デビルサマナー 葛葉ライドウ対アバドン王


総評 83点

【★★★★★】
時間 シナリオ 調整 操作 独自 価値 キャラ やり込み グラフィック その他
評価 5 5 4 5 4 5 4 3 3 5
デビルサマナー外伝、葛葉ライドウシリーズの二作目となる本作。
作品の持つ雰囲気や盛り上げ方の非常に上手いシナリオなどの良かった部分はそのままに、前作で浮かび上がった問題点の数々を見事に改善させているシステム構成には驚かされた。
前作はシステムの都合上進行の妨げになる仕様が多かったが為にストレスを感じる部分が多かったのだが、それらのほぼ全てにフォローが入っている。◎。
結果ストレスを感じる点が殆どなくなっており、本作は総じて「やりがいのあるソフト」よりも「遊びやすいソフト」を目指して作られている印象を受けた。外伝とはいえ、メガテンシリーズにしては珍しい調整である。

ちなみに、表示されている画像から分かるようにプレイしたのは真・女神転生Ⅲ NOCTURNEマニアクス・クロニクル同梱版だが、本評価はライドウ対アバドン王単体のものである。
今後追加するであろうⅢも別物として評価する。


 1:プレイ時間 【★★★★★】
サブイベント無視(進行上クリア条件を満たせそうなもののみ実行)でプレイして、クリアまで30時間ちょっと。話数形式で進む本編は全7話で1話大体5時間弱。その後2週目限定も多い為全て制覇ではないが、やれるだけ攻略見ながらサブイベント埋めて約40時間。前作よりもボリュームアップしているのだが、仲魔の用意などを理由に途中で足止めされる場面を極力減らしてあり、かつ予測しにくい展開や比較的多めに差し込まれるボス戦の数々も手伝って、体感時間は寧ろ短いくらいである。決して間延びすることのないプレイ感覚で非常に良い。


 2:ストーリー(シナリオ) 【★★★★★】
あらすじ:
大正20年。超力兵団の一件からまだそう時間も経たぬ頃。帝都は「運」の噂で持ちきりだった。ある者は連日幸運に恵まれ、またある者は不運続きで生きる気力を失ってゆく。そんな「運の格差」とも呼べる現象が広がりつつある世の中は、帝都に住まう人々の心を徐々に不安で包み込んでいくのだった。そして葛葉ライドウ控える探偵事務所にも、また一つ新たな依頼が舞い込んでくる。内容は失踪した男の行方調査。彼の足取りを追ううちに、ライドウは今帝都を襲おうとしている未曾有の危機に迫ってゆくことになる。ライドウの「行動」は帝都の人々の希望となりうるのだろうか――――


誰もが一度は考える、己の持つ「運」。それが本人の気付かぬうちに抜き取られているとしたら。抜き取られた運の恩恵を見知らぬ誰かが買い取って受けているとしたら。
物語はそんな切り口からスタートし、人の「運」に対する向き合い方、そして自分の「行動」から招かれる結果を幾度となく問われながらストーリーは進んでゆく。
前作でもそうだったが、本作も序盤から出てくる事象の全てが物語の核心に明確に結びついていながら、それを中盤まで上手く隠しつつ、プレイヤーの興味と物語の盛り上がりを同時に相乗的に高めてゆくストーリー構成がなんとも上手い。既述だが、ボス戦が多めに配置されている為に戦闘にも飽きないまま一気に突き進むことができる。
また、特筆しておく点として、他の作品ではあまり見かけない性的内容(もちろん露骨に表現されてはいないが)を全く負い目に感じることなく扱っている点が印象深い。寧ろ核心にかかわるネタの一つとしてとりあげており、それがヒロインの一族の持つ宿命の悲哀や絶望をより深めている。大正と言いながらも現実すぎない不思議な世界観が、ファンタジーでも現実ベースでも実行しにくいことを自然に行うことのできる下地として機能しているのだろう。だがそれも、それをやろうという発想がなければできないこと。素晴らしい。

前作で必要以上に扱われていた過去作とのつながりも、今作ではクリア後に少しとなりを潜めている。
しかしプレイ前には、本作ではヤタガラスという組織等、ライドウの世界そのものに謎として存在しているものにも言及してくれることにも期待していたが、そこまではいってくれなかった。まだ次回作が出、そしてそこで語ってくれるのだろうと淡い期待を抱いておきたい。

しかし今作のゴウトは働かないw 前作の頼りになる相棒っぷりはどこへやら、単に重要語句をメモするばかりの相棒に(笑


 3:難易度設定・調整 【★★★★☆】
前作から後述する操作性もシステムもより快適にプレイできるように改良されており、かつ敵は寧ろ前作よりも柔らかくなっている為に難易度はかなり下がっている。石化→破壊やムドオン系などの一撃死を食らったり、相当油断して戦っていない限りは敗北は無い難易度。ATLUSらしい調整とはかなりほど遠いものになっている。女神転生シリーズのようないつ雑魚に殺されるか分からない緊張感などは微塵も感じられないだろう。
とはいえ、バッサリ感に近い敵を倒したときのエフェクトや、MAG(いわゆるMP)をガシガシ使っても敵の弱点を突きつつ戦えば全快状態を維持できる戦闘バランス調整など、遊びやすさ、即ち爽快感という面を重視した設定であると見ればいずれも素晴らしい内容。戦闘参加可能な仲魔の数が増えたことによる自由度の向上を上手く生かせている。

ちと魔人の出現率が高すぎた点は少々残念。一つのダンジョン探索中に2度も3度もいたずらに自軍を壊滅させられてはイライラも募る。
また、ダンジョン内に神風などのスキルを使って移動するポイントが無駄に多く利用されており、会話ウインドウをいちいち開かなくてはいけない場面が多い為にテンポが悪くなる場面がままある。この辺りはもう少し考慮してもよかっただろう。
ゴウトの次へのヒント機能がなくなったのも惜しい。


 4:操作感(プレイ感覚) 【★★★★★】
冒頭に書いた通り、前作でストレスになっていた部分の殆どが取り除かれている為、プレイ感覚は非常に良い。
前作では少々もっさりしていた戦闘も緊急回避の追加や仲魔の参戦数増加、仲魔の緊急招集・緊急回避の追加などによりテクニカルに行うことができるようになっていて、戦っていて非常に楽しい。
また、前作では悪魔合体が専用の場所に出向かなければ出来なかったために必要なスキルや属性を持った仲魔を用意するのが非常に手間であった。そこまで戻って、準備してまだダンジョンに潜り直すこともあった。しかし、本作では全てのセーブポイントでの悪魔合体が可能になり、かつシキミの壁の撤廃など特定の仲魔がいなければ進めないポイントを大幅に削減してある為、そういったストレスは殆ど感じることがない。ポイントに出くわしても、付近で必要条件を満たす悪魔をゲットできるように設定してある点も評価高い。
個人的には悪魔会話がちとだるく感じたものの、他の作品の会話に比べればずいぶん優しく適当に話して仲魔に助けて貰って、適当に貢げばスカウトできる。

今回は終盤空を自由に飛び回ることも可能になり、本当に動きたいよう動ける作品になった。
普通のRPGだと依頼モノのサブイベントはだるく感じることも多いのだが、本作それらにさえ面倒臭さをあまり感じない。◎。


 5:独自システム 【★★★★☆】
前作には無かったものに限ってとりあげる。
→属性
本作ではストーリー中に幾度となくプレイヤーに問われる答えのない選択肢によって、プレイヤーの属性がLAW(日和見者)←→CHAOS(正直者)で決まる。
それによって現れるボスや、エンディング等に変化が生じる。女神転生シリーズで使われている手法らしいが、ATLUS歴の浅い管理人には分からなかった。笑。
ラスダンで固定されてしまうのが寂しい。まぁ当然と言えば当然だが。
→運食い虫
本作の物語に於いても重要な役割を果たしている虫。人の「運」を体の中に溜めておけるといった性質を持っており、まぁ早い話がゲーム的には捕獲すれば主人公の「運」ステータスがUPする。
捕獲方法もエンカウントした運食い虫に対してアイテムを使用するだけ、というお手軽。お手軽な分、それを怠ってプレイしていると戦闘中に様々なマイナス効果発生するようになる。
アイテムを使用した瞬間、光がこちらに近づいてきて捕獲、となり気分はポケモンゲットだぜ! 確率100%だが。
→新たな戦闘システム(MAGスケジューリングシステム等)
前作では行動の幅が広くなかったが為に、仲魔に技を使わせて自分で斬りつける、のひたすら繰り返しになりがちだった戦闘だった。が、本作ではいくらか既述した通り、仲間を2体召還することが出来るようになったと同時に、緊急回避や仲魔の呼び戻し、ガードからの攻撃等行動の選択肢が大幅に増えている。
又、本作では敵の弱点を突いてからの追撃によってMAGが回復するシステムが付加された。これによって、仲魔にドンドン特技を使わせても十二分にお釣りが来るほどMAGを補給できる。仲魔の召還など、戦闘以外の部分にMAGを消費しなくなった親切設計もよく働いていた。もう少し仲魔のAIの頭を良くしてくれたら尚良かったのだが。本作では指示や標準攻撃方法を指定してやらない限り終始通常攻撃しかしない。相手の弱点が分かっている時のみでも臨機応変に動いてくれたら・・・・・って、それは流石に高望みですね。
→悪魔会話
前作では力でねじ伏せるような形式だった悪魔ゲットだが、本作でデビルサマナーらしい悪魔会話による勧誘を行うようになった。
悪魔たちがより魅力的に描かれるようになっており良、ではあるのだが、前作の方式も楽で好きだった管理人的にはまぁどっちもどっち。同じ悪魔なのに同じ選択肢でも良かったりダメだったりするのは何かしら設定して欲しかったところ。まぁこれは管理人のわがまま。
→別件依頼
いわゆるサブイベント。基本的にはお使い集。町の人などに話を聞くとライドウの探偵社に小さな依頼が舞い込んでくる。
大抵こういったものは「依頼受領」→「依頼達成」→「また受領しに戻る」→・・・以降繰り返し という形式になり、受領してこなして、という繰り返し作業で面倒臭さがどうしても勝ってしまうものだが、本作はその辺にも良く配慮してあり面倒臭さが大分抑えられている。具体的には、受領した瞬間に遂行できる依頼(受領する前に準備をして受領→完了と即時に行えるもの)が半分ほどを占めている点や、受領場所である探偵社にどこからでも「帰る」というコマンドが使用できる点など。サクサク進めてゆける。

その他、アイテム所持数や回復対価等細かい調整などはどれも前作の感想を反映した、気の利いたものになっている。○。


 6:価値 【★★★★★】
管理人の購入価格:3980円
ストレスなくプレイを楽しむことができ、シナリオも良い。ATLUSゲーの雰囲気が嫌いでなければ文句なくおすすめ。
その遊びやすさから割合万人向けとも言える。
又、今回別評価であげているが限定版であれば真・女神転生ⅢNOCTURNEアニマクスもいっしょについてくる。
クロニクル版とはいえ、アニマクスを普通に手に入れようとすると恐ろしい値段になっているので、その点の魅力も強い。

ただし注意点としては、生臭いシナリオと、虫がかなり強く出てくる事。バッタ類が猛烈に嫌いな人は遊ばない方が良い。


 7:キャラクター 【★★★★☆】
どのキャラも一人一人丁寧に描いており、ストーリー中で適当に扱っておらず魅力をよく引き出している。サブキャラの一人一人まで。
また、出てくる悪魔の数が大幅に増加しているのも評価高い。悪魔合体の楽しさもひとしおだ。
前作キャラが総じてちょいキャラ、顔出し程度だったのはちと寂しくはあったか。


 8:やりこみ要素 【★★★☆☆】
クリア後の楽しみが薄いのが残念。基本的には別件以来がやり込み要素になるのだが、強敵の類がほぼ全て2週目以降限定。×。
属性のシステムもあり、周回しようという気はよく沸かせてくれる構成にはなっているので、悪くはないのだが。管理人も大学時代であれば周回していただろう。


 9:グラフィック・アニメ 【★★★☆☆】
基本的にはクオリティ、質、雰囲気全て前作から特に代わり映えは無し。OPの音楽も同じ?
半リアルにデザインされたキャラや雰囲気全ての調和が感じられ、プレイしていて心地よいのも相変わらず。
とはいえ、何かもう一歩変化や進化が感じられるポイントがあると良かったのだが。


10:その他 【★★★★★】
次回作、というのはこうして制作陣のテンションが維持されているうちに出すことで、改善などが適正に行われるのかも知れない。
新システム等を作り込みすぎるから、ファンの求める続編との齟齬なども生じてきてしまう。そんなパターンもあるのだろう。
最近は普段あまり時間がとれずPS2を起動するにも気力が必要になってきているのだが、本作はそう感じることが殆どなかった。うーむ、面白かった。




最終更新:2009年11月25日 22:50
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