618 名前:光の翼(3) 1/5 :2015/09/10(木) 10:35:42.74 ID:t9ZyoiZy0
家の外で携帯端末を呼び出し、"彼"を呼び出す。
できるなら呼び出したくなかったし、こんな番号消したいとすら思っていたがこんなところで役に立つとは思わなかった。
『よォ! ウッソ・エヴィンだ!』
「相変わらずテンション高いですね…」
電話の相手は"マンガバンの"ウッソだ。ドッペルゲンガーのような妖怪で、よくウッソを名乗って行動する。
この妖怪も(なぜか)ヴィクトリーガンダムとミノフスキードライブ付きのV2ガンダムを持っているのだ。
「昨日、学校の先輩の乗るMSが、光の翼で撃墜されたらしいんですが」
『ふんふん。それで?』
「君でしょ、犯人」
『えーッ!? オレを疑ってんの!?』
「疑ってるよ。いつもいつも人の名前使って余計なことしてるのに、信用されると思ってるの?」
『そんなァ』
「で、どうなの」
『もちろんオレじゃないよ。アリバイだってあるんだ』
「アリバイ?」
『昨日はガンダムファイトに出てたんだ。オールナイトで』
この妖怪、ネオコミックなる謎のチームに所属している。他のメンバーは同じく妖怪のアムロとシーブック。
ウッソにとっては悪夢のようなメンバーだ。
特に問題は起こしていないらしいが、人外ぞろいのガンダムファイターたちの中に自然に溶け込んでいるというのが逆に恐ろしい。
「…また僕の名前で参加したの? 変な噂が立つからやめてほしいんだけど」
『平気平気。ウッソ・エヴィン(仮名)にしといたから』
「それのどこが平気なのさ!?」

619 名前:光の翼(3) 2/5 :2015/09/10(木) 10:36:51.39 ID:t9ZyoiZy0
『ま、そういうわけで。調べればすぐにわかると思うぜ』
「…わかった」
『オレの疑いは晴れたよな? そんじゃ、また』
「うん…」
電話は切られた。本人が自信たっぷりに言っている以上は事実なのだろう。調べてもたぶん無駄だ。
肩を落としてウッソは居間へと戻った。

「どうだった?」
「ダメでした…」
肩を落とし、とても落ち込んだ様子で戻ってきたウッソを見て、やっぱりかと思うアムロ。
居間に戻る途中、彼の再会を願う言葉につい応じていたことに気付いてさらに落ち込んでしまった――などということは、もちろんアムロは知らない。
「そうか…でも、コウとセイに心当たりがあるらしい」
「心当たりっていうか、噂だけど…」
「うん。ネットで木星産業が光の翼を出せるMSを作ってるって噂があったんだよ」
「木星産業が?」
木星産業と言えば、ベルナデットの父親クラックス・ドゥガチが運営する会社である。
木星圏最大と言ってもいい規模の企業であり、パンからMSまで幅広く扱っている。
「…ただ、問題は簡単に教えてくれるかどうか、だ」
「う…」
噂だけで正式な発表がない、ということだ。発表されていない機体のことを教えろと言われて素直に教える人間はいないだろう。
ウッソが押し黙ると、シーブックが口を開いた。
「その点は問題ないと思う」
「ツテがあるんですか?
「ツテ…っていうか、木星付近の事情に詳しい人を知ってるんだ」
「誰なんだ、その人は」
「ブラックロー運送の社長、カーティス・ロスコ」
アムロの問いに、シーブックは自信ありげにこう答えた。

620 名前:光の翼(3) 3/5 :2015/09/10(木) 10:41:16.68 ID:t9ZyoiZy0
翌日、シーブックたちはさっそく行動を開始した。シーブックとウッソはカーティスに会いに行き
カミーユ達は他のところを当たっている。

喫茶M&S。ここが待ち合わせの場所だった。シーブックがトビアを介してカーティスへの約束を取り付けたのだ。
「やあ、シーブック君。こっちだよ」
サングラスの男と、連れ添う美女――二人とも思っていたより若かった――が、店に入ったシーブックたちを呼び止めた。
「お久しぶりです、カーティスさん。テテニスさんもお元気そうで」
「本当に久しぶりですね。トビアがお世話になっております」
「ウッソ。こちらはブラックロー運送のカーティス・ロスコ社長と、その奥様のテテニスさんだ」
「はじめまして。ウッソ・エヴィン・ガンダムです」
「カーティス・ロスコだ。よろしく、ウッソくん」
差し出された手を握る。ウッソは、先ほどから何となく感じていたことを聞いてみた。
「あの…」
「何かな」
「どこかで会ったこと、ありませんか? なんだか初めて会ったような気がしなくて」
この男女、初めて見たはずなのに何故か初めて会ったような気がしない。
気のせい、あるいは既視感と片付けてしまえばそれまでだが
それで片づけていいのかと、自分のニュータイプ的な感覚が言っているような気がしたのだ。
「なんだ、知り合いだったのか?」
「目が見えないものでね、外見に関しては何ともいえないが…少なくとも、君の声に覚えはない
 ただ、仕事柄あちこち飛び回っているからどこかですれ違ったりしたのかもしれない」
どうやって知り合ったのか――驚くシーブックだったが、カーティスはそれを否定した。
やはり気のせいだったのだ。
「そ、そうですよね…すみません、変なことを聞いて」
「いや、気にしないで欲しい。そういう感覚は大事にすべきだと思うよ」

621 名前:光の翼(3) 4/5 :2015/09/10(木) 10:43:11.12 ID:t9ZyoiZy0
「そういえばベルちゃんはどうしたんです? いつも一緒なのに」
「知り合いの男の子に預かってもらっているんです」
「最初は私一人で来るつもりだったのだが。テテニスがどうしても付いてくると聞かなくてね。
 子供には退屈な話だろう?」
「あら、木星の事情についてこの場で一番詳しいのは私だと思うわ。
 私を誰だと思ってるの?」
「木星産業の元・重役様です。…結婚してからは全然かなわないよなあ、ほんと…」
「凄いんですね。元ってことは、今は違う仕事をしてるんですか」
「今は主人と同じ会社で働いてるの。ベルの子育てもこっちのほうがやりやすいし」
「へえ…ところで、ベルちゃんっていうのは」
「私たちの娘。とてもいい子なのよ。どこかで会う機会があったら、お友達になってくれる?」
「もちろんですよ」
「とても愛らしい子なんだ。ウッソくんに会わせられないのがとても残念だよ。
 でも、いくら天使のごとく可愛いからと言って――」
「ベルに手を出すな、でしょう? わかっていますよ。俺はロリコンじゃありませんからね」
饒舌に語り始めたカーティスを、シーブックの言葉が遮る。少し落ち込んだようだったが、今度はウッソに向き直って言い直す。
「ウッソくんも――」
「わ、わかりました…」
「ごめんなさいね、ウッソくん。この人、娘の話になるといつもこうなの」
「…さて、話を戻そうか。ミノフスキードライブ搭載MSについての話だったね」
話を本題に戻すと、カーティスは先ほどの気さくな雰囲気から打って変わり、鋭い雰囲気をまとった。
「ええ。木星圏でよく似たものが作られているという噂を耳にしたもので。何か御存じないかと」
「なるほど。それで"私"に聞いてきたわけだ」
何故か"私"を強調して、カーティスが言う。ウッソはこの意味がよくわからなかったが、シーブックには伝わったらしい。
「そういうことです」

622 名前:光の翼(3) 5/5 :2015/09/10(木) 11:55:14.22 ID:t9ZyoiZy0
「………まあ、知っていると言えば知っているよ。しかし」
「何か問題でも?」
「アレがV2ガンダムっていうのに似てるかというとなあ…テテニス、どう思う?」
「そうね…あまり、似てないと思う」
「アレって、なんなんです?」
シーブックが聞いた。
「木星産業傘下のサーカスって会社が作ったもので、私たちは"ファントム"と呼んでいます
サナリィの技術者を引き抜いて、木星独自のミノフスキードライブ搭載MSを開発する――と意気込んでいたのですが」
「どうにも木星産業の技術と相性がよくなかったらしくてね。
 動かすどころか、起動すらもおぼつかない状態で放置されていたらしい」
「これでは発表しても恥をかくだけで売れないと思った会社に封印されていたのを、知り合いが偶然拾ったのです」
「知り合い、ですか」
「フォントって男の子さ。――ああ、彼を疑うのはよしてくれよ。ベルは彼のところに預けているんだ
 私とテテニスがベルを預けられるっていう意味、シーブックくんならわかるね?」
「はい…」
大切な娘を預けられるほどに信頼がおける、という意味だ。娘を溺愛しているカーティスが少しでも怪しいと思う男に預けるはずがない。
「ようやく手がかりがつかめたと思ったのに、また振り出しか…」
「なんか行き詰っちゃったみたいだね。とはいえ、ほかにミノフスキードライブを乗せてるような機体か…
 そうだ、ミノフスキードライブのテストのために開発された機体がサナリィにあったな」
「本当ですか!?」
「うん。ていうか若いころ実際に見た。確かに光の翼を出してたよ。武器はフリントの流用だったみたいだけど」
「サナリィ…行ってみる価値、ありそうだな」
「そうですね…オーティスさんに連絡してみます」
「ところでそのMS、なんていう名前なんですか?」

「たしかF9系列の機体だったな…そうそう、思い出した。
 F99"レコードブレイカー"だ」


今回は以上です。ゴースト読んでないので、カーティスやテテニスの口調に違和感あるかも…




link_anchor plugin error : 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ
Gジェネ社 ウッソ・エヴィン シーブック・アノー マンガバン 光の翼 長編

+ タグ編集
  • タグ:
  • 光の翼
  • 長編
  • ウッソ・エヴィン
  • Gジェネ社
  • マンガバン
  • シーブック・アノー
最終更新:2017年05月23日 22:41