357 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十九の一投稿日:2006/12/23(土) 14:42:36 ID:???
キッド『マザー・バンガード貸切! 今夜は眠らせないぜクリスマスパーティースペシャァァル!!』
全員『わ―――――――っ!!』
シーブック「な、なんでこんなノリに…」
セシリー「仕方ないじゃない、CROSS-BONESのみんなまでうちで宴会するって言うし、ドゥガチさんたちだって」
ベルナデット「ご、ごめんなさい…」
シーブック「いや、君を責めてるわけじゃないんだよ」
キッド『おおっとぉ? キンケドゥ、いきなりベルナデットにアプローチか!?』
トビア「(ぴきーん)」
シーブック「誰がだっ! それに今の俺はシーブック!
あんまりやればトビアが暴走するからやめろ、つかノリが妙なのはお前のせいかよキッド! どこから拡声器持ってきた!」
カロッゾ「ふはははは、よいではないかキンケドゥ。あのマイクを貸したのは私だ」
シーブック「カロッゾさぁぁん!?」
セシリー「お父さん、いくら無礼講でもケロヨンの仮面なんて…」
アンナマリー「どうせならこちらの方がよろしいのではありませんか?」
セシリー「アンナマリーさん、それアンパンマンの…?」
アンナマリー「いえ、ジャムおじさんの仮面です」
カロッゾ「うむ、役柄としてもピッタリだ! キンケドゥがピンチになったとき、私がパンを焼き、ベラが投げればよい。『キンケドゥ、新しい顔よ』と」
シーブック「俺に人外になれとっ!?」
ザビーネ「ふん、騒がしいことだな」
アンナマリー「ザビーネ! なんだ壊れたと聞いていたのにまともじゃないか」
ザビーネ「お前は何を期待していた!?」
アンナマリー「もちろん貴様がアヒャって私に撃墜される夢を…」
シーブック「すみませんそれカロッゾさんがやりました」
ザビーネ「正確にはキンケドゥの兄が、だがな」
アンナマリー「え? じゃあ私のささやかな復讐劇は?」
セシリー「ない…ってことかしら」
シーブック「そもそもささやかでもなんでもないし」
アンナマリー「そんな…私は…私の夢は一体…(ふらふら)」
ザビーネ「ふ、感情を処理できぬ人間はゴミだと教えたはずだがな」
シーブック「そんなこと言ってないで慰めてやれよ。仮にも彼氏なんだろ?」
ドゥガチ「まだそんなことを言っておるのか少年。同情は罪悪と知りたまえ」
シーブック「うわっ!?」
セシリー「ドゥガチ社…元社長!」
ザビーネ「…………申し訳ありません」
セシリー「え?」
シーブック「あ、そっか、ザビーネは偽装投降してたから…」
ドゥガチ「よい、君の技術を参考にさせてもらったこともある。何より君のことは最初から知っておった」
ザビーネ「は?」
カロッゾ「むむ、スパイと知りながら泳がせておいたというか!」
ドゥガチ「その通り。あのときのわしにとってはジュピターの醜聞すら良き道具であったからな」
カロッゾ「ふはははは、やりますなドゥガチ元社長」
ドゥガチ「なんの、カロッゾ殿の徹底振りには頭が下がりますよ。目的のために自らを押さえ込むとは」
カロッゾ「ふはははは、ついに私を理解してくれる方が!」
シーブック「うわあ、
なんかすごい光景だ」
セシリー「ちょっと離れましょう、ここにいるとどす黒いオーラが見えそうだわ」
シーブック「あ、ああ」
ザビーネ「では私も…」
カロッゾ「待てザビーネ」
ドゥガチ「少し話を聞いていかんか」
ザビーネ「うおおおっ!?」
358 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十九の二投稿日:2006/12/23(土) 14:44:00 ID:???
セシリー「ねえ、シーブック」
シーブック「ん?」
セシリー「やっぱり…続けるのね?」
シーブック「ああ… 俺がいなくなったら、どうなるか考えたらさ…」
セシリー「そんなの言い訳よ」
シーブック「え?」
セシリー「シーブックは続けたいのよ。何だかんだで、楽しんでいるんじゃない? キンケドゥになることを」
シーブック「そうなのかな…」
セシリー「そうでなかったら、あんなに悩んだりしないわ」
シーブック「…………」
セシリー「それに、キンケドゥの時ってちょっと輝いてるし」
シーブック「え!」
セシリー「リーダーシップ発揮してるっていうか… いつもの地味な感じじゃないのよね」
シーブック「そ、それ、褒めてる…?」
セシリー「褒めるつもりもけなすつもりもないけど… 傷ついた?」
シーブック「いや、いいんだよ…(俺って一体…)」
トビア「何言ってるんですか! キンケドゥさんはいい人ですよ!」
シーブック「うお、トビア! …お前、それ酒じゃないか!」
トビア「お酒じゃないですよ。シャンパンです」
セシリー「ちょっと待って…(ペロッ)これチューハイじゃない!」
トビア「えー、でもウモンじいさんがシャンパンだって」
セシリー「ウモンさんっ!!」
ベルナデット「あ、あの、ウモンさんはそっちでシドさんと呑み比べしてます」
セシリー「……ああ……」
シーブック「バケツ用意しておこうか」
セシリー「ええ…」
トビア「バケツ? なんでですか?」
キッド「ふっふっふ、知らないというのかい坊や?」
トビア「知らなくて悪いかよ? それよりいい加減『坊や』ってやめろよ」
キッド「ふはは、悔しかったらこの天才魔改造少年キッド様に認められるほどの実績を立てやがれ~!」
シーブック「キッド! 自分から魔改造なんて言い出すとは…さてはお前も飲んでるな!? …これ日本酒!」
ベルナデット「どうしてクリスマスに日本酒があるんでしょう」
シーブック「突っ込むのそこかよ!?」
セシリー「バケツ一応三個用意しておいたわ。これで大丈夫でしょう」
シーブック「だといいんだけど。第一なんで酒があるのさ?」
ベルナデット「お父様がいっぱい持ち込んだんです。いけないことでしたか?」
セシリー「そういえば父も『大放出だー』ってわめいて」
シーブック「年齢差の激しいパーティーにっ…!」
トビア「せんせー、シド爺さんも日本酒持ち込んでましたー」
シーブック「……うわあ」
359 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十九の三投稿日:2006/12/23(土) 14:45:57 ID:???
カラス「呼びましたか、トビア君?」
トビア「あ、カラス先生!」
シーブック「あなた、木星高校の教師でしょう? どうしてドゥガチ元社長の補佐を」
カラス「知らないのですか
シーブック君? 木星では教師の副業は許可されているのですよ」
シーブック「…論点がずれてませんか」
カラス「それに私も一介のパン職人ですから」
シーブック「なんとー!?」
カラス「ギリを知っていますね? 彼はいい素質を持っている。将来は
カロッゾパンを脅かすほどの料理人となっているでしょう」
トビア「あいつがコックですか? 想像できないなー」
カラス「君もいい素質を持っていますねトビア君。いかがです、私の元で職人修行に励みませんか」
トビア「い、いえ、僕はまだ…」
キッド「いいじゃん、やっちまえよ坊や。そうすりゃキンケドゥとの差も縮まって、愛しのベルちゃんにまた一歩…」
トビア「ううっ!?」
ベルナデット「私が何か…?」
トビア「べ、ベルナデット! いや、その、ね?」
シーブック「キッド、からかうのもほどほどにしろよ」
キッド「いや~、こいつら見てると
ガンダム坊やのカップル思い出しちまってさ~」
シーブック「ガロードとティファか… ベルナデットはそんな不思議少女じゃないんだが」
ウモン「不思議少女と言ったかキンケドゥ!」
シーブック「わあっ!? ウモン爺さんにシド爺さん!? 酒臭い息を吹きかけないでくれ!」
シド「よいではないか、無礼講よ」
セシリー「確かに少しくらい羽目ははずしてもいいけれど…」
シド「わかってるじゃないかお嬢ちゃん。ほれほれ、ぐいっと」
セシリー「これ、お酒!」
シド「失礼な。わしの持っているボトルをよく見ろ」
セシリー「『天然水グリーンオアシス』…ミネラルウォーターのペットボトル?」
シド「そうじゃよ。この中身は水じゃ」
セシリー「そ、それなら(こくん)…ゲホゲホッ!?」
シド「ただし魔法の水じゃがな! かっかっか!」
セシリー「し、シドさん! まさかトビアたちにも同じ手口で!」
ザビーネ「シドよ…ベラ様に飲酒を強制するとは…余程命が惜しくないと見えるな…」
シド「む? 何をおっかない顔しとる、ザビーネ。酒は百薬の長、わしは薬を勧めただけじゃ。それにソシエ嬢ちゃんはこの程度、かっぱかっぱと…」
ザビーネ「死んで償えぇぇぇぇ!!」(ショットランサー装備)
ウモン「む、ザビーネが切れた! 出番じゃぞキンケドゥ!」
シーブック「知りません」
ウモン「な、なんじゃとぉ!?」
シーブック「セシリー、行こう」
セシリー「ええ」
トビア「うわーキンケドゥさんがドライになったー」(棒読み)
シド「ま、待てザビーネ、正気に戻れ!」
アンナマリー「おお、ザビーネ! とうとう狂ったか! 私と共に死ねぇぇぇ!」
キッド「うわ、あの姉ちゃんも大人しそうな顔してやること過激」
ドゥガチ「そうそう、あのアレルギー物質はな、完全に抜け切るまではアルコールの回りを早めてしまう副作用もあって…」
カラス除くその場の全員『先に言えぇぇぇぇ!!』
トビア「そ、それじゃあカロッゾさんも!?」
カロッゾ「ふはははは! ナディア、帰ってきてくれたのだなぁ!!」
ベルナデット「わ、私はベルナデットです! そ、そんな強く締められたら、私、せ、背骨が…」
トビア「(ぷちっ)きぃさぁまぁぁぁぁぁ!! ベルナデットを放せぇぇぇ!!」
キッド「やべぇ、トビアまで切れた! おいキンケドゥ…ってホントにいなくなってるし!」
ウモン「まあ盛りあがっとるし、これはこれでよかろうて」
キッド「…妙に冷静だな、爺さん」
360 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十九の四投稿日:2006/12/23(土) 14:49:11 ID:???
マザー・バンガード展望室。
地下に停泊させている今、窓の外からは鉄骨機材しか見えない。だが少しスイッチをいじれば、窓はたちまち宇宙空間を映し出す。
ジャンクからキッドが作り上げたプラネタリウムだ。宇宙空間の他にも、様々な映像がインプットされている。
現在、この展望室の扉には『避難所』と書かれた紙が貼り付けられている。
シーブック「ふう…すっかり飲み会みたいになっちまって」
セシリー「ごめんなさい、私がしっかりしてれば…」
シーブック「セ、セシリーのせいじゃないよ! …大丈夫かい?」
セシリー「なんとか… でも、体が熱い…だるくて…」
シーブック「お、おい?」
セシリー「ちょっとだけ…」
シーブック(おいおいおいおい!? いいのかよ、そんな無防備に体預けられたら、俺…!)
セシリー「あのお水、やっぱりお酒だったのね…」
シーブック「う、うん」
セシリー「ふふふ…未成年飲酒…しちゃった」
シーブック「だ、大丈夫だよ、警察は見てないし」(注:本当はいけません)
セシリー「これで…犯罪者ね、私も…」
シーブック「そ、そんなの! 騙されて飲まされたんだから…!」
セシリー「ううん、いいのよ…これで…私もあなたと同じ…」
シーブック「えっ」
セシリー「うふふ…アウトローの仲間入りー…ね」
シーブック「セシリー…」
セシリー「…ね、シーブック」
シーブック「な、何?」
セシリー「食べて」
シーブック「!?」
セシリー「ケーキ焼いたのよ…あなたの分は特別に…」
シーブック「あ、ああ、ケーキか…(ドキドキ)」
セシリー「どうしたの?」
シーブック「なんでもないっ! ええっと、どこにあるのかな、それ」
セシリー「ここ」
シーブック「え?」
セシリー「だって…集会場に置いておいたら、トビアやウモンさんに食べられちゃうかもしれないでしょう?」
シーブック「あ…ああ」
小さなケーキだった。二~三人用のサイズだ。キャンドルが数本立てられている。
熱っぽいセシリーを椅子に座らせ、シーブックはキャンドルに火を灯した。
照明も落とす。プラネタリウムを少しいじると、宇宙空間は雪の夜に変わった。
雪降る闇の中で、キャンドルの火がゆらめく。赤く優しい光にぼんやりと照らされ、セシリーはにっこりと笑っていた。
酒のせいなのか、他の理由でなのか、確たる判断はつかない。
だが、アルコールの力だけではない、とシーブックは思いたかった。
セシリー「メリークリスマス、シーブック」
シーブック「メリークリスマス、セシリー」
キャンドルの灯が消えた。
最終更新:2019年03月22日 22:26