いつの間にか雨は止んでいた。
雨がやんでも私の拳は相変わらず振り続けられている。
術の威力は上がってきているのだがそれ以上に疲れが溜まって来ていた。
「今日はそんくらいにしといたら?明日に響くわよ?」
コロンは相も変わらず無愛想である。
ヴォルフのむせる声が聞こえた。
そのままテントから飛び出すと別のテントに滑り込んだ。
「何があったんですか!?」
事情を聞こうとするが、ヴォルフは顔を真っ赤にしてガクガク震えているだけで何も答えはしない。
「丁度いい所にいたな、味見を頼めるか?」
エーリヒがカレーの入った小皿を差し出してきた。
「あ、はい・・・。」
とりあえず一口食べてみる。
スパイスが効いていて甘みは全くない。
しかし数秒後には甘さも辛さも分からなくなった。
辛い。
とてつもなく辛い、まるで唐辛子を煮詰めた汁をがぶ飲みしているような辛さだ。
おそらくヴォルフはこれを食べたのだろう、さっきの態度も納得がいく。
口をと喉を押さえて倒れこんだ。
そのまま痛みに耐えきれず陸に上がった魚のようにジタバタしてみる。
「何だ?こいつら揃って・・・。」
エーリヒは首を傾げるとカレーを食べた。
「・・・ちと辛すぎたか、まあいい、ルーデルに牛乳を借りるとしよう。」
その後数分ほど私とヴォルフはテントの中から抜け出せなかったのだった。
最終更新:2011年06月02日 19:35