562 名前:そんなある日。1投稿日:2007/10/08(月) 01:31:58 ID:???
「ふはははははっ! 今日も絶好調であーる!」
「それでも、守りたいおかずがあるんだあああああっ!」
「あんたって人はあぁぁぁぁぁっ!」
「俺はソレより静かな朝食が欲しい…」
「諦めろ、シーブック」
「でも、シロー兄さん…」
「言うな。無駄なことだ」
「ヒイロの言うとおりだ。たまには落ち着いて飯も食えんのか!」
「ドモン兄さん、分かったから唾とご飯粒飛ばしながら叫ばないでくださいよ」
「そうだよ、僕のところまで…」
「カミーユ兄さん、ウッソ兄さん。はい、ティッシュ」
「ありがとう、シュウト」
「ああー、朝から酷いな、相変わらずうちは、そう思わない? ジュドー兄さん」
「まあ、いつものことだろ、あんまり言うなよ、ガロード」
「ロラン兄ちゃん、僕おかわりー!」
「あ、僕も」
「はいはい。アルとコウ兄さんがおかわりですね。他にいる人は?」
「「「はい!」」」
「ギンガナムさんは少し自重して下さい。後、何か人数が増えてませんか?」
「ヒートエンドォ!!」
「キャプテンパーンチ!!」
「「ヒデブッ!!」」
 そして、キャプテンが二つの物体を引きずっていく。ガンダム家の朝はこんな感じで毎日であるが。
「どうしたんだ? アムロ兄さん、あんまり食べてないけど」
 ふと、違和感に気がついたシローが声をかける。
「ん? あ、いや、何でもないよ。じゃあ、俺はそろそろ行くよ」
 アムロはそう笑って答えると、立ち上がって流し台に茶碗を置く。その様子を見ていたロランも口を開いた。
「兄さん、顔色が悪いですよ」
「そうかい?」
 首を傾げるアムロ。ロランは近づくと、自分の額とアムロの額に手を当てた。
「ちょっと、熱っぽいですよ」
ロラン君。そんなことより―――」
「ローラ! 私の熱も測―――」
「目標、補足」
 次の瞬間、どこから出したのかゼロ距離のバスターライフルが火を噴き、変態二人と、通りを歩いていたマユを巻き込んでミンチにする。
「うわあああああああっ! マユウウゥゥゥゥッ!!」
「あれ? バーニィがいないや」
「アル…」
 アルの言葉に、思わずガロードはがっくりと肩を落とした。
「はは。心配性だな、ロラン。なんとも無いよ」
 すいっと体を下げてロランの手を額から放すアムロ。
「でも、今日もお休みなのに出勤じゃないか」
 コウが言うと、アムロは笑って、
「仕方ないよ。今日は会議があるしね。まあ、午前中で帰るよ」
「無理しないでください、兄さん」
「ああ、ありがとう。それじゃ行って」
 「行って来るよ」と、言いかけて、アムロは(?)と不思議に思った。
 何故、世界が回っているのだろうかと。そして、自分が倒れこんだということに気がつかぬまま、意識を手放した。

563 名前:そんなある日。2投稿日:2007/10/08(月) 01:34:32 ID:???
「?」
 ふと、眼を開ければ見えたのは丸い蛍光灯だった。
 確か、これはこの間ヒイロとシュウトが取り替えていた今の蛍光灯だ。
 そう思い立って、アムロはキョトンとした表情で状況を把握できないでいた。
「あ、兄さん。大丈夫?」
 顔を覗き込んだのはキラだ。ちらりと誰かが出て行く姿が見える。
 何だか体がだるい感触のまま、何とか首を動かす。
「キラ? 学校はどうした? それに今のは誰だ?」
「やだな、兄さん。今日はお休みだよ。それと、今のはレインさん。それより、気持ち悪くない?」
「……」
 しばらくの沈黙の後、アムロはキラに目線で問いかける。
 それで理解したのか、キラは頷くと、
「うん。アムロ兄さん、突然倒れちゃったんだよ」

 彼曰く、直後は修羅場と化したそうだ。
 ドモンはパニくってレインを呼びに行くと窓を破壊しつつ飛び出し、ロランもついでにぶっ倒れ、シンは混乱のためか、叫びながら復活しかけていた変態二人をディスティニーフィンガー(違)で滅却。
 ついでに、とおりを歩いていたバーナード・ワイズマンを巻き込んだが、これはいつものこと。
 アルは泣き出し、ギンガナムも医者を呼ぶなどと言ってドモンとは別の窓を破壊しながら飛び出し、カミーユは信用ならんとばかりに追いかける。
 ヒイロの出した怪しげな薬は却下され、ジュドーとウッソはとにかくこの修羅場からはとアムロを運び出そうとひきずり、シュウトは電話を持って救急車を呼ぶべきか否かと問い続け、シーブックは、
「なんとー!」
 と叫びながらも落ち着いて洗面台に水を汲み、シローはバタバタとしながらも毛布を持ってくるようにキャプテンに命じて、自分はアムロを運ぶのを手伝ったのだった。

「ちなみに、キラは?」
「シンの攻撃に巻き込まれて気絶してた。セーフティシャッターがなかったら即死だったよ」
「…うちの台所に、そんなものあったか?」
 アムロが怪訝な表情になったとき、今にお盆を持ったロランとキャプテンが入ってくる。
「大丈夫ですか? 兄さん」
 そう言いながら、ロランは心配そうにアムロを見た。アムロは頷くと、
「大丈夫だよ。すまない、ロラン」
「いえ、僕も突然のことで驚いちゃったし…」
 ロランはわずかに頬を染め、横に立っていたキャプテンはピッと電子音を鳴らすと、
「全身の平均体温は約38,58度。さらに、極度の過労状態だ」
 簡単にスキャンをしたのか、そう言う。
「レインさんも言ってたけど、ちょっとした風邪ってことだろ?」
 ひょいと顔を出しながらそう言ったのはシンで、後ろにはガロードの姿もある。キャプテンがその言葉を肯定する。
「今日は一日安静だってさ」
 ガロードがそう言い、続いてロランが、
「とりあえず、これ、食べてください。朝ごはんもあんまり食べてなかったみたいですし」
 そう言いながらお盆の上に乗っていたおかゆを差し出す。
「ああ、ありがとう」
 後ろの方でまたもや変態2名分の悲鳴と「光の翼でぇええっ!」という叫びが聞こえたが、アムロはあえて無視して、体を起こすとロランからおかゆの入った茶碗を受け取る。
「あ、あと、これ。買って来た」
 そう言ってシンが何かの瓶を差し出す。ロランが「あ!」と驚きの声を上げ、
「風邪薬! そういえば、きれてたんでした」
「へぇー。気が利くじゃん」
「茶化すなよ」
 ガロードの言葉に、シンが少し赤くなりながら返答する。
 いつのまにいたのか、電話の子機を持ったシローが言う。
「何はともあれ、今日は休みなよ。ブライトさんには電話しといたからさ」

564 名前:そんなある日。3投稿日:2007/10/08(月) 01:36:16 ID:???
「―――そして、二人は末永く暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
 ふっとそんな言葉が頭の中に飛び込んできて、アムロは眼を覚ました。ちらりと視線を走らせれば壁時計は12時半を指している。
「あ、アムロ兄さん!」
 それに気がついてか、シュウトとアルが走りよってくる。
「水でも持ってこよう」
 ヒイロは読み聞かせていた本を持ったまま台所に行く。
 アムロは珍しいな、と思いながら、体を起こした。
「あ、だめだよ、無理しちゃ」
 シュウトが止め、アルは落ちたタオルを拾うと、置いてあった洗面器に浸してギューッとしぼる。
「いや、大丈夫だよ。それより、何読んでもらってたんだ?」
 アルとシュウトはハモって答える。
「「続・泣いた青鬼と桃太郎!」」
「…ホントにどういう話だ? 一体…」
 アムロの背に冷たい汗が流れる。
「同じ声の友達が作った話だって言ってたよ、ヒイロ兄ちゃん」
「またそういうマイナーどころかアングラネタを…。このスレ読んでる人のうち一体何人が分かるっていうんだ?」
 アムロがそうぼやくころ、ヒイロがお盆を持って今に入ってきた。
「昼飯だ、兄さん。ここで食べるだろ?」
「ああ、ありがとう」
「俺たちは台所だ。行くぞ、アル、シュウト」
「「はーい」」
 ゾロゾロと3人が居間を出て行く。
『あ、ロラン兄ちゃん! 僕もあれ食べたーい!』
『僕も!』
『ああ。おじやですか。良いですよ、少し多めに―――』
『『ならば、我々―――』』
『ぶつけるしかない! でやああああっ!!』
 キュボッ!!
 そんなBGMが流れ、さぁーっと涼しい風が吹き抜ける中、アムロはぼんやりと、
(こんなに一人でぼーっとするのも久しぶりだなぁ)
 と、眼の端に赤いうごめくものを入れないようにしながらも、昼食のおじやに口をつけたのだった。

565 名前:そんなある日。4投稿日:2007/10/08(月) 01:39:45 ID:???
「ん…」
「あ、起きた」
「兄さん、大丈夫?」
 昼食の後、いつの間にか眠ってしまっていたのか、眼を開けると、夕日が眼にしみるような感触と共に、ジュドーとカミーユの声が聞こえてきた。
「ああ…。何時だ?」
「えっと、5時すぎ。あ、カーテン閉めないと」
 カミーユが立ち上がり、窓に向かう。ジュドーはひょいとアムロの顔を覗き込み、
「結構顔色良くなったんじゃない? 無理がたたったんだよ」
「そうかもな。このところ残業続きだったし」
 パタパタと音がしてそちらを見ると、お盆を持ったコウとシーブックが姿を見せた。
「これ、ギンガナムさんからの差し入れだって」
 と、テーブルに置いたのは玉子酒。
「…」
 神妙な顔つきになるアムロに、シーブックが言った。
「ああ、差し入れしてくれたのはお酒ですよ。造ったのはロラン…」
「ならb」
「私n」
「抵抗するんじゃない! 逝っちゃえよ!!」
 その直後、質量のある残像に惑わされてミンチ追加。
「じゃあ、ありがたくいただくかな」
 と、アムロが言った時、玄関の扉が開く音と共に「ただいま!」というドモンの声が響いた。
「そういえば、ドモン、どこに行ってたんだ?」
「何でも、知人によく効く薬分けてもらうって飛び出していきましたよ」
 いつのまに戻ったのかシーブックが答える。
 そして、何故か少しボロボロになったドモンが現れた。
「ドモン兄さん? 一体何処まで行ってたんです?」
 顔を出したウッソが呆れ気味に尋ねると、
「ああ。知り合いとちょっとな。試合をする代わりによく効く薬を譲ってもらってきた」
「ドモン兄さんがそんなボロボロになるなんて…」
「一体どんな試合を?」
「次々と現れる火竜や氷竜を千切っては投げ千切っては投げ。多く倒した方が勝ちだ」
「とりあえず自重しろ、ドモン…」
「それで、どっちが勝ったんだ?」
「勝負がつく前に竜がいなくなってしまった。無念だ」
「「…」」
 思わず全員が言葉をなくす。が、ドモンはそんな中何かを差し出した。
「そして、これがその薬だ」
「…『特効薬』?」
「体力が全回復するらしい」
「いや、だから…」
 何かを言いかけたジュドーだったが、カミーユが首を横に振って「無駄だ」と目線で告げられ、肩を落とす。
 アルやシュウトが「すごいやー」と言う中、アムロは、素朴な疑問をぶつけた。
「でも、これ、飲み薬か? 塗り薬か?」

 沈黙。

 ドカンッ!!

「ちょっ、ドモン兄さんが物凄い勢いで飛び出してったんですけど!」
「ああ! ドモンの奴、また壁壊したな!?」
「うわぁ、すごいや。通りすがりのバーニィが跳ね飛ばされてまたミンチよ(ry」(本日2回目
 ロランとシローの叫びやアルの言葉は全員が聞こえないふりをすることによって回避された。
 ちなみに、ドモンが帰ってきたのは3日後だったようだ。
「玉子酒ハオイシイナー」
(兄さんにしては珍しく、地雷踏んだな)
(うん)
 知らない不利をするアムロを横目に、そんなことをジュドーとウッソは言い合ったそうな。

566 名前:そんなある日。終投稿日:2007/10/08(月) 01:42:46 ID:???
 リーンリーンと鈴虫が鳴る。
 カオスとなっているアムロの部屋
「ここの衛生状況も原因の一つではないか?」
 と、キャプテンが片付けの真っ最中のため、今日は居間で寝ることになった部屋の主は、窓を開けて外を見ていた。
 ぼんやりとそんなことを考えて庭を見下ろす。
 別段何かを見つけられるわけでもなく、見つけられないわけでもない。
 気配を感じて振り返ると枕を持ったシュウトとアルが「えへへー」と笑っている。
 アムロは苦笑すると、敷いた布団の上に座り、おいでおいでと手を振る。
「やった。僕、こっち」
「じゃあ、僕はこっち!」
 アムロの両側に座り込むアルとシュウト。ふと、アムロは言った。
「ウッソも狭くていいなら入って来い」
「う…」
 所在なさげなウッソの姿が見え、トタトタとアルの隣に座る。
「…」
 と、アムロが再び顔を上げれば、ささっと隠れる人陰がいくつか。
 思わず苦笑しながら、
「良いけど、布団持ってきてくれるか? この人数で一つのは無理だろう?」
 そう言ったのだった。

 翌日、コウが寝ぼけ眼で一階に降りて来ると、居間を覗き込んで笑っているシローがいた。
 思わず首を傾げれば、シローは「しぃっ」と言った後、クイクイと居間を指す。
 コウは覗き込んで思わず微笑んだ。
 そこにはアムロを中心にして好き勝手に眠っている弟達がいたのだ。
 だが、その表情はだれもが満足げで幸せそうだ。
 シローは、
「俺たちも混ざればよかったかな?」
「うーん、確かに少しうらやましいかも」
 と、コウと笑いあったのだった。



勢いです。はい。白い部屋行ってきます。


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最終更新:2019年04月25日 11:17