IS-LM-BPモデル

IS-LM-BPモデルはIS-LMモデルに国際収支の均衡式であるBP曲線を加えたモデルである。
国際貿易を考える上では必須のモデルである。
ここではIS-LM-BPモデルとほぼ同じマンデルフレミングモデルで分析を行う。

  • 方程式体系
  • 国際収支
  • IS-LM-BPモデル

方程式体系

このモデルはIS-LMモデルに国際収支の均衡式を加えたものである。
今回は以下の11本の方程式からなるモデルを扱う。
Y=C+I+G+EX−IM…①
C=c0+c1Y…②
I=I0−I1i…③
G=G0…④
EX=x0+x1E…⑤
IM=m0+m1Y−m2E…⑥
M/P=L…⑦
M=M0…⑧
L=l0+l1Y−l2i…⑨
EX−IM+F=0…⑩
F=f0(i−i*)…⑪

①〜⑥式がIS曲線、⑦〜⑨式がLM曲線、⑤、⑥、⑩、⑪式がBP曲線を表す。
Eは自国通貨建ての為替レートを表す。
為替レートは自国通貨と同価値の外国通貨との比である。
自国通貨建ての場合ならば、自国通貨を外国通貨で割ることによって求められる。
例えば自国通貨を¥、外国通貨を$とすれば自国通貨建ては¥/$である。
自国通貨安はEが上昇する場合で、自国通貨高ではEは減少する。
このモデルでは輸出と輸入の式にEの項が追加されている。
これは自国通貨安(Eが増加)が自国の輸出を助け、輸入を阻害する効果をモデルに含めるためのものだ。
もちろん自国通貨高の場合は逆の効果をもたらす。

国際収支

BP曲線は国際収支の均衡式であると上に書いた。
それではまず国際収支について紹介していく。
国際収支はある国の国際的な取引の内訳を示すものである。
国際収支は大きく分けて経常収支、資本収支、外貨準備増減の項目からなる。
今回のモデルでは経常収支の中の貿易収支と資本収支を国際収支として扱う。
貿易収支とは読んで字のごとく純貿易額(EX−IM)が黒字か赤字かを表す。
資本収支は国際的な投資や債券の取引の収支を表す。
この貿易収支と資本収支を合計したものが国際収支であり、モデルでは⑩式が対応している。

資本収支を表す⑪式は外生変数f0,i*、内生変数F,iで構成されている。
iは自国利子率、i*は外国利子率を表す。
f0>0であるので自国利子率と外国利子率の大小関係によって資本収支Fの正負が決定する。
式の上ではこのようになっているが、これは現実を模したモデルである。
現実においてもこのようなことが言えるか、式の妥当性を確かめてみる。

資本収支というものは債券の取引を表すものだ。
例として国債で考えてみると、利子率が高い国債ほど(リスク等を除けば)優良な債券である。
投資家は自国の利子率iと外国利子率i*を比較して利子率の高い方の国債に投資しようとする。
ここではi*は外生変数として固定されているため、国内利子率iが動いた場合を考える。
i>i*のとき、投資家はよりリターンの大きい自国国債に投資しようとするため需要が増加する。
外国にいる投資家も自国国債を需要するため、その結果自国への資金流入が増加する。
資本収支は(資本流入)−(資本流出)で与えられるため、資本収支が増加する。
i<i*のときも同様で、自国の資本流出が進み資本収支が悪化する。

IS-LM-BPモデル

11本の式からIS曲線、LM曲線、BP曲線を求めていく。
IS曲線は①〜⑥式、LM曲線は⑦〜⑨式、BP曲線は⑤、⑥、⑩、⑪式をiについて解く。
この3本の曲線はi,Y,Eの3軸の3次元空間に描かれる。
また、厳密に言えば3つの曲線は曲線ではなく平面となる。
IS曲線:i=−((1−c1+m1)/I1)Y+((x1+m2)/I1)E+(c1+I0+G0+x0−m0)/I1
LM曲線:i=(l1/l2)Y+(l0−M0/P)/l2
BP曲線:i=(m1/f0)Y−((x1+m2)/f0)E−(x0−m0)/f0+i*
LM曲線にはEの項が存在しないが、これはLM曲線が直線という意味ではない。
Eの値に影響を受けないというだけでちゃんと平面となる。
(教授が間違えていておいおい大丈夫かと思った)

3次元空間に3つの曲線が存在するため、グラフを描いてもうまく描くことができない。
そのためEをある値にいったん固定し、iY平面でグラフを描いて分析を行う。
BP曲線のYの係数はm1,f0の二つは正という条件しかないため、傾きが正であるということしかわからない。
したがって下図のように4つの場合に場合分けをしなければならない。
(i)はBP曲線が垂直な場合、(ii)はLM曲線よりも傾きが大きい場合、
(iii)はLM曲線よりも傾きが小さい場合、(iv)は傾きがほぼ0に等しい場合を表す。
今回は分析のため(iv)の場合で分析を行う。
最終更新:2013年12月08日 00:35