Ⅰ.泉に、女神様。
「けほっけほっ・・・カハッ!・・・またか・・・。最近酷いんだよな・・・。僕の命も、そう長くは無い、か・・・?」
誰にというわけではない。誰かに聞いて欲しかったわけでもない。ただ、声に出しただけだった。
恐らく、医者に聞けば「・・・はい、残念ですが・・・」とでも言われるのだろう。
...そんなの分かっている。でも、僕はそれを聞くのが怖かった。分かっているのに、怖い
んだ。
「っと、もう着いてるし。・・・母さん達は・・・あそこだな。」
辺りに立ち並ぶ白い十字架の間を歩いて、[キッド/ティアナ/リーア]と掘られたものの所まで
行く。
「・・・母さん、父さん、リーア。僕もそろそろそっちへ行く事になりそうだ。」
そう言いつつ、肩を落とす。
「僕としては、さ。」
そして誰かにずっと言いたかった事を愚痴のように吐き出す。
「まだ夢とかあったんだよ?まだ16歳だし、それなりに。・・・だから、それを叶えるまでは絶対死なないし、死ねない、って思ってたんだ。どうしても、叶えたかっ・・・た、から」
ココまで言うと、何か暖かい雫が頬を伝っているのに気づいた。
「でも、もう無理みたいだ。あきらめたくなんかないけど・・・。夢、叶えるなんて、夢、の、またゆ・・・め、だよ・・・な。」
手に、雫が落ちた。
「はは、シャレ・・・みたい・・・になって・・・」
声が震える。体も震える。
―――そして、俯く。
「情けないな・・・よしっ、スッキリした!うん、今を楽しまなくてどうする!死んだ後に未練が残らないようにしなきゃ・・・」
一人、自問自答。でも、夢を叶えられない事って、未練だよな。
『本当に、あなたはそのままで死ぬつもりなの・・・?』
色々考えていると、不意に辺りに声が響いた。とても美しい声だった。
「え・・・?何?どこ・・・?」
そう言いながら、周りを見回す。しかし、辺りにそれらしき人は見当たらなかった。
『あきらめてはダメよ。泉へいらっしゃい。待ってるわ、シュイン』
誰か分からない。でもどこかで聞いた事のある声だった。
...でも、[シュイン]って言った。僕のことを知っている。一瞬母さんかとも思った。でも[あなた]とも言った。だから母さんじゃない。他人だ。いったい、誰なんだ?
最終更新:2009年07月31日 23:17