VP ~咎を背負う者~


総評 60点

【★★★☆☆】
時間 シナリオ 調整 操作 独自 価値 キャラ やり込み グラフィック その他
評価 3 3 2 3 4 5 5 4 3 4
VPにおけるシリーズ3作目。
全体の構成や雰囲気、音楽はVP1に準じたものになっておりファン視点では良。
それでも全体的に大雑把なゲームメイク。


 1:プレイ時間 【★★★☆☆】
一週目15時間前後。データ引継ぎでの2週目になると10時間未満でクリアできる。
周回することを前提にゲームが作られているとはいえ、この量ではいかにもDSらしいボリュームにまとまってしまっていると言わざるを得ないだろう。


 2:ストーリー(シナリオ) 【★★★☆☆】
あらすじ:
戦乙女に選定された父。戦士の誉れと皆は言う。だが当事者家族にとっては、父の死はそのまま家族の崩壊へと繋がるものでしかない。ゆえに戦乙女に対し憎悪を燃やす主人公。これは、そんな彼の、戦乙女への憎しみと、己の罪との、戦いの記憶――

登場キャラクターの面々の持つ設定・背景・物語はVP1を彷彿とさせるもので◎。
VP2で蔑ろにされたエインフェリア陣にファンが怒り狂った為の方向修正だろうがこれは良い。
主人公の「仲間の命を犠牲にすることで力と、罪の意識・咎とを得てゆく」というメインの設定も、なかなか深く他の登場キャラに負けない、強い感情移入対象となれる良設定である。

ゲーム開始後冒頭で親友の命を奪うことになり、今後こういった行為が攻略にも必要なのだろうとプレイヤーに認識させておいて、その後も登場キャラクターの内面や心の揺らぎをまざまざと見せつけながら味方に加入させ、主人公はそんな彼らの命を奪うか否か、奪えるか否かで葛藤させられる。
そんな主人公の心の動きを強く疑似体験できる、良い構成である。この点は素晴らしい。

今作のストーリーにおける難点は二つある。

一つは、全体にわたってひどく暗い、陰鬱な物語になってしまっている点である。
仲間を犠牲にすることで主人公が強くなるというシステムと物語上、明るい話になりにくいのは理解できる。
だが、そういった主人公の行動を抜きにした各チャプターでの物語に視点を移しても、そこから離れられるどころか一層の殺し合いがひたすらに演出されるのではプレイしていて気分も良くはならないだろう。

もう一つは、マルチストーリーと言いながら言うほどストーリーに変化がない点である。
いや展開・流れとしてはそれぞれかなり違うのだが、基本的に死ぬ人は死ぬし、その結果どういったことが引き起こされるのか、という点に関しても(結果を見ても)大差は無い。この点は大いに残念な点。
事前情報を読み楽しみにしていた者としては、もっと大きく物語が変動することを期待した。
VP1らしい雰囲気から、グッドエンドに進めば怒涛の展開などが用意されていることも期待した。
だがそれらはどちらも無かった。
陰鬱な展開続きがたたってグッドエンドを見ても心は晴れやかにならないのだから相当なものだろう。

冥界や神界との関わりが薄いのも、実際以上に物語が薄く感じる理由であろう。
VPシリーズは人間界で起きる悲劇的な物語と、神話的な物語との結びつきが大きな魅力の一つであるがゆえに。
ヴァルキリー自体の出番でさえかなり少ないしね。

展開によって 神界に乗り込むor冥界に乗り込む くらいの変化があって欲しかったところ。

もう一つ、二つの盛り上げがあればまた評価も変わってきたのだろうという印象である。


 3:難易度設定・調整 【★★☆☆☆】
本作最大の難点はこのゲームバランスにある。
普通にプレイしていて雑魚にもボスにも味方がボッコボコ殺されてゆく設定はいかがなものか。
それでも蘇生アイテムを投げまくれば十分勝利することは可能なのだが、良い調整とは到底言えない。

一応、一週目で女神の羽を使わせようという難易度設定なのだろうということは分かるのだが、それを考慮しても、今作は大味すぎるものになっている。レベル上げの場も用意されていなく実質不可能な為、アイテムを買うことを知らない馬鹿プレイヤーにおいては「詰む」ことにもなりかねない。

無論羽を使わずにプレイすることも不可能ではないが、まぁ茨の道だろう。

これらの点に関しては、ゲームシステムからの何らかの見直し・改修が必要不可欠。


 4:操作感(プレイ感覚) 【★★★☆☆】
基本的には「SRPGに何らかの要素を付加」してしまっている類ゲームである為、一つのステージ(1MAP)にかかる時間がそれなりに長くなり、次第にプレイがダルくなってきてしまう。
こういった類のゲームではどうしようもない点(典型例:ナムコ×カプコン)ではあるが……
レスポンスがよく、操作に関するストレスが無いつくりは流石のAAA仕事なのだが、それをもってしてもこの特性を解消するまでに至っているとは言い難い。

その他、アイテム選択画面で定量移動がなかったり、移動後・行動後のキャラの向き選択ができなかったりと、遊んでいて細かに気になる点も少なくない。


 5:独自システム 【★★★★☆】
→女神の羽(力とその代償)システム
仲間を犠牲にすることでそのステージはほぼ確実にきりぬけられると同時に主人公が強化される。
このシステムや発想自体は面白いし、作品の特徴として大きな柱・テーマの役割を十分に果たしている。良。
今作最大の根幹となるシステムであり恐らくはこれをやりたい(生かしたい)が為にマルチストーリーシステムが取り入れられ、難易度調整もこれを主眼においてなされたのだろう。
……にも関わらず、出来を見てみると両者前述の通り
前者は結果における変化に乏しく生かし切れておらず、
後者は管理人に「本作最大の難点」と言わしめた不安定さを残すありさまである。
残念無念、といったところであろうか。

→SRPG+VP戦闘(4ボタンに4キャラが対応し連携攻撃を行う)システム
両者の特性を生かしあった、画期的なシステムであると感じた。
それでも、4に書いた通り構造上の欠点を持つシステムであるが故今後の進化に期待する。
バランス調整(MAPの広さや敵の数・強さ)や何らかの要素の追加でその欠点を克服できうる位置にはいると感じられる。

→アクティブフォーメーションシステム
いくらなんでも4種しかないのは手抜きとしか言いようがない。
もっと様々な陣形があってこそ、ようやく生きてくるシステムであろう。
単に前後・左右・三方・四方を囲むだけしかできないのでは一つのシステムとして組むのが勿体ないくらいである。


 6:価値 【★★★★★】
管理人の購入価格:4031円
本編4週35時間、セラフィックゲート一周約5~6時間×10週を楽しく遊べているので管理人的には文句無く星五つだが、これはあくまで管理人の話。
こういった「周回することを前提としたゲーム」というのは周回する気マンマンでプレイする人とそうでない人とで遊び方や感覚が全く違うものになってくる。
それでいて内容が充実していて、初めて触れる人をも引き込み周回させるだけの魅力を持ったゲームというのも存在はしているだろうが、本作はそのレベルには達していないだろう。
寧ろ、肌に合わない人には全く遊んでもらえない系統である。VPは皆そんな感じではあるが。

シリーズファンならば定価でも損はない。そうでないならば中古が無難。
FEZのシリアルが欲しい場合はネットで呼びかけたりせずとりあえず新品で買おう。


 7:キャラクター 【★★★★★】
予約特典のブックレットがあること前提の評価。
ゲーム中ではVP1を意識してか、必要以上にキャラクターの過去を語らず断片的に見せると共に、残りはプレイヤーの脳内補完に任せてその後過去が解き明かされることは一切無い仕様になっている。
その過去を補完するのがブックレットなのである。無い場合はどこかネット上でバレを探すか、攻略本を覗くことになる。が、それをすることでキャラクター達にはより一層の愛着と感情移入を感じるだろう。

最低一つ、二つの忌まわしきもの・過去を用意するのは魅力的なキャラを作る上での定石であるが、このVPシリーズというのはまさにその定石を地で行くことで、複数のキャラに魅力を生み出すことに成功している。
それが露骨であるにも関わらず嫌味を感じないのは、世界観との合致がきちんとなされているからか。


 8:やりこみ要素 【★★★★☆】
クリア後はセラフィックゲート10周という、VPシリーズではもうお決まりのやりこみ要素が用意されている。
単純に10周繰り返すだけだったVP1、周回する毎に敵がドンドン強くなったVP2、という流れを経て今回は周回毎に敵が強くなると同時にイベントにも変更が加わり、キチンと周回していく楽しみが
用意されるようになった。◎。こうでなくては10周もしようという気は起きにくい。

だが、DSという媒体の容量の都合かお得意のコレクション要素が今作では一切無くなってしまったのも寂しいものがあり星は-1。


 9:グラフィック・アニメ 【★★★☆☆】
CGアニメーションは美麗であるし、ゲーム中の画像や動きも決して悪い出来ではないのだが。
このシリーズの目玉、即ちキャラ毎の攻撃方法・決め技の差異を見せる、否、魅せるにあたってはやはりどうしてもDSでは限界があったように感じてならない。
又、連携攻撃を行う際も少々表示されるキャラクターが小さい為、高低差のタイミングが非常に取りづらいものになってしまっている。この辺りも表現の工夫のしどころであったかな、と。


10:その他 【★★★★☆】
基本的にはファン向けゲー。
製作側もVPシリーズやってる人向け、で作ってるなとありありと感じられる。
ゲームをプレイしているとよく「もう一手間二手間かけてやれば大分違っただろうに」という感想を抱くのだが、本作もそういった種類の出来栄えである。ファン向けに作るのは厳しい部分と甘えられる部分があるが、少し甘えた部分が強く見えてしまった印象を抱いた。

あと、個人的にはSRPG系の今回のシステムの具合と評判を見る為に、開発費の比較的安いDSという媒体を選んだのだろうという読み。多分外れてるだろうけど。笑。




最終更新:2009年01月22日 00:48
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