を切る。
アムロへ。
模型店のイオリさんのところに長らくお前の弟を預けていたんだが
しばらく実の兄弟たちと一緒に暮らしたいということなので家の場所を教えておいた。
兄としてしっかり面倒を見てやってくれ。それと養育費も入れておく。
たくさんあるからと無駄遣いはするなよ。
父より。
アムロ「ほ れ 見 ろ !」
ロラン「まあまあ、いいじゃないですか。養育費もきちんと入ってるみたいですし
兄さんだって、家族が増えて悪い気はしないでしょう?」
アムロ「それはまあ…だが無計画なのが気に入らん! 俺たちに押し付ければいいと思って!」
201 名前:新たな住人・前編 3/12 :2014/04/01(火) 19:10:27.24 ID:???
ロラン「ははは…ところで、養育費っていくら入ってるんでしょうね。たくさん入ってるらしいですけど」
アムロ「そうだな。ちょっと見てみるか…」
ロラン「そうしましょう」
数分後。
アムロ「ガロード! ツインサテライトキャノンであのバカ親父どもを吹っ飛ばすんだ!」
ガロード「無理無理無理! 無茶だってば!」
ロラン「大丈夫! あなたならイケます!」
ガロード「ロラン兄も何言ってんだよ! 無理に決まってるだろ!」
アムロ「そんな道理はお前の無理でこじ開けろ! グラハム警視正も言ってただろう!」
ガロード「できるわきゃねえだろおおおおお!」
ジュドー「どしたの、あれ」
ウッソ「養育費として一億ジンバブエ・ドルが入ってたらしいです」
シーブック「ジンバブエ・ドル!?」
202 名前:新たな住人・前編 4/12 :2014/04/01(火) 19:12:11.42 ID:???
マイ「これはまた…逆に珍しいものを。紙幣の収集家でもいれば、もしかしたら買い取ってくれるかもしれませんが…」
ジュドー「百円にすら届かないかもね」
アセム「養育費と言われてそんなもん入ってたら、怒るよな…」
それからしばらく経ったころ。
少年は今、ガンダム家の玄関前をうろついていた。
何しろあのガンダム家である。
この町でその名を知らない者はいないというほどに有名な一家で
高級機であるガンダム・タイプ(しかもコストダウン&;デチューンされたものでなくオリジナル仕様!)を
ほぼ全員が所持していて、所有者たちの技能も揃ってハイレベル。
これだけでも有名になる理由となるが、街のあちこちで起こる騒動に大体彼らが関わっていると言われているのも一因か。
家人も変人揃いらしく、胡散臭いうわさが絶えない。家にマッドサイエンティストが住み着いて日夜非人道的な実験を繰り返しているとか
庭や家の中に過剰ともいえるほどの罠を仕掛けていて泥棒どころかテロリストすらも侵入できないとか。
(…その割に、家は普通だよね)
203 名前:新たな住人・前編 5/12 :2014/04/01(火) 19:14:20.27 ID:???
見たところ、とても大きいが普通の家に見えた。あちこち補修された塀には様々な落書きがされていて
中にはペンキで塗りつぶされたようなもの、だいぶ昔に書かれたようなものまである。
噂に聞くようなとてつもない一家の家というにはいささか普通に思えた。
(まあ、入ってみなきゃわからないか)
家の前をうろついていても始まらない。少年は意を決して、家の呼び鈴を鳴らした。
ぴんぽーん
アムロ「…ン、
こんなことしてる場合じゃなかったな。はいはーい」
しばらく後。結局兄弟全員を巻き込んでのドタバタ騒ぎの末にアムロはようやく我に返った。
全員逃げたらしく、先ほどまでいた弟たちの姿はない。
セイ「…あの、ガンダムさんのお宅はこちらでよかったですか」
アムロが玄関を開くと、目の前に少年が立っていた。ウッソと同じくらいの年齢だろうか。ひどく緊張しているらしく、表情が硬い。
アムロ「ああ。…ひょっとして、君が」
セイ「はい! イオリ・セイ…じゃなかった、セイ・イオリ・ガンダムです。よろしくお願いします!」
205 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/01(火) 19:39:50.94 ID:???
デーレデーデデー(セイからレイジへ
エンブレムターン)
209 名前:新たな住人・前編 6/12 :2014/04/01(火) 19:55:40.82 ID:???
続き。5コマ予定ですが、運が良ければ中編の途中まで行けるかも?
アムロ「そうか。俺は
アムロ・レイ・ガンダム。この家の長男だ。よろしく」
大きな声で言ってくる少年に笑いかけ、アムロは右手を差し伸べた。セイも応じて手を差し出し、アムロはそれを握った。
セイ「よ、よろしくお願いします」
アムロ「…普通だな」
セイ「へ?」
特別な性質は何も感じない。邪気もなく、感じる限りではごく普通の少年だ。
アムロ「いや、独り言だ。気にしないでくれ。外は寒いだろ。入ってくれ」
言って、アムロはまだいささか緊張しているセイを家に招いた。
セレーネ「なに、兄さん。お客さん?」
階段の前を通ると、上からセレーネの声が聞こえてきた。
アムロ「ああ、セレーネ。ちょうどよかった。親父の手紙にあった弟が来たんだ」
セイ「アムロ兄さんの奥さん…ですか?」
アムロ「違う違う。お前の姉さんで、俺の妹さ」
210 名前:新たな住人・前編 7/12 :2014/04/01(火) 19:56:41.98 ID:???
聞いてくるセイを否定するようにアムロは両手を振った。そして階上を見上げてセレーネに声をかける。
アムロ「何してるんだ? 早く降りて来いよ」
とんとんと階段を下りる音が聞こえ、やがて長身の女性の姿が現れた。――ただし、下着姿の。
セレーネ「はいはい。長女のセレーネ・マグクリフ・ガンダムよ」
セイ「!?」
セレーネは自身の恰好について気にも留めずに平然と挨拶をしたが
セイは下着をつけた美人の女性を見て平静を保っていられるほど強くなかった。
血がつながっているとはいえ、昨日まで他人同然に暮らしていたのだ。身内と割り切るのは容易ではない。
年齢的にも異性にイロイロな興味が湧いてくる年頃でもある。
そこでこんな刺激的なものを見せられてはひとたまりもなく、セイは鼻血を吹いて昏倒した。
セレーネ「…あら?」
アムロ「あら、じゃないだろ! なんて恰好で出てくるんだお前は!」
セレーネ「出て来いって言ったのは兄さんじゃないの」
アムロ「おいセイ、大丈夫か? セイ、せぇぇぇぇぇぇい!」
(ああ…委員長、刻が見える…)
本当に見えたわけではなかったが。ひたすらに混乱したまま、セイの意識は闇に落ちて行った。
211 名前:新たな住人・前編 8/12 :2014/04/01(火) 19:57:50.94 ID:???
セイ「はっ!」
気付けば、セイは部屋のベッドに寝かされていた。すぐそばにいたアムロはそれに気付いて寄ってきた。
アムロ「大丈夫か?」
セイ「は、はい…ちょっとくらくらしますけど、大丈夫です。早くあの女の人に謝らないと…」
アムロ「いや、いいんだ。あいつはまったく気にしちゃいないからな」
セイ「え? で、でも普通下着姿を見られるのは嫌なんじゃ…」
昏倒する直前に見た光景を思い出して顔を赤くしたセイに、アムロは苦笑した。
アムロ「俺としてもそうなってほしいんだがな…弟に見られるくらいなんともないんだとさ」
セイ「そ、そうですか…」
女の兄弟がいる家というのはそういうものなのだろうかと思いながら、鼻に詰めてあったティッシュを外す。
真っ赤に染まっていたが、鼻血は止まっていた。
アムロ「しばらくうちに住むと言うが、本当にいいのか? 親父が何を言ったかは知らないが、無理にここに住むことはないんだぞ」
213 名前:新たな住人・前編 9/12 :2014/04/01(火) 20:00:09.79 ID:???
セイ「確かに僕はイオリ家で育ちましたし、実の父や母の顔も覚えてません。
僕にとっての両親は、イオリ家の両親だと思っています」
アムロ「ならば――」
セイ「でも僕は、イオリ・セイであると同時に、セイ・イオリ・ガンダムでもあるんです
ずっと一人っ子だと思ってたのに、兄弟がいたってわかったら、どうしても一緒に過ごしてみたくなったんです」
それがセイの本心だった。ずっと一人っ子だと思っていた自分の、本当の兄弟たちにどうしても一緒に暮らしてみたかったのだ。
セイ「イオリ家の人たちとだって、会おうと思えばいつでも会えます。同じ町に住んでるんですから」
寂しくないと言えばうそになるが、日に日に増していく実の兄弟たちに対する思いを抑えるには限界があった。
それを聞いたアムロは薄く微笑みを浮かべた。
アムロ「そうか。あと、ご両親のことは無理に名前で呼ばなくていいぞ
これまでお前を育ててくれた正真正銘のご両親なんだ。これからよろしくな、セイ」
言って、アムロは右手を差し出した。
セイ「はい、アムロ兄さん!」
セイは笑って、大きな"兄"の手を握り返した。
215 名前:新たな住人・前編 10/12 :2014/04/01(火) 20:01:13.50 ID:???
夕食時。家族が全員そろった中で、アムロは事の次第を説明した。
アムロ「――というわけで、今日からうちに住むことになったセイだ。よろしく頼む」
セイ「イオリ・セ…いえ、セイ・イオリ・ガンダムです! よろしくお願いします!」
様々な感情を伴った多くの視線を浴びながら、セイは大きな声で言った。そのあと、自信なさげにアムロの方を向いた。
セイ「…あ、あの」
アムロ「なんだ?」
セイ「この人たち…みんな、兄弟なんですか?」
レストランやホテルにでもありそうな大きさのテーブルを囲むたくさんの人を指してセイが聞くと、アムロは苦笑した。
アムロ「驚くのもわかるが、そうなんだ。…さて、自己紹介でもしてもらおうかな。年齢順に頼む」
セレーネ「ほれ、シロー兄さんよろしく」
先ほどの下着の女性――セレーネだ。今度はきちんと服を着ていたが
どうしても下着姿を思い出してしまいセイは気恥ずかしくなった。
シロー「姉さん…」
何やら可哀想なものを見るような目でセレーネを見るシローに、セレーネは嫌そうな顔をして手を振った。
217 名前:新たな住人・前編 11/12 :2014/04/01(火) 20:03:08.45 ID:???
セレーネ「ほんのお茶目じゃないの。そんな目で見なくてもいいでしょ。セレーネ・マグクリフ・ガンダム
職業はD.S.S.Dの研究者で趣味はAI研究と天体観測…なんか顔赤いけど、大丈夫?」
さっさと自分の紹介を終えると、セイの様子に気が付いたらしい。
セレーネの顔が近づいてきて、セイの顔がますます赤くなった。
セイ「い、いや…あの、えっと。昼間はすみませんでした…」
セレーネ「昼間? 何かあったっけ」
セイ「で、ですから、その、し、した、ッした…」
セレーネ「舌?」
セイ「下着姿、見てしまってすみませんでした!」
言ってから、大声でとんでもないことを口走ったことに気が付いてセイは口を押えた。顔は変わらず真っ赤なままである。
セレーネ「あーあー、あったわねそういうこと。いーわよ別に。気にしちゃいないし」
セイ「は、はぁ…」
セレーネ「でも好感のもてる子ね。長女のセレーネよ。よろしく」
セレーネは(少なくとも見た目は)母性にあふれる笑みを浮かべて片手を差し出した。
その手を取り、セイはさらに顔に赤みを増して答えた。
セイ「よ、よろしくお願いします!」
218 名前:新たな住人・前編 12/12 :2014/04/01(火) 20:07:20.40 ID:???
キラ(出た…姉さんの年下殺し)
ウッソ(見た目だけとはいえ、あんなきれいなお姉さんに微笑みかけられたら普通は落ちますよね)
キラ(本当にきれいなのは見た目だけなのに)
ウッソ(まあ、しばらく一緒に住んでれば嫌でも気付くでしょうけど)
目の前の美女に対応することで精いっぱいのセイは、セレーネの後ろでキラとウッソがそんな話をしていることには気が付かなかった。
シロー「次は俺か。俺はシロー・アマダ・ガンダム! この町の警察署に勤めてるんだ。これからよろしくな!」
セイ「は、はい! お願いします!」
シロー「…イオリさんか…」
セイ「?」
シロー「いや。どこかで聞いたような名前だと思ったけど、気のせいだよな…」
シローが言い終わると、次はマイが立ち上がった。
半端なところですが前編と今回分の投下ここまで。中編に続きます。
最終更新:2015年08月06日 17:45