124オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/04/20(火) 23:58:35.81ID:cXRa8dLa0
 AM 07:10 日登町中央区:学校の視聴覚室

ハロ長官「状況はどうなっている!」
ギャバン「北、東、南防衛線は膠着状態、西防衛線は徐々に盛り返しています!」
リリ「あれだけの数の偽サイコジム軍団を彼らだけで……さすがですわ」
ハロ長官「だが大分無理をさせていることに変わりない。それに、長引けば長引くほど再生能力のあるデビルガンダム軍団の方が有利だ」
リリ「そうですわね。せめてもう少しだけ、こちらに戦力があれば……」

 その時、急ごしらえの指令室にアラームが鳴り響いた。
 ハッとしてモニターに目をやると、南防衛線から飛び出した赤い点が、まっすぐに学校に向かってくる!

ギャバン「シャッフル同盟が抜かれた!? デビルELSがこっちに来るぞ!」
ハロ長官「まずい……狙いはユニコーンガンダムか!」


 AM 07:11 日登町中央区:学校のグラウンド

 学校のグラウンドに設置されたMSカタパルト『ヨルムンガンド』。
 その横ではワームホールを閉じるために、ユニコーンガンダムとフェネクスが待機していた。

リタ「これは……いけない!」
アルレット「どうしたの、リタちゃん?」
バナージ「こっちにむかって悪意がやってくる……この純粋さ、ELSか!」

 ニュータイプ二人に続いてマイもレーダーに映った赤い点に気づいた。

マイ「指令室から緊急通信? 南防衛線が突破されたのか!?」
バナージ「ちいっ!」

 咄嗟にバナージは迎撃に動こうとした。だがそれを、慌ててアルレットが止める。

アルレット「ダメよバナージ! アンタは動いちゃダメ!」
マイ「君たちの機体はワームホールを閉じることのできる唯一の対抗策なんだ。万が一にもやられたら、アクシズを止められなくなる!」
リタ「でもこのままじゃ学校のみんなが危ないよ」
マイ「なら僕たちが出ます。だから二人はそのまま待機を……」
リタ「待って! この感じ……援軍だよ!」
アルレット「援軍!? どこから?」
バナージ「上です!」

 彼らが見上げた先には、上空から軽業師のように錐揉みしながら降下してくる一機のMSの姿があった。

125オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/04/20(火) 23:59:19.67ID:cXRa8dLa0
アルレット「あれって確か……ガンダムヘビーアームズ?」
バナージ「トロワか!」
トロワ「…………」
デビルELS「( ゚∀゚)ジコサイセイ!ジコシンカ!ジコゾウショク!」

 空中でヘビーアームズはミサイルのハッチを全て展開。
 着地と共に、迫るデビルELSに向けて火口を向ける。

トロワ「……ターゲットを確認。破壊する」
デビルELS「( ゚∀゚)ジコサイセイ!ジコシンカ!ジコゾ……!?」

 そしてデビルELSに向けて火器を一斉発射。
 圧倒的火力の前に、デビルELSは成す術なく破壊された。

トロワ「あれは……ヨルムンガンドか。 まさかまた見ることになるとはな」
バナージ「トロワ! 君が助けに来てくれたのか!」
トロワ「違う」
バナージ「え?」
トロワ「助けに来たのは、俺たちだ」

 学校:北防衛線
デュオ「死ぬぜぇ、俺の姿を見たヤツはみんな死ぬぞ!」
シノ「マジかよ、ここで援軍か!」
死神「あら、死神がいる戦場に死神が来てくれるなんて奇遇ね」
オルガ「だ、誰もいない俺の後ろから女の声が!?」

 学校:南防衛線
五飛「ELSごときに遅れを取るとは、情けないぞシャッフル同盟!」
チボデー「ちっ! 痛いところ突いてくれるぜ!」
サイ・サイシー「だけど助かったのは事実だからね」
妹蘭「気張れよ五飛! 勝ったら私が手料理を振舞ってやるからな!」
五飛「う……うむ、無論だ!」

 学校:東防衛線
カトル「皆さん、遅れて申し訳ありません。ここからは僕たちも参戦します!」
スメラギ「ありがとう、プリベンター」
ロックオン「おう、ここから反撃開始だぜ!」

126オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/04/20(火) 23:59:58.57ID:cXRa8dLa0
 AM 07:16 日登町中央区:学校のグラウンド

リディ「無事か、バナージ!」
バナージ「リディさん!」
リディ「防衛線を抜かれたって聞いて慌てて来てみたが……なんだ、もう撃退した後か」
バナージ「ええ、トロワが助けにきてくれたんです」
トロワ「もっと早く来るつもりだったが、町の外で袖付きの連中に足止めされていた。遅れてすまない」
アルレット「いやいや、逆にナイスタイミングだったって」
リディ「なんだそうか。せっかくバンシィの見せ場がきたと思ったんだがな」
リタ「バンシィ……」

 そこへ突然、ハロ長官から一斉連絡が入った。

ハロ長官『諸君、嬉しい報告だ。先ほど、シロー隊長からデビルガンダムの撃破に成功したとの連絡が入った』
マイ「本当ですか!」
アルレット「やったじゃないシロー! 姉さん昔からアンタはやればできる子だって思ってたわよ!」
ハロ長官『プリベンターの参戦で各防衛線も少しずつ盛り返してきている。
     諸君らにはもう少しだけ頑張ってほしい。以上だ』

 そう言ってハロ長官からの通信は切れた。

マイ「本体を倒した以上、デビルガンダム軍団の増援はもうない。これで残党さえ倒せれば、町を取り戻せます」
アルレット「そうね。そしたら後はアムロと社長を救出して、アクシズ落としを止めればこの事件は終わりよ」
バナージ「ヨナ兄さんたちだったらきっとやってくれますよ」
リタ「ヨナ……大丈夫だよね」

 リタは不安そうに、じっと上空のワームホールを見つめた。


 AM 07:20 アクシズ:後部パルスエンジン付近

ヨナ「くそっ……くそっ!」

 システムダウンしたコクピットの中で、ヨナは必死で修理を急いでいた。
 口から出るのは自分への罵りの言葉。

ヨナ「情けない……情けない! せっかくアルレット姉さんやキラが送りだしてくれたのに、俺は!」

127オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/04/21(水) 00:00:21.65ID:mGmMKaaT0
 ヨナが自分を責めるのも無理はなかった。
 約一時間ほど前、キラたちと別れたヨナは、
 アムロを道連れにこのパルスエンジン近辺までやってきた。
 遂に訪れた、アムロとの一対一の決闘の時。
 はやる気持ちを抑え、ナラティブガンダムはビームライフルを構えた。だが。

アムロ「遅い!!」

 一瞬の出来事だった。
 アムロの駆るνガンダムは一撃で正確にナラティブガンダムのライフルを撃ち落としたのだ。
 ならばとビームサーベルを抜き、白兵戦を仕掛けるも、

アムロ「動きが直線的すぎるんだ!」

 サーベルの攻撃を難なくいなし、νガンダムはすれ違いざまにライフルのグリップをナラティブの手に叩きつけた。
 そしてサーベルを取り落としたところに繰り出される容赦ない蹴り。
 そのままアクシズの外壁に叩きつけられ、ナラティブガンダムはあっけなくシステムダウンした。
 最初のνガンダムの攻撃から、わずか30秒。あっという間の瞬殺劇だった。

ヨナ「くそ! 動け、動けよナラティブ!」
アムロ「悪くないガンダムだが、パイロットが良さを引き出せていないな」

 倒れて動かないナラティブガンダムの前で、アムロは冷徹にそう評した。

アムロ「貴様が誰かは知らないが、シャアを待たせているのでな。これで終わりにさせてもらう」
ヨナ「そんな……こんな簡単に……!」

 そうしてトドメを刺そうとした時だった。

セイラ「お待ちなさい! 倒れて動けない者に追い打ちをかけるなど、それでも男ですか!」
アムロ「この声……セイラさん!?」
フラウ「やめてアムロ! あなたは自分の弟を倒そうとしているのよ!?」
アムロ「フラウ・ボウまで……それに、俺に弟だと!?」

 そこにやってきたのは、ブライトをはじめとするラー・カイラム社の面々だった。
 それにセイラやフラウなど、アムロをよく知る人々も混じっている。

ブライト「各MSは出撃してνガンダムを包囲しろ! ただし絶対に手は出すなよ!」
リュウ「俺たちを近くに連れていってくれるだけでいい!」
ハヤト「あとはこっちでアムロを説得してみる!」
アムロ「リュウさんにハヤト……まさか! 死んだはずだ、あなたたちは!」
カイ「誰も死んでねえよ! いつまで逆シャアごっこしてんだテメエは!」

128オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/04/21(水) 00:01:08.62ID:mGmMKaaT0
 そこから、ラー・カイラム社によるアムロの説得が始まった。
 約一時間の芝居じみた大説得劇の末、

アムロ「ぼくは……取り返しのつかないことをしてしまった……(´Д⊂ヽ」

 遂にアムロはヅダエールの呪縛を逃れ、元のアムロ・レイに戻ったという訳である。
 その間、ヨナはずっと動かないナラティブガンダムの中で無視されたままだった。

ヨナ「システム復旧完了。これでようやく動ける。だけど……」

 息を吹き返したモニターに映ったのは、全てが終わった後の光景だった。
 まるでカーテンコールのような喝采の中で、ヨナは一人、場違いな居心地の悪さを感じていた。

アムロ「概ね状況はわかった。随分迷惑をかけてしまったな、ブライト」
ブライト「いいんだ。それよりも今は早くアクシズをなんとかしなけりゃならん。すぐにラー・カイラムに戻ってきてくれ」
アムロ「わかった」

 それからアムロは、ようやく足元のナラティブガンダムを見た。

アムロ「立てるか、ヨナ?」
ヨナ「あ、ああ」

 差し出されたνガンダムの手を、ヨナは恐る恐る取った。

アムロ「俺が正気を失っている間、お前にも随分大変な思いをさせてしまったようだな」
ヨナ「いや、そんなことは……頑張ったり強敵を倒したりしたのは弟たちで、俺は全然……」
アムロ「だがもう大丈夫だ。お前の分まで、俺がフロンタルと戦う。だから今はゆっくり休め」
ヨナ「あ……う、うん」

 おそらくは何の悪意もない、純粋に弟を気遣う言葉なのだろう。
 だがその言葉は、まるでお前は役立たずだと言われているかのようにヨナの心を突き刺した。

ヨナ「(俺は……俺は本当にこれでいいのか? 何もできず、負けっぱなしのままで……!!)」

 ヨナの内心では今、凄まじい葛藤が巻き起こっていた。
 客観的に見れば、何の問題もない。
 ナラティブはやられてしまったがνガンダムはほぼ無傷。
 このままアムロが仲間に加わってくれれば、フロンタルの計画を止めるのにこの上ない味方になってくれるだろう。

ヨナ「(だけど……じゃあ俺は、何のためにここまで来たんだ!?)」

 そう問いかけたヨナ。そんなとき、脳裏に浮かんだのは、出撃前にかけられたアルレットの言葉だった。

アルレット“ま、こんな時でもなければ、大人になってから兄弟と本気のケンカなんてできないんだから。思いっきり楽しんできなさいな”

129オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/04/21(水) 00:01:25.27ID:mGmMKaaT0
ヨナ「そうだ。俺はアムロ兄さんを止めに来たんじゃない。俺は、俺はアムロ兄さんと……!」
アムロ「ヨナ? どうしたうつむいて。怪我でもしたのか?」
ヨナ「アムロ兄さん、一つだけお願いがあるんだ」
アムロ「お願い?」
ヨナ「もう一度だけ、俺と戦ってくれないか」
アムロ「いや何を言ってるんだお前。いまはそんなこと」
ヨナ「そんなことをしてる場合じゃないのはわかってる。日登町に危機が迫ってる今、すぐにでもアクシズを止めなくちゃならないって」

 だけど、とヨナはつづけた。

ヨナ「それでも俺は、ここでアムロ兄さんと戦いたいんだ。だって俺は、ここに兄さんと本気のケンカをするために来たんだから」
アムロ「……冗談、じゃなさそうだな」

 アムロはヨナから目を逸らすと、少しだけ考えるそぶりを見せた。
 それから通信チャンネルを開き、ラー・カイラムに連絡を取る。

ブライト「どうした、アムロ」
アムロ「ブライト、アクシズはワームホールを通って日登町に落ちるといっていたな。落下阻止までのタイムリミットはどれくらいだ?」
ブライト「うん? 計算によると、あと2時間ということだが、それがどうかしたか?」
アムロ「実はアクシズの中に気になるブロックがあることを思い出したんだ。もしかすると、フロンタルの企みに関係あるかもしれん」
ブライト「なんだと? ならすぐに部隊を派遣して……」
アムロ「いや、それには及ばないさ。アクシズの中へは俺とヨナで行く。構わないよな、ヨナ」
ヨナ「え! あ、ああ」
ブライト「いくらまだ余裕があるとはいえ、あまり時間はかけられないぞ」
アムロ「わかっている。10分で戻るさ」

 そうして二機は、ラー・カイラムを後に再びアクシズの内部へ戻っていった。

130オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/04/21(水) 00:04:36.12ID:mGmMKaaT0
 AM 07:23 アクシズ:後部ユニット内部

 人気のないアクシズ内部は恐ろしいほどに静まり返っていた。
 ただ、正体不明のユニットだけがゴウン、ゴウンと動き、
 連結されたタンクに何かの液体を注いでいる。

アムロ「この辺りでいいか」
ヨナ「すまないアムロ兄さん、わがままを言って……」
アムロ「構わないさ。それよりヨナ。お前のナラティブ、武器が何も無いじゃないか」

 丸腰のナラティブガンダムを横目で見つつ、アムロは言った。

アムロ「さっきの戦闘で全て俺が叩き壊してしまったんだな。どうする? 倉庫に行って何か使えそうな武器を探すか?」
ヨナ「いや、いいよ」

 ヨナは首を振った。

ヨナ「10分しかないんだ。時間が惜しい。素手でもやるさ」

 そう言ってナラティブガンダムは拳を構え、ボクサーのようにファイティングポーズを取った。

アムロ「そうか」

 すると今度はアムロが意外な行動をとった。νガンダムの背中に装備されたフィン・ファンネルはもちろん、
 ライフルやシールド、ビームサーベルまでも取り外し、全ての武装を解除したのだ。
 その行動に、ヨナは驚きを隠せない。

アムロ「これで条件は一緒だな。さあ、やるか」
ヨナ「兄さん……すまない、気を遣わせてしまって」
アムロ「気を遣う? お前、何か勘違いしてないか」
ヨナ「え?」

 瞬間、νガンダムは一気に踏み込み、その拳をナラティブガンダムの顔面に叩きこんだ。
 何が起こったかまるで理解できないまま、ナラティブガンダムは無様に床に吹っ飛ばされる。

ヨナ「ア、アムロ兄さん……!」
アムロ「俺がνガンダムの武装を解いたのは、はっきりとお前に思い知らせるためだ。俺とお前の力の差をな」

 いつもとまるで違う、冷徹な声でアムロは告げた。

アムロ「もし、ファンネルを使って俺が勝ったら、お前は『ファンネルを使われたから負けた』
    もし、素手のお前に武器を使って勝ったら、お前は『武器がなかったら負けた』と
    きっと自分に言い訳しながら生きていくんだろう」
ヨナ「それは……!」
アムロ「そうしていつか思うんだ。『運が悪かっただけで、あの時本当は勝てたのかもしれない』ってな」
ヨナ「…………!」

 ヨナは自分でも気づいていなかった己の甘さを指摘され、ぎりぎりと唇を噛んだ。実際それは図星だった。
 胸の内に沸き起こる羞恥心をかき消すように、ヨナはナラティブガンダムを再び立たせた。

アムロ「かかってこいヨナ・バシュタ。最初で最後のお前とのケンカだ。言い訳のしようが無いくらいに、徹底的に叩き潰してやる!」
ヨナ「行くぞアムロ・レイ!!」

 獣ような雄叫びをあげながら、ヨナはアムロへと拳を振り上げた。

ヨナ・バシュタ【ナラティブガンダムC装備】
VS
アムロ・レイ【νガンダム】

リベンジマッチ開戦――!!


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最終更新:2023年05月10日 11:29